シュブニコフ=ド・ハース効果

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シュブニコフ=ド・ハース効果英語: Shubnikov–de Haas effect, SdH)とは、低温かつ高磁場下において物質の電気伝導率振動する現象であり、物質の持つ量子効果が巨視的に現れたものである。キャリア電子ホール)の有効質量を求めるのによく用いられ、多数キャリアと少数キャリアを区別することも可能である。1930年に発見したワンダー・ヨハネス・ダ・ハース英語版レフ・シュブニコフ英語版にちなんで名づけられた。[1]

十分な低温かつ高磁場下では、金属半金属、またはバンドギャップの小さい半導体伝導帯にある自由電子は、単純な単調和振動子のように振る舞う。磁場の大きさ B が変化すると、この振動子の振動周期も磁場に比例して変化する。[2]

このとき、電子エネルギースペクトルランダウ量子化を受け、サイクロトロンエネルギーにより隔てられたランダウ準位が編成される。これらの準位は、さらにゼーマン効果によってスピン分裂を起こす。各ランダウ準位において、サイクロトロンエネルギー、ゼーマンエネルギー、および電子の状態数 () はすべて、磁場に比例する。[3]

したがって、磁場を強くしていくと、スピン分裂したランダウ準位は高エネルギー側へと移動する。各準位がフェルミ準位を通過する際、それまで準位を占有していた電子が放出されて電流として流れる(移動可能になる)。これにより、物質の輸送特性熱力学的特性が周期的に振動し、電気伝導度の測定可能な振動として現れる。[4]

フェルミ準位を越える遷移は非常に狭いエネルギー範囲で起こるため、その波形は正弦波よりは矩形波に近いものになる。この形状は、温度が下がるほどより鋭い矩形になる。[5]

理論

一定の幅と境界をもつ試料の内部にある二次元電子ガスを考える。磁束密度の磁場下で、この系のエネルギー固有値はランダウ準位によって記述される。図1に示すように、これらの準位は縦軸に沿って等間隔に並んでいる。各エネルギー準位は試料内部ではほぼ平坦であるが、境界では仕事関数の影響で上に曲がる。

図1: 二次元電子ガスを含む試料のエッジチャネル

図1は、2つのランダウ準位の間に位置するフェルミエネルギーを示している。電子は、そのエネルギー準位がフェルミエネルギーを横切るときに移動可能になる。フェルミエネルギーが2つのランダウ準位の間にある場合、電子散乱は準位が曲がっている試料の境界でのみ発生する。対応する電子状態は一般にエッジチャネルと呼ばれる。

この試料における電子の輸送を記述するために、ランダウアー公式が用いられる。この方法では、いくつかのコンタクト()間に流れる正味の電流を計算できる。簡略化された形式では、化学ポテンシャルを持つコンタクトの正味の電流は次のように読み取れる。

(1)

ここで、電荷素量プランク定数はエッジチャネルの数[6]を表す。行列は、負に帯電した粒子(すなわち電子)がコンタクトから別のコンタクトへ透過する確率を示す。この電流は、コンタクトの電圧に、1つのエッジチャネルあたりのホール伝導率を乗じたものに等しい。

図2: シュブニコフ=ド・ハース振動を測定するためのコンタクト配置

図2は、4つのコンタクトを持つ試料を示している。試料に電流を流すために、コンタクト1と4の間に電圧が印加され、コンタクト2と3の電圧が測定される。電子が第1コンタクトを出て、コンタクト1から2へ、2から3へ、3から4へ、そして最後に4から1へと透過すると仮定する。負電荷(電子など)がコンタクト1からコンタクト2へ伝達されるときは、コンタクト2からコンタクト1への電流、コンタクト1からコンタクト3のときは、コンタクト3から2への電流、を生じさせる。このとき、理想的なコンタクトの伝達確率は以下のようになる。

ただし、それ以外は

である。これらの確率、4つのコンタクトを流れる電流 I1 ... I4、およびそれらの化学ポテンシャル μ1 ... μ4 を用いると、式 (1) は次のように書き換えられる。

電圧はコンタクト2と3の間で測定され、理想的には電圧計を流れる電流が含まれないため、I2 = I3 = 0 となる。これより次式が導かれる。

言い換えれば、化学ポテンシャル μ2μ3、およびそれぞれの電圧 μ2 / eμ3 / e は同じである。コンタクト2と3の間で電圧降下がないため、電流 I1 はコンタクト2と3の間で抵抗 RSdH がゼロとなる。

コンタクト2と3の間の抵抗がゼロであるという結果は、電子が試料のエッジチャネルにおいてのみ移動可能であることの現れである。ランダウ準位フェルミエネルギー EF に近づく場合には状況は異なり、電子のエネルギー準位がフェルミエネルギー EF に近づくにつれて移動可能になる。その結果、散乱により RSdH > 0 となる。言い換えれば、上記の手法は、フェルミエネルギー EF が二つのランダウ準位の間に位置する場合には常にゼロ抵抗を与える。

応用

電子密度の導出

シュブニコフ=ド・ハース振動は、試料の二次元電子密度を決定するために使用できる。与えられた磁束 に対して、ランダウ準位あたりのスピン S = 1/2 を持つ電子の最大数 D は以下のようになる。

(2)

磁束量子 Φ0 = h / e および磁束 Φ = BA の式を代入すると、式 (2) は次のように読み取れる。

N を単位面積あたりの最大状態数とすると、D = NA であり、

ここで、各ランダウ準位が上記の試料のエッジチャネルに対応するとする。単位面積あたり N 個の電子で満たされた i 個のエッジチャネルがある場合、単位面積あたりの全電子数 n は次のように読み取れる。

単位面積あたりの全電子数 n は、一般に試料の電子密度と呼ばれる。試料から未知の場所へ電子が消失することはないため、電子密度 n は一定である。これより以下が導かれる。

(3)
図3:高ドープBi2Se3で観測されたシュブニコフ=ド・ハース極小値に対する逆磁束密度 1/Bi のプロット

特定の試料について、関係式 (3) の右辺の電子密度 n を含むすべての因子は一定である。エッジチャネルのインデックス i に対してその磁束密度の逆数 1/Bi をプロットすると、傾きが 2e/(nh) の直線が得られる。電子電荷 eプランク定数 h は既知であるため、このプロットから試料の電子密度 n を導出できる。[7] シュブニコフ=ド・ハース振動は、高ドープされたBi2Se3で観測される。[8] 図3は、Bi2Se3試料の第10から第14極小値の逆磁束密度 1/Bi を示している。線形フィッティングから得られた 0.00618/T の傾きから、電子密度 n が得られる。

シュブニコフ=ド・ハース振動は、様々な印加磁場方向に対する振動周期を決定することにより、試料内の電子のフェルミ面をマッピングするために使用できる。

フェルミ面の極値断面積の導出

磁気振動の周期がフェルミ面の断面積に反比例するという関係は、ランダウ量子化を半古典的に扱うことで導出される。[3]

磁場 軸方向に印加されているとき、波数空間空間)における電子の運動方程式は次のように記述される。

この式から、電子は磁場に垂直な平面()内で、エネルギー等値面に沿った閉軌道を描くことがわかる。この軌道が囲む 空間での面積を とすると、ボーア=ゾンマーフェルトの量子化条件より、軌道面積は次のように量子化される。

(4)

ここで は整数(ランダウ指数)、 は位相オフセット(通常の自由電子では )である。[9]

磁場 を変化させると、量子化された各軌道の面積 が変化する。ある特定のランダウ準位 がフェルミ面の極値断面積 と一致するとき、状態密度が極大となり、電気抵抗などの物性に振動が現れる。

隣接するランダウ準位()がフェルミ面を横切る磁場をそれぞれ とすると、逆磁場の差 は次のように求められる。

これより、振動の周波数 (テスラ単位)とフェルミ面面積の関係式(オンサーガーの関係式)が得られる。

(5)

この導出により、SdH振動の周期を測定することで、波数空間におけるフェルミ面の極値断面積を直接決定できることが示される。[3]

関連する物理プロセス

注釈

参考文献

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