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ボルノレキサント

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ボルノレキサント: Vornorexant)は、不眠症および睡眠時無呼吸症候群の治療のために開発されたオレキシン受容体拮抗薬である[3][4][5] 。オレキシン受容体OX 1およびOX 2の両受容体を拮抗する[5]

販売名 ボルズィ
別名 ORN-0829; TS-142
薬物クラス オレキシン受容体拮抗薬
概要 臨床データ, 販売名 ...
ボルノレキサント
臨床データ
販売名 ボルズィ
別名 ORN-0829; TS-142
投与経路 経口投与[1]
薬物クラス オレキシン受容体拮抗薬
薬物動態データ
消失半減期 1.3–3.3 時間[1][2]
識別子
CAS登録番号
PubChem
CID
ChemSpider
UNII
KEGG
化学的および物理的データ
化学式 C23H22FN7O2
分子量 447.474 g·mol−1
3D model
(JSmol)
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「ボルノレキサント」のブリスターパック

大正製薬により自社創製され、開発された[3][6]。2024年9月12日 、大正製薬はボルノレキサントを「不眠症」の適応で厚生労働省に製造販売承認申請を、2025年8月25日厚生労働省から製造販売承認を受けた[6][7]。日本におけるオレキシン受容体拮抗薬としては、4剤目の製造販売承認となった[8]。商品名は「ボルズィ(Vorzzz)」[9]。臨床試験時の開発コードはORN-0829 および TS-142。

概要

ボルノレキサントの血中濃度は2.5時間でピークに到達し、半減期は1.3〜3.3時間である[1][2]。オキサアジナン環を導入することにより、オレキシン受容体阻害活性と脂溶性低減という特徴を併せ持ち、消失半減期(t1/2)が短いという薬物動態プロファイルを得ることを目指して開発された[10]。 早い血中濃度の立ち上がりと短い半減期により、入眠をしやすく、また翌日の眠気などの副作用を軽減することを目指して設計されている[5]

商品名の「ボルズィ(Vorzzz)」は、一般名のVornorexant(ボルノレキサント)+ZZZ (眠りを表す様子)から命名された[10]

ボルノレキサントに特徴的な添付文書の記載

ボルノレキサントは主にCYP3A4で代謝され、作用増強の恐れがあるため、添付文書でグレープフルーツジュースは併用注意となっている[11]。先行して発売されたオレキシン受容体拮抗薬3剤(スボレキサントレンボレキサントダリドレキサント)の添付文書にはグレープフルーツジュースに関する注意は記載されておらず、本剤で初めて記載された[11][12][13][14]

自動車運転等の危険を伴う機械の操作については、先行3剤(スボレキサント、レンボレキサント、ダリドレキサント)では、添付文書の重要な基本的注意において「従事させないこと」となっているのに対して、ボルノレキサントは「適否を慎重に判断し、危険を伴う作業等を行う場合には十分な注意が必要であることを適切に患者に指導すること」とあり、禁止されていない[11][12][13][14]

歴史

  • 2024年
    • 9月12日 - 大正製薬はボルノレキサントを「不眠症」の適応で厚生労働省に製造販売承認申請を行った[6][8][15]
  • 2025年
    • 1月24日 - 大正製薬とMeiji Seika ファルマが、ボルノレキサントの国内販売権許諾契約を締結したと発表[16]。大正製薬が製造販売承認を取得し、両社が国内での販売および医療機関への情報提供活動を共同で実施することとなった[16]
    • 7月31日 - 厚生労働省の薬事審議会・医薬品第一部会はボルノレキサントの承認を了承[9]
    • 8月25日 - 厚生労働省が「不眠症」を効能又は効果とした製造販売承認[7]
    • 10月15日 -厚生労働省の諮問機関である 中央社会保険医療協議会がボルノレキサントの薬価収載を承認[17]
    • 10月22日 - 薬価収載[18][19]。薬価収載時の薬価は2.5mg 1錠 47.80円、5mg 1錠 71.30円、10mg 1錠 106.40円[18][19]。薬価収載時の中医協資料では、ピーク時(発売8年度目)の予想売上高は119億円(薬価ベース)、投与患者数は70万8000人[20]
    • 11月20日 - ボルノレキサントの創薬研究が「2025年度 日本薬学会医薬化学部会賞」を受賞[21]。一般的に、消失半減期を短くすると薬効が減弱する傾向があるが、短半減期と薬効発現を両立させた化合物設計と薬物動態研究が評価されての受賞となった[21]
    • 11月27日 - 発売[19][22]。製造販売元は大正製薬[23]。大正製薬とMeiji Seika ファルマが一物一名称で併売する[23]。大正製薬が完全に自社開発の医療用医薬品を発売するのは約10年ぶりとなる[24]
    • 12月18日 - 想定を上回る一時的な出荷数量の増加が見込まれるため、ボルズィ2.5mgを限定出荷(出荷数割当運用)[25][26][27]。ボルズィ5mg、10mgは通常出荷継続[25][26][27]
  • 2026年
    • 2月6日 -安定供給の目途がついたため、ボルズィ2.5㎎の限定出荷解除[28][29][30]

薬剤の特徴・薬物動態

ボルノレキサントはCYP3A4で主に代謝される[10]。オレキシン受容体拮抗剤の創薬過程では、脂溶性を下げて体内の分布容積を小さくすることで半減期を短くした場合、オレキシン受容体の阻害活性が下がるという課題があった[20]。そこでボルノレキサントは、先行品3剤にはない「オキサアジナン環」構造を導入することにより、オレキシン受容体阻害活性と脂溶性低減という相反する特徴を併せ持つことを可能にした[20]。これにより、入眠困難と睡眠維持困難の改善と共に、投与翌日の持ち越し効果の懸念減少が期待できる製剤となった[20]

食事の影響

日本人健康成人男性12例にボルノレキサント10mgを空腹時及び食後に単回経口投与したとき、最高血中濃度到達時間(Tmax)(中央値)は食事により1時間遅延した[10][11]。作用を増強させるおそれがあるため、グレープフルーツジュースは併用注意となっている[11]

高齢者

健康高齢男性8例(65歳以上、平均年齢69.3歳)にボルノレキサント20mgを1日1回7日間反復経口投与(就寝前投与)し、薬物動態を検討したところ、経口投与による明らかな蓄積性は認められず、同試験で検討した非高齢の健康成人12例(20歳以上45歳未満の男女、平均年齢32.2歳)の薬物動態と大きな違いはみられなかった[11]

自動車運転等の危険を伴う機械の操作 

医薬品医療機器総合機構(PMDA)のボルノレキサントの審査結果報告書では、「ボルノレキサント投与による持ち越し効果について、日中の主観的眠気の評価、認知機能の評価において、プラセボ群と比較して、ボルノレキサント群で悪化する傾向はないことを確認した。不眠症に対する睡眠衛生指導が適切になされ、ボルノレキサントを就寝前に投与し、十分に睡眠時間を確保できることを前提とすれば、一律に自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意喚起をする必要はない」と記載されている[31]。ボルノレキサントの添付文書では、「適否を慎重に判断し、危険を伴う作業等を行う場合には十分な注意が必要であることを適切に患者に指導すること」となっている[11]

有効性加算の不服意見の申し立て 

ボルノレキサントの薬価算定において、大正製薬は「ボルノレキサントは睡眠薬の副作用である持ち越し効果を低減し、承認審査において自動車運転等の中止を求める必要がないと評価された[18]。不眠症患者のうち、運転等を中止せざるを得なかった者や、生活上運転が必須で服薬できなかった者を含め、すべての不眠症患者に有用である」として、有用性加算の適用を求める不服意見を申し立てた[18]

これに対し、中医協は「ボルノレキサントは不眠症に対する治療選択肢の一つ」と評価し、服用後の運転等については患者の状態を十分に把握した上で慎重に判断すべきであるとした[18]。そのため、すべての患者が運転可能とはされておらず、自動車運転等を中止できない患者に投与できるとは言えないこと、また既存薬と比較して使用上の利便性の著しい向上が認められないことから、有用性加算の対象外と判断、申し立ては却下された[18]

臨床試験

第3相臨床試験

TS142-301試験

  • 試験デザイン

多施設共同無作為化プラセボ対照並行群間比較試験として実施した[8]。被験者は不眠症患者596例。ボルノレキサント5mgもしくは10mgか、プラセボを1日1回、2週間投与した[8]。主要評価項目は、患者自身による睡眠日誌を用いて就床から眠りにつくまでの時間を評価する「sSL」を設定[8]。副次評価項目は、睡眠日誌で就床時間のうち睡眠時間が占める割合を評価する「sSE」を設定[8]。ベースラインからの変化を検証した[8]

  • 結果

sSLとsSEのいずれも、統計学的に有意に改善した[8][32][33]。主観的睡眠潜時は、プラセボ群と比較して、5mg群で-10.6分、P値<0.001、10mg群で-10.6分、P値<0.001であった[34]。安全性面でも、確認された有害事象のほとんどが軽度で、重篤なものは認められなかった[8]。主な有害事象には傾眠があり、5mg群で3.1%、10mg群で3.6%、プラセボ群で1.5%認められた[8][33]

論文

脚注

関連項目

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