ファティマ (ファイブスター物語)
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ファティマ(Fatima)は、永野護の漫画『ファイブスター物語』(FSS)に登場する有機的人造人間である。
正式名称はファティマ・ファティス(Fatima Fatis)。騎士(ヘッドライナー)と共に戦闘兵器モーターヘッド(MH)あるいはゴティックメード(GTM)をコントロールするのがおもな役割である。
2013年の連載再開から設定が変更された、オートマチック・フラワーズ(略称はAF)という名称も併用される事になった。生体演算機としての呼称はファティマ、軍隊、騎士団における兵器としての呼称はオートマチック・フラワーズと使い分けられる。制御する人型戦闘兵器はゴティックメードになった(年表上は最初からGTM制御のために作り出された事になっている)。
FSSの三大ヒロイン(ラキシス、アトロポス、クローソー)はすべてファティマである。元々はFSSの原型となったアニメ『重戦機エルガイム』の企画段階でも、ロボット兵器「ヘビーメタル」の頭脳として登場する事が永野により構想されていたが、採用されなかった。
星団暦2310年、科学者リチウム・バランスによって、出力コントロールなどのシステム制御が困難なMHを騎士に代わって制御する為に作られ[注 1]、リチウムが領主を務めるデルタ・ベルン星フェイツ公国に於いて公開された。リチウムの祖父ウラニウム・バランスが提唱した、騎士の驚異的な反応速度を高速演算処理に利用する「生体演算理論」を基本コンセプトとしている。そのため騎士の力を持って生まれるように、全てのファティマは、数度の睡眠期を経て星団暦まで生き残った最後の「純血の騎士」ナッカンドラ・スバース(ファティマ初公開時にはフェイツの騎士団長の地位にあった)の遺伝情報をベースにした胚から作られており、いわば全てが姉妹とされる(初期の大量生産ファティマは全てリチウムの創ったオリジナル胚のクローンだったが、やがて生産技術者の中から情報をデコードして独自改良を行うものが現れ、彼らがファティマ・マイトの魁となった)。
ファティマはほぼ全ての個体が女性型である。生物の男性は女性から分化し、本来出生までの生存率が女性と比べて男性は低い人間の性質の傾向が顕著となる上、性差による体力等の差も無く生殖機能も不要なためである。工場製ファティマに男性型ファティマはおらず、わずかに製作されるマイト製とを合わせると150体に1体程度しか存在しない[1]。
人間とほぼ同じ身体を持ちながら、スーパーコンピュータをも凌駕する演算能力[注 2](電算機能は128ビットコンピュータのパルスの速さに匹敵し、毎秒36兆5000億回の予測演算を実行する) と情報処理機能(平均的な騎士の85%の反応速度)[注 3]を与えられており、MHの制御を行う。騎士と共にMHに搭乗し、頭部に移植された「ヘッド・コンデンサ」を介してモーターヘッドと情報のやり取りを行い、騎体各部の制御全般を行う。ファティマの搭載によって騎士はMHの操作のみに専念出来るようになり、その潜在的能力を完全に引き出す事が可能となり、MHは真に最強兵器としての完成を見た。優れた記憶力を持つが、通常の無機コンピューターと違い有機的であるため「物忘れ」はある。また低スペックのファティマでも長く経験を積むことで、経験の少ない高スペックのファティマを凌駕する事態も起こり得る。純血の騎士であるスバースの細胞から作られている為、騎士には及ばないものの、通常の人間を遥かに凌ぐ肉体能力を併せ持つ。
彼女(彼)らは非常に美しい容姿を持ち、例外なく痩身で、成長を止められた後は外見上は全く老化しない。そのため彼女たちに惹かれ、私的なパートナーとする騎士も少なくない。また生殖機能は持たないが、性交は可能である(作中のクローム・バランシェの言葉によればファティマに受精卵を移植受胎させての出産例もいくつかあり、そのうちの一人が剣聖ダグラス・カイエンである)。騎士が負傷した際の予備パーツとしての役割から、血液や臓器は型を問わず万人に輸血・移植が可能になっている。一方で合成繊維には強度のアレルギー反応を示すため、彼女達のために太古の絹や綿などの天然繊維の衣服が復刻・生産されており、極めて高価な物となっている。
ファティマの設計と育成には特有の能力と専門の技術が必要であり、その専門家はファティマ・マイトと言われる。ファティマは生物的には人間とほぼ同じであるため、その育成・治癒技術は人間の再生医療にも広く応用されており、ファティマ・マイトは医師の頂点でもあると言われている(医師免許も保有している)。マイトの主な仕事は工場製ファティマの基本フォーマットの改良であるが、自らの手でファティマの育成を手掛ける事もあり、特に高名なマイトによるものは「銘入り」と呼ばれる。またモーターヘッド同様、ファティマも定期的なメンテナンス(主にケミカルの調整や精神面でのカウンセリング)を受ける必要があり、それらメンテナンスを主に担当するファティマ・マイスターも存在する。ファティマ・マイトやファティマ・マイスターはいずれも専門職であり絶対数が少ないため、ほぼ全ての国家で敬意を持って迎えられる対象となっており、特に銘入りファティマを手がけるマイトともなると複数の国家首脳と個人的な繋がりを持つものが少なくない。
マイト製ファティマは自動車に例えれば市販車に対するF1カーのようなもので、能力は高いが安定性を欠くものが多く、扱う騎士側にも相応の腕が要求される。しかし、ファティマはサポートAIでありコ・パイロットでもあるので、ヒュートランやアトロポスの事例のようにファティマの能力が超絶的だと、騎士の技量が並でもファティマの側で足りない部分をカバーして、それなりの戦果が残せるようである(例外的だが、ファティマ単独でMHをコントロールできるものもいる)。このためファティマと騎士の間で信頼関係を構築できるかどうか重要になる。なおマイトが直接育成したファティマはマイトを「父・母」、同じマイトに育成されたファティマ達を「姉妹・兄弟」と認識している[注 4]。
MHの制御という点のみを見ればファティマの容姿が人間に近い必然性は無く、逆に非常に高いコスト(一人につき戦車100台、年間コストが数十億円)と不安定さをもたらしている。それを解消したのが、星団暦2300年代を代表する天才ファティマ・マイトであるガリュー・エトラムル博士[注 5]の開発したエトラムルと呼ばれる非人間型ファティマである[注 6]。ファティマのように突発的に高性能な個体は期待できないが[注 7]、生育期間が短いため大量供給が可能で比較的安価であり、騎士との相性も問われず性能が安定しているなどの長所も多く、好んで使用する騎士団や騎士、MHマイトも多い。星団暦4000年代には騎士やマイトの血が薄れて能力が低下した事から、エトラムルが主流となっている。高名なファティマ・マイトの手によるエトラムルは美しい外見を持ち、銘に見合う性能を持つ。一方で、人間型ファティマはMHの制御のみに留まらず、情報収集や家事、負傷時の治療や連絡、騎士戦補助、性欲処理に至るまで騎士の総合的なサポートを行い得るメリットもある。また、星団一のMHマイスターと名高いレディオス・ソープに言わせると、エトラムル搭載のMHの動きには優雅さが無いそうである。
戦闘などの外的要因を除き、十分なケアを行えば死ぬことも無いとされている。作中では最初に製造された4人のファティマの一人「ジ・インタシティ」が2997年に687歳という年齢で息を引き取るシーンが描かれている。ファティマの寿命に気付いたリチウム・バランスによりファティマの遺伝子の改良が行われたため、その後に制作されたファティマは、理論上は無限の寿命を持つとされる。
成長タイプ
ファティマは一定年齢の外見に達するまで育成ポッドで育成され、必要に応じある成長段階で成長が止められそれぞれS・M・L型のタイプに分類される(いくつか例外もある)。
成長を止めた後はその容姿が大きく変化する事はない。
- S型(少女・少年型・14 - 15歳程度)
- 最も幼い段階で成長を止めたもの。成長に伸びしろの幅が見込めるものの、精神状態に不安が残る。星団で最も多いタイプ。
- M型(乙女・青年型・16 - 17歳程度)
- S型とL型の中間。S型に次いで多い。
- L型(成女・成人型・18 - 20歳程度)
- 精神状態は最も安定しているが、成長の大幅な伸びは期待できない。ファティマの中で一番少ないタイプ。
上記の相当年齢は全て地球人換算であるが(ジョーカー人の寿命は約300年)、ファティマは有機合成技術によりさらに生育が早められており、数年から十数年で成体に達する。成長させる手間や時間、資金が掛かり過ぎるため、成長段階につれ数が少なくなっている[注 8]。
工場製ファティマの場合は成体まで育成され、育成プログラムを担当したマイトの癖が付いていることが多い。マイト個人の製作するファティマは育成途中で随時ポッドから出して外界に触れさせながら段階的に成長させるため、工場製ファティマより更に時間がかかる。
なおファティマは骨格からして明らかに人間の女性とは異なっており、見間違えられることはまず無いとされているが、ラキシスとアトロポスは人々の前で「人間」として振る舞っており、その事に何の疑問も持たれていない。
フルゲージ
能力を比較する基準として、フルゲージという区分がある。フルゲージはパワーゲージとクリアランスに分けられる。パワーゲージは機械的な測定によるランク分けで、クリアランスとは相対的な総合評価(品格、扱いやすさ)である。
パワーゲージやクリアランスで高評価を受ける個体はマイトの直接の設計・育成によるものが多く、ファティマ・ファクトリー製のファティマは能力はそれなりである(マイトが関わった場合はその限りではない)。マイトの中でも高名なマイトによるファティマは極僅か(一人の生涯生産数は多くて数十体)であり、計り知れない価値を持っている。その為に多くの騎士や国家がその所有を競って殺到し、過去にはファティマを巡って決闘という流血の事件もしばしば起こった。
- パワーゲージ
- 戦闘能力・MH制御・演算性能・肉体耐久・精神安定の5項目で表される。D2以下は例外を除き廃棄対象となる。逆に戦闘能力の3Aは並の騎士を上回る強さとなり、全ての騎士にとって確実に制御出来る保証が無くなるため星団法違反となる。なお、クローソーについては、彼女の為だけに3Aを超える最強の証を示す「VA」が特別に設けられている。工場製ファティマのスペックはB2(戦闘)- B2(MH制御)- C(演算)- B2(耐久)- C(精神)あたりが平均である。
- 3A
- 最高クラス(戦闘力では平均的な騎士を上回る)
- 2A
- 超高性能(戦闘能力では通常の騎士レベル)
- A
- 一般的ファティマの最高値
- B1
- 高性能
- B2
- 平均的
- C
- 平均的
- D1
- やや劣る
- D2
- 廃棄対象
- E
- 廃棄対象
- クリアランス
- ファティマの品質を表す。ダイヤモンドの透明度の基準値「クラリティ(Clarity)」が元になっている。戦闘兵器としての優秀さを示す値でもあるため、多くの騎士は、よりクリアランスの高いファティマを求める。戦闘用ファティマの80%は、平均的なランクであるVS2に属する。
- F(Flawless)
- 厳密にはクリアランスではなく、他のファティマとは別格扱いとする称号(フローレス・ファティマ)であり、製造後の経歴により特別に認められたもののみ与えられる。特にパワーゲージが優れていなければならないという訳ではなく、歴史的な意義も大いに加味される。星団初の4ファティマの全てがフローレス・ファティマとなっているのもそのためである。多数のファティマが生産されているが、劇中などで公開されているフローレス・ファティマは過去を含め僅か十数体である。類似のものとして、クローソーにつけられた「FF」(Forever Fantastic Flawless)、タイ・フォンにつけられた「SF」(Silent Flawless)がある。なお、ファティマの「ラ・〜」はフローレスファティマを表す名称である。
- VVS1(Very Very Slightly 1)
- 最高級
- VVS2(Very Very Slightly 2)
- 高品質
- VS1(Very Slightly 1)
- 良質
- VS2(Very Slightly 2)
- 平均的
- S1(Slightly 1)
- やや劣る(通常戦闘用としては使われない)
- S2(Slightly 2)
- 廃棄対象、もしくは非人間型ファティマ(エトラムル)
ファティマの処遇
ファティマの存在は星団法(記事「ファイブスター物語」の「作品用語」参照)で強く規制されている。彼女らは工場やマイトの工房で培養・育成され、高い教育と訓練を施された後、星団法に規定された様々な処置(「MHに搭乗したら戦闘を行い敵を殺害する」など、主に戦闘行為に関する思考を強制する「ダムゲート・コントロール」と呼ばれる思考制御プログラム、アイカバー[注 9]とクリスタルの装着等)を経て騎士の需要を待つ。ファティマは彼女らを所有する騎士の動産と見なされ、人間と同様の人権は与えられない。
ファティマは基本的にMHのコントロールの為に騎士が所有するものであるが(所有者である騎士を通常「マスター」と呼ぶ)、優れた情報解析能力のためマスコミが所有する例もある。また主が騎士を廃業したり騎士権を剥奪されても、家政婦のような形で引き続き仕えるケースも稀にある。一部の豪族や貴族の中には、騎士ではないにもかかわらずその権力により騎士の資格を偽造し、何らかの手段でファティマを手に入れる者もいる。このほか作中では、ファティマのダムゲート・コントロールを何らかの手段で狂わせ、一般人が偽のマスターとなってファティマ専門の売春宿を経営していた例もある。
ただしファティマの維持には、後述するアレルギーへの対策などの関係から、日本円に換算すると年間数億円程度の維持費が必要になる。騎士団所属の騎士の場合は通常騎士団側が維持費を負担してくれるが、フリーの騎士の場合は自ら維持費を賄う必要があるため、中には維持費を賄えずにファティマを手放さざるを得なかったり、最悪の場合ファティマが病気となり死んでしまうこともある。こういった費用面の問題もあり、一般人がファティマを所有することは現実的ではない。なおファティマスーツに多くの場合高額な宝石類が装着されているのは、ファティマの維持費が賄えなくなった場合にそれらの宝石類を売却することで一時的にせよ維持費を捻出できるようにするためとされている。
本来ファティマは非常におとなしく他者に従順な精神をもっており、ロボット工学三原則のように人間に対する反逆を防止する制御も必要無い程だが、ダムゲート・コントロールによる戦闘行為の強制に加え、マスターとの人間関係が却って精神バランスの乱れを生じさせ、最悪精神崩壊を生じさせる危険があるため、マイトやマイスターによる定期的なケアが欠かせない。ファティマの人格を認めずあくまで兵器として扱う事で悪名高いノイエ・シルチスや黒騎士デコース等の方が、ファティマの精神的負担が少ないという点でむしろ理想的なマスターであると言われている。
仕えるべき主(騎士)のいないファティマは、その身を防衛する最低限の権利も許されていない。そのため、戦闘などで主を失い騎士や国家の庇護を失ったファティマ(「はぐれファティマ」と呼ばれる、言わば野良ファティマ)は、そのほとんどが若く美しい痩身の女性であることに加え、騎士への嫉妬心を煽る存在であるため、騎士の力を持たない一般人男性によって性的暴力を受けることも珍しくない(この点に関してはむしろ男性型ファティマの方が悲惨であり、男性型が作られる事が少ない一因でもある)。
ファティマに対するこうした世間の冷遇は、ひとつにはその永遠の美貌に対する世の女性たちの、そしてその美しいファティマを所有しうる騎士に対する世の男たちの羨望にもよるが、何より劇中でアトロポスが語っているように、人間達を凌駕する知力と体力、そして長い寿命を持つ彼女らが、いつか創造主である人類になり替わり万物の霊長として君臨するのではないかという潜在的恐怖(いわゆるフランケンシュタイン・コンプレックス)に依る所が大きい。彼女らに生殖能力が与えられていないのもその現れである。
1人の騎士が複数のファティマを同時に所有することも可能だが、先述した通り一体あたりの維持費が高額であることに加え、通常騎士にとってファティマは(性的処理も含めた)パートナーであるという側面もあるため、実際に複数のファティマを同時所有している騎士は(「はぐれファティマ」を保護するために一時的に仮のマスターとなる場合を除き)極めて少ない。また騎士がファティマの所有を放棄する場合は、ファティマのヘッドコンデンサ(クリスタル)に指を当てた状態で「You seek your next.」(次のマスターを探せ)と命じることで、いつでも所有を放棄できる。もちろんマスターの死亡時もプログラムは解除される(仮にファティマの与り知らぬ処でマスターが死亡した際は、収集した情報からマスターの死を認識した時点で解除される)。ただしプログラム解除でマスターとの絆が完全に失われる訳では無く、静は前マスターのアルテン・サヤステの来訪に歓喜しており、メガエラはウェイ・ルースにその先祖である最初のマスターの面影を見出して涙している。また過去のマスターの許で知り得た重要機密(MHの開発情報など)に対する秘匿性も高く、「脳味噌を引きずり出してデータを直接抽出でもしない限りは漏洩しない」と言われている。
ただし、星団歴7777以降においては星団法は適用されていないためファティマを縛る法は無くなっている。(月刊ニュータイプ2020年7月号)
- はぐれファティマ
- マスターを失い、そのまま騎士や国家などの庇護を失ったファティマのことで、いわば野良ファティマ。多くの場合、戦闘でマスターを失った後に放置されて野良となり、別の騎士に保護されるまで放浪することになる。
- ロストファティマ
- マスターを失ったファティマ。ただし仮のマスターを得るなど他の騎士や国家などの庇護下にある点で、はぐれファティマとは異なる。
- ブーメランファティマ
- マスターを失い製造したマイトや調整役のマイスターの許に戻ったファティマ。
お披露目
ファティマにはその性質上能力の個体差や騎士との相性があり、特定の騎士と組んだ場合に通常よりも高い性能を見せる(初期は国家資産であったが、比較的早い時代にその特性が発見された)。そのため状況が許される限りにおいてファティマ自身が騎士との相性を判断しその所有物となるかどうかを決めることが一般的となっている。それはファティマに認められている数少ない権利の一つとなっている。ファティマを求める争いの反省も踏まえ、公開して集まった騎士らの中からファティマが相手を選び出す式典を「お披露目」と呼び、特に銘入りファティマの場合は式は盛大に執り行われる。
お披露目の多くがアドラー星のトラン連邦共和国で行われるのは、史上初めてファティマに「マスター」と呼ばれた人物が、トラン連邦の前身の一つである旧レント国王ジェスター・ルースであった事が起源となっている。他にも騎士級の見届け人が3人以上いる場であれば、略式的に認められる慣わしとなっている。
このファティマと騎士との相性についてはほとんど解明されておらず、クローム・バランシェでさえ、ミッション・ルースやアイシャ・コーダンテといった奔放な人物を選んだ自分のファティマ達(メガエラ、アレクトー)について「ひどい奴の処にばかり行く。何を考えているのか解らない」と嘆いていた。単なる恋愛感情のようなものではなく、ティータ(クリサリス家)や町(ビィ家)、イカロス(エックス・アトワイト家)のように最初のマスターの子孫に代々仕えていくケースが多い事から遺伝的要因も大きく作用していると考えられるが、メガエラのように幼児期の経験(ミッションに命を救われた)が強く影響したケースもあり、実際のところは不明。ただしこのような特殊な選択が行われるのは銘入りファティマの一部に限られるようで、一般的なファティマの場合は「お披露目に参加した騎士のうち最も強いものを選ぶ」のが普通である。
銘入りファティマのお披露目ともなると、星団各国から国家を代表するクラスの騎士が集まるほか国家元首・外相クラスの人物も多数参加するため、本来の目的であるファティマのマスター選び以外にも国家間外交における重要な場となっており、お披露目に先立ち毎日のようにパーティーが開かれるほか、首脳会談も多数設定される。逆に紛争を抱えている国家の首脳同士が顔を合わせることもあり、騎士同士の小競り合いが発生することも珍しくないため、周囲への被害拡大防止のためお披露目に参加する騎士がモーターヘッドを持ち込むことは禁止されている。
お披露目は、新規に育成されたファティマだけでなく、戦闘や病気等によりマスターを失った「ロストファティマ」や、諸事情により治療・再調整等が必要になりマイトの許に戻った「ブーメランファティマ」(主に「はぐれファティマ」だったファティマが、放浪期間中の怪我や精神的なストレスの治療のため、仮のマスターを決めた後マイトに戻される場合が多い)に対しても行われる。一方で国家が管理するファティマファクトリー製のファティマ(ファクトリーを所有する国家所属の騎士をマスターとする)や、マイトが特定の国家から特殊な目的で発注を受け開発するファティマ、マイトの独断で特定の騎士にファティマを嫁がせるケースなどもあり、必ずしも全てのファティマがお披露目を受けるわけではない(ファティマ・ウリクルは、モラード・カーバイトの「こいつも持ってけ。扱き使ってくれていいぞ」という独断でコーラス3世のパートナーになった。その際、「お披露目はどうするんです」と質問したコーラスにモラードは「必要ない!」と返している)。
なおマスターが決定すると、マスターとなった騎士はマイトに対しファティマの育成にかかった費用+αを支払う(基本的には騎士が所属する騎士団が肩代わりするが、フリーの騎士の場合は自ら支払う)。ただしファティマファクトリー製のファティマに関しては、そもそもファクトリーの運営費用を国家が負担しているため新たな費用は発生しない。新規に育成された銘入りファティマの場合その費用は数十億円相当にも達するため、お披露目に参加できるのは多くの場合国家を代表する騎士団に所属する(=それだけの費用を支払ってもらえる)騎士に限られる。貧乏な騎士は、費用負担が少なくて済む「ロストファティマ」や「ブーメランファティマ」に狙いを絞ってお披露目に参加することが少なくないとされる。
お披露目が行われるのは基本的に「平時」であり、戦時は略式で済まされることが多い。それでも相性の問題から騎士(もしくはファティマ)が死亡して生き残ったファティマ・騎士ですぐに新規のペアが組める確率はせいぜい2割程度。
スタックコード(張り付きプログラム)
2013年連載再開から導入された新設定。
いわゆる特定の騎士を自身のパートナーとして認証する特殊コード。
スタックコードが発生している場合、前述のお披露目を経ても該当する騎士以外をマスターとして認証せず、可能性が皆無であっても追い求める。原則として該当する騎士に「既にパートナーがいる」、「既に死亡している」場合のみ取り消される。またスタックコードの存在に気づいたガーランドが消去するという方法もある。
前のマスターの血縁者を新たなマスターにする例も多い。
スタックコードが発生したケース
- ビルド→ワンダン・ハレー
- スタックコードの存在が明かされたケース。インタシティの最期にモラード、ミースと共に居合わせたビルドがインタシティのパートナーであるハレーに対して抱いてしまった。インタシティの偉大さに畏れを抱きながらもその後若くして騎士を廃業したハレーにスタックコードがついたため見合いを30回も失敗することになり、モラードを嘆かせている。事実に気づいたミースが二人をカップリングするためハレーの捜索に協力する。その後ベラ戦の際に現れたハレーにミースがビルドを急遽引き合わせ、ベラ戦以降では騎士に復帰したハレーと目出度くコンビとなっている。
スタックコードをうかがわせるケース
- ウリクル→コーラス3世
- お披露目前のウリクルがモラードを訪ねるコーラス3世を追跡してからかった結果、フィルモアの演習地に入り込んだコーラス3世はラルゴ・ケンタウリに重傷を負わされる。そのことを悔やみ、コーラス3世本人に謝るウリクルだが、コーラス3世はウリクルを責めることはなかった。その後モラード公認でお披露目抜きに嫁いだ。
- メガエラ→ボード・ビュラード
- トランSPI時代のボードがバストーニュのバランシェ邸を公務で訪ねた際に幼少期のメガエラをからかい逃げたメガエラがサイロ(アマテラスが建造後にほったらかしたオージェ・アルスキュルの格納庫)に転落しそうになった際にボードが身を挺して助けた(いわゆる「おでこちゃん事件」)。このときにスタックコードが生じたようでその後のお披露目で誰もパートナーに選ばず。バランシェが警護のために出向いていたボードと引き合わせた際に彼をマスターに選んだ。ルビール・レイスをはじめとするボードの部下たちは本来お披露目の場にい「てはなら」ないボードことミッション・ルース大統領がメガエラを娶った事実を隠すため、「武者修行」と称する時間稼ぎをして「気がついたらバランシェ・ファティマを娶っていた」という形にした。
- クーン→デイモス・ハイアラキ
- 内戦鎮圧に駆り出されていたハイアラキが不審者としてソープ♀、バランシェを追跡した際にソープ♀より先に戦いを挑んだクーンを圧倒する。ダムゲートコントロールがされていないクーンだがハイアラキの強さに惚れ込んでしまった。ハイアラキには既にサロメがいたにもかかわらず発生した少し特殊なケース。
- パルスエット→ヨーン・バインツェル
- 3001年のボォス星カステポーのノーキィシティにて「はぐれファティマ」として一般人に拉致されかけていたパルスエットをヨーンが助けた際、パルスエットはヨーンをマスターとして認識したが、ヨーンは「ボクは騎士ではない」と拒絶した。このためアイシャがAKDの名の下に保護する。その後、3030年のムンスターでヨーンがアイシャと再会した際にアイシャの悪知恵に引っかかったヨーンが彼女をパートナーにしてしまう。なお、パルスエットの身分は工場の大量生産品(いわゆる銘無し)であるが、人望のあったミハエル・レスターの遺品でもあることから青銅騎士団は今も彼女の行方を捜している。
- ヒュートラン(エミリィ)→ワスチャ・コーダンテ(ちゃあ・てぃ)
- バランシェの死後、アドラー星バストーニュのバランシェ邸でちゃあがメイド修行をした際、執事のウッドからメイド仲間のエミリィとして紹介される。ちゃあが帰宅すると知ったエミリィはちゃあを押し倒して「ご主人様と呼ばせてください」と言って嫁いだ。お披露目もへったくれもなく、そもそもFSS本編ではなくサイドストーリーの「プロムナード」で語られた相当特殊なケース。
血縁関係者に代々嫁ぐケース
元々、強さと共に相性で騎士を選ぶファティマはマスターの子や親族といった「血縁のある騎士」を認めることも多い。
- ティータ→クリサリス家
- イカロス→アトワイト・エックス家
- コンコード→ヤーボ・ビート、デプレ・カイエン
- 町→V家
- チャンダナ、クラトーマ、オデット→フィルモア皇族
- チャンダナは慧茄・ダイ・グ・フィルモアからダイ・グ・フィルモア5世に、クラトーマはパーマネント・レーダー8世から慧茄にパートナーを変えている。オデットは璃里、ジーク、茄里の家族3人をマスターとしている。
スタックコードというより「運命」としか言いようのないケース
- ラキシス→アマテラスのミカド(レディオス・ソープ)
- ファティマというより「別のなにか」になってまでソープに嫁ぎたいというもはや狂気としか言いようのない例。
- クローソー→コーラス6世(コーラス3世)
- まだ星団史に登場してもいない人物をマスターと呼んでしまった異常事例。コーラス王家なら良いというわけでもなく(現にコーラス3世の長女セイレイも相当の騎士)運命としか言いようがない。
- フォーカスライト(アウクソー、デルタベルン)→ナッカンドラ・スバース、ダグラス・カイエン、マキシマム・ハルトフォラス、コーラス6世
- 超帝國の純血の騎士に嫁ぎたいという謎多きスタックコード。アウクソーがまだ幼少の頃からカイエンをマスターと認識し、バランシェとアマテラスを殺害しに来たカイエンに対し制御できない生命体なら処分するしかないと言い放つ二人にアウクソーは助命を嘆願。その様子を見たバランシェに「完成」したファティマには興味がないと勘当を言い渡され、代わりに身元を引き受けたアマテラスに「マスターが死ぬときは共に死にたい」という想いを打ち明けている。その言葉のまま、カイエンの死後もアウクソーは彼をマスターと呼び続け、GTM感応機能を消失(停止)させる。ミースは色々と手を尽くすが彼女をはじめ当代随一のファティマガーランドが束になっても解明できなかった。ただ、GTMガーランドであるツバンツヒがカルテを見た限りではまったく正常だと判断したこと、カイエンとミースの子供に相当するマキシに反応したことをにおわせる発言をアマテラスがツラック隊でミースと会った際に述べている。その後、エトラムルファティマ「デルタベルン」になったとされるフォーカスライトがコーラス6世のパートナーとなることについてもまだ明かされない秘密があるよう。