ゲームの達人
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『ゲームの達人』(ゲームのたつじん、原題:Master of the Game)は、1982年に発表されたシドニィ・シェルダン原作の小説。また、それを原作としたテレビドラマ、映画。
シェルダンはこの作品を以って売れっ子作家の仲間入りを果たした。4部構成になっている。
序盤 「復讐編」
巨大複合企業『クルーガー・ブレンド』の老女社長、ケイト・ブラックウェルは90歳の誕生日の日、自らの死期を悟り、自らと自らの一族の奇妙な運命に思いを馳せる。「ビジネスはゲームだ。生き残るためには『ゲームの達人』にならなければならない」。果たして彼女は『ゲームの達人』であったのか? 物語は南アフリカ、ダイヤモンド・ラッシュの時代から始まる。
1880年代、スコットランド出身の16歳の青年・ジェミー・マクレガーは、アフリカでダイヤモンドが発見されたニュースを聞いて、イギリスの片田舎を出て南アフリカまで行ってダイアモンドを掘り当てる。しかし、オランダ人詐欺師サラマン・バンダミヤに騙されて、全てを失ってしまう。
そんなジェミーを救ってくれた黒人バンダと共に、2人は力を合わせて、サラマンの所有しているナミビアの鉱床からダイヤモンド原石を大量に盗む。そのダイヤを元手にジェミーは投資家になり、偽名を使ってサラマンに近付き、サラマンの娘のマーガレット・バンダミヤを妊娠させ、裏で手を回してサラマンを破産させる。一方、マーガレットはジェミーを本気で好きになり、結婚し、長男を夫と同じ名のジェミーとし、長女ケイトを出産する。
ジェミーはそのダイヤモンドを元手に会社を設立し、同業他社を買収して成長させていき、不動産や鉄道などさまざまな分野にも拡大して行く。当初、マーガレットの産んだ息子のことをジェミーは無視していたが、自分の作った会社には後継者が必要なことに気づき、息子を引き取るために、マーガレットと結婚する。
ところが鉱山で暴動が起こり、息子が誘拐されて殺害され、そのショックでジェミーは廃人同然となり、やがて亡くなってしまう。残されたマーガレットは、娘ケイトを生きる喜びとしながら、ボーア戦争の終結を経て、亡き夫の片腕であるデビッド・ブラックウェルと共にさらに会社を成長させていく。
中盤 「野望編」
ジェミーの娘のケイトは頭脳明晰だが、じゃじゃ馬で気が強く度々母マーガレットを困らせていた。そして、いつかデビッドと結婚して、2人で会社を経営することを夢見ていた。ビジネススクールを卒業したケイトは、社長に就任したある日、突然デビッドから「別の女性と結婚するため会社を辞める」と告げられる。デビッドを失いたくないケイトは、策略を巡らしてデビッドと結婚、ケイト・ブラックウェルとなる。それ以降もケイトは、会社を世界的な大企業に発展させていく。
ケイトは長男トニーを出産する。トニーは優しい子だったが、母の期待を一心に背負うあまり精神的にまいってしまい、母なしの人生を生きようと画家を志す。ケイトの夫であるデビッドは、現場の落盤事故で死亡してしまう。ケイトはゆくゆく長男に自分の会社を継いでもらうために、ドミニクというモデル美女と恋をさせたり、フランス留学をしていたトニーの個展で批評家によって才能をけなさせたりして、画家の道をあきらめさせる。
母の元で働きだしたトニーだったが、数年後にあることがきっかけで母の仕打ちを知り、距離を置くようになる。だが、ケイトはビジネスの駒として、また次期後継者としてトニーを手放そうとしない。ケイトは会社の事業拡大のため、自身が決めた女性マリアンヌとトニーを結婚させることに成功する。しかし、マリアンヌは「双子の姉妹」を出産後に亡くなってしまう。
自分の人生を弄ぶ母ケイトに対して憎しみの念を抱くトニーは、精神を喪失してしまい、母ケイトを銃で殺そうとして病院に閉じ込められる。ケイトは何とか重症から立ち直ったが、トニーはロボトミー手術によって変わり果ててしまい永久に精神病院から出られず、ケイトと孫の双子の姉妹だけが実質の会社や資産を相続することとなった。
終盤 「栄光編」
双子の姉のイブは強欲でわがままで、関心を独占したい祖母ケイトの前では猫を被っていた。やがて成長したイブは、おとなしい妹のアレクサンドラがいなければ「祖母からの愛と全財産が自分のものとなる」ことを知って、妹の殺害を企てるようになる。
イブは無類の男好きで、学生時代学校の男子の半数と関係を持っており、あまりの乱れた生活ぶりに退学となってしまう。それをすべて妹のせいにしていたが、ある日とうとうケイトの知るところとなる。激怒してイブを勘当したケイトは、二度とブラックウェル家に近づかないように宣言する。それを聞いたイブは激怒して、憎い祖母と妹に復讐することを誓う。
危険な男ジョージ・マルスと旅先で知り合ったイブは、彼にアレクサンドラを誘惑させて結婚させ、ケイトとアレクサンドラを殺害し、相続権を奪う計画を立てて実行に移そうとする。ところが、殺害実行直前になって「ケイトが勘違いからイブを許す」こととなり、逆にジョージが邪魔になり、イブがジョージを殺害する。
殺害時にジョージからの殴打によって著しく顔面を傷つけられたイブは、天才外科医キースによって奇跡的な整形手術を施される。きれいに元に戻った顔でいつものように男遊びにふけりながら、ケイトとアレクサンドラの殺害計画を考えていた。しかし、キースの独占欲のために、イブの顔は醜く整形されなおされてしまう。さえないキースを嫌っていたイブだが、逆にキースがいないと顔を治してもらえないために、従順な妻とならざるを得なくなってしまう。
ラスト
ケイトは、最後に残された曾孫である「アレクサンドラの息子」を会社の後継者にしようとするが、その曾孫は「音楽家になりたい」と言って断ってしまう。
まだまだ商才は衰えない『ゲームの達人』である、ケイトの「90歳の誕生会」が盛大に開かれたところで、物語は終わりを告げる。
登場人物(小説版)
- ケイト・ブラックウェル
- 巨大コングロマリット『クルーガー・ブレント』の女社長。旧姓:マクレガー。ジェミー・マクレガーとマーガレット(サラマン・バンダミヤの娘)の長女。
- 恵まれた容姿と並外れた賢さ、そして何より常軌を逸した意志の強さを併せ持つ。
- ジェイミー・マクレガー
- 『クルーガー・ブレンド』の初代社長。後にマーガレットとの間にジェミー(Jr.)、ケイトを授かる。
- イギリスの片田舎から、一攫千金を夢見て南アフリカにやってきた、意志が強く、勇敢だが純朴な青年。
- デビッド・ブラックウェル
- 『クルーガー・ブレント』初代社長の絶大な信頼を受ける有能な青年。のちに、ケイトと結婚する。
- トニー・ブラックウェル
- ケイトとデビッドとの息子。
- 穏やかで芸術を好むどちらかと言えば朴訥な青年。ケイトの庇護と意志により自分の描くものとは違う人生を築かされ、のちに精神崩壊への道を辿ることになる。
- イブ・ブラックウェル
- 並外れた美貌を持つ、ケイトの二人の孫娘で、トニーの双子の長女。アレクサンドラとは一卵性双生児の姉妹。
- アレクサンドラ・ブラックウェル
- 並外れた美貌を持つ、ケイトの二人の孫娘で、トニーの双子の次女。イブとは一卵性双生児の姉妹。
評価
『ゲームの達人』は ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストで初登場9位となった[1]。その後4週間にわたり1位を[2]、8週間にわたり2位を記録し[3]、合計38週間同リストにランクインした[4]。本書はニューヨーク・タイムズの記録によれば、1982年にアメリカで4番目に売れた小説となった[5]。また、本書はリテラリー・ギルドのメインセレクションに選ばれた[6]。
ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックスは、本書について「読みだしたら止まらない」と述べ、「読者に息もつかせず『次はどうなる?』と問いかけさせることのできる作家は、このレビューや、ほかのいかなる嫉妬深い批評家の助けも必要としない」と著者を称賛した[7][8]。パブリッシャーズ・ウィークリーは本書を「魅力的で引き込まれる家族のサガ」と評した[9]。一方、ロサンゼルス・タイムズ書評欄は著者を「ポットボイラー(低質な大衆向け作品)を書く天才であり、『ゲームの達人』ではこれまでの彼自身を凌駕した」と論じた[10]。また同紙は本書の性描写の不足について言及し、「単調さを紛らわせるためにほんの少しの性描写を期待していたが、性行為は奇妙で愚かなほど簡潔に描かれている」とした[10]。ニューヨーク・タイムズは異論を呈し、「もしあなたの読書の嗜好が強姦、ソドミー、同性愛、その他多くの肉体的享楽に向いているなら、ご安心を。シェルダン氏はあなたのためのものを用意している」と述べた[8]。マサチューセッツ州、ウースターの日刊紙ウースター・サンデー・テレグラムは、「本書のタイトルは著者を的確に表している。読者を引き込むベストセラーを生み出すという仕事において、シドニィ・シェルダンはまさにゲームの達人である」と評した。 USAトゥデイは、「物語の達人であり、全盛 (top of the game)にある」と著者を称賛した[7]。ヨーロッパでは、ロンドン・レビュー・オブ・ブックスが本書の主人公であるケイト・ブラックウェルについて、ジョーン・クロフォードが流行させたある種のロールモデルとして描かれている、と分析している[11]。
ロサンゼルス・タイムズは本書のレビューを「デンタルフロスの糸のすきまから落ちかかった『シュレンター[注 1]』のように、くだらない小話をいくつもゆるく繋げたものに過ぎない」と締めくくった[10]。一方、ロンドン・レビュー・オブ・ブックスは、「この物語は非常に体系だって書かれているため、まだ製作されていないにしても、いずれ間違いなくワイドスクリーンに進出することになる映画の脚本として使用できるほどである」と締めくくった[11]。
テレビドラマ『MASTER OF THE GAME』(1984年版)
- アメリカでテレビドラマとして65億円の製作費を投じて制作され、全米200局以上で放映された。
- 復讐編/野望編/栄光編の三部作であり、合計435分の大作であった。
- 日本でも1988年4月1日からテレビ朝日で放映された。
キャスト
- ケイト:ダイアン・キャノン(寺田路恵)
- トニー:ハリー・ハムリン(堀勝之祐)
- ジェミー:イアン・チャールソン(中田浩二)
- ブラッド:クリフ・デ・ヤング(中江真司)
- サラマン:ドナルド・プレザンス(田中康郎)
- デヴィッド・ブラックウェル:デヴィッド・バーニー
- ドミニク:マリアム・ダボ
- イヴ/アレクサンドラ:リアンヌ・ラングランド
- レスリー・キャロン
- マギー:シェリー・ルンギ(勝生真沙子)
- ジーン・マーシュ
スタッフ
- 監督:ケヴィン・コナー/ハーヴェイ・ハート
- 製作:ノーマン・ローズモント
- 脚本:ジョン・ネイション/ポール・ユーリック/アルヴィン・ボレッツ
- 撮影:アーサー・イベットソン/ロニー・テイラー/ジョン・コキロン
- 音楽:アレン・ファーガソン