プレカバリー

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木星の衛星の1つであるバレトゥードーの発見年は2017年だが、発見後に2017年以前に撮影された画像にも多数写り込んでいたことが分かっている。これは2003年2月28日カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡が撮影した画像に写っている様子である(オレンジの印の間)。

天文学におけるプレカバリー:precovery 、pre-discovery recoveryの略)[1][2]は、ある天体が発見される前に撮影された過去の画像や写真乾板から、その天体が(気付かれず偶然に)写り込んでいる姿を見つけるプロセスのことであり、主にその天体の軌道を精度よく決定するために行われる。 主に小惑星に対して行われるが、彗星準惑星衛星が古いアーカイブ画像から捜索されることや、恒星太陽系外惑星のプレカバリーでの観測が得られることもある[3]。 なお、太陽系天体における回復(リカバリー)とは、太陽の背後に回るなどしていったん観測が途絶え一時的に見失われた天体が、しばらくしてから再度観測されたことを指し、長い間リカバリーが無いと見失われた彗星見失われた小惑星英語版となる。

天体の軌道決定英語版には、移動する天体の位置を何度も観測する必要があり、観測期間が長いほど計算される軌道は正確になる。しかし新しく発見された天体は、発見日以降の追跡だけだと数日や数週間分の観測しかなく、軌道計算も不正確で予備的なものしかできない。

もしその天体が特に関心の深いものである場合(たとえば地球に衝突する可能性が指摘されている小惑星など)、研究者は発見後の追跡期間が伸びていくのを待つだけでは足らず、プレカバリー画像を捜索する。 予備的な軌道を計算すると、過去に世界各地の大望遠鏡が撮りためてきたアーカイブ画像のうちどの画像に写り込んでいる可能性があるかを予測できるので、時には数十年以上前に撮影されたものも含むそれらの画像に写っていないかを探す。もし写っていることが見つかれば、観測弧英語版と呼ばれる観測期間がずっと伸びるので、軌道精度が飛躍的に向上する。

高速なコンピューターが普及する前は、小惑星の発見の可能性を探るために人の力で画像を分析し測定することは多大な労力を要し現実的ではなかった。当時は、プレカバリーを探すためのアーカイブ画像といえば通常、その数年前から数十年前に撮影された、銀河の研究など他の目的を持って撮影された画像群であり、見つけた小惑星の1つ1つにプレカバリーを探す時間を割く価値もなかった。 現在はコンピューターが簡単に天文画像をデジタル処理し、最大で10億個もの星の位置を含む星表と比較することで、星として記録されていた天体の1つが実は新発見天体のプレカバリーに相当することを判断できる。この手法は1990年代半ばから多くの小惑星の軌道決定に用いられている。

準惑星・準惑星候補

プレカバリーの極端な例として、2000年12月31日に発見された2000 YK66地球近傍天体である軌道が計算されるも、その後のプレカバリーの調査で、1950年2月23日に発見されて仮符号が与えられるも、その後半世紀にわたって行方不明になっていたことがわかり、異例なまでに長期間に伸びた観測期間によって非常に正確な軌道が分かり、地球への衝突可能性もほぼ排除された(29075) 1950 DAがある。小惑星番号が与えられているのも、軌道が正確になったためである。

小惑星(69230) ヘルメス1937年に発見され命名されているも(当時は軌道確定前でも命名ができた)行方不明となり、2003年になってようやく再発見され名前が復活した。 ケンタウルス族天体の(2060) キロン1977年に発見されたが、プレカバリー画像により1895年まで遡られた[4]

さらに海王星の例では、1612年12月28日1613年1月17日に、地球から見て木星のすぐ背後にいる様子をガリレオ・ガリレイが記録していた。当時知られていた5惑星と比べ、海王星の動きは非常に遅く明るさもはるかに暗かったため、ガリレオはこれを恒星扱いしていた。この「恒星」の位置が少し変化していることにガリレオは気付いており、そのほかの恒星と比べた見かけの位置が2回の観測間で異なっていることを指摘してはいたが、写真での記録と違いガリレオのスケッチ画では天体軌道の改良に用いることはできない。 1795年にはジェローム・ラランドも海王星を恒星として記録している[5]。海王星が惑星として発見されたのは結局1846年になってからである。

同様の例として、ジョン・フラムスティード1690年天王星を恒星として記録し、「おうし座34番星」としていた。

最も真偽が疑わしいものとして、木星の衛星ガニメデに関するものがあり、これは1610年にガリレオが発見したと認められている。 しかし中国の天文学者席澤宗英語版はガニメデは紀元前365年に古代中国の天文学者甘徳が発見したと主張している。ガリレオは自作の世界初の天体望遠鏡で初めてガニメデを発見したが、当時甘徳は木星の隣に裸眼で赤い小さな光点を見たと自称し記録している[6]

有名な準惑星や準惑星候補についての発見日と、プレカバリーで遡られた最古の画像の撮影日を示す。 なお準惑星候補の色分類は、以下のマイケル・ブラウンによる、準惑星である確度分類に従っている。

ブラウンのカテゴリー 直径
Nearly certain > 900 km
Highly likely 600–900 km
Likely  500–600 km
Probably 400–500 km
Possibly 200–400 km
出典:[7]
小惑星番号天体発見年最古のプレカバリー 遡及年数絶対等級
2パラス18021779[8] 234.13
134340冥王星19301909[9] 21-0.7
19521カオス19981991 [10] 75.0
20000ヴァルナ20001954[11] 463.76
38628フヤ20001996[12] 45.04
78799ソヴィオソ英語版20021989 [13] 135.5
28978イクシオン20011982[14] 193.6
55637ユニ20021991 [15] 113.87
50000クワオアー20021954[16] 482.82
307261マーニ20021954[17] 483.7
55565アヤ20021997 [18] 53.5
6125332002 XV9320021990 [19] 125.42
174567ヴァルダ20031980 [20] 233.1
849222003 VS220031991 [21] 124.1
208996アクリュース20031996 [22] 73.54
455502(455502) 2003 UZ413英語版20031954 [23] 494.38
90377セドナ20031990[24] 131.83
444030(444030) 2004 NT3320041982 [25] 224.4
230965(230965) 2004 XA192英語版20041989 [26] 154.1
90568ゴヴニュ20041954 [27] 504.25
90482オルクス20041951[28] 532.2
175113(175113) 2004 PF115英語版20041992 [29] 124.54
120347サラキア20041982 [30] 224.36
120348(120348) 2004 TY36420041983 [31] 214.52
136108ハウメア20041955[32] 490.2
145451ルミーナ20051976 [33] 294.4
145452リトナ20051954 [34] 513.89
202421(202421) 2005 UQ51320051990 [35] 153.4
136199エリス20051954[36] 51-1.17
136472マケマケ20051955[37] 50-0.3
470308(470308) 2007 JH43英語版20071984 [38] 234.49
229762Gǃkúnǁʼhòmdímà20071982 [39] 253.69
Gonggong20071985[40] 221.8
523671(533671) 2013 FZ27英語版20132001[41] 124.1
472271(472271) 2014 UM33英語版20142003 [42] 115.2
523794(523794) 2015 RR24520152004[43] 113.6
2018 VG1820182003 [44] 153.5

オールト雲彗星

オールトの雲からやってきた彗星が海王星軌道に相当する30.1 AU (4.50×109 km)の位置から近日点まで移動するには10年以上の年月を要する。 現代の掃天観測は網羅的で非常に暗い天体まで撮影しているので、重要なプレカバリー画像が見つかっている。

主なオールト雲彗星
彗星 発見日 プレカバリー撮影日 発見時の太陽からの
距離 (au)
プレカバリー撮影時の
太陽からの距離 (au)
出典
ボアッティーニ彗星 (C/2010 U3)英語版2010-10-312005-11-0518.425.8JPL
C/2012 S1 アイソン彗星2012-09-212011-09-306.39.4JPL
サイディング・スプリング彗星2013-01-032012-10-047.27.9JPL
パンスターズ彗星 (C/2017 K2)英語版2017-05-212013-05-1216.123.7JPL

関連項目

出典

外部リンク

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