音の大きさ
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概要
性質
音の大きさは音の高さ、音色と合わせて、音の知覚的属性であり、「音の3属性」を構成する[3]。音の大きさは、他の属性と同様に、耳へ到達した音波の物理的特性によって左右される。
音の強さ・周波数の影響
音の大きさは、他の音の知覚的属性と同様に、物理的に直接測定することはできないが、基本的には音のエネルギーと対応しており、音の強さ(音圧)が増せば音は大きく感じられる[4]。 また、音の大きさは音波の周波数スペクトル構造にも左右される[5][6]。
ヒトの聴覚は音波の周波数によって感度が異なる[7]。つまり2つの純音が同じ音の強さであっても周波数が異なれば音の大きさが異なる[6][8]。音の大きさが一定となる純音の音圧レベルを各周波数で示したグラフは等ラウドネス曲線として知られ[9][8]、ここからヒトが 4kHz 周辺の純音に最も鋭敏であることがわかる[7][10]。
また同時に近い周波数の音波が耳に届いた場合、片方が他方をマスクし、聞こえにくくなる。この現象を周波数マスキングといい、周波数成分が異なる音源が複数ある場合、マスキング効果の相違によって音の大きさが影響される可能性がある[11]。後述する音の大きさの推定において、様々な周波数成分を有する複合音を対象とするときにはこのマスキングが問題となる。
時間構造の影響
測定
音の大きさは心理量であるため、個々人が感じた音の大きさの申告により測定される。
ソーン
音の大きさを表す単位として、ソーン(英: sone)があり、音圧レベル40 dB・周波数1,000 Hzの純音を聴いた際に感じる音の大きさが 1 soneと定義される[14]。ソンとも[14]。1 soneから、音を聞いた人の感じる音の大きさが2倍になれば 2 sone、半分になれば 0.5 sone、無音であれば 0 soneとなる[14][15]。
ソーンの定義により 1 sone となる音源が用意できるため[14]、これを基準値として「基準音の何倍に聞こえるか」を尋ねる主観評価実験で音の大きさの絶対値を測定できる。またリファレンス音と対象音を聴き比べ「どちらが大きく聞こえるか」を尋ねる主観評価実験を用いれば相対的な音の大きさの大小を測定できる。
1000 Hzの純音の場合、音の大きさの値[sone]は、音の強さ[W/m²]とというべき乗則が成り立つとされる。ここで、は、音圧レベル40 dBのときに1 soneとするための比例定数である。なお、音圧レベルが10 dB増加すると音の強さは10倍となるため、10の0.3乗はおよそ2であることから、ラウドネスはおよそ2倍となる[15]。
フォン(ラウドネスレベル)

フォン(英: phon)は、ある音の大きさについて、同じ大きさ(ラウドネス)に聞こえる周波数1,000 Hzの純音の音圧レベル(単位:dB)で表したラウドネスレベル (あるいは音の大きさのレベル 英: loudness level)の単位である[16]。物理量である音圧レベルを基準として音の大きさの大小を表す心理物理量であり、1,000Hzの純音を基準値として「基準音と同じ大きさに聞こえるか」を尋ねる主観評価実験で、その値を測定することができる。
等ラウドネス曲線は、こうした主観評価実験により作成されたものである。古くから測定が繰り返されており、フレッチャー=マンソンによるものが著名であるが[8]、近年では、鈴木と竹島によるものがISO 226:2003として規格化されている[10]。この曲線において、周波数1000ヘルツ[Hz]の純音のラウドネスレベル(フォン[phon])の値は、その音圧レベル(デシベル[dB])の値に等しく、これ以外の周波数では、同じラウドネスに聞こえる1000ヘルツの純音の音圧レベルに等しい[16]。
なお、ラウドネス(ソーン)とラウドネスレベル(フォン)には「フォン[phon] ÷ 10 - 4 = log2ソーン[sone]」の関係があるという知見に基づき、比率尺度として、すなわち10[phon]で2倍のラウドネスが得られる(等比)という研究[17]、間隔尺度として10[dB]で騒音カテゴリが1つあがる(等差)という研究が存在する[18]。
推定
音の大きさはしばしば直接計測でなく、心理物理量などを介して推定される。
心理量の計測は高コストであり、しばしば代替として物理量をもとに心理物理量を介した推定がなされる[19]。音の大きさもこれに該当し、いくつかの推定方法が提案されている。方法ごとに精度や適用可能条件が異なり[20]、必要に応じて使い分けられる。騒音の評価には、周波数で補正した音圧レベルである騒音レベル(A特性音圧レベル)を用いることとしており、ラウドネスレベルの算定においては周波数マスキングを考慮したモデルも存在する[21][22]。
算定ラウドネスレベル
ヒトの聴覚は音の周波数によって感度が異なり[7]、これは等ラウドネス曲線で表現される[9]。音圧レベル(物理量)を、聴覚特性により周波数にも左右される音の大きさ(心理量)に対応させるため、等ラウドネス曲線などにより補正してラウドネスレベル(心理物理量)を算定する[21]。 このように等ラウドネス曲線などにより音声信号から計算して求めたラウドネスレベルをJISでは算定ラウドネスレベルという。単位は同じくフォン (phon)である[23]。
純音の場合、等ラウドネス曲線においてラウドネスレベルが同じの音は同じ音の大きさに聞こえると期待されるが[24]、純音の主観評価実験により導かれた等ラウドネス曲線を、そのまま複合音に適用してラウドネスレベルを算定しようとすると、ある周波数帯域の音が隣接する周波数帯域の音をマスキングする周波数マスキングの効果が加味されないために、本来のラウドネスレベルとの乖離が生じることになる[11](⇒ #周波数の影響)。
ラウドネスレベル(およびラウドネス)の算定方法はISOにより定められているが、1975年に定められたISO 532:1975では、マスキングを簡略したStevensの方法と、マスキングを考慮したZwickerの方法が定められていた[25][26]。2017年には規格の改定が行われ、ISO 532-1:2017としてZwickerの方法が、ISO 532-2:2017としてMoore-Glasbergの方法が定められている[27][28]。
騒音レベル(A特性音圧レベル)

平坦特性をZ特性といい、A,C特性は等ラウドネス曲線のそれぞれ60,100 phonに近似した重みづけである。その中間のB特性と、航空機騒音評価のために提案されたD特性は音源の改善により用いられなくなった[29]。
さまざまな周波数により構成される音の大きさの評価について、周波数による感覚的な音の大きさの違いを踏まえて、周波数による聴感補正を行った音圧を用いる。通常用いられるサウンドレベルメータ(騒音計)には、このような周波数による聴感補正を行う周波数補正回路が、音の大きさのレベルを近似的に測定する目的で挿入されている[30]。
騒音の測定に用いる聴感補正は、A特性によるものが一般的である。A特性は、フレッチャー=マンソンの40 phonにおける等ラウドネスレベル曲線を逆にしたものに近似される。このA特性により周波数重みづけを行った音圧pAを用いて算定した音圧レベル(A特性音圧レベル)LAを、騒音レベルといい、騒音の大きさの評価に用いられる[31]。単位は音圧レベルと同じくデシベル(dB)である。
騒音レベルは単に周波数ごとに音圧レベルの加減を行い補正したものであることから、同じ周波数で音圧レベルが1デシベル増えると、騒音レベルも1デシベル増える。また、騒音レベルが判明している2つの音について、それらの音を合成した騒音レベルは、それらのパワー和により求めることが可能である。一方、ラウドネスレベルは等ラウドネス曲線が等間隔でないように、同じ周波数で音圧レベルが1デシベル増えてもラウドネスレベルが1フォン増えるとは限らず、騒音レベルとは異なり、ラウドネスレベルのフォン値のみが判明しているラウドネスレベルの値を算定することはできない。
応用
音量調整
音響機器・オーディオソフトウェアが発する音声信号の音量調整/volume control(音量正規化)にラウドネスは用いられる。
異なる2つの楽曲の音量について、最大振幅において出力される音の音響パワーレベルが同じになるように制御しても、ラウドネスは音圧のみによらず周波数成分などにも左右されるため、それぞれの楽曲のピークレベルの音に対して聞き手が感じる音の大きさ(ラウドネス)が一致しない場合がある。聞き手のラウドネスを一致させたいのであれば、機材側での音量調整段階でラウドネスを揃えればよい。すなわちラウドネスレベル等の聴感補正が行われた値を用いて、複数の音声信号間でラウドネスを均一化することをラウドネス正規化という。
標準規格
定義
JIS Z8106:2000 では音の大きさ(ラウドネス)を次のように定義する[32]:
音の大きさ,ラウドネス
聴覚にかかわる音の属性の一つで,小から大に至る尺度上に配列される。 — JIS Z 8106:2000
ISO 532-1:2017 では音の大きさ(ラウドネス)を次のように定義する[2]:
loudness
perceived magnitude of a sound, which depends on the acoustic properties of the sound and the specific listening conditions, as estimated by otologically normal persons — ISO 532-1:2017
関連する標準規格の項目
音の大きさに関する様々な標準規格が提案されている。以下はその一例である:
| 番号 | 名称 |
|---|---|
| Published | |
| ISO 226:2023 | Acoustics — Normal equal-loudness-level contours |
| ISO 532-1:2017 | Acoustics — Methods for calculating loudness — Part 1: Zwicker method |
| ISO 532-2:2017 | Acoustics — Methods for calculating loudness — Part 2: Moore-Glasberg method |
| JIS Z 8106:2000 | 音響用語 |
| Withdrawn | |
| ISO 226:2003 | Acoustics — Normal equal-loudness-level contours |
| ISO 226:1987 | Acoustics — Normal equal-loudness level contours |
| ISO 532:1975 | Acoustics — Method for calculating loudness level |
| ISO/R 226:1961 | Normal equal-loudness contours for pure tones
and normal threshold of hearing under free field listening conditions |