鳥取の町に小さな宿屋が開業し、1人の旅商人男性が初めての客として宿泊。ところが、深夜ふとんの中から「あにさん寒かろう」「おまえこそ寒かろう」という子供の声が聞こえてきて目を覚まし、幽霊だ!と主人に訴えた。その訴えを主人は相手にしなかったが、その後も宿泊客があるたびに同じような怪異が続き、ふとんがしゃべる声を宿屋主人も遂に聞く。ふとんを購入した古道具屋に宿屋主人が事情を訊くと次のように答えた。
そのふとんは、鳥取の町はずれにある小さな貸屋の家主から古道具屋が購入した物。その貸屋には、貧しい夫婦と2人の幼い兄弟が住んでいたが、兄弟を遺して夫婦は相次いで死去。両親が遺した家財道具・着物を兄弟は売り払いながら何とか暮らしていたが、ついに1枚の薄いふとんだけになってしまう。大寒の日、兄弟はふとんにくるまり「あにさん寒かろう」「おまえこそ寒かろう」と気遣い合う。
やがて冷酷な家主がやってきて、家賃の代わりに最後のふとんを奪い取り、兄弟を雪の中に追い出す。兄弟は行くあてもなく、少しでも雪をしのごうと、追い出された家の軒先に入って2人で抱き合いながら眠ってしまう。神様は2人の体に新しい真っ白なふとんをかけておやりになった。寒いことも怖いこともモウ感じない。しばらく後に2人の亡骸が見つかり、千手観音堂の墓地に葬られた。
兄弟を哀れに思った宿屋主人は、ふとんを寺へ持参して、かわいそうな兄弟への供養が行なわれると、ふとんがモノを言うことはなくなったという。