ピラー
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黎明期の自動車で屋根の付いているものは非常に少なく、その後、エンジンの出力に余裕が出てくると居住性向上のため、次第にきちんとしたキャビンが架装されるようになった。当初のクローズドボディーは技術的には馬車の応用であり、フレームの上に木骨構造のキャビンが載せられており、重量のある屋根を支えるその真っ直ぐな柱が文字通り車体のピラーとなっていた。
車体が全鋼製となり、設計の自由度が増したことから変化が訪れ、1920年代の流線形ブームを経て、1930年代と第二次世界大戦を挟んだ戦後に応力外皮構造が自動車の車体設計に採り入れられると、フロントウインドシールドやリアウインドウに強い傾斜が付き、屋根は丸みを帯びて小さく軽くなっていった。これ以来、ピラーはもはや単に屋根を支える柱ではなく、重要な車体の構造材となった。
配置と呼称

ピラーの名称は、前からAピラー、Bピラー、Cピラー、Dピラー・・・とアルファベット順に並んでいく。ピラーが片側3本しかない車の場合、A・B・Cのかわりにフロントピラー、センターピラー、リアピラーと表記することもある。
大半のセダン、クーペ、コンパクトカー、軽自動車などはA、B、Cの3本のピラーを持っている。Aピラーは運転者と助手席の斜め前にある柱、Bピラーは前部座席と後部座席の間にある柱、Cピラーは後部座席斜め後ろにある柱である。前部座席より前にピラーが2本ある車も存在するが、この場合は前部座席と後部座席の間にある柱がCピラーとなる。ハイトールワゴン、ワンボックスカーやミニバン、ステーションワゴン、6ライト型のセダンでは、さらに車両最後部で屋根を支えるDピラーのある車も存在する。クーペでは、キャビンが短くAピラーとCピラーのみの車種もある。また、車体の大きい大型バスはH〜Jピラーまで有する車種も存在する。

フォルクスワーゲン・ゴルフIIIカブリオレ
ドアや窓の配置が左右対称でピラーを左右に同数持つものが一般的であるが、一部にはそれらの配置が左右非対称でBピラーの位置がずれているものや、左右でピラーの数が異なるものもある。例えば、タクシー用の日産・クルーのBピラーは左が前方、右が後方にずれており、初代、2代目のスズキ・ワゴンR4ドアは左右のドア枚数の違いからピラーの形状も左右で大きく異なっている。また、トヨタ・アイシスやダイハツ・タント(2代目以降)、ホンダ・N-VANは左側にBピラーがなく、代わりにピラーに相当する補強をスライドドア内に持っている。これらの設計は、いずれも使う頻度の高い座席の乗降性や積み下ろしのしやすさを重視したことによる。日産・プレーリー(初代)は両側のBピラーを廃したが、耐久性の問題により浸透しなかった。
また、オープンカーには、フロントウインドシールドを支えるフレームのみでピラーのないものと、補強のために環状のBピラーを持つものとがある。オープンボディーのスポーツカーでは、このBピラーがロールケージの役割を持つものもある。
役割

ロールス・ロイス・ファントム
自動車黎明期当初のピラーの役割は、前述したように自動車の屋根を支えることであり、重い屋根(ルーフ)を支えるためだけの文字通りの頑丈な柱(ピラー)であった。だが1990年代以降はモノコック構造を採用する車両が増え、また衝突安全性やスタイリング、車体剛性に関しての重要度が増し果たすべき役割も多くなってきている。
たとえばAピラーは、前方からの衝突時に衝撃に耐え居住空間を確保し、車内からは乗員が頭部などをぶつけても致命的なダメージと与えないようにするために非常に重要な役割を持つ。しかしながら強度を重視してAピラーを太くしすぎると死角が広がるため[1]、いかにバランスよく設計するかが課題となる。Aピラーを細くし視界を確保するためにBピラー以降に負荷を分担させたり、Aピラー自体を複数本で構成し内側にかつての三角窓のようなガラス窓を設けることで視界性能と両立させるといった例がある。
またBピラーは側面衝突時の安全性に大きくかかわってくる。強度を高めるため、Bピラーに高張力鋼(デミオなど)や、より強靭な1GPa(ギガパスカル)からそれ以上の引張強度を持つ超高張力鋼を採用する例(ギャランフォルティスなど)もある。
高級車では、後部座席の乗員のプライバシー保護の観点から、Cピラー(車種によってはDピラー)を太くデザインすることも多い。
屋根が長く、車体後端に大きな開口部を持つステーションワゴンやミニバンでのC・Dピラーは、構造材として非常に重要であるが、それ以外に、リアクオーターウインドウやリアウインドウ(バックドアガラス)と共に、スタイリングの要点となる場合もある。
高速巡航の頻度の高い欧州車のほか、レース用車両や高性能GTなどでは、車体のねじり剛性をさらに上げる手段として、ピラー内部に発泡硬化性樹脂を充填する事や、要所に筋交いや補強部材を仕込む事も行われている(例:三菱・ランサーエボリューション)。
