コザック配列
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コザック配列(Kozak sequence)は、生化学者のマリリン・コザックにより発見された、真核生物のmRNAに出現する共通配列であり、主に翻訳の開始に関与している。ただし厳密な共通配列ではなく、不一致のあることも非常に多い。脊椎動物では (gcc)gccRccAUGG と表され、なかでも開始コドン (AUG) の3塩基上流のR(プリン塩基・アデニンまたはグアニン)と開始コドンの次のGが重要な役割を果たすと考えられている。リボソームが翻訳を始めるためにはコザック配列(不一致のあるものも含む)が必要であり、リボソームによって認識された部位からタンパク質の翻訳が開始される。
コザック配列は、リボソーム結合部位 (ribosomal binding site; RBS)、つまりmRNAの5'キャップや内部リボソーム導入部位 (Internal Ribosome Entry Site; IRES) とは異なるので混同しないことが肝要である。
真核生物の翻訳は、およそ以下のような手順を経て開始される。まずリボソームの小サブユニットが翻訳開始因子やメチオニンtRNAなどと結合して開始前複合体(43S複合体)が形成される。一方mRNAの5'端にあるキャップ構造が翻訳開始因子の1つであるeIF4Eに認識される。開始前複合体とeIF4複合体が会合すると、mRNAを読み取りながら5'端から3'端へと開始コドンを探す。メチオニンtRNAなどの働きで適切な開始コドンが見つかると、翻訳開始因子群が解離し代わりにリボソームの大サブユニットが小サブユニットと結合し、そこから翻訳が始まる。したがって単純に考えれば、mRNAのうち最も5'端に近いAUGの3塩基から翻訳が開始するはずである[1]。
しかし実際には常に最も5'端に近いAUGが選ばれるわけではなく、より下流のAUGから翻訳が開始することもある。これは単にメチオニンtRNAが開始コドンを認識しているだけではなく、ほかにも翻訳開始因子などが関与して翻訳開始部位を決めているためだと考えられる。コザック配列はおそらくその反映に違いないのだが、翻訳開始部位決定の詳しい仕組みはまだ明らかになっていない。
コザック配列の「強さ」
コザック配列は厳密でなく、不一致があっても翻訳を開始できる場合が多い。しかし哺乳類においては、最終的に合成されるタンパク質の量が、コザック配列の一致・不一致に影響されることが知られており、これをコザック配列の「強さ」のように表現する[2]。この「強さ」は単に不一致の量で決まっているのではなく、塩基によって重要さに差がある。AUGの3塩基は実際の開始コドンであり、タンパク質のN末端のメチオニンをコードしているため必要不可欠である。このAを起点(+1)として、5'端側から-3,-2,-1,+1,+2,+3のように部位を数える(0はない)。「強い」配列では、+4位のGと-3位のAまたはGが両方とも存在している。「妥当な」配列ではどちらか一方のみが存在し、「弱い」配列では両方とも存在しない。-1位と-2位のccは保存されていないが、コザック配列の強さに寄与している[3]。また-6位のGが翻訳開始に重要であることを示す証拠もある[4]。
こうしたKozak配列のタイプは遺伝子調節メカニズムのひとつとして進化したのだろう。Lmx1bは「弱い」Kozak配列をもつ遺伝子の一例である[5]。こうした部位から翻訳を開始する場合、リボソームが開始部位を認識するためにはさらに他の特徴がmRNA配列に必要になる。
