ヒカリ新世紀
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ヒカリ新世紀(水稲品種第12273号)は、静岡大学グリーン科学技術研究所の富田因則教授によって、その鳥取大学在任時に、背が高くて倒伏しやすい水稲品種コシヒカリに、背丈を低く抑える遺伝子が連続戻し交雑で移入されて育成された短稈コシヒカリ型品種である[1][2]。
コシヒカリは日本の水稲生産の4割近くを占めるが、地球温暖化の影響で多発・大型化する台風によって倒伏し、収量と品質の低下を被っている。県によってはコシヒカリの栽培面積が8割に及んでいて、一遍に大きな自然災害をうける恐れがあり、コシヒカリを遺伝的に短稈化して倒伏しにくく品種改良する必要があった。ヒカリ新世紀は、コシヒカリに背丈を約20 cm短くする1個の半矮性遺伝子sd1が連続8回の戻し交雑で導入されたものであり、半矮性遺伝子sd1以外は99.8%コシヒカリのゲノムを持つ短稈コシヒカリ型品種である[1][2][3]。DNAモニタリングにより、sd1遺伝子周辺がコシヒカリのゲノムに置き換わっていることが確認された[2]。ヒカリ新世紀はコシヒカリより倒伏耐性が著しく強く、穂数が増加し、コシヒカリの良食味(等級「上の中」)を受け継いでいる[3][4]。
富田は育成に成功した短稈コシヒカリ(詳細は後節参照)を“光輝く新世紀の米”としてヒカリ新世紀と命名し[注 1]、農林水産省で2004年に品種登録された[2][3][4]。
ヒカリ新世紀の育成
在来種十石が持つ半矮性遺伝子sd1をコシヒカリに移入することによって、コシヒカリの短稈化が図られた[1][2]。十石とコシヒカリの早生突然変異系統関東79号との交雑が行われた[1][2][3]。両親の出穂期が約1ヶ月違うため、雑種第2世代F2には両親間にまたがる様々な出穂期の個体が分離したため、雑種第4世代まで系統育種法が展開され、出穂期がコシヒカリに近い短稈系統(半矮性遺伝子sd1sd1ホモ接合体)、すなわち、出穂期の遺伝子がコシヒカリと同じで、sd1を持つ短稈系統が選抜された[2]。こうして、1回目の交雑F4世代までに出穂期に関する遺伝子をコシヒカリから受け継いだ短稈系統が育成された[1][2]。
この短稈系統が含むコシヒカリのゲノムはまだ50%程度であり、sd1以外の遺伝子をコシヒカリに入れ替えるために、さらにコシヒカリとの戻し交雑が8回行われた[1][2][3]。すなわち、この短稈系統を一回親にして、コシヒカリを反復親とする連続8回の戻し交雑が行われ、半矮性遺伝子sd1以外はコシヒカリのゲノムに入れ替えられた[2][3]。各戻し交雑の第1世代BCnF1で半矮性遺伝子をSd1sd1ヘテロ接合で持つ個体が選抜され、コシヒカリを母親にして戻し交雑が行われた[2][3]。すべての戻し交雑で翌年には必ずBCnF2が展開され、短稈個体(sd1sd1 ホモ接合体)が分離することを確かめつつ、BCnF1への交配が先行して進められた[2]。BC8F3世代で半矮性遺伝子sd1以外は99.8%以上コシヒカリのゲノムに入れ替えられた短稈のsd1ホモ接合体が固定され、短稈コシヒカリの育成が完了した[2][3]。