トム・オターネス
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トム・オターネス Tom Otterness | |
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2008年撮影 | |
| 生誕 |
1952年(73 - 74歳) |
| 著名な実績 | 彫刻 |
| 代表作 | 「The Real World」(1992年)「Life Underground」(2004年) |
トム・オターネス(Tom Otterness、1952年 - )は、アメリカの彫刻家。特に公共空間におけるパブリックアートのブロンズ彫刻で知られる。
代表作としてニューヨークのバッテリー・パーク・シティ内に「The Real World」(1992年)、14丁目/8番街駅の構内に100体以上の彫刻からなる「Life Underground」(2004年)がある[1]。
ニューヨーク・タイムズのアート担当記者であったケン・ジョンソン(Ken Johnson)は、トム・オターネスを「世界最高の公共彫刻家」と評した[2]。
カンザス州ウィチタで生まれる[3]。父親は、ウィチタの航空機製造工場で働いていた[3][注釈 1]。両親から直接美術教育を受けることはなかったが、家にはフィンセント・ファン・ゴッホやフランシスコ・デ・ゴヤの複製画が飾られている環境だった[3]。
1970年、ニューヨークに単身で出て、奨学金を得てアート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークに入学した[3]。この頃、オターネスは画家志望であった[3]。1973年、ホイットニー美術館のISP(Independent Study Program)に選ばれた。これは1年間の奨学金とアトリエスペースを提供し、アーティストとして自立するためのプログラムであった。また同時期にアメリカ自然史博物館でも勤務していた。
1977年、ニューヨークを拠点とする芸術家集団のコラボレイティブ・プロジェクト(Colab)に参加した。Colabは、芸術の権威主義や商業主義に対抗し、芸術家自身が主体的に運営することを標榜した。オターネスは、Colabの運営に積極的に関与した。1980年にColabが行ったゲリラ的なアート展示「タイムズ・スクエア・ショウ(The Times Square Show)」において、小さな石膏像「proto-monuments」を展示した。これは、カートゥーン・アニメのような小型の人物像による社会風刺というオターネスの活動の原点となる作品だった。
1980年代、創作活動の中心を彫刻に移し、1983年にニューヨークのブルック・アレクサンダー・ギャラリー(Brooke Alexander Gallery)で初の個展を開き、250体の白い石膏でつくられた裸体像を発表した[2]。1987年、ニューヨーク近代美術館で行われた展覧会「Project:7」において都市の公園に設置することを想定したコールテン鋼のテーブルとブロンズ像を組み合わせた「The Tables」を発表した[4]。
1994年、ナショナル・アカデミー・オブ・デザインの会員に選出された[2]。
1996年、「Life Underground」と命名した20体のブロンズ像を発表した[5]。これはメトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティの「Arts for Transit」の予算から20万ドルの委託を受けて制作された[5]。グランド・アーミー・プラザで初公開され[5]、最終的にニューヨーク市地下鉄の14丁目/8番街駅の構内に置かれた。好評を得て、2004年までに100体を超えるブロンズ像が置かれた。
2004年、オランダのハーグの美術館ベールデン・アン・ゼーの海辺近くの遊歩道に、おとぎ話をモチーフにした23群のブロンズ像を設置した。
- The Herring Eater(ニシンを食べる人)
- The Lion and the Mouse(ねずみの恩がえし)
- Horen Zien en Zwijgen(聞く、見る、言わない)
作風
オターネスの彫刻の造形は、1930年代のカートゥーン・アニメーションを連想させる、丸みを帯びた体、単純化した顔立ちをブロンズで表現している[6]。この造形の可愛らしさは「消費のしやすさ」「大衆への浸透」を象徴している[6]。
資本家やコインや道具よりも労働者を小さい人形として表現し、資本主義の階層構造や富の移動を視覚的に暗喩している作品が多数ある[6]。このような資本主義の持つ階層や現代社会の矛盾を公共の場でユーモラスに表現する手法はオターネスが意図していることであった[7][注釈 2]。
- Immigrant Family(移民の家族)
- Cops Cleaning Up(掃除中の警察官)
- Überfrau(スーパー・ウーマン)
人物
評価と批判
ショット・ドッグ・フィルム
1977年、Colabの活動の一環として「ショット・ドッグ・フィルム(Shot Dog Film)」という短編映画を制作した。これは、コロラド州ゴールデンの動物保護施設から引き取った小型犬を銃で撃ち殺す内容であった[8]。1979年のクリスマスにニューヨークのケーブルテレビでショット・ドッグ・フィルムを含む短編映画が放映された[8]。放映後に動物愛護団体が、オターネスの行為が動物虐待であるとして法的措置を求めた[8]。
2000年代に入り、オターネスの知名度が高まり、公共空間への作品展示が増えると、インターネットを中心に動物愛護団体がオターネスの批判を続けた[9]。2007年、オターネスはこの映画について「弁解の余地のない行為であり、深く反省している」と公式に謝罪を表明した[9]。一方で、オターネスは観客に嫌悪感や恐怖を与えることは、当時のニューヨークの前衛芸術では一般的な手法であったと釈明した[9]。
2011年にサンフランシスコ地下鉄からインスタレーション作品の委託を受けたが、ショット・ドッグ・フィルムを理由とした反対活動が起こり、プロジェクトは中止となった[9]。
作品の公共性と批判
オターネスの作品は、アメリカやヨーロッパの60以上の公共施設に設置されており、オターネスがスタジオを持つニューヨークだけでも12の作品が公共空間に展示されている。ニューヨーク市地下鉄の14丁目/8番街駅の構内に100体以上の彫刻からなる「Life Underground」(2001年)は、当初20万ドルの予算であったが、好評を得て、予算が5倍に拡大した[7][注釈 3]。
前述のようにオターネスの作品は、その初期の活動から現代社会批判とりわけ資本主義の生み出す格差などの問題提起をモチーフにしていた[6]。従来の公共空間に置かれていた歴史上の偉人や出来事をモチーフとした彫刻と異なり、ユーモアを通じて社会問題を考えさせるポストモダン時代の公共芸術のあり方を示しているといえる[6]。
一方で、オターネスの作品は高額な価格で取引されており、「資本主義の強欲さ」を風刺した作品が「商品」として流通している矛盾が指摘されている[6]。また作品は表層的で社会風刺が弱く、作品を設置する行政側の承認を優先させているという批判がある[6]。

