エアープランツ

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エアープランツAirplants)とは、ハナアナナス属のうち、空中の水分に依存し、そのため土や根を必要とせず[1]葉から雨や空気中の水分を吸収する着生植物をいう。園芸の分野で一つのジャンルを構成している。

用語として

本属の多くの種は樹木の枝や岩石の上に着生し、生育するためのを必要としない。養分を吸収する事もできるが、もっぱら自らを固定するための機能を果たす。そのために根を切り離し、着生させずに栽培することも可能である。また一部には根を発達させず、捻れた葉で木の枝に絡まる形で着生するものや、根を下ろさずに地表に転がって生育する種もある。いずれにせよこれらの種は普通の植物のように培養土に根を下ろさせないで、例えば植物そのものをつり下げたり土台の上に転がした形で栽培出来る。これがいわゆるエアープランツである。ただし、ハナアナナスのように、他の分類群に属する一般的な地上性植物に近い性質を有し、艶のある長い葉を持ち、培養土を用いて栽培されるのが普通の種もある。またエアープランツとされる種でも水苔などの培養土で鉢植えして栽培した方が育ちのよいもの、あるいはコルク板などに着生させた方が発育のよいものもある。

石井、井上編集代表(1970)には熱帯域の1000-2000mの高地の、暖帯林から温帯林に対応する地域に生息し、樹状などに着生し、日中は日差しに晒され、夜間に霧を受けてそこから水分と養分を得て、根は付着する役割だけに特化したものを『気生植物(Air plant)』とする旨の記述があり、本属にはこれが非常に多いと記している[2]。気生植物はあまり使われていない言葉ではあるが、たとえば牧島(1986)には着生植物のうちには高度に着生に適応した結果、根からの水吸収に頼らず、葉の表面の繊維などで水や栄養を集めるようなものとしてこの語を用い、サルオガセモドキをその代表としている[3]。堀田(1997)ではハナアナナス亜科の特徴の説明でその多くの種がごく少量の水しか必要とせず、これを『エア・プラント(気生植物)』という旨の説明があり、やはり着生植物としての適応のもっとも進んだものとしている。

このように用語としては着生植物の中でも特にその方向の適応が進んで、根からの水分吸収に頼らなくなった型の植物に対する名前として使用されたものであり、しかし事実としてそれに当たるのはほぼハナアナナス属のものに使われ、現在ではそれが転じてこの属の植物そのものを指すような使用例も出ている。

園芸的なジャンル分け

園芸的に、植生に合わせて発達したの外見により、おおむね銀葉種と緑葉種と呼ばれる2群に大別されている。銀葉種は、葉の表面は粉を吹いたような灰緑色をしている。これは、その表面に鱗片(りんぺん、トリコームとも)と呼ばれる中空の特殊な毛に覆われているためで、この毛の下に雨や霧の水分を保持し、葉の表面の吸水細胞で水を吸収する。銀葉種に該当する種は、一般に乾燥した気候に適応しており、CAM型光合成の能力や厚い葉などの性質を持つ。緑葉種は、鱗片が発達せずに表面が緑色である。またボトムタイプとエアタイプという区別もあり、前者は他のアナナス類のように株の中央に水を溜める。葉は一般に薄く、多くの種では斑点や帯状の模様を有する。また、葉の根元側を中心に葉の表面にワックスが見られる種もある。 これら両者の中間的な性質を持つ、葉の一部にのみ部分的に鱗片を持つ種もある。

本属の多くの種は、茎がごく短縮されているため、外見からは根と葉しか存在しないように見え、葉は短縮された茎の先端の成長点から玉ねぎのように何層にも重なって生える構造を持つ。一部の茎の長い種は、長く伸びた茎に葉を並べてつけ、長茎種と呼ばれる。 外見的に全く異なるのはサルオガセモドキで、一見すると樹木の枝から糸くずが垂れ下がったように見えるが、これは、細いひもの様な茎と細い葉を持つものが、その細長い茎と葉によって樹木の枝や電線などに引っかかることによって樹上生活に適応したものである。強風などによって茎の一部が千切れて飛ばされると、飛ばされた先で新たに樹木の枝などに引っかかって成長を始めることにより分布を拡大する。

園芸植物として

以下の点が魅力としてあげられる。

  • 栽培に土が要らないこと。これは栽培の手軽さ、清潔さに繋がる。また、それによる生活の場での配置やアレンジが多様になる点も重要である。つまりインテリア性が高く、ディスプレイのアレンジアイテムとして見ることが出来る[4]
  • 上記にも関わるが植え替えが不要であり、また水やりも基本的には霧吹きですむなど、手間がかからず、また清潔なままに扱える[5]
  • 種類が多く、その姿が多様であること。さらに種内にも変異が見られ、コレクションアイテムとしても魅力的である[6]

このようなことからエアープランツはなどの上に転がした状態で、あるいはに入れた形でぶら下げて、またはに飾ってといった形での栽培が可能で、インテリアとして、あるいはその一部に取り込んだ形での栽培が行われ、あるいは推奨されている[7]

しかし他方でそれらのほとんどは元来は着生植物であり、それも多くは根を使って基物に付着しているものである。販売時にはその根を切り捨てた形で売られていることも多い。実際にそのままでも栽培は可能であるものが多いが、もちろん根を伸ばさせ、基物に付着させ、あるいは鉢に培養土を入れて育てることは可能であり、むしろそれによって成長がよくなるものも数多い。藤川(2013)bは栽培家の立場から「水をあげないで転がしておくだけ」は論外で、その性質に合わせた栽培が必要とし、基本的には根を張らせて栽培すべきとの論を元に記述されている。

範囲と類別

エアープランツの範囲は曖昧で、大きく取ればハナアナナス属全てを含める[8]。その場合、園芸的にはまず以下の2つに分ける。

エアータイプ
植物体表面に特殊な鱗片であるトリコームを持ち、これによって水分を吸収するもの。
タンクタイプ
葉の基部の鞘状部が水を蓄えるタンクとなっているもの。

狭義にはこのエアータイプがエアープランツである[9]。 これは更にその性質により様々に分けられる。例えば次のような区別がある。

銀葉種と緑葉種
植物体表面のトリコームが多いと白っぽく見え、これが銀葉種である。緑葉種はこれが少ないもので、そのために葉の表面が緑色に見えるものを指す[5]
ただしこの区別は明確なものではない。例えばイオナンタは全体にトリコームの多いものも葉先が広く緑色のものもあり、これを緑葉種とする例[10]も銀葉種とする例[11]もある。

主な種

  • アエラントス(キノエアナナス T. aeranthos、有茎の代表種、クランプを形成しやすい)
  • アルビダ(T. albida、有茎の代表種、乾燥と強めの日射を好む。)
  • イオナンタT.ionantha 、小型のチランジア代表種、開花前後に葉先が赤色などに染まる)
  • インターメディア(T. intermedia、肉厚の葉がカールし、花茎の途中幾つも子株を付けるヴィヴィパラ種。)
  • ウスネオイデス/スパニッシュモス/サルオガセモドキT. usneoides、ひも状の茎に細長い葉が互生する。)
  • カクティコラT. cacticola)サボテンに着生と言われ、花序が美しい種。
  • カプトメドゥーサエT. caput-medusae、壺型の代表種)
  • ガルドネリー(T. gardneri、産毛のようなトリコームが特徴)
  • キセログラフィカT. xerographica、 チランジアの王様と呼ばれる強健な中~大型種。葉先がカールしたカボチャ風の草姿)
  • コットンキャンディ(レクルビフォリアとストリクタの交配種、綺麗なピンクの花が咲きやすく、交配種としては最も普及している)
  • コルビー(T.kolbii 、別名イオナンタ・スカポーサ)
  • シーディアナ(T. schiedeana)
  • シュード・ベイレイ(T.pseud-beileyi、俗にベイレイの名前で普及流通してる葉の長いトリコームを持たない壺型タイプで乾燥に弱い。)
  • ジュンセア(T.juncea、硬い葉が長く伸びる種)
    • ジュンシフォリア('juncifolia'、ジュンセア(T.juncea)の園芸品種で、トリコームを持たない緑葉種。)
  • ストリクタ(T.stricta、群生しやすい普及種、コットンキャンディーの片親)
  • ストレプトフィラT.streptophylla、拳大に育つ壺型種。乾燥気味に育てると見た目良くカールする葉が特徴。)
  • セレリアーナ( T.seleriana、大きくなると拳大になる壺型種)
  • テクトラム(T.tectorum 、乾燥を好む銀葉種。長いトリコームが目立つ。)
  • ナナ(T. nana、薄く柔らかい葉を持つ有茎種。)
  • ハリシー(T.harrisii、銀葉の代表種)
  • パウシフォリア(T.paucifolia、別名シルシナータ、壺型種で葉が決まった方向に反る)
  • フックシー(T.fuchsii、繊細な葉を持つ普及種、草体に対して花序がとても長くなるのが特徴)
  • ブッツィーT.butzii 、水を好む壺型普及種。標高1000m以上に生息し、高温を嫌う。)
  • ブラキカウロス(T. brachycaulos、開花前後に葉が赤く紅葉するのが特徴)
  • フラベラータ(T. flabellata
  • プルイノーサ (壺型の銀葉種)
  • ブルボーサT.bulbosa 水を好む壺型普及種)
  • フンキアナ(T. funckiana、茎が連なる長茎種)
  • ベイレイ(T.beileyi、トリコームの無い、シュード・ベイレイを小型にした壺型タイプ、乾燥に弱い。)
  • ベリッキアーナ(T. velickiana、銀白色のトリコームに覆われた柔らかい葉を持つ。湿熱にやや弱い。)
  • ベルゲリー(T. bergerii、アエラントスに似るがやや小型の有茎種。耐寒性が強い。)
  • ベルティナ(T.velutina 、ブラキカウロスに良く似た種)
  • マグヌシアーナ(T.magnusiana 、柔らかく繊細な葉を持つ種)
  • メラノクラテル(T. tricolor var. melanocrater、トリコロールの変種。硬い葉が長く伸びる種)

栽培

脚注

参考文献

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