ドゥクン
From Wikipedia, the free encyclopedia

ドゥクン(マレー語: dukun)は、インドネシアで見られる専門的呪者、祈祷者[1]。彼らは呪術的なエネルギーを操ると信じられ、自分のため、あるいは他者から依頼を受けてその力を使う[2]。「ドゥクン」はいくぶん漠然とした総称であり、実際は術者によって役割は分化している[1]。例えばドゥクン・ジャンピ(呪医)、ドゥクン・バイ(産婆)などインドネシア社会で普遍的に見られ生活に溶け込んでいるドゥクンもあれば、超常的な秘術によって未来予知や霊との交信ができると信じられているドゥクンもいる[1]。また救済や回復の祈願を行なうなど善を目的とする“白いドゥクン”と、呪う相手に災厄をもたらすなど悪を目的とする“黒いドゥクン”に分けられる[2]。彼らが用いる知識や術は、土着のものにヒンドゥーやイスラムの神秘主義的要素を加えた雑多なものである[1]。一般にドゥクンは別種のシャーマンであるパワンとしばしば混同される。
ドゥクンはジャワ島に根を張ったケジャウェン(クバティナン)信仰体系のまさに典型である。ヌサンタラの人々には、アニミズム、祖先崇拝、シャーマニズムという非常に強固で古くからの信仰がある。医師やイスラム教・キリスト教の伝道師がドゥクンの影響力を減じてきてはいるが、インドネシア社会においてドゥクンの影響力はまだ大きく、どこか恐れを感じさせるものであり、正統派イスラム教が最も支配的な地域でさえそうである。植民地時代以前は、ドゥクンの術者はヒンドゥー教や仏教の僧侶がそうだったように、支払税を免除されていた。
出世し高い教育を受けているインドネシア人、マレー人、シンガポール人でも、欧米の博士・修士レベルの者でさえ、ドゥクンや占い師に助言を求めている。
ドゥクンが最もよく居るのはジャワ島だが、マドゥラ島は黒魔術の非常に強力な使い手がいることで特に恐れられており、バリ島はそのドゥクンでよく知られている。カリマンタン島のダヤク族も首狩りにドゥクンを使うことで恐れられている。サバ州では、カダヤン族が赤い目をした浮浪者然と言われるドゥクンで知られる。
一般にドゥクンは、人が超自然的あるいは超常現象と関りがある問題を抱えていると考えた時に相談を受ける。
ドゥクンの知識は口伝で伝えられるが、各々のやり方はコミュニティによって異なる。新人が自発的にドゥクンの技を学ぼうとする場合もあれば、親から地位を受け継ぐ場合もある。プロト・マレーのドゥクンは、シャーマンと村長を兼任することがしばしばある。これは tok batin と呼ばれる。親やその親から技を受け継いだドゥクンは、師匠の弟子となって修行したドゥクンよりも尊敬される。一般的に、参入儀式では、山、滝、霊園、その他人気のない場所での瞑想が行なわれる。サバ州のカダヤン族といったいくつかのコミュニティでは、ドゥクンは参入の前にシラットを学ぶよう求められることもある。その目的は護身と精神修養の両面がある。

