ゲロントフォルミカ

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ゲロントフォルミカ
Gerontoformica cretacica のホロタイプ標本
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハチ目(膜翅目) Hymenoptera
亜目 : ハチ亜目(細腰亜目) Apocrita
上科 : スズメバチ上科 Vespoidea
: アリ科 Formicidae
亜科 : incertae sedis
: ゲロントフォルミカ属
Gerontoformica
学名
Gerontoformica
Nel & Perrault, 2004
タイプ種
Gerontoformica cretacica
Nel & Perrault, 2004
シノニム
  • Sphecomyrmodes
  • G. contegus
    (Barden and Grimaldi, 2014)
  • G. cretacica
    Nel & Perrault, 2004
  • G. gracilis
    (Barden and Grimaldi, 2014)
  • G. magnus
    (Barden and Grimaldi, 2014)
  • G. maraudera
    Barden and Grimaldi, 2016
  • G. occidentalis
    (Nel et al., 2008)
  • G. orientalis
    (Grimaldi and Engel, 2005)
  • G. pilosus
    (Barden and Grimaldi, 2014)
  • G. robustus
    (Barden and Grimaldi, 2014)
  • G. rugosus
    (Barden and Grimaldi, 2014)
  • G. spiralis
    (Barden and Grimaldi, 2014)
  • G. sternorhabda
    Boudinot et al., 2022
  • G. subcuspis
    (Barden and Grimaldi, 2014)
  • G. tendir
    (Barden and Grimaldi, 2014)

ゲロントフォルミカ[1]学名Gerontoformica)は、ステムグループアリに属する絶滅したアジアヨーロッパで発見された後期白亜紀化石が知られており、記載された14のを内包する。2004年にタイプ種 Gerontoformica cretacica が記載されて以降多数の種が記載されており、またその多くがジュニアシノニムの属 Sphecomyrmodes にかつて分類されていた。

ゲロントフォルミカは完全な成虫の雌のワーカーと女王からなる、30個を超過する成虫の化石標本から知られている[2]。最初に発見された化石はシャラント産琥珀の透明な塊の中にインクルージョンとして保存されていた[3]。琥珀は球果植物によるもので、中でも絶滅したケイロレピディア科 Cheirolepidiaceae あるいは現生するナンヨウスギ科天然樹脂から形成されたと考えられている。琥珀から、当時の古環境は亜熱帯から温帯気候下のマングローブ型の森林であること、また季節的な乾季を伴っていたことが示唆されている[4]。琥珀は採石場や道路建設現場・海岸露頭に露出した堆積物から発見されており、これらの産地はフランス沿岸部のシャラント=マリティーム県、特にArchingeay (en) に分布している[3]。これらの琥珀の年代は花粉分析を通して一般に約1億年前と推定されている[4][5]

記載された化石の大多数はミャンマー産琥珀から発見されており、アジア標本はミャンマー北部カチン州フーコン渓谷に分布する未特定の堆積物で発見されている[6]。ミャンマー産琥珀はウラン・鉛年代測定法により約9900万年前のものと推定されており、これは前期白亜紀アプチアン期と後期白亜紀セノマニアン期の境界に近い[6]。この琥珀は北緯5°程度の熱帯環境で形成されたことが示唆され、樹液の供給源はナンヨウスギ科あるいはヒノキ科の樹種であったことが示唆される[7]

ゲロントフォルミカ属は Nel and Perrault (2004) により Geologica Acta 誌で新属として記載された。属名 Gerontoformica はその古い年代にちなむギリシア語Gerontoアリを意味するラテン語 formica に由来する。タイプ種はシャラント産琥珀から産出した G. cretacica が指定された[3]

Grimaldi and Engel (2005) により記載されたアケボノアリ亜科英語版の新属 Sphecomyrmodes はミャンマー産琥珀から発見された化石に基づいて命名された。本属の属名は亜科のタイプ属であるアケボノアリ属(Sphecomyrma)との類似性に基づくものであった。Nel and Perrault (2004) において G. cretacica の触覚が長く伸びた柄節を持つものと解釈されていたことから、Grimaldi and Engel (2005) は Nel and Perrault (2004) に基づいて新標本をゲロントフォルミカ属に分類せず、S. orientalis をタイプ種として新属を設立した[8]。シャラント産琥珀に保存されていた2個の標本に基づいて第二の種 S. occidentalis も2008年に記載された[9]。さらにその後、Barden and Grimaldi (2014) はミャンマー産琥珀から一連の9種を記載して Sphecomyrmodes に分類した。その9種とは S. contegusS. gracilisS. magnusS. pilosusS. rubustusS. rugosusS. spiralisS. subcuspisS. tendir である。これらの種はすべてジェームズ・ジグラスの私的コレクションの化石に基づいて記載されており、またそれらのタイプ標本は古生物学者のため研究目的でアメリカ自然史博物館に貸与されたものであった[6]

Barden and Grimaldi (2016) は G. cretacica のホロタイプの再調査に基づいてゲロントフォルミカ属を再評価し、Sphecomyrmodes をゲロントフォルミカのジュニアシノニム(新参主観異名)として同定した。11種の Sphecomyrmodes の種はゲロントフォルミカ属に再分類され、また新たにミャンマー産琥珀から13番目の種である G. maraudera が記載・命名された[2]。その後 Boudinot et al. (2022) で14番目の種 G. sternorhabda が命名された[10]

行動と生態

群集

G. spiralis の頭部と額片の櫛

Barden and Grimaldi (2016) では複数のミャンマー産琥珀の標本が記載されており、ゲロントフォルミカのワーカーの集団が保存されていることが指摘されている。標本 JZC Bu1814 は G. spiralis の成虫のワーカー6匹とクビナガバチ科英語版ハチナメクジ、2種のシリアゲムシ目 Parapolycentropus 属の種の翅、ハネカクシ科コケムシ亜科英語版甲虫を含む。全てのワーカーは同時に封入され、その後しばらく樹脂が流れてワーカーの中体節を切断し、それぞれの部位を離断した状態で保存したと見られている[2]

琥珀標本 JZC Bu116はJZC Bu1814 よりも多数のアリのワーカーを保存しており、2属12匹に上る。これらのうち11匹は G. spiralisで、残る1匹は haidomyrmecineHaidomyrmex である。この琥珀が二分割された上で研磨されているため、元々の琥珀はより大型であったと見られ、12匹を上回る集団が保存されていた可能性が高い。アリとともに他の節足動物も多く保存されており、他のハチ目ハサミムシ目バッタ目ハエ目クモ綱多足類、大型ゴキブリ目がある。このゴキブリ目昆虫は4匹のアリのワーカー(うち3匹が G. spriralis、1匹が H. zigrasi)の中央に位置しており、アリの潜在的な食糧になっていたか、活発に漁られていたことが示唆されている。ただしゴキブリに対する体の向きが未特定であるため、他の8匹の G. spriralis が獲物であるゴキブリの捕殺に向かっていたかは不明である[2]

記載された3個目の琥珀標本 JZC Bu1645 は3つの異なる流れの層が保存されており、それぞれの流動イベントの間には数時間、あるいはもしかすると数日の時間間隔が存在したと見られている。1層目が最小かつ最上部に存在し、3層目が最大かつ最下部に存在する。流れの中に複数の未成熟の節足動物の遺骸に伴って腐植土の粒子が存在することから、樹脂は林床あるいはその付近に蓄積したことが示唆されている。保存された節足動物はアリ以外で20匹を超過するが、アリのみで21匹に上り、その中でもゲロントフォルミカ属の多様性が最大である。この琥珀の中には G. contegusG. orientalis および G. robustus の少なくとも3種の異なるゲロントフォルミカ属が保存されており、層の中でワーカーは3個の異なる集団に分かれている。1層目は7匹、2層目は3匹、3層目は11匹のアリの集団を保存している。最大の集団からは個体の方向を読み取ることができ、6匹のワーカーが基本的に同じ方向を向いており、残る5匹は方向を示していない[2]

大顎の長い G. orientalis

さらなる琥珀化石 JZC Bu1646 は2匹のゲロントフォルミカの闘争化石を保存している。小型である G. tendir はその大顎で右の触角を掴み、大型である G. spiralis は左の大顎と額片の櫛との間で左前肢の前跗節を掴んでいる。それぞれのアリは複数の触角の体節を喪失しており、また G. spiralis の触角の破損した先端部からは気泡が滲み出ている。この気泡は琥珀に埋没した際にワーカーが当時生存していたことを示唆する。2匹は闘争中であるのにも拘らず、現生のアリの闘争で見られる姿勢と異なり、敵を刺すために後体部を丸めている個体が見られない[2]

1個の琥珀に大規模な集団が存在することは、ゲロントフォルミカの種が祖先のハチのような単独性の動物というよりも社会的なアリであったことを示唆すると Barden and Grimaldi (2016) により解釈されている。アリにおいてコロニー間や種間の闘争は一般的であるが、これは単独の有剣類において稀である。本標本からゲロントフォルミカは社会性を持つ属であったことが示唆される[2]

触角

Taniguchi et al. (2024) は、琥珀標本JZC Bu109とBu-KL B1-21を用い、内部に保存された合計3匹の G. gracilis の微小化石を可視化した[11]G. gracilis の触角には現生のアリにも存在する湾曲毛状感覚子、錐状感覚子、毛状感覚子が観察された。現生種において湾曲毛状感覚子は警報フェロモンへ応答し、錐状感覚子は別固体の体表フェロモンを感知して同一コロニーに属するか否かの判断に寄与している。これらの感覚子の存在から、G. gracilis がこの時代ですでに社会性を確立し、フェロモンによる情報の送受信を成立させていたことが示唆されている[1]

特徴

系統

出典

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