ゴマダラカミキリ

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ゴマダラカミキリ(胡麻斑髪切 Anoplophora malasiaca)は、コウチュウ目(鞘翅目)、カミキリムシ科に分類される甲虫の一種である。

類似種

成虫の体長は2.5 - 3.5センチメートルほどで、全身が黒い。特に前翅は光沢のある黒色に白い斑点が並目立ち、和名もこれに由来する。前翅以外の部分はあまり光沢がなく、腹側や脚は青白い細かい毛で覆われる。触角は体長の1.5倍ほどで、触角を形作る各節の根もとにも青白い毛があるため、黒と青のしま模様に見える。

日本で見られる類似種にはオオシマゴマダラカミキリ、オガサワラゴマダラカミキリ、ヨナグニゴマダラカミキリ、ツヤハダゴマダラカミキリなどがいる。ヨナグニとオガサワラは上翅の紋を見ることで区別することができ、ヨナグニは本種に比べて紋が大きく、またオガサワラは微細な紋が混じる。オオシマは紋の大きさは本種とほぼ一緒だが、色が異なり前胸部の紋を含め全体的に黄色っぽい。また、中胸腹板の形状と小たて板の毛の並びも異なる[1]

ツヤハダは本種に比べて全体に艶のある見た目である。

生態

食樹は各種広葉樹で幅広いのが特徴で『日本産カミキリムシ食樹総覧』(1960)では著者観察の食樹として、ヤナギ類、センダンスズカケノキオリーブを挙げており、文献調査ではヤナギ科バラ科クワ科ミカン科ウルシ科など多数を確認できたとしている[2]。なお、本種は生木を食べるタイプのカミキリムシである。成虫も枝を餌としやがて性成熟する。成虫に対し、食樹ではないマツ類の枝を与えると食べるものの性成熟せず、生存率も低い[3]

成虫は夏に出現する[4]。平地から山地(ブナ帯などの高標高地にも見られる)にかけて幅広く生息する。昼夜の区別なく活動し、食樹の葉や若枝のみずみずしい樹皮を後食する。食樹の樹幹、梢を歩行したり、その周囲を飛翔する姿がみられる。夜間は灯火等の光源に飛来する。

雄は雌から発せられるフェロモンを頼りに、雌を探し当て交尾に至ることが知られている。本種は多くの果樹に対する被害などからこの分野のモデルのカミキリムシとして研究されており、総説論文に辻井(2023)などがある[5]

交尾を終えたメスは生木の樹皮を大顎で傷つけ、その箇所に産卵する。主に根元付近の樹皮に産卵することが多いと書籍などでは記述されることもあるが、実際には同じ生木を食害するシロスジカミキリなどと同様に根元から1 - 2メートルの高さの幹に産卵することも多い。幼虫(テッポウムシ)は生木の材部を食害し成長する。幼虫は成長すると幹内部を降下し、主として根株の内部を食い荒らす。孵化から羽化までには1年-2年を要する。幼虫が侵入した樹木は幼虫の活動によって坑道が樹皮に達し穿孔され、木屑や樹液が出るようになる。蛹を経て羽化した成虫は木の幹に円形の穴を穿孔し、野外に脱出する。時に産卵痕や脱出痕からは樹液が染み出すことがあり、カナブンクワガタムシなどの昆虫が集まる様子も観察される。

分布

北海道から琉球列島の日本全国に分布する[6]

人間との関わり

昆虫採集

街路樹となるヤナギ類やスズカケノキで繁殖できることの他にも、比較的大型種で体色も目立つこと、成虫は夏に出現することもあって、都市部も含めてカミキリムシとしては最も身近な種類の一つである。子供の昆虫採集や昆虫標本作成の対象としてもよく親しまれている。

農林害虫

幼虫の食性が広いことから、果樹や緑化用樹木の害虫としてよく知られる。本種の食樹の中にはバラ科(リンゴ、ナシなど)、クワ科(クワ、イチジク)、ミカン科(各種柑橘類)など果樹として重要な樹木を多数含む。

幼虫が材部を掘り進むと直径1 - 2センチメートルほどの坑道ができ、木の強度が弱くなって折れやすくなる他、ダメージを負った樹木は成長不良に陥り、枯死することもある。

瀬戸内海直島では砂防用に植えられたヤシャブシに枯損被害が出ていたが、殺虫剤の地上散布によって被害がだいぶ軽減した。なお、これは下草があまり生えておらず、カミキリは地上移動が主たる移動手段だと分析しての散布だったという[4]。香川県のみかん園における調査では慣行的な殺虫剤散布にもかかわらず最大9割の木で成虫の脱出口が確認され、その多くは地際20センチメートル以内に集中した[7]

農薬による殺虫の他に、ボーベリア菌などの昆虫病原糸状菌による殺虫も研究されている[8][9]

種の保全状況

国際自然保護連合(IUCN)が作成するレッドリストでは、本種の絶滅の可能性について2025年時点で未評価(Not Evaluated, NE)としている。日本の環境省が作成するレッドリスト、都道府県が作成するレッドリストでも本種を絶滅危惧種等に指定するところはない[10]

なお、近縁種で小笠原諸島に分布していたオガサワラゴマダラカミキリは絶滅したとされている[11]

名前

脚注

関連項目

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