ジルバル語

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話される国 クイーンズランド州北東部
民族 ジルバル、Ngajanji、Mamu、Gulngai、Djiru、Girramay
話者数 24 (2021年国勢調査)[1]
言語系統
パマ・ニュンガン語族
ジルバル語
話される国 クイーンズランド州北東部
民族 ジルバル、Ngajanji、Mamu、Gulngai、Djiru、Girramay
話者数 24 (2021年国勢調査)[1]
言語系統
パマ・ニュンガン語族
方言
Jirrbal
Mamu
Girramay
Gulngay
Djirru
Ngadjan
Walmalbarra[2]
言語コード
ISO 639-3 dbl
Glottolog dyir1250[3]
歴史的な使用地域
消滅危険度評価
Severely endangered (Moseley 2010)
 
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ジルバル語(英語: Dyirbal、[ˈɜːrbəl] JUR-bəl;[4] Djirubalとも表記される)は、クイーンズランド州北東部でジルバル族英語版によって話されているオーストラリア・アボリジニの言語である。オーストラリア統計局によれば、2016年時点での話者数は8人であり[5]、2021年には24人であった[1]パマ・ニュンガン語族の小さな下位グループであるジルバル語群英語版に属する。多くの際立った特徴を持っており、言語学者の間ではよく知られた言語である。

1972年にロバート・ディクソン英語版によるジルバル語文法が出版されて以来、ジルバル語は若い世代が学習しなくなったため、着実に消滅へと近づいている[6]

ジルバル語の方言を話す多くの異なる集団が存在する。研究者ロバート・ディクソンは、最盛期のジルバル語には10の方言があったと推定している[7]

方言には以下が含まれる[8][9]

  • Dyirbal(または Jirrbal[9]):Dyirbalŋanによって話される[8]
  • Mamu:Waɽibara、Dulgubara、Bagiɽgabara、Dyiɽibara、Mandubaraによって話される[8](個々の集団によって話される、Warribara MamuやDulgubara Mamuといった異なるタイプのマム方言も存在する[9])。
  • Giramay(または Girramay[9]):Giramayganによって話される[8]
  • Gulŋay(または Gulngay[9]):Malanbaraによって話される[8]
  • Djiru(または Djirru[9]):Dyirubagalaによって話される[8]
  • Ngadyan(または Ngadjan[9]):Ngadyiandyiによって話される[8]
  • Walmalbarra[9]

これらの方言の話者たちは、自分たちの方言をそれぞれ異なる言語であると見なしていることが多い。これらを方言として分類したのは研究者のロバート・ディクソンであり、言語学的基準と類似性(いくつかの方言は語彙の90%を共有している)に基づいて分類を行った。話者たちからは異なる言語と見なされていたため、この言語全体を指す正式な名称は存在しなかった。そこでディクソンは、調査当時最も話者数が多かった方言であるジルバル(Jirrbal)にちなんで、この言語に「ジルバル(Dyirbal)」という名称を割り当てた[7]

周辺言語

多くのジルバル方言に隣接する言語には以下がある[7]

音韻論

子音

ジルバル語の閉鎖音鼻音調音部位は4つのみであり、これは他の多くのオーストラリア・アボリジニ諸語が5つまたは6つの調音部位を持つのとは対照的である。これはジルバル語が、これらの諸語に典型的な歯音/歯茎音/そり舌音の区別を欠いているためである。大半のオーストラリア諸語と同様に、有声音(b, d, gなど)と無声音(対応するp, t, kなど)の区別を行わない(有声性は弁別的特徴ではない)。標準的なジルバル語の正書法では、閉鎖音の表記に有声音の文字が使用される。これは、英語などの帯気音(p, t, k)との混同を避けるためであり、実際の音価としても無気音または半有声化して発音されることが多いためである。

Peripheral英語版 舌端音 (Laminal) 舌尖音 (Apical)
両唇音 軟口蓋音 硬口蓋音 歯茎音 そり舌音
破裂音 pkct
鼻音 mŋɲn
ふるえ音 r
接近音 wjlɻ

母音

ジルバル語の母音体系はオーストラリア諸語に典型的で、/i//a//u/の3母音体系である。ただし、/u/は特定の環境では[o]として実現され、/a/もまた音素が現れる環境に応じて[e]として実現されることがある。したがって、実際の音の目録は、音素の目録が示唆するものよりも大きい。アクセントは常に語の最初の音節に置かれ、通常はそれに続く奇数番目の音節にも置かれるが、語末音節英語版は常に無アクセントとなる。この結果、アクセントのある音節が連続することはない。

文法

この言語は名詞クラス(合計4つ)の体系で最もよく知られている。これらは以下の意味論的境界線に沿って分類される傾向がある。

  • I – 最も生物的な対象、男性
  • II – 女性、暴力、および例外的な動物[10]
  • III – 食用の果実野菜
  • IV – その他(最初の3つに分類できないものを含む)

「女性(feminine)」とラベル付けされることの多いクラス(II)は、ジョージ・レイコフの著書『女性、火、危険なもの』(原題:Women, Fire, and Dangerous Things)のタイトルの着想源となった。一部の言語学者は、このような分類体系と、例えば多くのインド・ヨーロッパ語に見られるような「女性」「男性」(場合によっては「中性」)のカテゴリーへの項目の文法性とを区別している。

ジルバル語は分裂能格制を示している。一人称または二人称代名詞を含む文では、主格-対格言語を模倣したパターンで動詞項標示が行われる。すなわち、一人称または二人称代名詞は、主語である場合(動詞の他動性に関わらず)は最も無標な格で現れ、直接目的語である場合は最も有標な格で現れる。したがって、ジルバル語は一人称と二人称においては形態論的に対格型であるが、それ以外では形態論的に能格型である。そして、統語的には常に能格型である。

文例[11]
a. ŋumabanaga-ɲu
父+絶対格帰る-非未来
「父が帰った」
b. yabubanaga-ɲu
母+絶対格帰る-非未来
「母が帰った」
c. ŋumayabu-ŋgubura-n
父+絶対格母-能格見る-非未来
「母が父を見た」
d. yabuŋuma-ŋgubura-n
母+絶対格父-能格見る-非未来
「父が母を見た」
e. ŋumabanaga-ɲuyabu-ŋgubura-n
父+絶対格帰る-非未来母-能格見る-非未来
「父が帰って母が彼を見た」
f. ŋumayabu-ŋgubura-nbanaga-ɲu
父+絶対格母-能格見る-非未来帰る-非未来
「母が父を見て彼が帰った」
g. ŋumabural-ŋa-ɲuyabu-gu
父+絶対格見る-逆受動態-非未来母-与格
「父が母を見た」
h. ŋumabanaga-ɲubural-ŋa-ɲuyabu-gu
父+絶対格帰る-非未来見る-逆受動態-非未来母-与格
「父が帰って彼が母を見た」
i. ŋumabural-ŋa-ɲuyabu-gubanaga-ɲu
父+絶対格見る-逆受動態-非未来母-与格帰る-非未来
「父が母を見て彼が帰った」
j ŋanabanaga-ɲu
私たち+主格帰る-非未来
「私たちが帰った」
k ɲurrabanaga-ɲu
あなたたち+主格帰る-非未来
「あなたたちが帰った」
l ɲurraŋana-nabura-n
あなたたち+主格私たち+対格見る-非未来
「あなたたちが私たちを見た」
m ŋanaɲurra-nabura-n
私たち+主格あなたたち+対格見る-非未来
「私たちがあなたたちを見た」
n ŋanabanaga-ɲuɲurrabura-n
私たち+主格帰る-非未来あなたたち+主格見る-非未来
「私たちが帰ってあなたたちが私たちを見た」
o ɲurraŋana-nabura-nbanaga-ɲu
あなたたち+主格私たち+対格見る-非未来帰る-非未来
「あなたたちが私たちを見て私たちは帰った」
p ŋanabural-ŋa-ɲuɲurra-ngu
私たち+主格見る-逆受動態-非未来あなたたち-与格
「私たちがあなたたちを見た」
q ŋanabanaga-ɲubural-ŋa-ɲuɲurra-ngu
私たち+主格帰る-非未来見る-逆受動態-非未来あなたたち-与格
「私たちが帰って私たちがあなたたちを見た」
r ŋanabural-ŋa-ɲuɲurra-ngubanaga-ɲu
私たち+主格見る-逆受動態-非未来あなたたち-与格帰る-非未来
「私たちはあなたたちを見て私たちが帰った」

タブー

かつてジルバル文化には、非常に複雑な「タブー」体系が存在した。話者は、自身の義母(姑)、義理の子供(婿/嫁)、父方の姉妹(叔母)の子、または母方の兄弟(叔父)の子と話すことを完全に禁じられており、これらの人々に近づいたり直視したりすることも禁じられていた[12]。話者は、異性の交叉いとこと話すことを禁じられていた。これは、それらの親族が結婚相手を選ばなければならないセクション(区分)に属しているものの、配偶者として選ぶには血縁が近すぎるためであり、この回避行動は誰が性的に利用不可能かを示す根拠に基づいていた可能性がある[12]

さらに、結婚は通常、一世代上または下の世代で行われたため、異性の交叉いとこはしばしば潜在的な義母または義父となりうる存在であった[13]。加えて、タブーとされる親族が聞こえる範囲にいる場合、人は特殊で複雑な言語形式を使用する必要があった。この形式は、本質的に同じ音素文法を持っていたが、母方および父方の祖父母を指す4つの語彙項目を除いて、標準語とは単語を共有しない語彙を持っていた[14]

このタブー関係は相互的なものであった。したがって、個人が自身の義母と話すことは許されておらず、同様に義母が義理の息子(婿)に話しかけることもタブーであった[12]。この関係は両性間で一般的であり、義理の娘(嫁)が義父に直接話しかけたり近づいたりすることは禁じられ、その逆も同様であった。このタブーは同性のメンバー間でも存在したが(強制力は弱かった)、男性個人は義父の面前では敬意を表すスピーチ形式を使用すべきとされた一方で、義父の側は義理の息子の面前で日常的なスピーチ形式を使うか敬意を表す形式を使うかを決めることができた[12]

タブーとされる親族の面前で使用される特殊で複雑な言語形式はDyalŋuyと呼ばれ、その他のあらゆる状況で使用される形式は多くの方言でGuwalと呼ばれていた[12]。Dyalŋuyの語彙項目数は日常語の4分の1程度であり、タブーとされる親族の面前での実際のコミュニケーションにおける意味内容は減少した[15]。例えば、Dyalŋuyで「尋ねる」という動詞は baŋarrmba-l である。Guwalでは、「尋ねる」は ŋanba-l、「誰かを招待する」は yumba-l、「誰かを同行するように誘う」は bunma-l、「既に言われているのに尋ね続ける」は gunji-y である。Guwalの他の3つの動詞に対応する語はDyalŋuyには存在しない[14]

この制限を回避するために、ジルバル語の話者は多くの統語的・意味論的トリックを使い、最小限の語彙でやりくりしている。これは言語学者に対し、ジルバル語の意味論的性質について多くを明らかにしている。例えば、Guwalは語彙的な使役を利用しており、bana- 壊す.他動 と gaynyja- 壊れる.非他動 のようなペアがある。これは英語の "He broke the glass"(他動詞)対 "The glass broke"(自動詞)に似ている。ジルバル語(Dyalŋuy)は語彙素が少ないため、-rri- という形態素を自動詞化の派生接尾辞として使用する。したがって、上記の2語に対応するDyalŋuyの等価語は、他動詞の yuwa と自動詞の yuwa-rri- となる[16]

Dyalŋuyに見られる語彙項目は、主に3つの源泉から派生している。「近隣の方言や言語の日常的なレジスターからの借用、その言語自身の日常形式の語彙素を音韻的に変形させることによる新しいDyalŋuy形式の作成、そして近隣の言語や方言のDyalŋuy形式に既に存在していた用語の借用」である[17]

方言間の借用の一例として、Yidin方言とNgadyan方言における「太陽」の語がある。Yidin方言では、Guwal形式の「太陽」の語は [buŋan] であり、この同じ単語がNgadyan方言における「太陽」のDyalŋuy形式となっていた[12]。ジルバル部族の子供たちは、彼らの面前でDyalŋuyを話す交叉いとこから日常会話形式を習得した数年後に、Dyalŋuyのスピーチ形式を習得することを期待されていたという仮説がある。思春期が始まる頃には、子供はおそらくDyalŋuyを流暢に話し、適切な文脈で使用することができたと考えられる[13]。一般に義母語英語版(mother-in-law languages)と呼ばれるこの現象は、オーストラリア先住民の言語において一般的であった。これは、タブー体系が廃れ始めた1930年頃まで存在していた。

若年層のジルバル語

1970年代、Girramayの話者たちは、オーストラリア連邦政府の支援を受けてMurray Upperの土地を購入し、コミュニティを形成した。このコミュニティ内で言語の移行(language shift)が起こり始め、それに伴い研究者アネット・シュミット(Annette Schmidt)が「ヤング・ジルバル(Young Dyirbal)」または「YD」と呼ぶ新しい形態のジルバル語が出現した。この言語は「伝統的ジルバル(Traditional Dyirbal)」または「TD」とは対照的な位置にある[18]

ヤング・ジルバルは伝統的ジルバルとは文法的に異なっており、いくつかの点では英語に類似している。例えば、伝統的ジルバルに見られるような能格の屈折が徐々に失われ、英語に見られるような屈折形式が好まれるようになっている[18]

注釈

参考文献

外部リンク

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