NEDD8
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NEDD8(neural precursor cell expressed, developmentally down-regulated 8)は、ヒトではNEDD8遺伝子にコードされるタンパク質である[5][6]。出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeでは、このタンパク質はRub1として知られる。このユビキチン様タンパク質は、限られた種類の細胞内タンパク質に共有結合的に付加される。この過程はNEDD化と呼ばれ、ユビキチン化と類似した過程である。ヒトのNEDD8のアミノ酸配列は、ユビキチンと60%同一である。NEDD8の既知の主要な基質はCullinタンパク質である。Cullinをサブユニットとして含むE3ユビキチンリガーゼ複合体は、CullinがNEDD化されているときにのみ活性化状態となる。このNEDD化はE2酵素をE3リガーゼ複合体へリクルートするために重要であり、ユビキチンの結合を促進する。NEDD8修飾は細胞周期の進行や細胞骨格の調節に関与していることが示唆されている。
活性化と結合
基質
除去
NEDD8を結合タンパク質から除去するプロテアーゼはいくつか知られている。UCHL1、UCHL3、USP21はNEDD8とユビキチンに対する二重特異性を有する。NEDD8特異的な除去は、SCFユビキチンリガーゼのCUL1サブユニットからNEDD8を除去するCOP9シグナロソームや、SENP8(NEDP1、DEN1)によって行われる[9]。
DNA修復における役割
DNA損傷部位へのNEDD8の蓄積は、高度に動的な過程である[7]。NEDD化は、ヌクレオチド除去修復(NER)経路のGGR(global genome repair)サブパスウェイにおいて短期間必要とされる。この過程では、紫外線照射によってDNA損傷が引き起こされた後、DDB2を含む複合体中のCUL4AがNEDD8によって活性化され、損傷除去へと進行する[10]。
NEDD化はDNA二本鎖切断の修復とも関係している[7]。非相同末端結合(NHEJ)は二本鎖切断の修復に高頻度で利用される修復経路である。この経路の第一段階はKu70/Ku80ヘテロ二量体に依存しており、DNA末端を取り囲む非常に安定なリング構造が形成される[11]。NHEJ過程が完了した場合にはKuヘテロ二量体の除去が必要であり、さもなくば転写や複製の妨げとなる。Kuヘテロ二量体はDNA損傷とNEDD化依存的にユビキチン化され、NHEJ過程の完了後にKuやその他のNHEJ関連因子の修復部位からの遊離が促進される[7]。
がん化学療法
DNA修復遺伝子のプロモーター領域の高メチル化によるサイレンシングは、がんへの進行の最初期段階の1つとなっている可能性がある。DNA修復遺伝子の転写レベルでのサイレンシングは、生殖細胞系列変異と同様に作用すると考えられている。これらいずれかの機構によるDNA修復能力の喪失はゲノム不安定性をもたらし、その細胞やその子孫細胞ががんへ進行する素因となる。最も一般的な17種類のがんにおいて、DNA修復遺伝子のエピジェネティックなサイレンシングは高頻度で生じている[12]。
上述したように、活性化されたNEDD8はNERとNEHJという2つのDNA修復経路に必要とされる。NEDD8の活性化が阻害された細胞ではNERやNHEJの欠如が引き起こされ、DNAの修復不足による損傷蓄積によって致死となる可能性がある。代替的DNA修復経路で機能する遺伝子のエピジェネティックなサイレンシングによってDNA修復不足ががん細胞で生じていた場合には、NEDD8の阻害の影響は正常細胞よりもがん細胞で大きなものとなる(合成致死性を参照)。
NEDD8の活性化を阻害する薬剤であるペボネジスタット(MLN4924)は、2015–2016年に行われた4つの第I相臨床試験で有意な治療効果が示されている。これらの臨床試験は、急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群[13]、再発/難治性多発性骨髄腫またはリンパ腫[14]、転移性メラノーマ[15]、進行性固形腫瘍[16]が対象となっている。
前臨床研究
PPARγ
PPARγはアディポジェネシスや脂肪細胞内の脂質蓄積に重要な役割を果たしている[17]。活性化されたNEDD8はPPARγを安定化し、アディポジェネシスの増大をもたらす。マウスでの実験では、NEDD8活性化阻害薬であるペボネジスタットは高脂肪食誘発性の肥満や耐糖能異常を防止した[17]。
NF-κB
NF-κBの転写活性は、核移行を阻害するタンパク質IκB(IκBαやIκBβ)との物理的相互作用によって主に調節されている。IκBαの分解はユビキチン化によって媒介されており、このユビキチン化を担うE3リガーゼはNEDD化によって制御されている。ペボネジスタットはNEDD8の活性化を阻害し、そしてIκBのユビキチン化を阻害する。その結果、NF-κBの核移行が阻害される[18]。ペボネジスタットは、NF-κBとその標的であるmiR-155に対する影響を介して、白血病細胞を移植されたマウスの生存を伸長する[18]。
大腸がん
ペボネジスタットによるNEDD8活性化阻害は、大腸がん細胞株の16/122(13%)で成長の停止やアポトーシスを誘導することが示されている。そして患者腫瘍組織移植モデルでのさらなる解析により、ペボネジスタットは低分化型高グレード粘液癌に対して有効であることが明らかにされている[19]。