電子局在関数

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HF/cc-pV5Zレベル計算によるクリプトン原子の電子局在関数と、同形密度分布4πr2ρ(r)を0.0375倍にスケールしたもの。電子局在関数のグラフからはクリプトンの4つの電子殻に対応する極大値が明瞭にみてとれる。

量子化学において、電子局在関数でんしきょくざいかんすう、: electron localization function, ELFとは、基準電子の近傍空間の指定された位置に同スピンの電子をみいだす確率の尺度である。物理的には、基準電子の空間的局在度合いの尺度であり、多電子系における電子対の確率分布をマッピングする手段といえる。

ELFの有用性は、この関数により電子の局在化を化学的直感にあう形で解析することができるということからきている。たとえば、重原子の原子核からの距離に対してELFをプロットすると電子殻構造が一目でみてとれる。たとえばラドンのELFは6つの明瞭な極大値をもつ一方、電子密度分布は単調減少するし、動径重み付き確率分布でもすべての電子殻を可視化することはできない。分子に適用した場合、ELFを解析することによりコア電子英語版価電子の明瞭な区別が可能であるほか、共有結合孤立電子対を可視化することができ、「VSEPR則のふるまいを忠実に可視化」することができる[1]。ELFのもう1つの特徴として、分子軌道の変換に関して不変であることもあげられる。

PyMOLにより生成したELFの等値面(0.8)

ELFは1990年ベッケとEdgecombeの論文で発表された[1]。この論文では、まず以下の量が電子局在化の尺度としてはたらくことが主張された。

ここで、ρは電子のスピン密度、τ運動エネルギー密度分布をあらわす。上式第二項はボソン的運動エネルギー密度分布であり、したがってDはフェルミオンであることによる寄与といえる。Dは局在化した電子が存在する領域で小さくなると期待される。Dの大きさは局在化の尺度として恣意性をもつことから、下式で与えられる密度ρ(r)一様電子ガスの値と比較する。

これらの比、

無次元の局在化指標であり、一様電子ガスにくらべ電子がどれほど局在化しているかを表現する。最後に、χから0 ≤ ELF ≤ 1の範囲にマッピングするため以下のように定義される。

ELF = 1 のときは完全な局在化、ELF = 1/2のときは電子ガスに対応する。

オリジナルの導出はハートリー・フォック理論に基いてなされた。密度汎関数理論(DFT)への一般化は1992年にAndreas Savinによってなされ[2]、また彼はこの式を用いてさまざまな化学的・固体科学的系を調べた[3]1994年、Bernard SilviとAndreas SavinはELFを微分位相幾何学をもちいて説明する方法を考案した[4]

AIM法英語版の形でのこのアプローチはリチャード・ベイダー英語版により創始された[5]。ベイダーの解析手法では、分子内の電荷密度を「原子ごと」に分割する際、ゼロフラックス面(電子の流れが存在しない面)を基準としている[6]。この手法により、多重極モーメント英語版エネルギーなどの様々な物性を、分子内の個々の原子に対してdefensible[訳語疑問点]で一貫性のある形で分割することが可能となる。

近年[いつ?]、分子物性の分割手法として、ベイダーのアプローチとELFアプローチの両方が急速に普及している。これは現在、分子特性の最も高速で高精度なab-initio計算の多くがDFTに基いて行われるようになったことによる。この理論では電子密度を直接計算するが、これを、ELFのベイダー電荷解析手法を用いてさらに解析することができる。DFTにおいて最も広く用いられている汎関数の一つは、ELFの考案者でもあるベッケによって最初に提案されたものである。

外部リンク

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