パターン認識受容体
From Wikipedia, the free encyclopedia
パターン認識受容体(パターンにんしきじゅようたい; Pattern Recognition Receptor; 略称PRR)とは、細胞において病原体由来分子パターンを認識する受容体の総称。自然免疫において重要である。
病原体由来分子パターン
トル様受容体
マクロファージ
マクロファージには数種類のPRRが存在している。マクロファージのPRR認識により、自然免疫が応答され、サイトカインを産生したり樹状細胞を活性化したりする。
レクチン経路
もともとレクチンとは、植物種子中から発見されたものだが、動物の赤血球を凝固させる因子として知られていた。これはレクチンに、血球に存在する糖鎖と結合する性質があるからである。そしてその後、植物にかぎらず、動物の体内にも糖鎖と結合するタンパク質が見つかり、「レクチン」と命名された。なので、一口に「レクチン」と言っても、様々な種類のものがあり、動物レクチンと植物レクチンとは異なる。また、一口に「動物レクチン」と言っても、免疫ではなく細胞接着のための動物レクチンも存在している[1]。本頁では、主に動物由来のレクチンについて、また免疫に関係性の高そうなレクチンについて述べる。なんのために動物体内にレクチンがあるのかというと、通説としては、貪食細胞であるマクロファージなどによる攻撃の標的のための目印であり、レクチンがマンノースに結合することにより、マクロファージなどに存在する受容体で異物として認識することができるようになると一般に考えられている。レクチンのうち、マンノースと結合するものはマンノース結合レクチン(mannose-binding lectin、略称: MBL)と言われている。現在、マクロファージにマンノース受容体がある事が分かっている。細胞壁にマンノースをもつ細菌もいるので、これらの細菌をマクロファージが攻撃するために、マンノースと結合するレクチンによって、標的の目印をつけているというわけであろう。このようなマンノース結合レクチンもPRRということができる。客観的な事実としては、これらレクチンは、生体の自然免疫に関わっていることが分かっている。
実際、先天性異常の患者でMBL欠損のある患者は、幼児期に易感染性であることが報告されている[2]。これらMBL関連の機構の動作に、カルシウムを必要とするレクチンがあるので、そのようなカルシウム依存性のレクチンは「C型レクチン」(C-type lectin receptors, 略称: CLR)と言われている。C型の「C」とはカルシウムのつづりの事である[3]。また、このようなレクチンによる自然免疫の機構のことを「レクチン経路」という。
一方、「古典的経路」とは獲得免疫のことである。レクチン経路と対比して、自然免疫を補って働く獲得免疫のことを「古典的経路」という場合もある。
獲得免疫との関わり
C型レクチンの免疫
dectin-1
デクチン1(dectin-1 )は、βグルカンに結合する。真菌の細胞壁にはβグルカンを持つものがある。真菌とは、キノコや酵母などのこと。これらの自然免疫にdectin-1が関係していると思われている。dectin-1は、マクロファージなどの細胞膜上に存在している。また、大腸の免疫細胞に多くdectin-1が存在している。真菌の排除に必要なTh17細胞(ヘルパーT細胞の一種)を、dectin-1は誘導しているとされる。なお、ヘルパーT細胞の番号の分類は、主に産生するサイトカインにもとづく分類である。Th-17はインターロイキン17(IL-17)などのサイトカインを産生する。免疫によるカンジダ真菌への攻撃への応用として、dectin-1およびdectin-2が期待されている。
dectin-2
真菌や酵母にはαマンナンをもつものがある。dectin-2は、真菌のαマンナンを認識するC型レセプターの一種である。一方、酵母のαマンナンをdectin-2は認識しない[5]。
Mincle
脂質を認識する
MincleというC型レクチンは、結核菌と作用する性質があることが知られている。結核菌のもつトレハロースジミコール酸(trehalose 6,6’ dimycolate:TDM)をMincleは認識している[6]。結核菌ワクチンであるBCGにも Mincle が含まれていると言われている。トレハロースジミコール酸は糖脂質に分類される。そもそもミコール酸は脂肪酸に分類される。なお、ミコール酸とは、結核菌のもつ脂肪酸のような構造の分子のことである。また、レンサ球菌は一般に脂質であるモノグルコシルジアシルグリセロール(MGDG)を産生するのだが、このレンサ球菌の産生した脂質にもMincleは反応すると言われている[7]。これらのことから、Mincleは微生物の脂質を認識するための受容体だと思われている。コレステロール結晶もMincleは認識するという報告もある[8]。分子構造で大きな疎水性基をもつと言われており[9]、コレステロール結晶を認識することと整合性がある。
部位
Mincleは主にマクロファージ[10]や樹状細胞[5]に存在している。
経緯など
なお、トレハロースジミコール酸は、ワクチンの効果を増強する「アジュバント」(免疫賦活剤)と言われる種類の薬剤にも分類されている。だが、なぜトレハロースジミコール酸がワクチンの効果を増強するかの理由については、Mincleの性質が解明されるまでは、ながらく不明であった。現在ではトレハロースジミコール酸がアジュバントとして機能する原因は、Mincleによるものだろうと学会的には思われている[10][9]。なお、これらミコール酸をもつ細菌は、塩酸アルコールで脱色されないものが多い。塩酸アルコールで脱色されないものは「抗酸菌」というものに分類される。結核菌のほかハンセン病の原因菌が、抗酸菌として有名である。
その他
KLR
NK細胞にもC型レクチンレセプターが存在しており、キラーレクチン様レセプター KLR(Killer Lectin-like Receptor)といわれる。