ラ・ジョコンダ
From Wikipedia, the free encyclopedia
概要
作曲の経緯と初演
オペラ『リトアニア人』の成功によって注目されたことを契機として、新しいオペラの題材を探していたポンキエッリは、リコルディ社の社長であるジュリオ・リコルディからの提案で、ヴィクトル・ユーゴーの戯曲『パドヴァの僭主アンジェロ』(Angelo, tyran de padoue)をオペラ化することに決めた[注釈 1]。台本は作曲家のアッリーゴ・ボーイトが担当し、ポンキエッリは1874年頃から作曲に着手する[2]。 ポンキエッリは作曲中の1875年の時点でこの台本に不満を示し、ボーイトと発案者であるリコルディとの間で何度かやりとりをしており、幾度か練り直したりもしたが、結果的に1876年の初演間近まで時間を要している[2]。 1876年4月8日にミラノ・スカラ座で初演でのオペラの評判は概して好評だった。ミラノの権威的な批評家フィリッポ・フィリッピは「ヴェルディを除けば、現役のイタリアの作曲家でこれだけの重要な作品を生み出せるのはポンキエッリのみだ」と絶賛した[3]。 1876年にリコルディ社によって出版もされた[2]。
度重なる改訂

ポンキエッリは初演時の出来栄えに満足することが出来ず、1876年10月18日のヴェネツィア初演に際して、ポンキエッリは第1幕にフルラーナ(舞曲)を加え、エンツォとバルナバの二重唱のために新たなカバレッタ「おお、この魂の叫びが」を書き、第2幕のラウラの〈祈り〉と第3幕のアルヴィーゼのアリアを追加した。アルヴィーゼのアリアは後に削除された[3]。 1877年1月13日のローマのアポロ劇場での公演のために、ポンキエッリは第1幕のフルラーナの反復をカットし、新しいフィナーレを書き、第2幕を当初の海上での戦闘に代えてエンツォとジョコンダの二重唱で終わらせた[3]。 1879年11月27日のジェノヴァで再演された折に大幅な改訂が施された[2]。 1880年2月12日のミラノ・スカラ座での再演で最終的な調整が行われた。ここで、ポンキエッリはアルヴィーゼのアリアを再度書き直したほか、第3幕のフィナーレに重要な変更を加え、当初のストレッタ[注釈 2]を先行するペッツォ・コンチェルタート(アンサンブル)の主要主題によるオーケストラの結びに置き換えた。この手法は当時全く新しいものと見なされ、この作曲家の最も優れた弟子プッチーニに引き継がれることになる[3]。
改訂後の展開
イギリス初演は1883年5月31日にロンドンのコヴェント・ガーデン王立歌劇場によって行われた。出演はマリア・デュラン、スタール、フランチェスコ・マルコーニ、アントニオ・コトーニらで、指揮はエンリコ・ベヴィニャーニ であった[4]。
米国初演は1883年12月5日にメトロポリタン歌劇場にて行われた。出演はクリスティーナ・ニルソン、エマ・ファーシュ=マディ、ロベルト・スターニョ、ジュゼッペ・デル・プエンテら、指揮はオーギュスト・ヴィアネージであった[4]。
日本初演は昭和音楽大学オペラ研究所オペラ情報センターのデータによれば、1925年3月12日にカーピ伊太利大歌劇團により帝国劇場にて、上演された[5]。
作品と音楽
『オックスフォードオペラ事典』によれば「ポンキエッリの最大で唯一息の長い成功を収めたのは《ジョコンダ》であった。彼の劇的才能はこの作品において最高の結果を生み出しており、ボーイトの台本はフランス風のグランド・オペラやイタリアのロマン主義的なメロドラマの多くの特徴を結び合わせて、心地良く温かい音楽に対するポンキエッリの天賦の才能に合うようになっている。この作品の音楽様式とドラマ様式は、オペラ史においては既に使い古されたものであったが、アリア〈空と海〉や〈自殺〉及びバレエ〈時の踊り〉など有名な音楽が含まれている」[6]。
『ラ・ジョコンダ』は『アイーダ』を除けば、最後のイタリア式グランド・オペラで、ポンキエッリは、形式上はこの時代としてはオールド・ファッションとも言えるドニゼッティ風なスタイルをとり、伝統的なナンバー区分により、前奏曲を含め22曲の構成となっているが、曲の内容は複雑で区分からはみ出た新しい一貫した劇的表現が見てとれる。また、一つの調性に留まらず、次から次へと転調を重ねるモザイク的手法を取ることや管弦楽に出る激しく叩きつけるようなアクセントは、愛弟子プッチーニやマスカーニに強い影響を与えて、近代オペラの先駆けとなった[7]。
『ラルース世界音楽事典』によれば「音楽の面からみれば、ポンキエッリの創意はしばしば俗っぽいということをということを認めなければならない。それを認めたうえで、本作はその効果が確実な悲愴な調べを持ちながら、演劇運動のある確実な方向を示している。その上、本作はヴェリズモの運動を前もって表していたという点で[注釈 3]、1876年の時点において先に進んだ作品であった。この観点からみれば、ポンキエッリのこのオペラはロマン派のオペラと20世紀の転回点でイタリアにおいて主流となる自然主義のオペラとの真の変遷を形成しているということができる」[8]。
ファブリツィオ・デッラ・セータは「ポンキエッリの音楽は大雑把だと非難されることがよくあった。この見方について本当のことを言うならば、洗練されていることがイタリア・オペラに期待された性質ではなかった時節にあって、《ジョコンダ》は並み以上のものになっていなかったということである。評価できるのはむしろ楽想の流麗さに加えてポンキエッリは恐らくヴェルディとマスカーニの間にあって、〈ロザリオ〉のテーマやロマンス〈空と海〉のような記憶に残る旋律を創作できる唯一のイタリア人作曲家だった、色彩的な管弦楽の巧みな使用と取り分け演劇的な感覚である。幕単位で楽曲構成に長い息づかいを与え、強く惹きつける場面を作り出すことができている」との見解を示している[9]。
ロザリオのテーマはチェーカのアリアのクライマックスの楽節からとられている。一方、ジョコンダの母親への愛情を表す、波打つような調べは第1幕の彼女と母親、(隠れている)バルナバの三重唱からとられている。チェーカは明らかにジャコモ・マイアベーアの『預言者』のフィデス[注釈 4]をモデルとしている[10]。
河野典子によれば「本作はヴェルディとプッチーニの間に咲いた一輪の花とも言える作品である。ソプラノ、メゾソプラノ、コントラルト、テノール、バリトン、バスの6人が、それぞれに名場面を作っていく、言わば〈遅れてきたグランド・オペラ〉といった趣の作品である。一方で、このオペラは〈死〉というテーマにも貫かれている。歌い手として盲目の母と二人の慎ましい生活を支える庶民のジョコンダ。信心深く、心優しいジョコンダとその母チェーカは、あまりに優しすぎ、純粋すぎて、思いがけず関わりを持ってしまった貴族たちに翻弄され、死んでゆく。-中略-なに一つ救われるところのないヒロインの孤独な結末が、観ている側の心には重くのしかかってくる。本作の作品としての完成度は高く、それぞれの役に聴かせどころが満載であるにもかかわらず、上演回数は多いとは言えない」[11]。
《時の踊り》
《時の踊り》は本作の第3幕のために作曲されたバレエによるディヴェルティスマンである。宗教裁判所の所長の邸宅で催されるパーティを口実として、昼と夜の様々な段階の(夜明け、昼、夕べ、夜)をテーマとする踊りのディヴェルティスマンが繰り広げられるこれらの段階は、昼の力と夜の力の間の永遠の戦いを表現する日々のドラマとして、衣装、照明、振付によって表現される。このバレエは非常に人気を得て、独立して演じられるようになった。オペラ本体より多くの観衆に知られている[12]。
本作は、とりわけポンキエッリのバレエ作曲家としての力量を示している。《時の踊り》がオペラのバレエの中で唯一、完全な、独立した音楽を形式しているだけではない。この作品全体が舞踏のリズムに満ちており、それがこのオペラの(常に優れているとは言えないまでも)豊かで自然な抒情性に更なる活力を与えている[10]。
ディズニーは『シリー・シンフォニー』シリーズの「春」(1929年)で使用し、1940年公開の映画『ファンタジア』ではカバのバレリーナを主役としたダチョウ、象、ワニたちの踊りの音楽に使用された。
原作とリブレット
原作はヴィクトル・ユーゴーの戯曲『パドヴァの僭主アンジェロ』(Angelo, tyran de padoue, 1835年発表)となっている。台本を委託されたアッリーゴ・ボーイトは、それを大規模な合唱の場面、壮大な歴史的枠組み、豊富なコントラスト、ドラマの中心に置かれたバレエを含む徹底してウジェーヌ・スクリーブ風の〈グランド・オペラ〉(遅ればせながら、当時のイタリアで大人気を博していた)に仕立てた。ボーイトはユーゴーの戯曲を下敷きにしながらも、ユーゴーのタイトル・ロール〈専制者アンジェロ〉の重要度を下げ、ヒロインを理想化する[注釈 5]と同時にヴェネツィアの密偵を毒々しく味付けされた悪魔的な人物に昇格させた[注釈 6]。こうして出来上がったイタリア語のリブレットをボーイトは筆名として「トビーア・ゴッリオ」として発表した[3]。
ボーイトは原作の戯曲から素材のみを借り、スペクタクルな効果を上げるために、時代と場所を16世紀中頃のパドヴァから栄華を誇った17世紀の水の都ヴェネツィアに移し、-中略-銅の十字架からロザリオに変更するなどして、幕ごとの場所設定も見事で、真実味に溢れたグランド・オペラに相応しい多彩で、壮麗な台本を仕上げた[15]。
台本作家の選定
永竹由幸によれば、ジュリオ・リコルディは台本作家の選定にも頭を悩ませていた。というのは、それまでのイタリアの台本作家はドラマの筋立てというよりも、主にアリアが効果的か、フィナーレのアンサンブルをどう展開するかに重点をおいて、台本を書いていた[16]。しかし、19世紀も後半になると、そうした古いスタイルによる台本のオペラでは飽き足らなくなる。その頃、ミラノではフランス・オペラが非常に多く上演されるようになっていた。リコルディ社がイタリアの作曲家をほとんど抑えていたため、ライバルのルッカ社が輸入作品に頼らざるを得なかったからである。イタリアにマイアベーアやフロマンタル・アレヴィの作品が多く紹介され、聴衆はフランス・オペラの音楽と物語がどう噛み合うかという劇的構成が優れていることを知ったからである。しかし、イタリアにはウジェーヌ・スクリーブのような文学的才能をもった台本作家はいなかった。そこで、ジュリオ・リコルディは作曲家であるボーイトに目を付けたのである[17][注釈 7]。
登場人物
| 人物名 | 原語 | 声域 | 役 | 初演時の配役 |
|---|---|---|---|---|
| ジョコンダ | Gioconda | ソプラノ | ヴェネツィアの歌姫 | マッダレーナ・マリアーニ・マージ |
| エンツォ・グリマルド | Enzo Grimaldo | テノール | 公爵。今は追放の身となっている | フリアン・ガヤレ |
| アルヴィーゼ・バドエロ | Alvise Badoero | バス | 異端審問所の長官の一人 | オルモンド・マイーニ |
| バルナバ | Barnaba | バリトン | 語り部を装う十人評議会の密偵、アルヴィーゼの腹心[注釈 8] |
ゴッタルド・アルディギエーリ |
| ラウラ・アドルノ | Laura Adorno | メゾソプラノ | アルヴィーゼの妻。エンツォの元恋人 | マリエッタ・ビアンコリーニ・ロドリゲス |
| チェーカ | La Cieca | コントラルト | ジョコンダの母で盲目[注釈 9] | ジュディッタ・チェレガ (Giuditta Celega) |
| ズアーネ (ツァーネ) | Zuàne | バス | ゴンドラ乗りの出場者 | ジョヴァンニ・バッティスタ・コルナゴ (Giovanni Battista Cornago) |
| イゼポ | Isèpo | テノール | 代書屋(公証人) | アメデオ・グラッツィ (Amedeo Grazzi) |
| 歌手 | Un cantore | バス | - | ジョヴァンニ・バッティスタ・コルナゴ |
| 水先案内人 | Un pilota | バス | - | ジョヴァンニ・バッティスタ・コルナゴ |
| 合唱:観客、議員たち、貴族の男女、仮装した人々、群衆、歌手、修道僧たち、水夫とその見習い、騎士たち、エキストラ(黙役)。 | ||||
楽器編成
演奏時間
全幕は2時間45分。各幕では第1幕:55分、第2幕:35分、第3幕:40分、第4幕:35分。
あらすじ
前奏曲
当時の慣例に従って、前奏曲によって幕を開ける。主要動機は第1幕のチェーカの歌うロマンツァ「貴婦人か天使のような声」の後半のロザリオの言葉で歌われるものと不気味なムードのバルナバの動機を中心にした悲劇を予感させる曲である。演奏時間は約5分程。
第1幕 ライオンの口
- 公爵邸の中庭

多くの人々が祭りを祝う合唱(「祭りだパンだ」)で幕が開く。宗教裁判所のスパイで、流しの歌手に変装したバルナバが一人柱にもたれたまま、人々の騒ぎを冷ややかに見つめている。人々がゴンドラの競争を見物に行く。バルナバは牢獄を見やりながら、歌手ジョコンダが盲目の母チェーカの手を引いて現れる。チェーカ、ジョコンダ、バルナバが〈テルツェッティーノ〉「娘よ、ふらつく足元をいつも支えてくれて」(Figlia che reggi il tremulo pie)[注釈 10]を歌う。エンツォに会うために母を待たせて行こうとするジョコンダの前にバルナバが立ちはだかり、執拗に彼女にまとわりつく。しかしジョコンダは相手にせず、そのまま振り切って逃げて行くのだった。逃げられてしまったバルナバは母チェーカを見て「彼女は俺のもの」と呟いて利用せんと企む。
ゴンドラの競争に行っていた多くの人々が、優勝者を囲んで戻って来る。その中に船頭のイゼポとツァーネも含まれている。バルナバは競争に負けた船頭ツァーネに目をつけ、彼に対して、「敗因はジョコンダの盲目の母が呪いをかけたのだ」と吹き込む。バルナバの悪辣な言葉に耳を傾けたツァーネは真に受け止め、魔女と言いたて、イゼポやその仲間、人々は「火あぶりにしろ、殺せ」と叫び、騒ぎが始まる。人々によって捕らえられ、警官に引き渡されるチェーカが助けを求めようとするところへ、エンツォとジョコンダが戻って来る。一向に騒ぎは収まらず、母を救おうと人々と対立するジョコンダであったが、そこに宗教裁判官長官のアルヴィーゼと黒いビロードで顔を覆った妻ラウラが共に現れる。ジョコンダの懇願を聞いてラウラは夫に命令し、アルヴィーゼの裁断でチェーカを許すことにする。チェーカは短いロマンツァ「貴婦人か天使の声」(Voce di donna o d'angelo)を歌い、感謝の気持ちを込めて手にしていたロザリオをラウラに渡す。ラウラとエンツォは昔の恋人で、エンツォは恋する人であることを悟るのだった。
やがてエンツォとバルナバを残して全員が退場し、人々は教会に入っていく。バルナバはエンツォが追放中の公爵エンツォ・グリマルドであることを暴き、正体を見抜かれエンツォは驚く。バルナバはエンツォとラウラを罠にかけるため、今晩ブリガンティーノ舶でラウラを待つエンツォに手助けしようと話を持ちかける。エンツォが去って行くと、バルナバは公証人のイゼポを呼び出し、ラウラとエンツォの仲を密告し、宗教裁判官宛てに「今晩、奥様がエンツォと逃亡する」という口述筆記させた密告状を書かせ、ライオンの口へ投函して、スパイこそこの世の王であると「おお、記念碑」(O monumento!)と歌い[注釈 11]、そのまま去って行く。2人のやり取りを一部始終を物陰に隠れて聞いていたジョコンダと母チェーカは絶望し、エンツォが本当に愛しているのはラウラであることも知って裏切りと悲しみに怒りを隠すことが出来ないジョコンダは「私は裏切られた」(Tradita!)と嘆くのであった。
第2幕 ロザリオ
- フジーナ海の荒涼とした岸辺の周辺

水夫たちが歌っているところに、漁師に変装したバルナバがイゼポと共に現れ、〈舟歌〉「ああ、漁師よ、釣り餌を沈めろ」(Pescator, affonda l'esca)と歌う。そこにエンツォが出て来て、水夫たちを休ませ自分が見張りをすると言って一人甲板に残り、ラウラを待ちながら有名な〈アリア〉「空と海」(Cielo e mar!)を歌う。ラウラを乗せた小舟が近づき、2人は抱き合う。ラウラはエンツォにバルバラには不吉なものを感じると伝える。しかし、エンツォは再会の喜びで、その言葉には耳を貸さずに〈二重唱〉「ああ!心配しないで」(Deh! non turbare)を歌う。それを遠目で見てほくそ笑むバルナバ。
エンツォが出帆の準備に中へ降りて行くと、ラウラは聖母の像に自分たちの愛の航海の安全をマリア像に祈る〈ロマンツァ〉「水夫の星、清き御母」(Stella del marinar! )を歌う。そこに仮面をつけたジョコンダが忍び入って現れ、ラウラを前に恋敵同士が激しく言い争い、激しい憎悪と嫉妬の念に満ちた言葉を浴びせ〈二重唱〉「あそこで待ち伏せをしていました」(Là attesi e il tempo colsi)となる。ジョコンダは遂に短刀を抜きラウラを刺そうとするが、追いつめられたラウラは聖母に祈りながらロザリオを高く掲げ、それを見たジョコンダは見覚えのあるロザリオを見て驚き、相手が母の命の恩人であることを悟り、自分の名を名乗って、ラウラを小舟で逃してやる。物陰から様子を見ていたバルナバはラウラの後を追う。
ラウラを探して上がって来たエンツォにジョコンダは、ラウラが身の安全のために逃亡したと嘘の証言を言い、これに憤慨したエンツォは激しく彼女に詰め寄るが、彼がその陰謀によって政敵の手中に堕ちていることを語る。アルヴィーゼを迫って来る中、エンツォは松明で船に火を放って海に飛び込む。ジョコンダはエンツォの心が変わらないことでラウラへの嫉妬心を吐露する。
第3幕 黄金の家(全2場)
第1場 アルヴィーゼの邸宅の一室
アルヴィーゼは妻の不貞を知るや否や怒りを露わにし、妻を毒殺することを決意し、「私の先祖の亡霊に」(Ombre di mia prosapia)と独白する。そこにラウラが来てアルヴィーゼに問い詰められ、〈二重唱〉「私に死ねとおっしゃるのですか、恐ろしい!」(Morir! è troppo orribile!)となる。しかし白状しないラウラに業を煮やしたアルヴィーゼは死を命じ、毒薬の入った瓶を渡して出て行く。ラウラの危機を察して忍び込んできたジョコンダはラウラに駆け寄り、瓶を奪い取って代わりに仮死状態になる秘薬を与える。躊躇うラウラだったがようやく飲んで倒れるのを見て、ジョコンダは空瓶を移し替えて、「ああ、お母さん、運命の島で」(O madre mia, nell'isola fatale)とラウラを救う決意を固め、急いで出て行く。
第2場 舞踊室
場面が変わって、館の大広間にある舞踊室で多くの人々が集まっている。ここで有名なバレエ音楽《時の踊り》 (La danza delle ore)が踊られる。バレエが終わるとバルナバが邸内に忍び込んでいたジョコンダの母チェーカを連れて現れる。ラウラの死を告げる鐘の音が響いてくる。客の中にいたエンツォはつけていた仮面を取り正体を明かし、アルヴィーゼに対して領地と恋人を奪った恨みとして名乗りを上げる。大広間は混乱状態となる。
アルヴィーゼはカーテンを引いてベッドに横たわるラウラ(仮死状態)を客たちに見せ、「殺したのは自分だ」と言い放つ。エンツォは短剣を手にとってアルヴィーゼを刺そうとするが、衛兵たちにすぐに取り押さえられ、会衆の叫びが入り混じる中、バルナバはチェーカを連れ去る。
第4幕 オルファノ運河
- ジュデッカ島の荒れ果てた宮殿

短い前奏曲(アンダンテ)で始まるが後の結末を予期させる。荒れ果てたジュデッカ島の宮殿の一室にジョコンダは一人物思いにふける。そこへ歌手仲間の2人の男が黒いマントに包まれた仮死状態のラウラを運び入れる。ジョコンダは昨晩から姿を消しているチェーカを探すよう頼んで男2人はその場を後にする。懐剣を見つめて毒薬の入った瓶を手に取るジョコンダは自分に幸せがもたらされるのではないかと希望を捨て切れず、心が揺れ動く〈アリア〉「自殺!」(Suicidio! )を歌う。そこへエンツォが現れ、ラウラのために自分も死ぬつもりであると決意しているエンツォを引き留め、彼女の身体を他の場所に移動したことを言うと、エンツォは怒り、短剣を抜いてジョコンダに差し迫ったところでラウラが目覚め、2人の前に姿を現す。事情を知ったエンツォはジョコンダの計略に感謝し、ラウラとエンツォは小舟に乗って去って行く。ジョコンダは「さあ これで死ねる すべて片付いたから」(Ora posso morir. Tutto è compiuto.)と呟く。
ジョコンダ一人となったところへバルナバが近寄り、約束の履行を迫るバルナバにジョコンダは「裏切らない、身体をあげましょう」と言い、その直後自ら心臓に短刀を刺して倒れる。驚いたバルナバは怒り半分に「チェーカを運河に沈めて殺してやった」と罵り叫ぶが、ジョコンダの死を見届け、侮辱に震えて「もう聞こえちゃいない」と呟きつつその場を立ち去るのだった。
主な全曲録音・録画
| 年 | 配役 ジョコンダ エンツォ ラウラ バルナバ チェーカ アルヴィーゼ | 指揮者 管弦楽団および合唱団 | レーベル EAN番号 |
|---|---|---|---|
| 1957 | アニタ・チェルクェッティ マリオ・デル・モナコ ジュリエッタ・シミオナート エットーレ・バスティアニーニ フランカ・サッキ チェーザレ・シエピ |
ジャナンドレア・ガヴァッツェーニ フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団 フィレンツェ五月音楽祭合唱団 |
CD:Decca EAN:4988005163745 |
| 1959 | マリア・カラス ピエール・ミランダ・フェラーロ フィオレンツァ・コッソット ピエロ・カプッチルリ イレーネ・コンパネーズ イヴォ・ヴィンコ |
アントニーノ・ヴォットー ミラノ・スカラ座管弦楽団 ミラノ・スカラ座合唱団 |
CD:EMI EAN:0724355629128 |
| 1967 | レナータ・テバルディ カルロ・ベルゴンツィ マリリン・ホーン ロバート・メリル オラリア・ドミンゲス ニコライ・ギャウロフ |
ランベルト・ガルデルリ サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団 サンタ・チェチーリア国立アカデミー合唱団 |
CD:Decca EAN:0028943004220 |
| 1980 | モンセラート・カバリェ ルチアーノ・パヴァロッティ アグネス・バルツァ シェリル・ミルンズ アルフレーダ・ホジソン ニコライ・ギャウロフ |
ブルーノ・バルトレッティ ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団 ロンドン・オペラ合唱団 |
CD:Decca EAN:0028941434920 |
| 1986 | エヴァ・マルトン プラシド・ドミンゴ ルドミラ・セムチュク マッテオ・マヌグエラ マルガリータ・リローヴァ クルト・リドル |
アダム・フィッシャー ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 演出:フィリッポ・サンジュスト |
DVD:Arthaus Musik EAN:4562240278411 ウィーン国立歌劇場でのライヴ録画 |
| 2002 | ヴィオレッタ・ウルマーナ プラシド・ドミンゴ ルチアナ・ディンティーノ ラド・アタネリ エリザベッタ・フィオリロ ロベルト・スカンディウッツィ |
マルチェッロ・ヴィオッティ ミュンヘン放送管弦楽団 バイエルン放送合唱団 |
CD:EMI EAN:0724355745125 |
| 2005 | アンドレア・グルーバー マルコ・ベルティ イルディコ・コムロシ アルベルト・マストロマリーノ エリザベッタ・フィオリロ
|
ドナート・レンツェッティ アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭管弦楽団及び合唱団 演出:ピエール・ルイジ・ピッツィ |
DVD:Kicco Classic EAN:8016292900142 アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭でのライヴ録画 |

