アルダ

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アルダArda)は、J・R・R・トールキンのファンタジー作品群の多くにおいて舞台となった世界。クウェンヤで「王国(Realm)」の意。ヴァラールの一人、長上王マンウェの統べる世界であり、その王国であると言う意味で、アルダと呼ばれた。『ホビットの冒険』『指輪物語』などの舞台の地中つ国は、このアルダに存在する。

古代の地球として設定された惑星であるアルダは、イルーヴァタールによって創造された物質界エアに存在する。はじめアルダは平面の大地を持つ世界として作られ、中心には神性に近い聖なる精霊たちヴァラールの住居がおかれた。ヴァラールのうちの邪悪なものメルコールがこれを損なったとき、世界は作り変えられ、その完全な対称性は失われ、ヴァラールはヴァリノールへと移ったが、その後もまだエルフは中つ国から航海してヴァリノールに到ることができた。人間が不死を求めてヴァリノールに到ろうとしたとき、アルダは球形の大地を持つ世界に作り変えられ、ヴァリノールとその位置するアマンの大陸はアルダから取り去られたのである。

イルーヴァタールによる物質界の創造とアイヌールによるアルダの創世は、「アイヌリンダレ」(『シルマリルの物語』所収)に語られている。

エア(Eä)は、世界の始まりにおいてアイヌールが虚空に見た光景の具現化としての物質界を指すクウェンヤの名称である。このことばは、「存在する」を意味するクウェンヤ語句のアオリスト形に由来する。すなわち、「エア」とは「存在するもの」を意味する。「エア」は、唯一神エル・イルーヴァタールが世界を「〈存在する〉」ものとするために発した言葉であった[T 1]

虚空(クーマ Kúma、外なる闇)は、アルダの外側である。アルダからは「夜の扉」を介して到達することができる。ヴァラールは、怒りの戦いで敗北したメルコールを虚空へと追放した。伝説は、メルコールは世界の終末の戦いダゴール・ダゴラスに先立ってアルダに帰還すると予言している。虚空は、エアの創造以前の何も存在しなかった状態とは異なるものである[T 2]

アルダ(Arda、地球)が作られたとき、「無数の星々」はすでに存在していた[T 1]。より大きな光をもたらすため、ヴァラールはのちに中つ国に二つの灯火をつくり、それが破壊されてからはヴァリノールの二本の木を生み出した。これらの出来事がそれぞれ灯火の時代二本の木の時代のはじまりとなったが、中つ国における星々の時代は太陽がつくられるまでつづいた[T 3]。二本の木の時代にエルフがめざめる直前、ヴァルダは「新しい、より明るい」偉大な星々と星座を作った[T 4]

イルーヴァタールはアルダを平面世界の構造で作った。円盤状のアルダは大陸と海を持ち、月と星々がまわりを回った。アルダはエルフと人間のための「住まう場所」(アンバール)として作られた[1]。この世界は、ヴァラールの作った2つの灯火、すなわちイッルインとオルマルによって照らされていた。灯火を支えるため、アウレは中つ国の大陸の南北に、北のヘルカールと南のリンギルという2本の巨大な岩の柱を築いた。イッルインはヘルカールに、オルマルはリンギルにおかれた。双方の灯火の光が入り交じる円柱のあいだ、大湖の中心に浮かぶ島アルマレンにはヴァラールが住んでいた[T 5]。メルコールが灯火を破壊したとき、2つの広い内海(ヘルカールとリンギル)と2つの大海(ベレガエルと東の海)が形成されたが、アルマレンと湖は破壊された[T 4]。ヴァラールは中つ国を去って新しく西方に形成されたアマンの大陸にうつり、ヴァリノールと呼ぶ彼らの家を作った。メルコールによるアマンへの攻撃を妨げるために、彼らは中つ国の大陸を東へと動かし、あいだのベレガエルを広げ、中つ国に青の山脈、赤の山脈、灰色山脈、黄の山脈、風の山脈という5つの大規模な山脈を隆起させた。この行為の結果、大陸と海の対称的な配置は崩れることとなった[T 6]

エッカイア(Ekkaia)は包み込む大洋(Enfolding Ocean)、取り巻く海とも呼ばれ、第二紀のおわりの大変動の前の世界を囲む暗い海だった。地球が平らだったころ、エッカイアは海に浮かぶ船のようなアルダを完全に囲んで流れていた。エッカイアの上には大気の層があり、水の王ウルモはアルダの下の部分に住んでいる。エッカイアは非常に冷たく、中つ国の北西でベレガエルの海と出会うところには、氷の裂け目ヘルカラクセが形作られている。世界を周回する太陽は、エッカイアを通り抜ける際に海を熱するとされる[T 5][T 6]

イルメン(Ilmen)は第二紀末の大変動の前にあった、光に満たされた清らかな大気の領域である。星々やその他の天体はこの領域に位置する。世界をまわる月はイルメンを通り、帰り道ではイルメンの裂け目へと落ち込んでゆく[T 6]

球形の大地の時代

太陽の第二紀末、ヌーメノールの増長が究極に達したとき、イルーヴァタールはアマンをアルダから引き離し、世界を大きく変動させてヌーメノールの島を滅ぼした[T 8]。トールキンの伝説体系では、ヴァリノールを含む大陸アマンを「世界の円形から」取り除いた際に行われた、平面の世界から球状の世界への破壊的な変化を描写することで、球体の地球のパラダイムを扱っている[2]。アマンに至るただひとつ残された道は、古い「まっすぐの道」と呼ばれる中つ国の曲面を離れて空と宇宙を通る隠された経路であり、エルフたちにのみ知られ、また開かれており、彼らの船だけが航行できた[2]

この地球の平面から球状への変化は、トールキンの「アトランティス伝説」の中核でもある。ヌーメノール人は傲慢になり、不死を得たいと考えてヴァリノールに到ろうとしたが、イルーヴァタールはヌーメノールの島を滅ぼし、人間がヴァリノールにたどり着くのを永遠に防ぐために世界を作り変えた。トールキンの未完の草稿The Lost Roadでは、第一紀のエルフの神話から古典的なアトランティス神話、ゲルマン民族の大移動アングロ=サクソン人イングランド、そして現代に到るまでを結びつける歴史的継続性のアイデアの草案を示唆し、プラトンのアトランティス伝説や他の洪水伝承をヌーメノールの物語の「混乱した」説明として提案している。世界の破壊的な再形成は、人類の文化的記憶や集合的無意識、個人の遺伝子記憶にまで刷り込まれただろう。トールキンの伝説体系の「アトランティス」の部分は、物理的な世界が変容したためにもはや追憶か神話のなかにしか存在しない西方へと向かう「まっすぐの道」の記憶というテーマを探求している[T 7][2]。「アカルラベース」では、災厄を生き延びたヌーメノーレアンが遠祖の地を求めて極西へと航海したものの、ただ世界を回ってもとの出発の地に戻って来るだけに終わったと記されている[T 8]

『指輪物語』の刊行の何年も後、Athrabeth Finrod ah Andrethという物語に関するメモにおいて、トールキンはアルダを太陽系と同一視した。この時点では、アルダは複数の天体から成り、ヴァリノールは他の惑星にあり、太陽や月もまた元来の天体であるという構想を考えていたからである[5]

星々と星座

分析

References

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