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クリス (短剣)

インドネシアなどでみられる特有な形をした短剣 From Wikipedia, the free encyclopedia

クリス(インドネシア語・マレー語・ジャワ語・スンダ語: keris、バリ語: kadutan)は、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、タイ南部、フィリピン南部にかけて見られる、独特の波状の刀身を持つ非対称の短剣である。武器としての実用性にとどまらず、霊的な護符や社会的地位の象徴としても極めて重要な位置を占める。

ロシアの東洋美術館(State Museum of Oriental Art)が所蔵する18〜20世紀のクリス
代表的なクリス(バリ島)

2005年、インドネシアのクリスはユネスコの無形文化遺産(「人類の無形文化遺産の代表一覧表」)に登録された。

語源

「クリス」という言葉の正確な起源は定かではないが、一般にはジャワ語に由来するとされる。「刺す」「貫通する」を意味する古ジャワ語の「ngiris」から派生した言葉と考えられており、英語の「Kris」や「Keris」はこのジャワ語の英訳および現地音のアルファベット表記である。

クリスはもっと頻繁に使われる言葉だが、これは主に西洋世界に関係がある。晩年のBambang Harsrinuksmoによって書かれた Ensiklopedi Keris (Keris Encyslopedia) という題の、大衆向けのジャワ語の本によって例示されているように、短剣の原産地においてKerisという言葉は、もっと大衆的である。Kerisを好む収集家もいれば、Krisを好む収集家もいる。ヨーロッパの植民地開拓者によって使われた他の綴りとしては、cryse、crise、criss、creeseが含まれる。

フィリピン南部で使われるモロ族の短剣など、地域ごとの細かな形態差を総称するためにも「Kris」という言葉が用いられることがある。

起源と歴史

クリスの歴史に関する研究や説は多岐にわたる。フレイ(Frey)は、トーマス・ラッフルズによるスクー寺院の研究に基づき、遅くとも西暦1361年には現在の形状のクリスが存在していたと結論付けている。

さらに古い起源として、ベトナムのドンソン文化(紀元前約300年頃)で出土したダガーに影響を受けたとする説もあるが、これには異論もある。クリスの歴史的変遷は、東南アジアの遺跡に残る彫刻やレリーフを通じて辿ることができ、ボロブドゥール遺跡(825年頃)やプランバナン寺院群(850年頃)のレリーフには、すでにクリスに似た短剣の姿が確認できる。

ジャワの伝説上の英雄パンジは、最初のクリスの鍛冶屋であると伝えられており[1]、伝統社会において鍛冶職人(エムプ)は高い神聖性と特別な地位を与えられてきた。

様々なクリスの展示

構造と特徴

クリスは、その独特な形態と工芸技術において他の刃物に類を見ない特徴を持っている。

  • 刀身(ダモールとリュク):直線的な刃(ルルス)と、蛇のようにうねった波状の刃(リュク)が存在する。波状の刃は、刺突時の殺傷能力を高めるとともに、相手の肉体を抉る効果を狙ったものとされる。また、異なる金属を重ね合わせて鍛造することで生み出される美しい木目状の文様(パモル)が特徴であり、ダマスカス鋼との類似性が指摘されることもある。
  • 柄と鎺(はばき):刀身に対して柄がクランク状に曲がっている独特の構造を持つ。この形状により、突き刺す際の威力を高めるとともに、斬撃の際にも手首の力を効果的に刃へ伝えることができる。一方で、柄の根元に手の保護を目的とした鍔(つば)などのパーツがほとんどないという特徴もある。

社会的・霊的意義

クリスは単なる武器ではなく、所有者の守護神、あるいは家宝として霊的な意味を持つ。 かつては成人男性の必需品として日常的に身につけられ、特別な式典や儀礼の場では身分の高さを示す象徴となった。伝統的なクリスは神秘的な霊力が宿ると信じられており、所有者に幸運をもたらす一方で、扱いを誤れば災いをなすと恐れられた。そのため、年に一度(主にジャワ暦のサロスト月など)専用の香油や酸を用いて洗浄・手入れを行う儀礼があり、この定期的なメンテナンスによって、長年の使用により刀身が徐々に削られて細くなっていくこともある。

脚注

備考

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