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アブラゼミ

セミの一種 From Wikipedia, the free encyclopedia

アブラゼミ(油蟬、鳴蜩、学名 Graptopsaltria nigrofuscata)は、カメムシ目(半翅目)ヨコバイ亜目(同翅亜目)セミ科分類されるセミの一種。褐色の不透明な翅をもつ大型のセミである。

概要 アブラゼミ, 保全状況評価 ...
アブラゼミ
木に止まるアブラゼミ
保全状況評価
NOT EVALUATED (IUCN Red List)
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
亜綱 : 有翅昆虫亜綱 Pterygota
: カメムシ目(半翅目) Hemiptera
亜目 : ヨコバイ亜目(同翅亜目) Homoptera
上科 : セミ上科 Cicadoidea
: セミ科 Cicadidae
亜科 : セミ亜科 Cicadinae
: アブラゼミ族 Polyneurini
: アブラゼミ属 Graptopsaltria
: アブラゼミ G. nigrofuscata
学名
Graptopsaltria nigrofuscata
(Motschulsky, 1866)
和名
アブラゼミ(油蝉)
英名
Large Brown Cicada
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形態

体長は 56-60mm で、クマゼミより少し小さくミンミンゼミと同程度である。頭部胸部より幅が狭く、上から見ると頭部は丸っこい。体は黒褐色から紺色で、前胸の背中には大きな褐色の斑点が2つ並ぶ。セミの多くは透明のをもつが、アブラゼミの翅は前後とも不透明の褐色をしていて、世界でも珍しい翅全体が不透明のセミである。なお、この翅は羽化の際は不透明の白色をしている。

抜け殻はクマゼミと似ているが、ひとまわりほど小さく、全身につやがあり色がやや濃い。また、抜け殻に泥がつかないのも特徴である。

生態

セミ類は広義の草食性カメムシの仲間であり、成虫の餌は樹木にストローのような口を突き立て吸汁する。本種の場合はサクラなどのバラ科樹木を好むとされる。バッタやカマキリと並び身近にいる不完全変態の代表的な昆虫であり、蛹の段階は経ずに幼虫が羽化し、そのまま成虫になる。幼虫の食性も成虫とよく似ており、地中で樹液を吸っている。

成虫は7月から9月上旬くらいまで多く発生するが、10月や11月でもたまに鳴き声が聞こえることがある。オスがよく鳴くのは午後の日が傾いてきた時間帯から日没後の薄明までの時間帯である[1]

鳴き声は「ジー…」と鳴き始めたあと「ジジジジジ…」とも「ジリジリジリ…」とも聞こえる大声が15-20秒ほど続き「ジジジジジー…」と尻すぼみで鳴き終わる。単調で、抑揚のあるニイニイゼミと識別出来る。このセミは「夜鳴き」をすることで有名である。もともとこのセミは薄暗く湿度の比較的高い時間帯を好むため、最も盛んに発声活動をするのが夕刻時である。深夜の発声活動はその延長であるが、生息密度がある程度高い時期にしか普通は鳴かない。また、クマゼミ・ミンミンゼミ・エゾゼミも、生息密度が高い時期は夜中に鳴いていることも多い。しかし、これらのセミと比較してもアブラゼミは特に夜鳴きをしやすいセミであるため、少しでも生息密度が高くなればすぐに夜鳴きをする傾向がある。 その他様々な動物の捕食対象となっている。 例:イタチ、アライグマ、カラス等

分布

北東アジア地域の中国東北部朝鮮半島日本に分布する。日本では北海道から屋久島まで分布する。北海道では分布が拡大傾向にある[2]

人間との関わり

日本では最も身近なセミの一つである。

セミ採り

身近なセミであり、ちょうど夏休みの時期に当たることから子供の昆虫採集や昆虫標本の題材にされることが多い。夏の夕方から夜間にかけて羽化のために地上に出てきた終齢幼虫を追跡し、場合によっては捕まえて適当なところに止まらせて、羽化の様子を観察するということもよく行われる。

農業害虫

セミは特にナシやリンゴの果樹園では害虫の一種として知られている。果実に対する直接的な被害としては、袋の上からの産卵による傷害、逆に袋を掛けない場合は果実からの吸汁により商品価値を大きく低下させる[3]。幼虫や成虫が吸汁することによる樹勢低下や傷口からの病原菌侵入もあるとされている。対策として、薬剤散布や羽化のために地上に出てくる幼虫の捕殺などが効果があるとされている[4][5]

生息数の減少

一部の地域では生息数が減少しているとされ、原因として幼虫時期の湿度説、成虫の天敵増加説などが唱えられている。 アブラゼミは幼虫・成虫とも、クマゼミやミンミンゼミと比べると湿度のやや高い環境を好むという仮説がある。実際、都市化の進んだ地域ではヒートアイランド現象による乾燥化によってアブラゼミにとっては非常に生息しにくい環境となっており、乾燥に強い種類のセミが優勢となっている。つまり、東京都心部ではミンミンゼミに、大阪市など西日本太平洋側の大都市中心部ではクマゼミに置き換わっているという説もある。 また、セミは地温のみならず地中の湿度からも多大な影響を受ける。たとえば、年間にわたって湿度が比較的高い九州南部よりも、瀬戸内地方の都市部や静岡県の市街地のほうがアブラゼミの減少ペースが早い。特に静岡県では、冬の乾燥が大きな原因となっているとみられる。この現状を考慮した場合、上述の仮説は正しいということになるが、それを明確に立証する研究結果はまだ出ていない。

なお、これらは一部の地域の話であり、都内23区や都市部の市街地でもアブラゼミが最も多く生息している場所が現在でも多く、夏場の高温で知られる埼玉県内は全く減少しておらず、アブラゼミを見る機会が最も多い。

本種が都市で減少した直接の要因として野鳥による捕食が重要であることがアメリカ昆虫学会誌に報告されている[6]。アブラゼミ成虫の天敵は主に野鳥であるが、都市での捕食圧は極めて高く、ほとんどのアブラゼミが捕食される。逆にクマゼミへの捕食圧は、都市では低くなる。この差は、それぞれのセミが天敵から逃げる方法(捕食回避戦略)による。天敵に気付いたアブラゼミは周辺の樹木に隠れるので、都市など樹木が粗な環境では隠れるのに手間取り捕食されやすくなるが、クマゼミは木に隠れず飛んで逃げるので周囲の空間が開けているほど効率がよくなるためである。

上述のように、都市部においては「湿った所にアブラゼミ、乾いたところにクマゼミがいる」との説が唱えられている。これに対し京都成安高等学校教諭・米沢信道と生物部の生徒は10年間の調査を行い、「アブラゼミ、クマゼミはそれぞれ好む木、嫌いな木があり(樹種嗜好性)乾湿によってきまるものではない」と解明された。(下記外部リンク「米蝉ナール」参照)

ただし、これはあくまで京都市街地のみの研究結果にすぎず、大阪市内では上述のとおり異なった結果が出ていることに注意を要する。

種の保全状況

国際自然保護連合(IUCN)が定めるレッドリストでの評価および掲載は2025年現在まだ行われておらず、「未評価」(Not Evaluated, NE)の状態とされている。日本の環境省が定めるレッドリスト(昆虫の最新版は2015年発表、2020年最終改訂の第四次レッドリスト)にも掲載されていない[7]。都道府県作成のレッドリストでも本種を掲載するところはない[8]

一方で本種の幼虫に寄生する冬虫夏草のアブラゼミタケは京都府ほかで準絶滅危惧種などに指定されている[8]

名前

標準和名は「アブラゼミ」とされ、『日本産昆虫総目録Ⅰ』(1989)[9]、『日本昆虫目録 第4巻 準新翅類』(2016)[10]には、この名前で掲載されている。この由来は油紙を連想させるため名付けられたという説や、鳴き声が油を熱した時に撥ねる音に似ているため、「油蝉(アブラゼミ)」と名付けられた説などがある。

身近なセミで地方名も非常に多い。色に因むものでは翅の色や体色に因む赤や黒が多く、「アカゼミ」「アカ」「クロゼミ」などが見られる。形態的特徴で大きいということを示す「オオゼミ」「ダイゼミ」などもある。セミ類はトンボ類と同じく、不完全変態の昆虫の中では幼虫と成虫の見た目の差が大きく、幼虫には成虫とは違う地方名が付く。比較的広い範囲で見られるのは「ウマ」「ウシ」などである[11]

近縁種

リュウキュウアブラゼミ Graptopsaltria bimaculata Kato, 1925
成虫の体長は53-66mm。前胸の褐色部がアブラゼミより広く、後胸部も褐色である。奄美大島加計呂麻島請島与路島徳之島沖縄本島渡嘉敷島久米島に分布する。オスは「ジュクジュクジュクジーーイッ」という数秒ほどの鳴き声を繰り返す。ジュクジュクジュクと声を大きくしながら鳴き始めるが、ジーイッと突然鳴き止んでしまうように鳴き終わる。アブラゼミとはかなり異なった鳴き声である。沖縄本島では森林・低山帯ではごく普通に生息するが、市街地では生息数が少ない。

脚注

参考文献

外部リンク

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