ガンマ関数
階乗の概念を複素数全体に拡張した特殊関数
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歴史
階乗を整数以外に拡張する試みは1720年代にベルヌーイとゴールドバッハにより検討され、1729年10月6日のベルヌーイからゴールドバッハへの手紙において、ベルヌーイは総乗記号を用いて記述することに成功している。 これは、負の整数以外の実数に対し明確に定義を与えている。
1729年にレオンハルト・オイラーは2つの異なる記述で定義を与えた。1つは負の整数以外のすべての複素数に対して無限積を用いることで定義される。この式は1729年10月13日付のゴールドバッハ宛の手紙に見られる。 さらに1730年1月8日のゴールドバッハ宛の手紙には、積分での表現を発見したことを記述している。 オイラーはさらに反射公式を含む、この関数の重要な機能的性質のいくつかを発見した。
カール・フリードリヒ・ガウスはオイラーの総積公式を次のように記述しなおした。 ガウスはこの公式を用いて乗法定理を証明し、楕円積分に関する研究につなげた。
「ガンマ関数」という名称と記号 は、1814年にルジャンドルが導入したものであり[1]、ルジャンドルはオイラーの積分による定義を現代的な形に書き直した。ガウスによるπ(総乗記号)を用いた記述は古い文献にしばしば見られるが、現代の文献ではルジャンドルの表記が主流である(ただし、 である)。
カール・ワイエルシュトラスはさらに別の記述を開発し、複素解析におけるガンマ関数の役割を確立した。 ここでγはオイラー・マスケローニ定数である。
フィリップ・J・デイヴィスは1963年のショーヴネ賞を受賞した論文でこの分野が歴史的に発展してきたこと、また今後も発展の余地が多いことを記述している。「それぞれの世代がガンマ関数について興味深いことを発見してきました。おそらく次の世代もそうするでしょう。」[2]
定義
基本的性質
または負の整数でない、かつ実部が正の任意の複素数 に対して、
となることから、 が成り立つ。またさらに、
である。これらの性質から、任意の正の整数 に対して、
より が成り立つ。その意味でガンマ関数は階乗の定義域を複素平面に拡張したものとなっている。
歴史的には、ガンマ関数は「階乗の複素数への拡張となるもの」(複素階乗)の実例として、オイラーにより考案された。階乗の複素数への拡張となる関数は無数に存在するが「正の実軸上で対数凸である解析関数」という条件を付ければ、それは一意に定まりガンマ関数に他ならない(ボーア・モレルップの定理)。
右半平面においてオイラー積分で定義されたガンマ関数は全平面に有理型に解析接続する。
ガンマ関数は零点を持たず、原点と負の整数に一位の極を持つ。その留数は、
である[4]。
また、 に対するガンマ関数の値は、ガウス積分の結果に一致する。
これより、自然数 に対して、
が成立することがわかる。ここで は二重階乗を表す。この性質を利用して高次元の球の体積と表面積を求めることができる。また、
定義の整合性
定義の積分表示と極限表示が一致することを示す。
とすれば
であるから直感的には
である。(厳密にははさみうちの原理によって証明される)t = nu の置換により
となる.nz を除く部分を gn(z) として
これにより
を得る。故に
である。
ワイエルシュトラスの乗積表示
ハンケルの積分表示

ガンマ関数は次の周回積分で表される[6]。積分経路は正の無限大から実軸の上側に沿って原点に至り、原点を正の向きに回り、実軸の下側に沿って無限大に戻るものとする。但し、その偏角はとする。
これをハンケルの積分表示と呼ぶ。このハンケルの積分表示は、積分経路を適当に変形し、数値積分でガンマ関数の値を求めるために使われることがある[7]。
ハンケルの積分表示の導出
極座標表示 を用いると、実軸の上側に沿う部分は で から まで、原点を回る部分は で から まで、実軸の下側に沿う部分は で から までとなる。
とすると で であるから
である。しかし、左辺の被積分関数は が有界であるかぎり正則であるから、左辺は複素平面全体に解析接続する。従って、
である。 とすれば、同様にして
を得る。また、相反公式により、
を得る。
スターリングの公式
相反公式
次の恒等式を相反公式(reflection formula)という[8]。
相補公式とも呼ばれる[9]。 この恒等式はオイラーの乗積表示から得られる。
この分母は正弦関数の無限乗積展開であるから、
である。相反公式にを代入すれば
となり
を得る。
ルジャンドルの倍数公式
次の恒等式をルジャンドルの倍数公式と呼ぶ。これはガウスの乗法公式の特別な場合である。
証明
ベータ関数は以下のように表される。
ここで とおくと、
とおくと
は偶関数なので
ここで
とすると
よって
よって
よって以下の式が成り立つ。
乗法公式
次の恒等式をガウスの乗法公式(multiplication formula)という。
証明
両辺の比をとすると
故に、任意に大きな自然数についてが成立する。スターリングの公式により
途中で
を適用した。
であり、故に
が成立する。

