シロイヌナズナ属

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シロイヌナズナ属
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: アブラナ目 Brassicales
: アブラナ科 Brassicaceae
: シロイヌナズナ属 Arabidopsis
学名
Arabidopsis Heynh. in Holl & Heynh.
タイプ種
Arabidopsis thaliana L.
シノニム

Cardaminopsis (C.A.Mey.) Hayek

和名
シロイヌナズナ属

本文参照

シロイヌナズナ属(シロイヌナズナぞく、学名: Arabidopsis)は、アブラナ科の一キャベツマスタードと同じに属する小さな顕花植物である。本属には、植物の中で世界で初めて全ゲノムが解読され、モデル生物として植物学の分野で活用されるシロイヌナズナが属する。シロイヌナズナやその近縁種はよく変異が見られるため、モデル生物として有用である。

O'KaneとAl-Shehbaz[1][2]などによる形態学的・分子的系統分類に基づく分類によれば現在、シロイヌナズナ属は9種と8亜種が認められている。分類学的アプローチの違いによっては、それ以上の種を認めることもあり、例えばMarcus A. Kochらは13種9亜種とする説を主張した[3]

O'KaneとAl-Shehbazによれば以前はシロイヌナズナ属に含まれていた多くの種は多系統に由来するものであった。最新の再分類では、これまでCardaminopsis属とHylandra属に分類されていた2種とヤマハタザオ属の3種がシロイヌナズナ属に移動し、Beringia属、Crucihimalaya属、Ianhedgea属、Olimarabidopsis属、Pseudoarabidopsis属といった新しい属に移動した50種は除外されている。

シロイヌナズナ属の種は全てヨーロッパに自生しているが、そのうち2種は北米やアジアにも広く分布している。

2000年にシロイヌナズナの全ゲノム解読が終了して以降、シロイヌナズナ属の植物は植物科学における様々な研究をするためのモデル生物として、研究者たちから大きな関心を集めてきた。シロイヌナズナの遺伝学および分子生物学研究のための精選されたオンライン情報資源であるThe Arabidopsis Information Resource(TAIR)[4]や、シロイヌナズナの生物学に関する招待論文をまとめたオンライン版The Arabidopsis Book[5]など、シロイヌナズナの研究に関する情報は広く集積され、利用されてきた。ヨーロッパでは、シロイヌナズナの遺伝資源、バイオインフォマティクス、分子生物学リソース(GeneChipsを含む)は Nottingham Arabidopsis Stock Centre(NASC)が中心になって行っており、北米ではオハイオ州立大学にあるArabidopsis Biological Resource Center (ABRC) で遺伝資源を提供している。ABRCの注文システムは2001年6月にTAIRデータベースに組み込まれたが、NASCは1991年以来、独自の注文システムとゲノムブラウザを使っている。

1982年、ソ連宇宙ステーションであるサリュート7号の乗組員がシロイヌナズナを栽培し、宇宙で花を咲かせて種子を作った最初の植物となった。この時のシロイヌナズナのライフスパンは、40日間であった[6]。2019年には、学生実験の一環として、中国の月探査船・嫦娥4号によってシロイヌナズナの種子が月へ運ばれた。2022年5月現在、シロイヌナズナは月の土壌のサンプルで栽培することに成功している[7]

主な種・亜種

  • Arabidopsis arenicola (Richardson ex Hook.) Al-Shehbaz, Elven, D.F. Murray & S.I. Warwickグリーンランドカナダラブラドール地方ヌナブト準州ケベック州オンタリオ州マニトバ州サスカチュワン州
  • Arabidopsis arenosa (L.) Lawalrée
    • A. arenosa subsp. arenosa (ヨーロッパ:オーストリア、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、フランス北東部、ドイツ、ハンガリー、イタリア北部、ラトビア、リトアニア、マケドニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スイス、ウクライナで自生;ベルギー、デンマーク、エストニア、フィンランド、オランダ、ノルウェー、ロシアと西シベリア、スウェーデンでは帰化;アルバニア、ギリシャ、イタリア中部・南部、トルコには存在しない)
    • A. arenosa subsp. borbasii(ベルギー東部、チェコ、フランス北東部、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スイス、ウクライナに生息)
  • Arabidopsis cebennensis (D.C.)(フランス南東部)
  • Arabidopsis croatica (Schott)ボスニア, クロアチア
  • Arabidopsis halleri (L.)
    • A. halleri subsp. halleri(オーストリア、クロアチア、チェコ、ドイツ、イタリア北部・中部、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スイス、ウクライナ南部に生息。フランス北部にも持ち込まれたとされており、ベルギーでは絶滅している。)
    • A. halleri subsp. ovirensis (Wulfen)(アルバニア、オーストリア、イタリア北東部、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、ウクライナ南西部、旧ユーゴスラビア)
    • A. halleri subsp. gemmifera (Matsumura)(極東ロシア、中国北東部、韓国、日本、台湾)
      • A. halleri subsp. gemmifera var. coronata (Nakai)マルバハタザオ
      • A. halleri subsp. gemmifera var. senanensis (Matsum.)ハクサンハタザオ
      • A. halleri subsp. gemmifera var. umezawana (Kadota)リシリハタザオ
  • A. kamchatica (DC.)K.Shimizu et Kudoh
    • A. kamchatica subsp. kamchaticaミヤマハタザオ(アラスカ北部、カナダ(ユーコン準州、マッケンジー地区、ブリティッシュコロンビア州、サスカチュワン州北部)、アリューシャン列島、シベリア東部、極東ロシア、韓国、中国北部、日本、台湾)
    • A. kamchatica subsp. kawasakiana (Makino) K.Shimizu et Kudoh タチスズシロソウ
  • Arabidopsis lyrata (L.) O'Kane & Al-Shehbaz
    • A. lyrata subsp. lyrata(ヨーロッパロシア北東部、アラスカ、カナダ(オンタリオ州西部からブリティッシュコロンビア州にかけて)、アメリカ南東部・中部(バーモント州からジョージア州北部、ミシシッピ州からミズーリ州・ミネソタ州北部にかけて))
    • A. lyrata subsp. petraea (Linnaeus) O'Kane & Al-Shehbaz(オーストリア、チェコ、イングランド、ドイツ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア北部、ノルウェー、ロシア(北東部、シベリア、極東ロシア)、スコットランド、スウェーデン、ウクライナ、北アメリカ北部(アラスカ、ユーコン準州)に生息。ポーランドでは絶滅したとされる)
  • Arabidopsis neglecta (Schultes)カルパティア山脈(ポーランド、ルーマニア、スロバキアとウクライナの隣接地域))
  • Arabidopsis pedemontana (Boiss.)(イタリア北西部に生息。隣接するスイス南西部では絶滅したとされる)
  • Arabidopsis suecica (Fries) Norrlin, Meddel.フェノスカンジア、バルト海沿岸)
  • Arabidopsis thaliana (L.) Heynh.シロイヌナズナ(原産地はヨーロッパから中央アジアのほぼ全域だが、現在は世界中に帰化している)

過去の分類

以下の種は、以前はシロイヌナズナ属に分類されていたものの、現在では別の属に含まれると考えられている。

  • A. bactrianaDielsiocharis bactriana
  • A. brevicaulisCrucihimalaya himalaica
  • A. bursifoliaBeringia bursifolia
  • A. campestrisCrucihimalaya wallichii
  • A. dentataMurbeckiella pinnatifida
  • A. drassiana
  • A. erysimoidesErysimum hedgeanum
  • A. eseptataOlimarabidopsis umbrosa
  • A. gamosepalaNeotorularia gamosepala
  • A. glaucaThellungiella salsuginea
  • A. griffithianaOlimarabidopsis pumila
  • A. himalaicaCrucihimalaya himalaica
  • A. huetiiMurbeckiella huetii
  • A. kneuckeriCrucihimalaya kneuckeri
  • A. korshinskyiOlimarabidopsis cabulica
  • A. lasiocarpaCrucihimalaya lasiocarpa
  • A. minutifloraIanhedgea minutiflora
  • A. mollisBeringia bursifolia
  • A. mollissimaCrucihimalaya mollissima
  • A. monachorumCrucihimalaya lasiocarpa
  • A. mongolicaCrucihimalaya mongolica
  • A. multicaulisArabis tibetica
  • A. novae-anglicaeNeotorularia humilis
  • A. nudaDrabopsis nuda
  • A. ovczinnikoviiCrucihimalaya mollissima
  • A. parvulaThellungiella parvula
  • A. pinnatifidaMurbeckiella pinnatifida
  • A. pumilaOlimarabidopsis pumila
  • A. qiranicaSisymbriopsis mollipila
  • A. richardsoniiNeotorularia humilis
  • A. russelianaCrucihimalaya wallichii
  • A. salsugineumEutrema salsugineum
  • A. sarbalicaCrucihimalaya wallichii
  • A. schimperiRobeschia schimperi
  • A. stenocarpaBeringia bursifolia
  • A. stewartianaOlimarabidopsis pumila
  • A. strictaCrucihimalaya stricta
  • A. taraxacifoliaCrucihimalaya wallichii
  • A. tenuisiliquaArabis tenuisiliqua
  • A. tibeticaCrucihimalaya himalaica
  • A. tibeticaArabis tibetica
  • A. toxophyllaPseudoarabidopsis toxophylla
  • A. trichocarpaNeotorularia humilis
  • A. trichopodaBeringia bursifolia
  • A. tschuktschorumBeringia bursifolia
  • A. tuemurnicaNeotorularia humilis
  • A. vernaDrabopsis nuda
  • A. virgataBeringia bursifolia
  • A. wallichiiCrucihimalaya wallichii
  • A. yadungensis

染色体数

細胞遺伝学的解析により、シロイヌナズナ属植物の一倍体染色体数(n)は、種によって異なることが示されている[8]。シロイヌナズナはn = 5であり[9]、そのDNA配列は2001年に完成した。A. lyratan = 8であるが、一部の亜種や個体群は4倍体である[10]A. arenosaは様々な亜種がn = 8であるが、2倍体または4倍体の場合もある。バルカン半島、中央ヨーロッパ東部、バルト海沿岸では2倍体、アルプス、カルパチア、中央・北ヨーロッパでは4倍体が見られることが報告されている[11][12]A. suecican = 13で、A. thalianan = 5)とA. arenosan = 8)との二倍体との交雑で生じた両倍体の種である[13]A. neglectan = 8であり、A. halleriの亜種も同様である[11]。2005年現在、A. cebennensisA. croaticaA. pedemontanaは解析されていない。

自家不和合性

脚注

参考文献

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