ATR (タンパク質)

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セリン/スレオニンキナーゼATR(ataxia telangiectasia and Rad3-related)は、ヒトではATR遺伝子にコードされる酵素である[5][6]FRP1(FRAP-related protein 1)という名称でも知られる。ATRはPI3K関連キナーゼ英語版(PIKK)ファミリーに属する。ATRはDNAの一本鎖切断に応答して活性化される。

記号ATR, ATR serine/threonine kinase, FCTCS, FRP1, MEC1, SCKL, SCKL1
染色体3番染色体 (ヒト)[1]
終点142,578,733 bp[1]
概要 識別子, 記号 ...
ATR
識別子
記号ATR, ATR serine/threonine kinase, FCTCS, FRP1, MEC1, SCKL, SCKL1
外部IDOMIM: 601215 MGI: 108028 HomoloGene: 96916 GeneCards: ATR
遺伝子の位置 (ヒト)
3番染色体 (ヒト)
染色体3番染色体 (ヒト)[1]
3番染色体 (ヒト)
ATR遺伝子の位置
ATR遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点142,449,007 bp[1]
終点142,578,733 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
9番染色体 (マウス)
染色体9番染色体 (マウス)[2]
9番染色体 (マウス)
ATR遺伝子の位置
ATR遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点95,739,650 bp[2]
終点95,833,834 bp[2]
遺伝子オントロジー
分子機能 トランスフェラーゼ活性
DNA結合
protein kinase activity
ヌクレオチド結合
キナーゼ活性
MutSalpha complex binding
血漿タンパク結合
MutLalpha complex binding
ATP binding
protein serine/threonine kinase activity
細胞の構成要素 PML body
ゴルジ体
核質
染色体
細胞核
生物学的プロセス interstrand cross-link repair
リン酸化
establishment of protein-containing complex localization to telomere
replicative senescence
cellular response to UV
DNA damage checkpoint signaling
positive regulation of telomerase catalytic core complex assembly
negative regulation of DNA replication
positive regulation of telomere maintenance via telomerase
protein localization to chromosome, telomeric region
多細胞個体の発生
DNA複製
peptidyl-serine phosphorylation
cellular response to gamma radiation
regulation of cellular response to heat
自己リン酸化
positive regulation of DNA damage response, signal transduction by p53 class mediator
DNA修復
establishment of RNA localization to telomere
DNA損傷刺激に対する細胞応答
telomere maintenance
regulation of signal transduction by p53 class mediator
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_001184
NM_001354579

NM_019864

RefSeq
(タンパク質)

NP_001175
NP_001341508

n/a

場所
(UCSC)
Chr 3: 142.45 – 142.58 MbChr 3: 95.74 – 95.83 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス
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機能

ATRはDNA損傷の検知に関与するセリン/スレオニン特異的プロテインキナーゼで、DNA損傷チェックポイントを活性化して細胞周期の停止を引き起こす[7]。ATRは持続的な一本鎖DNAの存在に応答して活性化される。一本鎖DNAはDNA損傷の検知や修復の際に形成される一般的な中間体であり、停止した複製フォークや、ヌクレオチド除去修復相同組換え修復などのDNA修復経路の中間体として生じる。ATRはATRIPと呼ばれるパートナータンパク質とともに機能し、RPAで覆われた一本鎖DNAを認識する[8]。ATRは活性化されるとChk1リン酸化し、細胞周期の停止へとつながるシグナル伝達カスケードを開始する。DNA損傷チェックポイントの活性化に関する役割に加えて、ATRは安定的なDNA複製のためにも機能していると考えられている[9]

ATRは、もう1つのチェックポイント活性化キナーゼであるATMと関連があり、ATMはDNAの二本鎖切断やクロマチンの破壊によって活性化される[10]

相同組換え修復

ATRを欠損したマウスの体細胞は相同組換えの頻度が低下し、染色体損傷のレベルが上昇する[11]。このことは、ATRが内因性DNA損傷の相同組換えによる修復に必要であることを示唆している。

臨床的意義

ATRの変異はセッケル症候群英語版の原因となる。セッケル症候群は稀少疾患で、疾患の特徴の一部はATMの変異を原因とする毛細血管拡張性運動失調症と共通している[12]

ATRは、familial cutaneous telangiectasia and cancer syndrome(FCTCS、家族性皮膚毛細血管拡張-癌症候群)とも関連している[13]

セッケル症候群

ヒトでは、ATR遺伝子のhypomorphic変異(遺伝子機能の部分的喪失)はセッケル症候群と関係している。セッケル症候群は常染色体劣性遺伝する疾患で、均衡性小人症、発育遅延、顕著な小頭症、歯の不正咬合、胸部の後彎によって特徴づけられる[14]。老人様または早老様顔貌もセッケル症候群の患者で頻繁にみられる[15]

加齢

成体マウスにおけるATRの発現の欠乏は、毛の白化、毛の喪失、上背部の丸み(後彎)、骨粗鬆症胸腺退縮英語版といった加齢と関係した変化をもたらす[15]。さらに、加齢に伴う組織特異的な幹細胞前駆細胞の劇的な減少、組織再生や恒常性能力の枯渇もみられる[15]。また、精子形成の早期かつ恒久的な喪失もみられるが、腫瘍リスクの有意な増加は見られない。

阻害剤

ATR/Chk1の阻害剤は、シスプラチンなどのDNA架橋薬やゲムシタビンなどのヌクレオシドアナログの効果を増強する[16][17]。ATR阻害薬を用いた最初の臨床試験がアストラゼネカによって、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、B細胞リンパ腫の患者に対して開始されており、バーテックス・ファーマシューティカルズによって進行固形腫瘍に対する臨床試験が行われている[18]。例としては、ベルゾセルチブ英語版などが挙げられる。

ショウジョウバエの有糸分裂と減数分裂

mei-41は、ショウジョウバエDrosophilaにおけるATRのオルソログである[19]。ショウジョウバエの有糸分裂では、外因的な要因によって引き起こされたDNA損傷はmei-41(ATR)に依存した相同組換え過程によって修復される。mei-41に欠陥のある変異体では、紫外線メタンスルホン酸メチルなどのDNA損傷因子への曝露による死に対して感受性が増加する[20][21]。また、mei-41の欠乏は減数分裂時の自発的な乗換えの減少を引き起こす[20]。このことは、野生型のmei-41が減数分裂時に自然発生したDNA損傷の組換え修復に利用されていることを示唆している。

相互作用

ATRは次に挙げる因子と相互作用することが示されている。

出典

関連文献

外部リンク

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