零点振動
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概要
古典力学では、物体は温度を下げて熱運動を完全に失えば静止する。しかし量子力学では、粒子の位置 と運動量 はハイゼンベルクの不確定性原理
を満たさなければならない。そのため粒子をある位置に局在させると運動量の不確定性が増大し、逆に運動量をゼロに近づけると位置が不確定になる。したがって絶対零度においても粒子は完全には静止できず、有限の振動運動を行う。この運動が零点振動である。
調和振動子との関係
零点振動は量子力学的調和振動子において最も基本的に理解される。一次元調和振動子のエネルギー準位は
で与えられる。ここで、 は量子数、 は角振動数、 は換算プランク定数である。最低エネルギー状態(基底状態)においても
のエネルギーが残る。このエネルギーは零点エネルギーと呼ばれ、それに対応する運動が零点振動である。
固体における零点振動
結晶中では原子は格子点の周囲で振動している。この振動はフォノンとして量子化される。
絶対零度において熱励起されたフォノンは消滅するが、零点振動に対応する基底状態フォノンは残る。そのため結晶中の原子は絶対零度でも静止していない。
零点振動の振幅は軽い原子ほど大きくなるため、水素やヘリウムなどの軽元素ではその影響が顕著に現れる。
液体ヘリウムとの関係
零点振動の最も有名な例は液体ヘリウムである。
通常の物質は温度を下げると原子の熱運動が弱まり、分子間相互作用によって結晶化する。しかしヘリウム原子は非常に軽く、また原子間相互作用も弱いため、零点振動のエネルギーが結晶化によるエネルギー利得を上回る。
その結果、標準圧力下では絶対零度近傍まで冷却しても固化せず液体のまま存在する[2]。ヘリウムを固化させるには約25気圧以上の圧力を加える必要がある。