ジェゼベルの死

From Wikipedia, the free encyclopedia

ジェゼベルの死』(ジェゼベルのし、原題:Death of Jezebel)は、クリスチアナ・ブランド1948年に発表した推理小説

本作は、『緑は危険』『はなれわざ』に並ぶ作者の代表作で、1985年東西ミステリーベスト100で90位[注 1]2012年東西ミステリーベスト100で24位[注 2]に選出されている。『緑は危険』と『はなれわざ』などの探偵役のコックリル警部と、『ハイヒールの死』『暗闇の薔薇』の探偵役のチャールズワース警部が登場する[注 3]

イギリスに先立ち1948年にアメリカでドッド・ミード社英語版から初めて出版された。イギリスでは1949年にボドリー・ヘッド社英語版によって出版された[1]

本作は、カーチェスタトンも蒼くなるような悪魔的な発想のトリックとプロットが有機的に結びついた作品で、クイーンを彷彿とさせる巧妙な伏線やはめ絵パズルにたとえられる解決のサスペンス、カー風の謎とトリック、クリスティーばりのレッドへリング操作と合わせた、黄金時代のミステリの粋を集めた観のある作品である[2]

ジェゼベルは、本作の登場人物イゼベル・ドルーのあだ名である。旧約聖書列王記に登場する古代イスラエルの王妃の名前で、ヘブライ語表記のイゼベル新約聖書ヨハネの黙示録』に「淫婦」として記されている[3]

日本においては、特に山口雅也が1978年の『ミステリ・マガジン』におけるエッセイで『ジェゼベルの死』を「カーやチェスタトンも蒼くなるような悪魔的な大胆さを」もったトリックと絶賛した[4]ことで高く評価されるようになり、文芸春秋社が実施した「東西ミステリーベスト100」では1985年の時点で90位を獲得、さらに2012年版では24位にまで上がった。日本での高い評価とは裏腹に、欧米ではブランドの推理小説としてはそれほど高い人気ではなく、ブランドの短篇集『招かれざる客たちのビュッフェ』の編者ロバート・E・ブライニーは、序論において『緑は危険』を「クリスチアナ・ブランドの最高傑作という折り紙がつき、他の作品を推す人々にも古典と認められている」と評価し、『はなれわざ』は「タイトルを裏切らない」と高評価する一方で『ジェゼベルの死』は無視している[5]。そのためか欧米においては長年に渡って絶版状態が続いた。特に1949年にフランス語訳された際には、本作での大胆な「密室殺人」トリックがフランス語翻訳者から理解されず、全く異なる平凡なトリックへと改悪されたと言われている[6][7]。その後1992年にフランスのファイヤール社フランス語版から復刊された際も抄訳かつ小部数の刊行であり、これらの事情によりフランスでは本作への過小評価がいまだに続いている[8]。英米においては長らく入手困難が続き古書価格が高騰していたが[9]、アメリカでは2013年に推理小説専門の小規模出版社ミステリアス・プレス社英語版から復刊され、イギリスでは2022年に大英図書館出版部から復刊された。

あらすじ

1940年、青年将校ジョニイ・ワイズは、恋人パーペチュア・カークのアール・アンダーソンとの裏切り行為を目の当たりにし、ショックのあまり自殺した。原因を作ったのはパーペチュアが飲みなれないジンをしこたま飲ませたイゼベル・ドルーと、パーペチュアに首ったけのアンダーソンだった。 時は変わって戦後の1947年。ジョニイ・ワイズの友人のブライアン・ブライアンとスーザン・ベッチレイは、パーペチュアの地獄落ちを願っていた。イゼベルは中年に差し掛かってもなお豊満な肉体を誇り、男に寄生しながら生活していた。一方、パーペチュアは抜け殻のようになって周りに流されるまま生きていた。

イゼベルはアンダーソンらとともに<帰還軍人のためのモデル・ハウス展>でページェント「英国の凱旋勇士」に参加することになる。白騎士がブライアン、赤騎士がアンダーソン、青騎士がパーペチュアに恋するジョージ・エクスマウスで、騎士たちの馬術が披露された後に、塔のバルコニーに姿を現す女王がイゼベルの役どころである。ところが、事前練習のあとでイゼベル、アンダーソン、パーペチュアの3人に「おまえは殺されるのだ」という殺人予告状が届いた。

一方、北ケントにいた頃のパーペチュアを知っているコックリル警部は、たまたま会議でロンドンに来ていた折に彼女から脅迫状のことを知らされる。そして、会場のエリージアン・ホールを訪れ一同に紹介された後、パーペチュアを家まで送る途中、ポケットに「イゼベル、パーペチュア、アンダーソン - この中の誰が一番先に殺られるか」というコックリル警部あての挑戦状が入っていることに気付く。

そして、舞台の初日、コックリル警部が客席から気づかわし気に見守る中、観客と騎士たちが見上げた塔のバルコニーに進み出たイゼベルの体が前にのめり、そのまま15フィート下の舞台へ落下して死んでいた。スコットランドヤード捜査課のチャールズワース警部の指揮のもと、死因は手を使っての絞殺で、落下直前に死んでいたということが判明した。しかし、舞台の表では何千という観客、塔へ通じる控室にはイゼベルと騎士たち以外は入れず、その騎士たちは全員舞台へ出ていた。しかも、控室の裏の扉の前にベッチレイが張り番をしており、騎士たちが全員控室に入ってからは誰も出入りした者はいないと証言した。さらに、アンダーソンが姿を消し、パーペチュアは何者かにマントを被せられて縛られた状態で楽屋の一つに閉じ込められていた。

翌朝、パーペチュアに「次はおまえだ」という手紙が届けられた。さらに、失踪中のアンダーソンが犯人だと主張するチャールズワース警部を嘲笑するかのように、パーペチュア宛にアンダーソンの生首が届けられた。

登場人物

脚注

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI