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ファイアー・ドレイク

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ファイアー・ドレイク(英: Fire Drake)は、英語で直訳すると「火竜(火のドラゴン)」の意。

英雄詩『ベーオウルフ』の主人公が対峙する「火竜」(古英語: fyr draca)も、現代語でいえばファイアー・ドレイクであり、広義的にはゲルマン(チュートン人)全般のの火竜のことである( § ゲルマンの竜参照)。

また、ドイツ北部の民間伝承における精霊や魔物のたぐいであるドラク(英語版)に、ファイアー・ドレイクの英訳を充てた例もみられる( § 類型参照)。

近世(16世紀後半以降)においては、あるいは竜の形状にもみえる火玉(現代で言う、いわゆる「ウィル・オ・ザ・ウィスプ」)をさすようになった。これを当時の識者は気象現象であると説明したが、大衆的には(火の)精霊や竜であるなどという俗信も根強かった( § ジョン・ブロッカー参照)[注 1]( § 自然現象参照)。

シェイクスピアの用例では、いわゆる鋳掛屋あたりの職業の登場人物を、火気を扱う商売柄「鼻赤」な男という意味で「ファイアー・ドレイク」呼ばわりしている。さらには、その男が殴打された勢いで荒げた鼻息は、まるで大砲の発射のようだとも誇張されており、いわゆるドラゴンブレス(竜の吐く火炎)の比喩が諧謔的にもちいられている。

語釈

「ファイアー・ドレイク(fire drake)」は、オックスフォード英語辞典によれば、「火性の竜(fiery dragon)」を指すゲルマン伝承(チュートン人の伝承[3])とし、古例を『ベーオウルフ』(古英語: fyr draca)にみる[4]。ベーオウルフの火竜を "firedrake"と現代訳した例(ジョン・ジョサイアス・コニベア(英語版)訳)がみられる[5]。

以降、中英語の諸例にジョン・ガワー著『Confessio Amantis』(『恋する男の告解』、1393年)等を挙げる[4]。

しかし、16世紀後半以降は、「火炎状の大気現象」や「ウィル・オ・ザ・ウィスプ」を指すようになった[4]。また、「ファイアードレイク」にラテン語「イグニス・ファトゥウス」(「愚かな炎」)の定義も加わることがあるが[6]、これは「ウィル・オ・ザ・ウィスプ」とほぼ同義である。

また、転じて人間をさすこと(第4義)もあり、ベン・ジョンソン作『錬金術師』(1610年)では「錬金術師の助手」の意、シェイクスピア作『ヘンリー八世』(1612年)では「鼻の赤い男」(第4義b)の意味で使われている[4](竜・ウィスプ・大気現象・精霊の関連については後述)。

ゲルマンの竜

「火竜」を意味する名前の通り、炎をまとい、口からも炎を吐く。空を飛び、それが現れる時は辺り一面、昼のように照らされる[7]。

上述したとおり火竜が財宝を守るというモチーフが、古英詩『ベーオウルフ』にみられるが、これの登場人物は北欧人であり[8]、よって素材は英国のみでなくより広域なゲルマンの伝承なのである[9][11][注 2]、『オックスフォード英語辞典』でも「ファイアー・ドレイク」を「ゲルマン人の迷信の神話的生物」と定義している[13]。

よって、この定義からすれば、エッダやサガの火竜もこれに加えることは可能であろう。たとえば伝説的なデンマークとスウェーデンの王、ラグナル・ロズブロークにも竜退治の逸話があり、そのサガ(古ノルド語)にも讃えられるが、『デーン人の事績』(ラテン語)でも火性の毒息を吐く竜(anguis等[注 3])と敵対したことが描写される[14]。

また、溶岩やマグマの中を水中のように泳ぐこともできる。それゆえ[要出典]、「火の精霊」もしくは「死者の魂」と同一視されることもある。(精霊だとの俗信は、以下 § 自然現象の「ウィスプ」としての説明を参照)。

シェイクスピア

シェイクスピア『ヘンリー八世』第5幕第3場で[16] 、鋳物場に立って顔が赤化した真ちゅう細工師を「鼻赤の男」("fire drake")と揶揄する用例がみえる[1][4][17][注 4]。この男は、殴られると鼻からなにかを大砲(臼砲)のようにぶっぱなした、などと語られる[1][18]。この箇所については「ファイアー・ドレイク」は「火竜」の意味と注されていることもあり[注 5][1]、「火のドラゴン」にかこつけているのはおおむね明らかではある[注 6]。

自然現象

「ファイアー・ドレイク(火竜)」の伝承は、自然現象をドラゴンの姿で表現したものだという仮説が立てられる[20]。

シェイクスピアの時代(17世紀初頭)の英国[注 7]での言葉づかいでの例をとりあげてみると、「隕石」や「ウィル・オ・ザ・ウィスプ」(≃人魂)を目撃すると、それを「ファイアー・ドレイク」と称しており、俗には(火の)精霊のことだとみなされた(以下詳述)[注 8]。

ウィリアム・フルク

早期の例では、ウィリアム・フルク著『Meteor』[注 9])(初版1563年)に、「ファイアー・ドラゴン」もしくは「ファイアー・ドレイク」の説明がみえるが、「ウィル・オ・ザ・ウィスプ」のことであると目される[22]。

フルクは、「ファイアー・ドレイク」は、「蒸気のかたまりが低温の上層に昇ると、力で押し返され、その衝撃からくる運動は、発火をうながすに十分である」云々の説明をしている。また、巷ではこれをドラゴンだという者や悪魔だという者もいる、と無学をなじっている[23]。

ただフルクは「イグニス・ファトゥウス」(「愚者の炎」)じたいについても[注 10]、この少し後に別の説明をおこなっており、「イグニス・ファトゥウスは無害であるが、これを恐れるのは愚者(ばか)ばかりである」などと述べる[24]。

ジョン・ブロッカー

同様な「ファイアー・ドレイク」の解説として引用されるのが、ジョン・ブロッカー(英語版)著『Expositor』(1616年)で、同書によれば「ファイアー・ドレイク」は、夜間にあらわれ飛ぶ竜のようにもみえる火で、民間では精霊などと信じられているが、哲学者(当時の科学者)の説では熱い雲と冷たい雲のあいだに生じる「大いなる不均等な吐息/噴霧」(発火した蒸気[2])であるとしいる。また、(いろんな形の雲があるように)これも胴体に首や尻尾がついた竜にみえることがあるとする[25][26]。

トプセル

シェイクスピア時代の博物学にエドワード・トプセル(英語版)の『蛇類誌』が知られるが[28]、「ファイアー・ドレイク」という「大気現象」(すなわちウィスプ[29])について説明しており[注 11]、地上の作物を破壊することもあり、地上や海上にもあらわれる、とする[29]。

トプセルの著作の中核は、コンラート・ゲスナーの訳出であるが、ここに彼自身が採集したという、英国西岸の漁師にまつわる「ファイアー・ドレイク」の挿話がある。それによれば、ある老漁師と手下たちは海上で「ファイアー・ドレイク」(「飛竜」、draco volans)の大気現象(要するに漁火の不知火か)を目撃し、不吉さを感じ、網をあわてて回収すると、黄金の椅子がかかっていた。手下たちは欲に駆られて老漁師を殺しフランスに逃亡しようとするが、軍船に怪しまれて攻撃され死ぬ。チョーサーの『カンタベリー物語』所収「赦罪状売りの話(英語版)」の類話であろう、と考察される[31]。

紋章学

後世には羽の生えたドラゴンの姿で描かれ、しばしば紋章のモチーフにもなった。ほとんどの場合、上記の通り、飛竜の姿であることが多い。

類型

北ドイツ

「ファイアー・ドレイク」を充てて解説されるドイツ北部の伝承にドラク(英語版)(drak, dråk)がある(ベンジャミン・ソープに拠る)[32]。ドイツ北部(低地ドイツ語)の方言語である[33][35]。

このドラクは、頭がついた火柱のような怪異として伝わる(ポメラニア州、旧スヴィネミュンデ、現今のシフィノウイシチェ)[32]。また「コボルト」がやはり火柱で現れるとされる。地上におりると黒猫の姿になるという(ザクセン州アルトマルク(英語版))[32]。また直訳でファイアードレイクにあたるフュアドラク(仮カナ表記、Fürdråk)は「悪魔」をさすと地域的につたわる(ニーダーザクセン州リューネブルガーハイデのDalle)[32]。

脚注

参考文献

関連項目

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