ブッキングドットコム
宿泊予約アプリ・ウェブサイト
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ブッキング・ドットコム(Booking.com)は、オランダの宿泊予約のためのオンライン旅行会社(OTA)であり、アゴダなどで知られるブッキング・ホールディングスの子会社である。本社はアムステルダムにある。2005年に日本国内での営業を開始して以来、外資系OTAとして国内売上第1位の地位を確立している[3]。

Booking.com B.V.(運営企業)
草創期
オランダのトゥウェンテ大学で情報工学を専攻していたヘールト=ヤン・ブラインスマ(Geert-Jan Bruinsma)は、インターネットを使った起業を志望する大学生であったが、友人とのディナー中にオンラインホテル予約のアイデアを得て、大学卒業後の1996年11月に「Booking.nl」を設立した[4]。1997年1月にウェブサイトを使ったサービスを開始(宿泊施設登録数は10軒)、設立後の約2年間はブラインスマ1人で全ての業務を行う個人企業であったが[4]、設立時点で、写真を閲覧しながら、自身の言語で説明を読むことができ、簡単なステップでホテルを予約できるシステムの構築が考えられていた[5]。当時アムステルダムではインターネットを利用したホテル予約サービスの試みがすでに存在したものの、それらは実際の予約でメールを介さねばならなかったため、ブラインスマはウェブ上で予約が完結するシステムを構築、ライバルを追い抜くことに成功した[4]。ヨーロッパでは一般層へのインターネット普及が緩慢だったため、この時期の利用者の3分の2はアメリカ人旅行者であった[4]。1998年の年末に最初のスタッフが雇用された[4]。この時期のスタッフは学生が中心であったが、後に2008年9月から2011年までCEOを務めるケース・コーレン(Kees Koolen)が参加し、新規の技術スタッフや営業スタッフを巻き込み、展開が進められていった[6]。2000年代に入り、アメリカのオンライン旅行会社が、マーチャントモデル(OTAへの料金先払い、ただし予約後のキャンセル不可)を武器に国際進出を始めたが、ブラインスマはエージェンシーモデル(料金ホテル決済)を使い「キャンセル無料」を看板にすることで旅行者の支持を得られると判断、この方針は以後もCMOのアルトゥール・コステン(Arthur Kosten)らにより継続され、現在のブッキングドットコムに至るビジネスモデルが確立された[4]。2002年以降オランダ国外へ進出し、パリ・ベルリン・バルセロナ等のホテルに取扱を拡大[7]、2003年、ウェブサイト名をBooking.nlから「Bookings」に改めている[4]。本拠地はベルリンに移すことも検討されたが、アムステルダムに落ち着くことになった[8]。
グローバル企業への飛躍
アメリカの多くのOTAが関心をマーチャントモデルに集中させていた中で、2003年、プライスラインドットコムはBookingsのビジネスモデルに関心を示し、買収をオファー[4]、社内の意見は二分されたが、米国資本の投資による事業拡大を目的に[9]、2005年7月、ケース・コーレンが最終的に買収受け入れを決断[10]、プライスラインの一員になることとなった[11]。買収時点での宿泊施設登録数は1万軒前後であったが[12]、2006年、イギリス・ケンブリッジのOTAであったActivehotels.comの統合を契機に[13]、ウェブサイトを現在の「Booking.com」に改名[5]、当時アメリカに比べて立ち遅れていた、ヨーロッパにおけるオンラインホテル予約サービスの拡大が進められた[14]。2007年4月のドバイ・ケープタウンを皮切りに、ヨーロッパ外への進出も開始された[15]。なお創業者のブラインスマは、自身の子育てを理由に2003年いったん会社を離れたが[4]、ケース・コーレンの誘いを受けて2011年3月に復帰、以降技術者として、コンテンツの改善に従事している[10]。
2008年に、ニューヨーク、サンフランシスコ[16]やシドニー[17]など、世界各地に相次いで拠点を開設、2010年9月に宿泊施設登録数が10万軒を突破[18]、2015年2月に60万軒突破[19]、2016年8月に100万軒突破[20]、2018年9月に200万軒を突破した[21]。2011年9月以降、マイクロソフト日本法人元社長のダレン・ヒューストンがCEOを務めてきたが[22]、2016年4月に、CEOは元ゴールデンチューリップホテル勤務のギリアン・タンズに代わり[23]、2019年6月、親会社ブッキング・ホールディングスCEOのグレン・フォーゲルが、ブッキングドットコムのCEOを兼任する体制となった[24]。2012年以降、レンブラント広場前の「The Bank[25]」内に本社を定めている[26]。
総合宿泊予約サイトへの変貌
Booking.com B.V.は現在、世界70カ国に198の支社を持つ[2]。ヨーロッパ各地域[27]やオーストラリア[28]など広い地域において、オンライン宿泊施設予約の最大手企業となっており、アメリカ合衆国が、国別予約数で最多となっている[29]。ブッキングドットコムが事実上グループの売上面における中核事業となったことから、2018年2月、親会社のプライスライン・グループがブッキング・ホールディングス(Booking Holdings Inc.)へ社名変更を行うに至っている[30]。
2000年代の時点では、登録施設のほとんどがいわゆるホテルであったが、2010年代前半から、バケーションレンタルの登録を拡充し[31]、民泊を含む、総合的な宿泊予約サイトに変貌した[32][33]。現在のブッキングドットコムはホテル予約サイトの世界最大手であると同時に、バケーションレンタル予約サイトの世界大手となっており[34]、フォーチュンの報道では、2019年におけるブッキングドットコムの民泊リスティング数が、先行するAirbnbに接近し、両社による競争の激化が報じられている[35]。
様々な企業とのアフィリエート提携を強化しており、エアライン各社やレンタカー、航空券手配サイトなどと提携関係に有る。また、旅行ガイドブック「地球の歩き方」や[36]、世界的に知られる旅行ガイドブック「ロンリープラネット」「ミシュランガイド」も同様にアフィリエートでの提携をしている[37][38]。ほかに、ニューヨーク市観光局[39]やサンフランシスコ観光協会[40]など、世界各地域の観光関係諸機関や航空会社と提携関係を持つ。
シームレスな旅行予約プラットフォームへ
2010年代後半からは、現地アクティビティや交通手段など、宿泊以外の旅行サービスをシームレスに予約できるサービスの拡充に注力している[41]。2016年7月、世界の主要都市の宿泊をブッキングドットコムで予約した利用者向けに、ツアーや美術館などの割引や優先入場を含む、現地アクティビティの予約情報を提供するサービス「ブッキング・エクスペリエンス」を開始[42]、同サービスは2018年5月より、東京や大阪など日本の主要都市の宿泊にも導入された[43]。
ブッキング・ホールディングスの保有するレンタルカーズドットコムは、ブッキングドットコムの傘下に位置づけられ、ブッキングドットコムのプラットフォーム内で、空港送迎およびレンタカーの手配を完了することが可能な仕様となった[44]。外部企業との連携も進められており、2019年10月より、東南アジアの配車アプリGrabと連携することで、ブッキングドットコムのアプリを介して東南アジア地域でオンデマンドの配車サービスが利用可能となった[45]。
日本におけるブッキングドットコム

日本語ウェブサイトは、「Bookings」時代の2005年に開設されており[46]、外資系OTAの運営する日本語ウェブサイトとしては、最も長い歴史を持つ[47]。2009年、東京に事業所を開設[48]。2020年現在、東京(表参道、大崎)、大阪、福岡、那覇、札幌にオフィスを持つ[49]。
日本におけるブッキングドットコムの利用は、開設以来、海外旅行を目的とするアウトバウンド予約の割合が高い時期が続いたが、2016年には、日本国内ユーザーによる国内宿泊施設の予約の割合が最多となり[50]、2019年には、国内宿泊施設の予約において、国内ユーザーによる予約者比率が、海外からの予約者を上回った[51]。日本国内の宿泊施設登録数は、楽天トラベルとじゃらんnetを除く国内のホテル予約サイトをすでに上回っており、外資系OTAの運営するウェブサイト、アプリとしては、2020年時点で第1位となっている[52]。2019年より、食事付き旅館の予約において、国内の予約サイト同様、食事プランの選択が可能となる仕様を導入した[41]。
楽天トラベルとは、2016年2月より、海外ホテル予約サービスに関して提携、一部地域に対する在庫提供を開始した[53]。2018年6月、楽天のグループ会社の楽天ライフルステイと提携の上、楽天ライフルステイおよび楽天の民泊在庫のブッキングドットコムでの掲載を開始した[54]。
民泊に関しては、2016年6月に特区民泊物件の掲載を開始[55]、2018年6月の住宅宿泊事業法施行を前に、同法下で必要とされる自治体への登録番号が未届けの物件を非掲載とする措置を実施し[56]、現在は観光庁長官の登録を受けた住宅宿泊仲介業者となっている[57]。
サービス内容
登録宿泊施設は、高級ホテルチェーンから、旅館、個人経営のB&Bやアパートメント、ゲストハウス、バカンス向けの長期滞在施設、バケーションレンタルなどを30以上もの宿泊施設タイプをカバーしている。また、ブッキングドットコムのバケーションレンタルは、予約時にホストとのやり取りを必要とせず、ホテル予約と同様の操作で予約を完了できるシステムとなっている[33]。
24時間日本語対応のカスタマーサービスセンター(Booking.com Customer Service Center Japan)が、東京(大崎)に設けられている[58]。同センターには旅行業務取扱管理者が常駐、外部委託を排し、対応は全てバイリンガルの自社スタッフにより行われている[33]。
ブッキングドットコムのビジネスモデルは、決済を宿泊施設現地で行う方式(エージェンシーモデル)が用いられている[59]。ただし2018年から、日本を含む一部地域のホテルで、Booking basicと称する即時決済プランを試行導入、同プランはアゴダなど、ブッキングドットコムの提携企業の在庫に拠っている[60][61]。
- ホテル検索
出張利用を選択すると、領収書の発行を宿泊施設に事前依頼可能な仕様となる。Google マップ上で、宿泊施設の位置確認ができ、周辺の宿泊施設も表示される。
キャンセルを宿泊直前まで無料とする宿泊プランを多く掲載していることが、ブッキングドットコムの特徴の一つとなっている。
- 口コミ
ユーザーの参考となる口コミ内容を常に保つ観点から、24ヶ月以内の口コミに限定して表示され、投稿は実際に泊まったユーザーのみが可能なシステムとなっている。投稿者が宿泊者本人であることや不適切な表現の有無等をブッキングドットコムのスタッフが確認の上掲載される。
「Award of Excellence(クチコミアワード)」をはじめ、口コミで高得点を獲得した宿泊施設に対する表彰制度が設けられ、毎年実施されている。高級ホテルの口コミ投稿数では、トリップアドバイザーと僅差の世界第2位となっている[62]。
- 料金支払い・予約確認
支払いは、現地払いプランを中心に、Booking basicと呼ばれる事前全額払いプランなど、多様な支払い方法から選択することができる。キャンセル料が直前までかからないプランを多く掲載していることが、ブッキングドットコムの特徴の一つとなっている。
ブッキングドットコムでの予約は、利用者がブッキングドットコムのフォーマットを通じて宿泊施設と契約することを意味しており、料金先払いのプランも含め、決済は宿泊施設の名義で行われる(ブッキングドットコムが利用者に料金を請求することは無い)[63]。予約には、クレジットカードの登録が必要(キャンセル料の発生時に使用するため)だが、日本国内やアジア地域の宿泊施設の予約では、クレジットカードなしで予約可能な場合も多い。
リクエスト欄から、宿泊施設に直接リクエストを送信することも可能である(海外の宿泊施設の場合は、英語または現地語での送信となる)。簡単なメッセージであれば自国の言葉でホテルにメッセージが送れるサービス「Booking Message」も開始した[64]。
なお、各種免責事項が、ウェブサイト内の利用規約に明記されている[65]。これらの免責事項に属する事柄(オーバーブッキングに由来する予約内容の変更・取消など)に関しては、基本的には、利用者各自が、直接宿泊施設と適切な交渉を取り解決することになる。
- 最安値保証サービス
ブッキングドットコムで宿泊施設を予約後、同条件の予約が別のウェブサイトでより安い価格で提供されていることを発見した場合、カスタマーサービスに連絡すれば、宿泊がその価格と同料金となるサービス。条件を満たしている必要があるが[66]、適用されると、ブッキングドットコムが利用者に差額の支払いを行う[67]。
- 誤課金時の返金手続き
キャンセル無料の宿泊施設でキャンセルを行ったものの、宿泊施設側のミスにより誤って料金を請求された場合は、カスタマーサービスに請求書を送ることによって、返金の手続きが行われる。請求書の送信は、オンライン・紙媒体それぞれ可能である。
- 登録者サービス
アカウントを作成し、メールマガジンに登録すると、「マイ Booking.com」で、シークレットセールと呼ばれる割引情報の表示などが行われる。さらに、予約頻度の高い登録利用者は「Booking Genius」に認定され、一部の宿泊施設に関して、Genius割引と呼ばれる、更なる割引料金で利用したり、Genius無料特典と呼ばれる、レイトチェックアウトやギフトなどの特典が受けられる[68]。
空港発着タクシー
サービス提供地域は明かされていないが、日本の主要国際空港を網羅した配車サービスとなっている。予約は即時確定。予定変更の場合はお迎え予定時刻の24時間前まで無料でキャンセル可能。
- その他
トップページのリンク「フライト」に関しては、2020年3月以降、スウェーデンの航空券予約サイトGotogate(ブッキングドットコムと資本関係の無い別会社)へのリンクとなっている。「レンタカー」に関してはレンタルカーズドットコムを、「レストラン」に関してはオープンテーブルをそれぞれ参照。レンタルカーズドットコム、オープンテーブルは、いずれもブッキング・ホールディングスの傘下にある。
日本の航空会社では、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)が、スカイチームの航空会社では、エールフランス・KLMオランダ航空(フライング・ブルー)などが、ブッキングドットコムを利用した宿泊施設予約により、マイルが貯まるサービスを行っている。ブッキングドットコム専用のバナーを経由し予約するとマイルが貯まる。
派生サービス
- Booking.com for business
法人・団体ユーザー向けの出張管理ツール(日本語対応)。法人会員の登録をすることで様々なサービスを受けられる。2015年4月リリース[69][70]。
論争と批判
個人情報流出問題
2014年の顧客情報の流出
2014年11月、攻撃者は同社のシステムから顧客の氏名、連絡先、予約番号、滞在日程、宿泊先のホテル名などの正確な予約データを不正に取得したことが明らかになった[71]。その後、これらの真正な情報を用いて、予約先のホテルのロゴを使用したなりすましメールを作成し、顧客に直接送信した。メールの内容は、「該当期間の宿泊需要が異常に高いため、事前に宿泊費用の全額を支払う必要がある」と騙り、銀行振込などによる支払いを要求するものであった。実際の予約情報が正確に記載されていたため、多くの顧客がメールを本物であると誤認し、被害に遭う結果となった[71]。
ブッキングドットコムは、自社のメインデータベースやシステムが直接データ侵害を受けた)わけではないと主張した。犯罪グループが提携先の各ホテルに対してフィッシング攻撃を行い、ホテル側の端末を経由して顧客情報が漏洩したのが原因であるとした[71]。
ヒルトンを含む複数のホテル側は、自社のシステムやウェブサイトが侵害された事実はないとして、ブッキングドットコム側の主張を強く否定した。また、ロンドンにある一部のホテルの支配人は、事件発生時に同社のカスタマーサービスに連絡したものの、担当者が状況を全く把握しておらず、対応が極めて遅かったと批判している[71]。
インターネットセキュリティ企業「トレンドマイクロ」の研究者はこの事件を受け、このシステムを独自に検証した。その結果、架空のホテルとして登録した場合、単純な「ログインIDとパスワード」のみでシステムにアクセスできる状態であったことが判明した。専門家は、数百万人の個人情報と財務情報を扱うプラットフォームとしては、アクセス保護の厳格さが欠如しており、セキュリティ対策が不十分であったと指摘した[71]。
ブッキングドットコムは、影響を受けたイギリス、アメリカ、フランス、イタリア、アラブ首長国連邦、ポルトガルの顧客に返金を行っていると述べた。詐欺事件以降、ホテルのサーバーに接続されたコンピュータからのみデータにアクセスできるよう変更を加えた。また、同社のチームは数十のフィッシングサイトを「閉鎖」するために取り組んだほか、いくつかの銀行と協力して資金洗浄用の銀行口座を凍結させた[72]。同ウェブサイトは2018年6月にも再びハッカーの標的となった[73]。
2018年のUAEでの不正アクセスとGDPR違反
アラブ首長国連邦(UAE)のホテル従業員を標的としたフィッシング攻撃により、ブッキングドットコムの管理システムへのアクセス権が奪われ、約4,000人の顧客データと約300人分についてはクレジットカード情報が流出。2021年4月6日、オランダのデータ保護局(DPA)は、一般データ保護規則で定められた期限内に情報漏洩を報告しなかったとして、同社に47万5000ユーロの罰金を科した。犯罪者は約300人のクレジットカード情報を含む、4,000人以上の顧客の個人データを入手していた[74]。
2023年の宿泊施設側へのフィッシング詐欺
2023年以降、ブッキングドットコムのホテルなどの宿泊施設向けに提供する予約管理システムに対し大規模なフィッシング詐欺が行われ、世界規模でアカウントの乗っ取り被害が多発した[75]。攻撃者は一般客を装って宿泊予約を行い、同サイトの公式メッセージ機能を通じてマルウェアが添付されたファイルや偽サイトへのリンクをホテル側に送信する[75]。これを従業員が開くことで施設側のパソコン端末が感染し、システムのログイン情報が窃取された。
アカウントを乗っ取った攻撃者は、正規のホテルになりすまして宿泊客に直接アプローチを行った。「決済エラーが発生したため、再度クレジットカード情報を入力しないと予約がキャンセルされる」といった虚偽のメッセージを送信し、偽の決済画面へと誘導した[75]。公式アプリや正規ルートからの連絡であるため、宿泊客が疑わずにクレジットカード情報を入力してしまい、情報がだまし取られる被害が相次いだ[75]。
2023年、BBCの番組「Watchdog」は、公式のメッセージシステム、なりすましメール、WhatsAppを通じて詐欺師がゲストに接触し、金銭的損失や顧客データの漏洩を引き起こしている事実を発見した。ゲストたちは、のカスタマーサービスが不十分であり、この問題に関して同社に連絡を取るのが非常に困難であったと不満を訴えた[76]。詐欺師は、予約データやゲストの個人情報が含まれるウェブサイトのレプリカにゲストを誘導し、支払い、一時的な資金の振り込み、またはカードの認証を行うよう要求する[77]。2023年11月、BBCは、この手口が非常に儲かるようになったため、サイバー犯罪者がホテルのログイン情報を最大2,000ドル(1,600ポンド)で提供するようになっていると強調した[78]。
日本国内でも深刻な影響を及ぼしており、2024年4月時点で100以上の宿泊施設が被害を公表している。2025年12月にはダイワロイネットホテルズで予約客へのフィッシングメッセージ送信が確認されたほか、2026年5月にはポラリス・ホールディングスの運営ホテルにおいて、本来ホテルに支払われるべき売掛金の一部(約900万円)が第三者の不正口座へ送金されてしまう実害も発生した[79]。
日本の国土交通省と観光庁は、2023年11月14日に消費者への注意喚起を行い、斉藤国土交通大臣が記者会見でブッキングドットコム日本法人に対し、「正確な情報提供」「被害拡大の原因の調査分析」「再発防止策の実施」を直接指導した[80]。観光庁の村田茂樹長官も定例会見において、同事案に対する原因究明や旅行者への注意喚起の徹底、速やかな対応を同社に強く求めている[81]。観光庁は旅行者に対し、不審なメッセージ内のリンクを決してクリックせず、公式カスタマーサポートに直接問い合わせるよう呼びかけている[82]。一方、ブッキングドットコム側は、サービスサイトのトップページに注意喚起を掲載することを拒み、代わりに2023年9月に作成された「これは同社に限ったことではなく、ほとんどの電子商取引プラットフォームが直面する問題です」という責任転嫁とも取れるプレスリリースを再配置するだけの消極的な対応にとどめた[80]。
2026年の不正アクセスによる個人情報漏洩
2026年4月13日、ブッキングドットコムは第三者からの不正アクセスを受け、顧客の予約情報が漏洩した可能性があることを公式に認めた[83]。事の発端は同年4月中旬、同社の公式メールアドレスから見慣れない通知を受け取った複数のユーザーが、インターネット掲示板のRedditへ投稿したことである。当初はフィッシングメールを疑う声が相次いだが、その後同社の広報担当者がメディアの取材に対して漏洩の事実を認めた。同社は事態の封じ込めを宣言し、影響を受けた予約のPIN番号)を強制的にリセットした上で、対象ユーザーへ順次通知メールを送付する措置を取った[83]。
2026年5月4日、日本ホテル協会は公式サイトで会員向けに注意喚起を出した[84]。
同社はクレジットカード情報へのアクセスは否定しているものの、具体的な攻撃の手口、侵入経路、データが外部へ持ち出されたかどうかの詳細、および影響を受けたユーザー数などの被害規模についてはメディアの質問に対し回答を拒否しており、全容は非公表となっている[83][84]。発覚から1カ月以上が経過した現在も、具体的な原因や影響範囲などについて十分な説明がなされていない[84]。
またこの漏洩において流出したデータがフィッシング詐欺に直接悪用された例も多数報告されている[85][83][86]。実際の予約情報(宿泊施設名や日程など)を把握した上で、「旅行代理店」や「ホテルのマネージャー」を名乗る人物から電話がかかってきたり、WhatsAppなどのメッセージアプリを通じて追加の情報を引き出そうとする手口が多数報告されている。さらに一部のユーザーからは、公式発表の数週間前にセキュリティ侵害の疑いを同社に報告していたにもかかわらず「システムは正常」と返答されていたとの証言もあり、検知から公表までの対応の遅れが指摘されている[83]。
反競争的行為の疑い
レートパリティ条項の問題
2010年、イギリスの小規模OTAである「Skoosh」が、大手OTAとホテルチェーン間の価格協定により不当に競争が阻害されているとして、当時のイギリスの競争当局である公正取引局(OFT)に苦情を申し立てた。これを受け、2012年9月、OFTは、ブッキングドットコム、エクスペディア、およびIHGホテルズ&リゾーツに対して異議告知書を発行し、同社とエクスペディアがIHGと個別の取り決めを行い、オンライン旅行会社が部屋のみのホテル宿泊料金を割引する能力を制限したと主張した[87]。ブッキングドットコム、エクスペディア、IHGは、OFTに対して制限を変更する案を提示した。OFTはこの提案を受け入れたが、後に上位機関の審判において却下された[88]。
2015年4月、フランス、スウェーデン、イタリアの競争当局は、ブッキングドットコムが「レートパリティ(価格同等性)」条項を破棄し、競合する旅行会社がより低いホテル価格を提供できるようにするという提案を受け入れた[89]。さらにブッキングドットコムは、この提案をすべての欧州連合(EU)加盟国に拡大して適用することに合意した[90]。ただし、ホテル側が自身のウェブサイトで直接価格を割り引くことは引き続き禁じられている[91]。2015年4月、EUは、ブッキングドットコムが後戻りできない市場支配力に達している可能性のある複数のインターネット企業の1つであると警告した[92]。2015年夏、ブッキングドットコムは、CMAを含む欧州各国の競争当局に対し、法的なコミットメントを提出した。この確約において、両社は欧州経済領域(EEA)全域においてパリティ条項を放棄し、今後は適用しないことに合意した。
2017年3月、トルコ旅行業者協会(TÜRSAB)が提訴した裁判において、トルコの裁判所はトルコ競争法に違反しているとして、同国内におけるブッキングドットコムの活動を停止させた[93]。この判決により同国内ではウェブサイトがブロックされたが、外国からトルコ国内のホテルを予約するためにウェブサイトやアプリケーションを使用することは可能である[94]。
2015年にブッキングドットコムが提出したコミットメントは5年間の期限付きであったため、2020年7月に失効した。しかし、ブッキングドットコムはCMAに対し、今後もイギリス市場において自発的にパリティ条項を適用しない方針を継続する旨を通知した。2022年6月、イギリスにおいて競争法の新規則である「垂直的合意に関する一括免除命令(VABEO)」が施行された。この新規則により、パリティ条項は競争を著しく制限する原則違法行為として明記された。
規制が進むと同時に、過去数十年にわたってパリティ条項が適用されていた期間に生じた損害の賠償を求める動きが活発化した。 2023年から2024年にかけて、イギリスの競争審判所(CAT)において、ブッキングドットコムを相手取った数千億円規模の集団訴訟が相次いで提起された。これには、消費者側からの訴訟と、不当な規約により事業を制限され過剰な手数料を支払わされたとする宿泊施設側からの訴訟の双方が含まれており、現在も係争中である。
日本においては、パリティ条項に対し、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで調査を実施した[95]。2022年3月、同社が該当条項の撤廃や是正措置を含む「確約計画」を提出し、公正取引委員会はこれを認定して調査を終了している[95]。
虚偽の割引表示や偽の在庫不足を用いた価格調整
オランダ消費者連盟(Consumentenbond)とCCC財団は、ブッキングドットコムに対する集団訴訟を開始した。両団体によると、この人気予約サイトは長年にわたりホテルの価格を人為的に高く設定しており、その結果、何百万人ものオランダ人が本来支払うべき金額よりも多くを支払わされてきたという[96]。
これらの団体は、ブッキングドットコムが権力を乱用し、顧客を欺き、公正な競争を阻害したとして非難している。被害額は一人当たり数十ユーロから数百ユーロに及ぶ可能性がある。オランダ消費者協会(Consumentenbond)は、損害賠償請求総額が数億ユーロに達すると推定している。オランダ消費者連盟のサンドラ・モレナール氏によると、ブッキングドットコムは積極的に顧客を欺いていたという。「このプラットフォームは、偽の割引、不完全な価格表示、そして捏造された品薄状態を利用している」と彼女は述べた。「こうした『ダークパターン』によって、ブッキングドットコムは消費者の選択に影響を与えている。これはオランダおよび欧州の規制で認められていない行為だ。」
操作的な販売手法への批判
2019年、欧州委員会および各国の消費者保護協力(CPC)ネットワークとの対話を経て、Booking.comは、期間限定のオファー、予約可能な客室数、価格比較、宿泊施設を提供する業者の種類に関する消費者へのマーケティング・ステートメントを明確にすることを約束した。また、スポンサー付きのリスティングには目印を付け、総額を消費者に提示するための変更も加えられた[97]。Booking Holdings Inc.は、2023年にホテルの客室料金の表示において欺瞞的な取引慣行に関与したとして、テキサス州から提訴された[98]。
消費税込みの価格に対する手数料の請求
2019年7月、高級ホテルチェーンのAldemarは、「市場の法則に反する慣行」を理由に、Bookingの提供するサービスへの参加を取りやめた。ギリシャホテル協会は、付加価値税(VAT)込みの客室総額に対して一定のパーセンテージの手数料を請求するブッキングドットコムの慣行を非難した。これに対し同社は、「あらゆる場所」のホテルとの二国間協定の条件に基づき、協定の当事者は自由に協定から離脱することができると回答した[99][100]。2023年11月、ブッキングドットコムはイタリアにおけるVAT・税金に関する紛争を解決するため、約9400万ユーロを支払うことに合意した[101]。
キャンセルと高価格での再掲載
ブッキングドットコムは、ホテルの予約をキャンセルし、同じ日程の同じホテルの客室をはるかに高い価格で再掲載したとして非難されている[102]。
支払いの遅延
宿泊客がブッキングドットコムを通じて事前決済した宿泊代金は、通常、同社から定期的に宿泊施設へ振り込まれる仕組みになっているが、2023年6月頃からこの振り込みが突如として滞る事態が多発した。
2023年、ブッキングドットコムは支払いの遅延により、宿泊施設のホストに数千ポンドの損失を負わせたとして非難された。影響を受けたと主張しているのは、スコットランド[103]、イングランド、ヨーロッパ[104]、オーストラリア[105]、ニュージーランド[106]、スウェーデン[107]、オランダ[108]、デンマーク[109]、クロアチア[110]、ハンガリー、キプロス[111]、日本[112]、タイ、およびインドネシアのホストたちである。同社は「金融・決済システムの移行に伴う技術的な不具合が原因である」と説明した[113]。宿泊施設側への事前通知や不具合発生時のコミュニケーションが決定的に不足していたため、大きな批判を浴びた。
この支払いスキャンダルは、2023年の7月、8月、9月にハンガリーで最も多く報道された。支払いスキャンダルの新たな詳細は、数週間にわたりハンガリーの最も尊敬され信頼されているニュースサイトのトップ記事を飾った[114][115][116][117]。ハンガリー競争庁(GVH)は、ハンガリーの宿泊施設提供者に対する未払い問題について、迅速な調査を要請する必要があると判断した[118]。同時に、ハンガリー政府観光局(MTÜ)は、この問題の影響を受けた人々に法的支援を提供し、問題の規模を把握するためにハンガリーの宿泊施設提供者にアンケートを送付した[119]。ハンガリーの競争監視当局であるGVHは、迅速な調査の一環として、ハンガリーにおけるオンライン宿泊予約およびサービス市場の調査に関連し、2023年9月6日にBooking Holdingsのブダペストのオフィスに立ち入り検査を行った[120][121]。
日本においては2023年10月、資金繰りに苦しむ国内の宿泊施設オーナーらが原告となり、オランダ本社および日本法人を相手取り、未払い代金および計約3600万円の損害賠償を求めて東京地裁に集団提訴した[122]。
2023年11月7日、CEOであるグレン・フォーゲルは、書簡で支払いスキャンダルの影響を受けたホストに対して謝罪した[123][124]。同時に、「支払いが21日以上遅延した施設に対して、遅延期間に応じた補償金を支払う」という方針を明らかにした。
偽宿問題
2023年頃、他人の別荘の画像を無断で盗用した「架空のホテル」が掲載され、予約して現地を訪れた利用者が路頭に迷うという詐欺被害が発生している[125]。宿泊施設の掲載に対するブッキングドットコム側の審査の甘さが浮き彫りとなっている。国や地域、登録手続きの状況によっては、本人確認や住所確認などの厳重な審査が完全に完了する前の段階で、仮の状態としてサイト上に公開(販売開始)できてしまうケースがあり、詐欺グループはこのタイムラグを利用し、発覚してページが削除される前に予約とお金を騙し取っていると考えられている。
誹謗中傷レビューの削除要請を放置した問題
2025年、予約サイト上の誹謗中傷レビュー(「さいてい」との書き込み)の削除要求を長年放置されたとして、民泊経営会社がブッキングドットコムを提訴した。本件は①売上減少などの実損害がない法人に対する慰謝料請求の可否、②日本の会社法(登記義務)を遵守しない外国親会社に代わる日本法人(子会社)の連帯責任の追及、③そして定型的な入力フォーマットを用意して口コミを投稿させるプラットフォーム運営者自身の表現主体としての直接責任という、3つの未解決な争点について最高裁まで係争中である[126]。
空港発着タクシー道路運送法第78条違反問題
日本国内で配車サービスを利用すると、白タクと呼ばれる自家用自動車を用いて無許可でタクシー営業を行っている事業者に案内されるという実態が判明し、社会問題となっている[127]。2024年2月には道路運送法78条違反容疑で逮捕者も出ている[128]。
イスラエル入植地の掲載
2020年2月12日、同社は国際連合人権理事会が発表した「特定の人権上の懸念を引き起こす」活動に関与している企業のリストに含まれた。同社は「入植地の維持および存在を支援するサービスとインフラの提供」に分類された[129][130]。
2022年9月、同社はイスラエル入植地の掲載物件に警告を追加したが、イスラエル政府の要請により表現は和らげられた[131]。
2023年11月、ELSC、アル・ハク、SOMO、The Rights Forumなどの人権団体は、オランダでブッキングドットコムに対する刑事告発を行った。国際法上違法とされる、占領下のパレスチナの土地にあるイスラエルの違法入植地の貸別荘を掲載し、戦争犯罪から利益を得ていると非難した。団体側はこれがオランダの法律においてマネーロンダリングに該当すると主張している[132][133]。これらの団体は、国際法、2020年からの国連のブラックリスト、およびアパルトヘイトのようなシステムへの企業の加担を理由に、説明責任を求めている[132]。ブッキングドットコムは不正行為を否定し、米国の法律が投資撤退を妨げていると主張した[132]。
2026年2月、スペインの市民社会団体の連合が、マドリードの裁判所でeDreams ODIGEO、ブッキングドットコム、およびエクスペディアの子会社に対して刑事告発を行った。この告発は、スペイン刑法の第301条および第611条、ならびに占領地でのサービスの広告を禁止する2025年9月採択のスペイン王室政令法第10/2025号を根拠とし、占領下のパレスチナおよびシリアの領土における戦争犯罪に関連する収益からのマネーロンダリングが行われたと主張している[134][135]。
ドイツのホテル経営者によるブランドハイジャックの告発
2015年2月、低価格デザインホテルブランド「prizeotel」の共同創設者兼CEOであるドイツのホテル経営者、マルコ・ヌスバウムが公開書簡を発表し、ブッキングドットコムの「ブランドハイジャック」活動を強く批判した。この活動において、同社はいくつかのホテルブランドについてGoogle 検索のトップ表示を獲得するために多額の資金を入札しているとされる[136]。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行時のオランダへの支援要請に対する批判
2020年4月、ブッキングドットコムは、バランスシート上に63億ドルの現金を保有し、株主には数十億ドルを支払いながらも、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による影響を受けた企業を対象としたオランダ政府の救済プログラムに政府支援を申請したことで批判を浴びた[137]。これに対し、同社は5月22日、オランダ政府に対してこれ以上の賃金補助を求めず、長期的な解決策を模索すると発表した[138]。その後、同社は世界の従業員の25%を解雇した[139]。
OAuthログインプロセスの欠陥
2022年11月、Salt Labsは同社のOAuthログインプロセスに欠陥を発見した。この欠陥は、悪意のある人物がゲストのアカウントを乗っ取ることを可能にする恐れがあった[140]。Salt Labsは、この脆弱性を迅速に解決したことを指摘している。