エフェメラル
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エフェメラル(英語: Ephemerality)とは、物事が移ろいやすく、少しの間しか存在できないという概念。はかなさ。
学術的に、エフェメラルという字義は様々な物事や経験、例えばデジタルのメディアから、ある種の池や小川までも表現する[1]。「『エフェメラル』に単一の意味はない」ともいわれる[2]。ひとつの事態を例として置くと、「エフェメラルは、ある事態における観客の集中度の増減に依る状態、あるいは特定の事態が帯びる郷愁に満ちた性格の反射である」ともいえる[3]。
時間の経過は人によって違って感じられるため、はかなさは相対的で、知覚にもとづく概念なのかもしれない。「簡潔に言うと、短命なのは生物ではなく、それにそそぐ私達の注意なのだ」とHughesらは主張する[4][5]。


地理的表現
「はかない」の英訳であるエフェメラル(英語: Ephemeral)は、自然科学の用語にも用いられる。
Ephemeral stream(エフェメラルな小川)といった場合、これは降雨のあとにのみ現れる小さな川を指す[7]。間欠的・季節的なものほど長くは残らない。発生は断続的かつ、水量の増減につれて外観も変わっていくので、その概念を定義するのは難しい[8][9]。さらに、地形や雨の特徴も大いに関わってくる[10]。雨季の終わりに、エフェメラルな水源は形状の変化を経る。[11] 「連続した水理的なデータが少なく、それがエフェメラルなものなのか、間欠的なものなのか判断することが必然的に難しい。」[7]とSegevらは主張する。水理学的な接続性が低いこともひとつの特徴である[12]。

小さな湿地がエフェメラルであることも多く、またその生態系はしばしば水棲である。エフェメラルな湿地、小川、池は多様で、世界中で見つかる[13][11][14]。北東アメリカにはエフェメラルな淡水生態系が豊富に存在し、森林の生物多様性維持に非常に重要であると主張される[15]。雨季、捕食、生存や食物をかけた競争が、それらの極めて異質な要素の中で起こっている[14]。
熱帯では、乾季に両生類がよくエフェメラルな生息地に住む。選択種(日和見種)も似たエフェメラルな環境を食事、睡眠、繁殖に活用する[16]。エフェメラルな池、水たまりや小川は両生類や他のたくさんの生物にとって繁殖のための非常に重要な場所になりうる[17][18]。水場は時間が経つと蒸発するため、彼らはその前に成熟し、繁殖し、死ななくてはならない[19]。オーストラリアに生息するサンドペーパーフロッグは、数日から数週間持続するエフェメラルな水場を捕食や生存競争から逃れるため、そして繁殖に利用する。なお、干上がったあとに子孫が生き残れるかは考慮されない[18]。またオタマジャクシは周りをエフェメラルな小川によって囲まれることで、エサを制限され、共食いに走る可能性が示唆される[10][14][20]。エフェメラルな水場に特定の適応をみせる種も多い[21]。エフェメラルな蜜の集まりに頼るオオコウモリは、人間による環境の変化をうけて都市へと移住した[22]。気候変動もエフェメラルな淡水の水場に影響するが、逆に水場の生態系を調べることによって気候の変化を正確に確認できる可能性が示唆されている[15][23]。
エフェメラルなパッチは、メタ個体群[24]の持続に悪い影響を及ぼすとよく推定されるが、必ずしもそうではない。というのも、これらのパッチは生息環境の入れ替わりの結果として発生するからである[25]。エフェメラルな小川は、そうでない河川に比べて生物多様性の面で劣る。また、生息する生物にとって、小川は潜在的に過酷な環境でもある。とはいえ、それでも棲む生物がいないわけではない[26]。
エフェメラルな河川は、蒸発する際侵食した窪みに水を残していくことがある。これはオーストラリアなど、非常に乾いた地域で共通して見られる[27][28]。
水系感染症の水文学的な移動において、河川ネットワークのエフェメラルな側面は特に重要なな要素である。加えて、その感染症の特徴や蔓延するエリアも大事である[29]。マラリア、デング、チクングニア、ジカ熱、住血吸虫症などは、それらの宿主が関連をもっているエフェメラルな水場でよく見つかる[30]。
エフェメラルな河川の例として、ルニ川(インド、ラジャスタン州)、ウガブ川(南部アフリカ)、そしてタラク(北ニジェール)のいくつかの小川等が挙げられることが多い。他に注目すべきものとして、トッド、サンドオーバー、ソン、バーサ、トラバンコス川(中央オーストラリア)等がある。
全ての内陸流域、及びその水量が下限に達したドライレイク(乾き切る可能性がある湖)はエフェメラルな湖と呼称される可能性がある。例としては、カーネギー湖(東オーストラリア)、コワル湖(ニューサウスウェールズ)、ミスティック及びロジャー湖(カリフォルニア)、そしてセビア湖(ユタ)など。北アメリカで最も乾き、一番海抜の低い場所、つまりデスヴァレー国立公園(より正確にはバッドウォーター盆地)にも、降雨によってエフェメラルな湖が生成された記録がある(2005年春)[31]。またCostelloe et al. (2009)によれば、オーストラリアの非常に乾いた地域にある塩湖もエフェメラルといえる[32]。
エフェメラルな「島」というのもある。海底火山のバヌア・ウーフやホーム・リーフ周辺のものがそれにあたり、これらの火山が活発になると、それらは海面を超えて現れるが、波による侵食で数年後には消えてしまう。一方バサス・ダ・インディアは、引き潮のときにのみ現れる海抜のとても低い島である。海との境界線に関していえば、ふつうの海岸もエフェメラルといえる[33]。
南部コスタリカの二次森林はほんの一部しか成熟しないが、これは彼らがそもそもエフェメラルな存在だからかもしれない[34]。落葉性の森は、その季節的な葉の変容が自然のエフェメラルのひとつ[35]。森にあるエフェメラルな水場、しばしば季節的に持続するものはバーナルプール(英語: vernal pool)としてよく知られている[15]。美しい風景は自然の、あるいは人の活動のエフェメラルな変容をふくんでいる。つまり、プラウ、干し草、稲束などである[35]。
生物学的表現
ひと季節の中で一生が完結する生物をエフェメラルな生物と呼ぶ。一年生植物、アカバナ属、ノボロギク等がその例となる。また砂漠はエフェメラルな植物がよく生育する環境である[36][37]。
アルテミアやカゲロウなどは、エフェメラルな動物と呼ばれる。また胎盤はエフェメラルな臓器であり、妊娠の際にのみ存在する。
におい、呼吸、発声、記憶はエフェメラルな性質を持ち、後者の永続性と一致する[38][39][40][41]。美術館で作品を見るとき、写真を撮るよりただしっかり見つめるというエフェメラルな行為のほうが記憶に残るという研究がある[42]。心理学者はなぜエフェメラルな行為が記憶力を向上させるのかという研究を行なってきた。社会心理学者Karl E. Scheibeが主張するところによると、エフェメラルなイメージは繰り返し思い出されることによってのみ記憶されるという[43][44]。