バリアブルフォント
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バリアブルフォント (variable font, 可変フォント) は、OpenType 1.8で追加された仕様拡張である[2][3]。2016年9月14日にアドビ、Apple、Google、マイクロソフトによって発表された技術であり、単一のフォントファイルでほぼ無限のスタイルを利用可能とする[4][5][6][7]。デザイナーが字幅、傾斜、太さ、セリフの形状などの各種パラメータを設定すると、その指定に応じて描画エンジンがテキストを生成する仕組みとなっている。
本技術は、AppleのTrueType GXをOpenType向けに適応したものであり、OpenTypeレイアウトテーブルや、TrueTypeおよびCFF形式のグリフアウトラインなど、OpenTypeフォーマットの主要機能が統合されている。
バリアブルフォント技術の開発は1990年代に始まった。1991年にアドビがマルチプルマスターフォント (multiple master fonts) を発表し、後にAppleがTrueType GXを発表したが、両社を含む諸企業間の競争やその他の要因により、これらの技術が広く普及することはなかった[8][9]。
2013年頃、マイクロソフトが独自の開発に乗り出した。同社は2015年にAppleの協力を得て、TrueType GXの技術をOpenTypeに統合する作業を進めた。2016年1月、Googleの開発者であるベーダッド・エスファーボッドが独自に「OpenType GX」の提案を公開したことで、後にマイクロソフトとAppleの開発チームが彼に接触した。同年2月にはアドビもこの企画に参加し、結果としてマイクロソフト、Apple、Google、アドビによる共同開発が開始された[8]。
2016年9月14日、ワルシャワで開催された第60回国際タイポグラフィ協会 (ATypI) シンポジウムにて、OpenTypeバリアブルフォントはOpenType 1.8の一部として正式に発表された[10]。
技術

本技術は、フォント開発ツールで長年サポートされ、書体デザイナーによって利用されてきた補間 (interpolation) および外挿 (extrapolation) のメカニズムを用いている[11]。従来の設計手法では、書体デザイナーがバリエーションのセットを作成したのち、そこから特定のインスタンス(個別のフォント)を抽出して静的フォントを生成し、それをユーザーに提供していた。しかし、バリアブルフォントにおいては、デザイナーが作成・配布するフォント自体に可変性を組み込むことができる。補間メカニズムはオペレーティングシステムやウェブブラウザ、その他のアプリケーションに直接組み込まれるようになり、ユーザーの使用時にスタイルが動的に生成・選択される仕組みとなっている。
本技術の主要な利点の一つは、複数のスタイルを使用する際に、ファイル全体のデータサイズを大幅に削減できる点である。これにより、ウェブサイトにおいてはページの読み込み時間を短縮しつつ、より多くのスタイルを使用することが可能となる。また、レスポンシブデザインに有用な、多種多様なスタイルのバリエーションを利用できることも大きな利点である[12]。
この技術は、1990年代に登場したアドビのマルチプルマスターフォント(multiple master fonts、MMフォント)技術としばしば比較される。MMフォントも同様に、マスターファイルから補間と外挿によってフォントスタイルをオンザフライで生成するものであった[13][14][15][16]。しかし、MMフォントを使用するには、ユーザーが事前にAdobe Type Managerなどのソフトウェアを用いて、特定のバリエーション軸値に対応するインスタンスを生成する必要があった。OpenTypeバリアブルフォントではこの事前作業は不要であり、指定された、あるいは任意のフォントスタイルが必要に応じて即座に選択・使用される。
バリエーション軸
バリアブルフォントの仕様に組み込まれた標準のバリエーション軸 (variation axis) は次の5種類である[17][18]。
| タグ | 機能 |
|---|---|
wght | 太さ (weight) |
wdth | 字幅 (width) |
slnt | 傾斜角 (slant) |
ital | イタリック (italic) |
opsz | オプティカルサイズ (optical size) |
これらの登録済み軸 (registered axis) に加え、フォントデザイナーは独自のカスタム軸 (custom axis) を作成・実装できる。これによりセリフの長さ、大文字や小文字の高さ(エックスハイト)、アセンダーやディセンダーの高さ、コントラスト、あるいは装飾要素全般を変化させることが可能である。例えば、長文の本文組版には低コントラストのバリエーションを用い、大きな見出しには高コントラストで細部を強調した書体を適用するといった調整が可能となる。特にAppleは、自社のOSやウェブサイトにおいて自社書体「New York」でこの特性を活用している[19]。
