2030年の戦争
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気鋭の軍事研究者たちが、もし日本が戦争に巻き込まれるならばということを、最も可能性の高いシナリオで議論する内容。中国の軍備拡大、ウクライナ戦争、日本の安全保障環境、現代の戦争、2030年代に日本が巻き込まれる戦争、ミサイルが飛んで来たらどうなるかなどが議論された[2]。
2021年にアメリカとインドの軍司令官は、中国の台湾侵攻の脅威は6年以内に顕在化するとしていた。そして日本でも台湾有事が現実の脅威として議論されるようになる。本書ではこのようなことを軍事研究者2人が、ウクライナ戦争やオーストリアの国防事例を交えて対談されたものの収録である。書籍の前半では現代戦の特質や軍事力の評価やテクノロジーが作戦や戦略に及ぼす影響を分かりやすく解説して、後半では台湾有事を中心として今後のシナリオを検討して日本の課題を論じる[3]。
この書籍は著者である2人が2030年代に日本が直面しうる安全保障環境を予想するというのが主な目論見であり、予測しているのは出版時点から約10年後のことである。将来を予測するというのは極めて難しいことであり、2030年代になってみれば本書が前提としていた国際情勢は様変わりしており、中国もロシアも脅威ではなくなっているかもしれないともする。日米関係もこれまでとは全く異なっているものになっているかもしれないともする。コロナ禍を上回る感染症が猛威を振るったことから、戦争どころではない状況となっているかもしれないともする。それでも将来を予測するということは無駄なことではないとしており、それは現在の日本が置かれた状況を見つめる行為に他ならないからとする。この書籍は将来を予測するという作業を通じて、現在の日本を逆から照射しようという試みということでもある[4]。
台湾有事については、平時と有事の中間にある状態となることをきっかけとして、偶発的に衝突が発生することで引き起こされるとする。対応がしにくくなるということが原因で、台湾有事が発生するとする。計画的に武力行使をするならば準備が必要であり、このことから相手の動きを読めるために、抑止と防衛の両面からの対策を講じられるためである。偶発的な衝突というのは台本成しにリミッターが外れた状態に近いために、急速にしかも多様な形へとエスカレートする恐れがある。このような偶然的な衝突が発生する原因としては、抑止力が足りていないということがある。平時と有事の中間の状態になるということ事態が、抑止力が不十分であるということを示しているとする[5]。
戦争には軍事力の大小とは別に国家はどこまで戦争の消耗に耐えられるのかという基準があるとする。ロシアはこの意味では強い国であるとする。ウクライナ戦争が始まった時点では駄目であったが、戦争を行っているうちに次第に適応してきて上達してきているとしている。人間は負けないでさえいれば状況に適応して行くとのことで、ロシアにはこのような体力があるとする。対して日本にはこのような体力は無く、次々と投入できるだけの予備力は無く、国家が戦い続けるだけの体力は非常に小さいとする。このため徴兵制を敷くなどして戦い続ける能力があるということを見せなければ、抑止できるという信憑性が損なわれかねないとする。装備品や弾薬も充実させるべきであるとする[6]。
現在の戦争というのは分かりにくくなっているとのことであり、それはぶつかり合う戦い以外に、見えにくかったりはっきりしない戦争があるためである。サイバー攻撃や認知戦がそれであるとする。そこでは完全な有事ではないものの、相手を懐柔したり弱らせたりすることで現状を変更して、それの次のステップとして攻撃を行うとする[7]。
2025年2月10日には、この書籍が刊行されたことを記念して、著者による対談イベントが実施された。対談の内容は本書の内容と最新の国際情勢であった[8]。
脚注
- ↑ “日経プレミアシリーズ 2030年の戦争 | 政府刊行物 | 全国官報販売協同組合”. www.gov-book.or.jp. 2025年11月17日閲覧。
- ↑ 日経BOOKプラス (2025年3月18日). “<1/12新刊>『2030年の戦争(日経プレミアシリーズ)』”. 日経BOOKプラス. 2025年11月17日閲覧。
- ↑ 産経新聞 (2025年3月16日). “有事を巡る議論の視点 『2030年の戦争』小泉悠・山口亮著 <書評>評・上田篤盛(軍事アナリスト・元防衛省分析官)”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年11月17日閲覧。
- ↑ 日経BOOKプラス (2025年1月10日). “はじめに:小泉悠+山口亮『2030年の戦争(日経プレミアシリーズ)』”. 日経BOOKプラス. 2025年11月17日閲覧。
- ↑ “【軍事研究者が議論】「海保と自衛隊の連携強化は待ったなし」日本がこれからすべき戦争抑止の準備”. ダイヤモンド・オンライン (2025年5月21日). 2025年11月17日閲覧。
- ↑ 日経BOOKプラス (2025年1月14日). “小泉悠×山口亮 予備力のあるロシア、予備力のない日本”. 日経BOOKプラス. 2025年11月17日閲覧。
- ↑ “2030年の戦争 (小泉悠, 山口亮)の書評”. 起業家・経営者のためのビジネス書評ブログ! (2025年1月26日). 2025年11月17日閲覧。
- ↑ 日経BOOKプラス (2025年1月17日). “2/10 小泉悠×山口亮『2030年の戦争』刊行記念トークライブ”. 日経BOOKプラス. 2025年11月17日閲覧。