トリクロロアセトニトリル
From Wikipedia, the free encyclopedia
| 物質名 | |
|---|---|
Trichloroacetonitrile | |
別名 trichlorocyanomethane, trichloroethanenitrile, cyanochloroform, trichloromethyl cyanide, trichloroethyl nitrile | |
| 識別情報 | |
3D model (JSmol) |
|
| ChemSpider | |
| ECHA InfoCard | 100.008.078 |
PubChem CID |
|
| UNII | |
CompTox Dashboard (EPA) |
|
| |
| |
| 性質 | |
| C2Cl3N | |
| モル質量 | 144.38 g·mol−1 |
| 外観 | 無色の液体 |
| 密度 | 1.44 g/mL |
| 融点 | −42 °C (−44 °F; 231 K) |
| 沸点 | 83 - 84 °C (181 - 183 °F; 356 - 357 K) |
| 溶けない | |
| 危険性 | |
| GHS表示: | |
| NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |
| 引火点 | 195 °C (383 °F; 468 K) |
| 安全データシート (SDS) | MSDS |
トリクロロアセトニトリル (Trichloroacetonitrile) は化学式 CCl3CN で表される有機化合物である。本来無色だが市販品はしばしばかっ色を帯びている。工業的には殺菌剤エトリジアゾール (Etridiazole) の前駆体として用いられる。この化合物はトリクロロアセトアミドの脱水によって製造される[1]。トリクロロアセトニトリルは二官能基化合物として、トリクロロメチル基とニトリル基の両方で反応が可能である。トリクロロメチル基の電子吸引性がニトリル基の求核的付加を活性化する。トリクロロアセトニトリルには高い反応性があるが、そのため加水分解されやすい。
トリクロロアセトアミドの脱水によるトリクロロアセトニトリルの製造は、1873年にルーヴェン・カトリック大学のL.Bisschopinckによって最初に説明された[2]。

トリクロロアセトニトリルは、Zn、Cu、およびアルカリ土類金属ハロゲン化物を含浸させた活性炭触媒上で、200 - 400℃でアセトニトリルを塩素化することによって 54%の収率で得ることができる[3]。

この反応には高温が必要な上、四塩化炭素のような副生物ができやすい。これに対し、アセトニトリルを飽和塩化水素で塩素化する方法は 50 - 80℃でも良好な収率で高純度のトリクロロアセトニトリルが得られる[4]。 トリクロロアセトニトリルは、他のハロゲン化アセトニトリルと同様に天然水を塩素消毒するとき、藻類、フミン酸、タンパク性物質などの有機物質から生成される[5][6]。
性質

新たに蒸留したトリクロロアセトニトリルは無色の刺激臭のある液体だが、すみやかに黄色から淡かっ色に変色する。水、酸、塩基に敏感である。
結合長は、146.0 pm (C-C), 116.5 pm (C-N), および176.3 pm (C-Cl) である。結合角は110.0 (ClCCl) である[7]。
反応
トリクロロアセトニトリルのすべての電気陰性置換基 (訳者注:3つの塩素とニトリル基) に対するアルコキシドアニオンの求核攻撃による置換により、オルト炭酸エステルが高収率で得られる。
塩素原子の反応性が高いため、トリクロロアセトニトリルを使用して (特にトリフェニルホスフィンと組み合わせて) アリルアルコールを対応するアリル塩化物に変換することができる[8]。

カルボン酸を使用すると、塩化アシルが得られる[9]。
Cl3CCN / PPh3システムは、穏やかな反応条件のため、カルボン酸および、固相合成における支持されたアミノ化合物とのアミド (そのペプチド) への結合の活性化にも適している[10]。同様にスルホン酸から、対応するスルホクロリドが生成される[11]。同様の方法で、Cl3CCN / PPh3によるジフェニルリン酸の活性化とアルコールまたはアミンとの反応は、穏やかで効率的なワンポット反応で,対応するリン酸エステルまたはアミドが得られる[12]。
また、窒素含有芳香族化合物のフェノール性ヒドロキシ基は、塩化物に変換することができる[13]。

ヘッシュ反応 (Hoesch reaction) では、置換フェノールとトリクロロアセトニトリルとの反応で芳香族ヒドロキシケトンが生成される。たとえば、2-メチルフェノールから2-トリクロロアシル誘導体が 70%の収率で生成される[14]。

トリクロロメチル基の電子求引効果は、求核性の酸素、窒素、および硫黄化合物の攻撃のためにトリクロロアセトニトリルのニトリル基を活性化する。たとえば、アルコールは、塩基触媒化で直接かつ可逆的に付加することで、O-アルキルトリクロロアセトイミデートを与える[15]。これは、安定で加水分解の影響を受けにくい付加物として分離できる。

第一級および第二級アミンを使用すると、N-置換トリクロロアセトアミジンがスムーズな反応で良好な収率で生成され、真空蒸留によって精製でき、無色の悪臭のある液体として得られる[16]。アンモニアと反応させ、次に無水塩化水素と反応させると、殺菌剤エトリジアゾールの出発化合物の固体のトリクロロアセトアミジン塩酸塩が得られる。
学術研究では、トリクロロアセトニトリルがオーヴァーマン転位 (Overman rearengement) においてアリルアルコールをアリルアミンに変換する試薬として使用される[17][18][19]。この反応は、[3,3]-シグマトロピーおよびジアステレオ選択的転位に基づいている。
ベンジルトリクロロアセトイミデートは、ベンジルアルコールとトリクロロアセトニトリルから容易に得られる[20]。ベンジルトリクロロアセトイミデートは、穏やかな条件下での敏感ななアルコールのベンジル化試薬として、またキラリティーを保持するために有用である[21]。




