レネー・グッドの殺害

2026年にミネアポリスで起きたICEによる女性の殺害事件 From Wikipedia, the free encyclopedia

レネー・グッドの殺害(レネーグッドのさつがい)は、2026年1月7日アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリスにおいて、アメリカ合衆国移民・関税執行局(ICE)の職員ジョナサン・ロスが、37歳のアメリカ市民であるレネー・ニコル・マックリン・グッド英語: Renée Nicole Macklin Good)を射殺した事件[1][2][3][4]。目撃者の1人によれば、ICEの活動中、グッドは近くで車をアイドリングしており、車に近づいてきたICE職員らは互いに矛盾する指示を出したとされる[5]。グッドが現場から離れようとしたところ、彼女は頭部を銃で撃たれた[6][7][8]

場所 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ミネソタ州ミネアポリスセントラルポートランドアベニュー
座標 北緯44度56分32.0秒 西経93度16分03.6秒
日付 2026年1月7日
9時30分 (UTC-6中部標準時〉)
攻撃手段 法執行機関職員による銃撃英語版
概要 レネー・グッドの殺害, 場所 ...
レネー・グッドの殺害
ロスに銃撃される少し前の車に乗ったグッド
場所 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ミネソタ州ミネアポリスセントラルポートランドアベニュー
座標 北緯44度56分32.0秒 西経93度16分03.6秒
日付 2026年1月7日
9時30分 (UTC-6中部標準時〉)
攻撃手段 法執行機関職員による銃撃英語版
死亡者 1人(レネー・グッド)
容疑者 Jonathan Ross
動機 ICE職員への乗物による突入攻撃と見做された行動
関与者 ICE職員(銃撃者)
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トランプ政権の当局者らドナルド・トランプ大統領は、職員の行為は正当防衛であり、グッドは職員を車で轢こうとしたと主張し、銃撃を擁護している[1][3][9]。これらの主張は複数の目撃者とジャーナリストの動画の分析によって異議を唱えられている[10]。銃撃が正当であったとする評価については、地元の有力者や民主党議員らが異議を唱えており、後者は刑事捜査を求めている[11]

数千人の市民がミネアポリスで抗議活動を行い[12]、シカゴ、ニューヨーク、コロンビア特別区でも、さらなる抗議活動が展開された[13][14][15][16]。ミネアポリス市長ジェイコブ・フレイ英語版とミネソタ州知事のティム・ウォルズは、これまで連邦政府に対し、市内からのICEの撤退を求めていた[3][17]国土安全保障省(DHS)の報道官は、グッドが「国内テロ行為を実行した」と主張している[1][2][3]。DHSは声明で、当該のICE職員は負傷したものの回復する見込みであると述べているが、ガーディアン紙は、職員に負傷した形跡は見られなかったと報じており、ニューヨーク・タイムズも目撃者の動画はDHSの声明を支持されないと報じている[18][19]

概要 映像外部リンク ...
映像外部リンク
ミネアポリスにおけるICE職員による射殺
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背景

1月6日、国土安全保障省(DHS)は史上最大規模と称する移民法執行作戦を発表し、ミネアポリス・セントポール都市圏に2,000人のICE職員を派遣した。この人員増強には、詐欺容疑英語版の捜査を主目的とする国土安全保障捜査局(HSI)の職員も含まれていた。セントポール市議会議員のモリー・コールマン(Molly Coleman)は、初日のICEの活動について「これまでに経験したことのないような」ものと評した[20][21]。銃撃の目撃者は、「私たち地域の住民は、6週間にわたりICEによって恐怖にさらされてきた」と語っている[22]。グッドの殺害は、2025年9月以降、ICE職員が人間に向かって発砲した9件目の事例であった[23]。連邦政府による国外追放作戦中、他に4人が殺害されている[24]

レネー・グッド

レネ・ニコル・マクリン・グッド[注釈 1]は37歳のアメリカ市民であった[30]。彼女は作家および詩人であり[31][32]、ミネアポリスで夫と6歳の子とともに暮らしていた[33][31][34]。彼女はコロラド州コロラドスプリングスの出身である[35]オールド・ドミニオン大学英語版で英語学の学位を取得し卒業した[36]。大学ではクリエイティブ・ライティングを専攻しており、2020年には創作詩「On Learning to Dissect Fetal Pigs(胎児のブタを解剖することを学ぶに際して)」で、同大学のAcademy of American Poets賞を受賞していた[37]。近隣住民によると、グッドは以前、ミズーリ州カンザスシティウォルド地区英語版に住んでいたが、2024年アメリカ合衆国大統領選挙でのドナルド・トランプの勝利を受け、パートナーや家族とともにカナダへ移住し、その後ミネアポリスへ転居していた[38]

グッドには2度の結婚歴があった。最初の夫とは2009年から2016年まで結婚しており、2人の子供をもうけた。2番目の夫との間には1人の子供がいた。その2番目の夫は、2023年に36歳で亡くなっている[39][40][41]

ジョナサン・ロス

グッドのSUVに反射して映るロス
ニューヨーク市の抗議活動

銃撃の翌日、ミネソタ・スター・トリビューン紙は、銃撃に関与したICE職員をジョナサン・ロスと特定した[42]。彼の名前は連邦当局によって公表されていなかったが、スター・トリビューンは裁判記録を通じて特定した[43][44]

事件直後に行われた記者会見において、クリスティ・ノーム国土安全保障長官とJ・D・ヴァンス副大統領の二人は、銃撃した職員が6か月前の交通検問で負傷していたと言及した。彼らの発言が、スター・トリビューン紙による当該事案を記述した訴訟記録の発見へとつながった[45][46][47]。ロスが関与した前回の事件は2025年6月17日に発生しており、当時、ロスは車の窓を割り、ドアのロックを解除しようと手を差し入れた際、車両に50ヤード (46 m)引きずられて負傷していた[45][48][49]

ロスは2001年にリッチウッズ高校英語版を卒業した[50]。彼は以前、2007年から2015年までアメリカ合衆国国境警備局英語版に勤務していた[51]。裁判文書によれば、ICEでの勤務開始日は2016年となっている[52]。銃撃当時、彼はICEの執行・移送作戦局(ERO)ユニットに所属しており、それ以前にはイラク戦争に従軍していた[53]。ロスは12月の証言で、自身が「射撃教官、アクティブ・シューター(無差別乱射)対応教官(……)フィールド・インテリジェンス・オフィサー、(……)SWATチームであるセントポール特別対応チームのメンバー(a firearms instructor, an active shooter instructor ... a field intelligence officer, and ... a member of the SWAT team, the St. Paul Special Response Team)」であると述べている[54][55][56]

ロスの家族や友人は、彼を「筋金入りの保守派キリスト教徒でMAGAサポーター(hardcore conservative Christian and MAGA supporter)」であると評している。隣人の話によれば、ロスは自宅にトランプ支持の旗を掲げていた。後に明らかになったソーシャルメディアの投稿によれば、ロスは、実の姉がFacebook上で白人至上主義を非難・糾弾したことをきっかけに、プラウド・ボーイズをめぐって彼女と口論を繰り広げていた。ロスはフィリピン系の移民女性と結婚している[57][58]

事件

グッドを射撃したICE職員が撮影した動画[59]

ロスは、ミネアポリスのセントラル地区英語版にある、イースト33番通りと34番通りの間のポートランド・アベニュー英語版でグッドを射殺した。現場は、グッドの自宅から数ブロックの場所だった[60][61]

銃撃前

国土安全保障長官のクリスティ・ノームは、ICE職員たちがミネアポリスにいた際、雪で立ち往生し後方支援を要請しなければならなかったと述べた。地元の住民は、角にあるバイリンガル小学校の生徒たちの送迎時間にICEの活動があったため、近隣住民が警戒のために立ていたのだと述べた[62]。ノームは、射殺事件が起きるまでの間、グッドが「一日中ICEを付きまとい、妨害していた」と述べた。ミネソタ州司法長官のキース・エリソン英語版[63]や、イルハン・オマル合衆国下院議員[64]を含む複数のミネソタ州政府の高官らは、事件当時、グッドはICEの活動を監視するリーガル・オブザーバー(法的監視員)として行動していたと述べている[62][65]。グッドの元夫と母親は、彼女が以前にICEの活動に異議を唱える抗議活動に参加したことがあったとは信じていないと述べ、元夫は「彼女は活動家ではなかった」と語っている[66][67]。元夫によれば、グッドは息子を学校に送り届け、帰宅する途中で「ICEの集団に出くわした」という[68][69][66]

中部標準時UTC−06:00)の9時35分5秒、グッドの栗色のSUV車(2代目ホンダ・パイロット)は、一方通行のポートランド・アベニューで左向きに横を向いた状態で停止していた。ロスは自らのSUVを走らせてグッドの車を回り込み、彼女の前方で停止してビデオの録画を開始し、顔を覆った状態で車外に出た[70]。ロスが彼女のSUVの前方に歩いていくと、彼女は車をバックさせた。ロスは録画を続けながらグッドのSUVに歩み寄り、彼女の顔と後部のナンバープレートを映しながら車の周囲を回った。グッドは彼にこう告げる。「大丈夫だよ。あなたに怒ってるわけじゃないから(That's fine, dude. I'm not mad at you.)」。9時36分51秒、グッドのパートナーであるベッカがSUVの後方に立ち、同様に携帯電話で録画しながら次のように言った。「顔を見せなさい。それでいい。一応言っておくけど、私たちは毎朝プレートを替えたりしない[注釈 2]。後で話しに来る時も、同じプレートのままだから。それでいい。私はアメリカ市民で、元軍人で、傷痍軍人なんだよ(Show your face. That's OK. We don't change our plates every morning, just so you know. This will be the same plate when you come talk to us later. That's fine. US citizen, former fucking veteran, disabled veteran.)」。

グッドはSUVをわずかに前進させた。9時36分58秒、1台のフォード・エクスプローラーがポートランド・アベニューに入ってくると、グッドは、自分のSUVの前を通過するよう促すように手で合図を送り、その車両は別の車両とともに彼女の車の前を通過した[71]。その間、ロスはグッドのSUVの右側に戻り、携帯電話を右手から左手に持ち替えた[72]。一方でベッカは、「私たちに向かってくるつもり? 私たちに向かってくる気なの?私たちに向かってくるつもり? そうね、お昼でも食べてきなよ、お兄さん(You wanna come at us? You wanna come at us? I say go get yourself some lunch, big boy.)」と言った。グッドが手で合図を送り続けていると、1台の日産・タイタンが彼女のSUVの左側で停止し、さらに2名のICE捜査官が車外に降りてきた[73][74]

目撃者は、ICE職員たちが複数の矛盾する命令を出しており、一人がグッドに車を走らせて立ち去るよう命じる一方で、別の職員はSUVから降りるよう彼女に叫んでいたと述べた[75]。9時37分08秒、ニッサンのピックアップトラックから降りたICEの捜査官たちがグッドのSUVに接近し、そのうちの一人が「さっさと車から降りろ(get out of the fucking car)」と繰り返し命じた。グッドは車内に留まり、ギアをバックに入れた[注釈 3]

その後、いくつかの出来事がほぼ同時に起こった。

  • 彼女に接近したICE捜査官の一人が、グッドの車両の運転席側のドアハンドルと開いた窓に手をかけた[81]
  • ベッカが助手席側のドアを開けようとしたがグッドは気づかなかった[81]
    • グッドは、前方に障害物も無く十分な道幅(二車線)があったにもかかわらず逃走はせず、数フィート後退して車体を右前方(ロスのいる方向)へ向けた[82]
  • 車の右側でベッカを撮影中だったロスは、グッドの車両の前面に立たされた為、左前方へと歩いた[83][84][81]

運転席側のドアにいた捜査官が掴んでいた窓枠から手を奥へ差し入れ[85]、ベッカが「車を出して、ベイビー、出して!(Drive, baby, drive!)」と叫んだ[86]

銃撃

グッドは、ロスを目視しバックを止めてハンドルを右に切りタイヤを戻し、そのまま前方への走行を開始した[87]

左手に携帯電話を持ったまま、ロスは銃を抜き、前かがみになり、9時37分13秒、走行中のSUV内にいたグッドに向けて1秒以内に3発発砲し、彼女を殺害した[88][89]。SUVが通り過ぎた後、ロスはその左側で直立したままであった[注釈 4]ニューヨーク・タイムズABCニュースによる個別のビデオ分析によれば、ロスは1発目をSUVのフロントガラスに、2発目と3発目を運転席側のサイドウィンドウ越しに撃った。

銃撃後

銃撃の後、SUVは通りを進み続け、停車していた車2台(両方共7代目ホンダ・アコードクーペ)と街灯柱に衝突して止まった[注釈 5]。その際、ロスが録画していた映像には「クソ..,ビッチ(fuck.., bitch)」と言う男の呟き声が記録されていた。『ニューヨーク・タイムズ』による音声およびビデオ分析によると、それはロスの声であった[95][96]

ロスは衝突したSUVに近づいた後、ICEの同僚たちのもとへ戻った。ロスは他の職員に911番通報するよう伝え、1分以上現場に留まった[注釈 6]。近隣の住民は、グッドのSUVが激突する音を聞いて外に出ると、レベッカ・グッドが「血まみれ」で建物の前に座り込み、「あんたたち、たった今私の妻を殺したんだ(You guys just killed my wife)」と泣き叫んでいるのを見たと語った[100][101][102]

ICEの捜査官たちは、応急処置を試みようとした居合わせた人々を制止した。その人物が「脈を確認してもいいか?(Can I check a pulse?)」と捜査官たちに尋ねると、一人の捜査官が「だめだ、今すぐ下がれ!(No, back up now!)」と答えた。その人物が「私は医師だ!(I'm a physician!)」と返すと、捜査官は「知ったことか(I don't care)」と応じた。別のICE職員は救急隊(EMS)が向かっていると言い、さらに別のICE職員は現場に自分たちのメディック(衛生兵)がいると言った。ある女性は「どこにいるの?(Where are they?)」と問い返した[注釈 7]。ニューヨーク・タイムズはこの事件のビデオ分析において、銃撃の後、「発砲した職員を含む数名の職員らが、自らの車両に乗り込んで走り去っており、進行中の犯罪現場を損壊しているとみられる」と報じた[99]

9時43分14秒、最初の発砲から6分後、救急隊(EMS)と消防隊が到着し、グッドを車両から出して救護を試みた。ニューヨーク・タイムズが入手した記録によると、救急隊員が到着した際、グッドの脈拍は不規則であり、その直後に脈は止まった[105]。グッドの体には、胸部に2箇所、前腕に1箇所、頭部に1箇所の計4箇所の銃創があった[106]。彼女の瞳孔は散大し、耳からは血が流れ出ていた[106]。9時45分30秒、銃撃から8分後、グッドはポートランド・アベニューと34番通りの交差点まで運ばれ、そこで心肺蘇生法(CPR)が開始された。その7分後の9時52分頃、グッドは救急車に収容された。彼女はヘネピン郡医療センター英語版に搬送され、そこで死亡を宣告された[107]

後部座席にいたグッドの飼い犬に怪我はなかった[108]

ロスは、胴体に内出血を起こしており病院へ搬送された[109]

捜査

銃撃現場におけるICE職員およびコミュニティの監視員

1月8日、ミネソタ州刑事捜査局英語版(BCA)の局長は、連邦捜査局(FBI)により同銃撃事件の証拠へのアクセス権が取り消されたことを公表した[110]。これにより、BCAとFBIが共同捜査を行うとした当初の合意は覆された[110]ミネソタ州公安局長英語版は、連邦政府からの協力がなければ、地方自治体による捜査の継続は「不可能ではないにせよ、極めて困難になる」と述べた[111]

ミネアポリスの首席郡検察官メアリー・モリアーティ英語版は、検察が「州レベルの捜査を継続できるよう、あらゆる選択肢を検討している」と述べた[112]。1月9日、彼女とミネソタ州司法長官キース・エリソン英語版は、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、住民に対し「銃撃事件およびそれに至るまでの出来事に関するビデオ、写真、目撃証言」の提出を求めた。当局者らは、銃撃者を起訴するか否かを判断するのに十分な証拠が集まるかどうかを判断するには、時期尚早であると述べている[113]

ICEのポリシーでは、重大な事案が発生した際の検証を目的として、法執行および対面業務を記録するために、エージェントがアクティブなボディカメラを装着することを義務付けている[114]ロンドン・タイムズは1月9日、現場にいたICEエージェントはボディカメラを装備していたが、映像はまだ一般には公開されていないと報じた[115]MPRニュース英語版は1月8日、射撃者がカメラを装着していたかどうかは不明であると報じた[116]AP通信は1月9日、国土安全保障省(DHS)は「発砲した職員や現場にいた他の職員がボディカメラを装着していたかという質問に対し、回答していない」と報じている[114]

1月12日、ニューヨーク・タイムズは、FBIと司法省(DOJ)の連邦捜査官らが、ロスの行動だけを調査するだけでなく、射殺されたグッドとトランプ政権の移民政策に反対する活動家グループとの間に何らかの接点がなかったかを分析する任務も課されたと報じた。一方で、司法省の市民権部門英語版の上層部は、グッドの憲法上の権利が侵害されたかどうかの捜査を見送った[117]。このハーミート・ディロン英語版次官補による決定を受け、それ以前の決定も相まって、市民権部門の刑事セクションを率いるセクション長、筆頭副長、副長、副長代理といったキャリア幹部が一斉に辞職した[118]

1月13日、連邦政府からはさらに10名の検察官が辞職した。ニューヨーク・タイムズによれば、ミネソタ州地区のジョセフ・H・トンプソン英語版代行連邦検事と他5名の連邦検察官は、「司法省本部が被害者(レネー・グッド)の遺族である妻を捜査するよう圧力をかける一方で、射殺犯への捜査には消極的であったこと」を理由に辞職した[119]。また同日、司法省の市民権部門においても、退職や離職を予定していた4名以上の検察官がその時期を早めた[119]。こうした動きに対し、トッド・ブランチ英語版司法副長官は「刑事上の市民権の侵害捜査を行う根拠はない」と述べた[120]

事件の余波

ミネアポリスで行われたレネー・グッドの追悼集会

ICEはルーズベルト高校英語版でも生徒に対して催涙スプレーを使用しており、銃撃事件の発生を受けて、ミネアポリス公立学校英語版は授業を中止した[121][122]

ミネアポリス公立学校英語版は、銃撃事件およびルーズベルト高校の生徒に対するICEによるペッパー・スプレーやペッパー・ボールの使用を受け、安全上の懸念を理由に、その週の残りの授業を中止した[123][124]。同高校の教職員は、武装したICE職員が2名のスタッフに手錠をかけたと述べた[124]。1月9日、MPSは2月12日までリモート学習の選択肢を提供すると発表した[125]

グッドの家族によって開始されたオンライン募金キャンペーンには、1月9日に終了するまでに、150万ドル以上の寄付が集まった。家族は、集まった資金は家族のための信託基金に預けられると述べた[126]。この殺害事件により、その1週間前に発生した非番のICE職員によるキース・ポーター・ジュニア英語版の射殺事件を含む、移民局職員による他の殺害事件英語版へ改めて注目が集まることとなった[127][128]

抗議活動

グッドが殺害された翌日にマンハッタンで行われた反ICE抗議活動

グッドの死は、2020年にミネアポリス警察のデレク・ショーヴィン警官によってジョージ・フロイド殺害された地点から、約1マイル(1.6km)の場所で発生した。当時、フロイドの事件は、警察の暴行と人種的正義をめぐる世界的な抗議活動を引き起こした[129]。グッドの殺害を受けて、殺害現場には数百人の抗議者が集まった[130]。連邦の法執行機関はミネアポリスで催涙ガスやペッパー・スプレーを発射し、一部の抗議者は雪玉を投げた[131]。記者会見において、ウォルズ知事はミネソタ州州兵英語版の配備準備を開始したと発表した[131]。夜までに、グッドが殺害された場所に集まった群衆は、数千人に登り、ミネアポリス市議会英語版の議員も参加していた[132]。抗議活動はアメリカ合衆国全土の多くの都市でも展開された英語版

1月8日、ミネアポリスではグッドを追悼する集会を開くため、彼女が殺害された道路を群衆が封鎖した[133]。市職員は直後にバリケードを撤去したが、設置された記念碑はそのまま残された[134]。さらに抗議活動は各地で展開され、ニューヨーク州バッファロー[135]ノースカロライナ州チャペルヒル[136]ノースカロライナ州ダーラム[137]ミズーリ州カンザスシティ[138]、カリフォルニア州ロサンゼルス[139]などで行われた。翌週末にかけて、「ICE Out For Good」[注釈 8]のスローガンのもとで1,000件以上の抗議活動が計画され、1月10日にはミネアポリスで推定数万人が行進した[140]。 1月11日までに、市当局は週末の抗議活動で30人が逮捕され、警察官1名が軽傷を負ったと述べた[141]

1月30日には全米350都市で店舗や学校などを休業した上での大規模抗議デモ(事実上のゼネラル・ストライキ)「ナショナル・シャットダウン」が行われた[142][143][144]。ミネアポリスでは遺族支援のためのチャリティーコンサートも開催された[144]

二度目のICEによる銃撃事件

1月14日、ミネアポリスでICE職員が男性の脚を撃った事件が報じられた。国土安全保障省(DHS)の発表によれば、この銃撃は交通検問の後に、近隣のアパートの住民2名が関与した口論の末に起きたものであった[145][146][147]。DHSはアパートの住民を拘束したと述べ、ブライアン・オハラ英語版警察局長は、撃たれた男性は命に別条のない怪我で入院中であると述べた。

抗議活動に対する反応

1月14日の記者会見において、ミネアポリス市長のジェイコブ・フレイ英語版は、ICEの行動、およびそれに対して「挑発に乗っている」とした人々の行動を批判する一方で、平和的な抗議活動参加者らには賛辞を送った[148]

1月15日、トランプ大統領は、ミネソタ州での抗議活動を抑え込むために、アメリカ軍を国内の法執行のために配備可能にする「1807年反乱法」の発動を示唆して脅迫した[147]。これに対し、ミネソタ州知事のティム・ウォルズはトランプ大統領に向けて「報復のキャンペーンを止めるよう」求めた。同時に、抗議活動参加者らに対しては、平和を維持し「カオスの炎を煽る(fan the flames of chaos)」ことのないように呼びかけた[149]

ジャーナリズム監視団体のMedia Matters英語版によれば、FOXニュースをはじめとする右派メディアの人物や機関は、概ね平和的であった抗議活動を「反乱」、「テロリストのような過激主義」、「ゲリラ戦」など様々に表現し、さらに「内戦(civil war)」を煽動した疑いがあるとして地方当局者たちを非難した[150]

1月16日、アメリカ合衆国司法省が、ミネソタ州知事のウォルズとミネソタ市長のフレイを、「連邦移民職員の業務を妨害した」とする共謀の疑いで捜査していることが報じられた。この捜査では、進行中の抗議活動に関して両者が行った発言が理由の一つとして挙げられている[151]

反応

連邦政府の反応

ホワイトハウス

ドナルド・トランプ大統領は、グッドのことを「非常に無秩序で、妨害や抵抗を行い、その後、暴力的で、意図的に悪意を持ってICE職員を車で轢いた。職員は正当防衛で彼女を撃ったようだ(very disorderly, obstructing and resisting, who then violently, willfully, and viciously ran over the ICE Officer, who seems to have shot her in self defense)」と評した[152]。続けて、大統領は「(その職員が)生きているのが信じられないほどだが、現在は病院で回復に向かっている」と語った[153]。しかし、実際には、当該のICE職員は、事件の間、初めから終わりまで自身の足で立っていた[154]ニューヨーク・タイムズの記者が、大統領執務室でのインタビュー中に大統領の結論に疑問を呈した際、トランプは事件のビデオを記者らに提示した。記者が、ビデオには職員が轢かれる様子は映っていないと指摘すると、彼は「そうだな、私には――私の見方ではそう見える(Well, I—the way I look at it)」と答え、さらに「凄惨な光景だ、見るに堪えないほど恐ろしい。いや、見るのも嫌なものだ(It's a terrible scene, I think it's horrible to watch. No, I hate to see it.)」と述べた[155]

J・D・ヴァンス副大統領はグッドの死を「彼女自身が招いた悲劇だ(a tragedy of her own making)」と言い、彼女は「左派イデオロギーの被害者(a victim of left-wing ideology)」と呼んだ[156]

行政機関

アメリカ合衆国国土安全保障省(DHS)の広報官トリシア・マクラフリンは、グッドが車で轢こうとしたため、ICE職員が「自らの命に危険を感じ」、正当防衛で彼女を撃ったと述べた。マクラフリンはグッドの行為を「国内テロ行為」と表現している[157]。ロスが撮影した携帯電話の動画が公開された後、マクラフリンは「アメリカ国民はこの映像を自らの目と耳で確認し、自分たちで判断することができる」と述べた[158][159][160]

DHS長官のクリスティ・ノームは、グッドが「(ICE職員)と周囲の人々を襲撃し、車両で轢き、激しく突っ込もうとした。我々の職員は迅速に行動し、自身と周囲の人々を守るために防衛として発砲した」と述べた。翌日、ノームはニューヨーク市におけるICEの存在感を強化することを目的とする「サルヴォ作戦英語版」を発表した[161]。3日後の1月11日、ジェイク・タッパーは、グッドがICE職員を轢こうとしたというノエムの主張に対して、「それは実際に起きた事実ではない。私たちは皆、何が実際に起きたのかを目撃している」と異議を唱えたが[162]、これに対しノームは「間違いなく、それが起きた事実だ」と応えた[162]

司法省の市民権部門英語版の上層部は、本件に関与したICE(移民・関税執行局)職員に対し、憲法上の英語版権利侵害の疑いによる捜査は行わないと発表した。本来、このような事件では、同部門が捜査を主導するのが通例であるが、その慣例を覆す異例の決定がなされた。トランプ大統領の元弁護士で、政権に任命された司法副長官のトッド・ブランチ英語版は、致死的な武力の行使は時として正当化されると公に述べた[163]

連邦議会

下院少数党院内総務ハキーム・ジェフリーズは、上院少数党院内総務チャック・シューマーら他の民主党議員とともに、刑事捜査を要求した[164]。ミネソタ州刑事捜査局(BCA)の本事件に関する捜査権限が剥奪されたことが発表されると、民主党全国委員会(DNC)委員長のケン・マーティン英語版は、連邦捜査局(FBI)は隠蔽しようとしていると非難した[165]

地方当局の反応

事件当日の午後に開催された記者会見において、ミネソタ州のティム・ウォルズ知事は、この事件を「恐怖、報道の見出し、対立を生み出すために設計された統治の結果だ(the consequences of governance designed to generate fear, headlines and conflict)」と言い、「我々は連邦政府からのこれ以上の支援を必要とはしていない(we do not need any further help from the federal government)」と述べた[166]。ウォルズは、州兵に対して準備態勢に入るよう命じたことを発表した[167]

国土安全保障省(DHS)が発表した、グッドはSUVを「武器化」してICEエージェントを轢こうとしたと主張する声明に対し、ミネアポリス市長のジェイコブ・フレイ英語版は、事件のビデオ映像はそのような事実を示唆していないと指摘し、「私自身が映像を見た。皆にはっきり言いたい。あんな主張は、ただのクソだ(Having seen the video myself, I want to tell everybody directly that is bullshit)」、「ICEは、今すぐミネアポリスから出ていけ(To ICE, get the fuck out of Minneapolis)」と述べた。ミネアポリス警察局は、潜在的な民衆の暴動への予防的措置として、周辺自治体からの相互援助を要請し、現地の法執行リソースを強化した[168]。ウォルズ知事は、2026年1月9日を「レネー・グッドの日(Renee Good Day)」と宣言した[169]

ポリティコは、この殺害事件を契機として、アメリカ全国の州議会議員の間で、ICEとの協力を制限し、同局への監視を強化しようとする一連の動きが始まったと報じた[170]

射殺事件後の月曜日にあたる1月12日、ミネソタ州司法長官のケイス・エリソン英語版は、ミネアポリス市およびセントポール市と共同で、国土安全保障省(DHS)を提訴したと発表した。この訴訟は、同州へのICE職員の派遣の停止を求めるものである[171][172][173]

分析

AP通信の取材に応じた警察実務の専門家らは、銃を撃ったICE職員が事件中に携帯電話を保持していたことに疑問を呈している。犯罪学者のジェフ・アルパート教授は、もしも片手で携帯電話を持って撮影しながら、もう一方の手で銃を扱うことを許容するような「捜査官研修があるなら見てみたい」と述べた。また、ジョン・P・グロス教授は、捜査官が「片手を携帯電話に添え……無造作に撮影していた」事実は、グッド氏が脅威と見なされていなかったことを示していると指摘した[174]

CBCニュースは、国土安全保障省(DHS)の職務規定が、職員に対し「致死的な武力英語版(deadly force)を行使する以外に選択肢がない状況に、意図的かつ不当に自らを置くことを避ける」よう指示していると指摘した[175]。また、移民・関税執行局(ICE)は、職員が致死的な武力を行使するのは「被拘禁者が死または重大な身体的負傷の差し迫った危険(imminent danger)をもたらしていると、職員が判断する相当な根拠英語版(probable cause)がある場合に限る」と指示している[175]

エコノミストは、一見過剰な武力行使に見える事案において、DHSによる過去の正当防衛の主張が「繰り返し偽りであると証明されてきた」と指摘した。その根拠として前年にシカゴで発生した英語版「同様の衝突に関与した国境警備局英語版の職員」が、「自らの攻撃的な行為を正当化するために宣誓下で偽証し、抗議者による脅威を誇張していた」ことが連邦裁判所の証拠により示されている[176]

専門家の評価

法務アナリストのイアン・ミルハイザー英語版は、連邦政府が銃撃者を犯罪として起訴する可能性は低いという見解を示したが、州の検察官が殺人罪で起訴できる可能性はあるかもしれないと述べた。前年、最高裁判所は「マーティン対アメリカ合衆国事件英語版」において、連邦職員が訴追から保護されるのは、公務の遂行において「必要かつ適切(necessary and proper)」な形で行動した範囲内に限られるとの判決を下している[177]

目撃証言

PBSニュースアワーは銃撃の目撃者にインタビューを行った。目撃者は次のように述べている「事件時の、そして現在も変わらない私の解釈では、彼女は逃げようとしていた。誰にもぶつからずに前方へ車を走らせるスペースは確実にあった。(……)その時、彼女が誰かを跳ねる危険があるとは全く考えませんでした」[3]。別の目撃者はMPRニュース英語版に対し、「彼女が全く脅威ではなかったという点については、これ以上明確に語ることはできない。私に見えた限りでは、彼女はその場から離れようとしているようだった」と語った[14]ニューヨーク・タイムズによるビデオ映像の分析でも、グッドが捜査官から遠ざかる方向に車を走らせていたことが裏付けられている[178]

CNNは他の目撃者にもインタビューを行った。その中の一人は、グッドが車を出そうとした際、「ICEの職員が車両の前に踏み出して『止まれ!(Stop!)』と言った。その時、彼女はすでに動き出していたのだが、職員は至近距離からフロントガラス越しに彼女の顔面を撃ち抜いた」と語った[179]。別の住民は事件の状況について、「(グッドの)車はゆっくりとバックし、かなり緩やかな速度で前方へ進み始めた。(……)その後、発砲した職員が私から見て車の反対側に位置しており、4発、おそらく5発の銃声が聞こえた。それから車が前方へ急加速したのは、彼女が負傷して足が(アクセルに)沈み込んだからだ」と述べている[179]

関連項目

  • 警察の暴力
  • 2025年カリフォルニア州カマリロICE襲撃事件英語版 – 移民執行官による工場の襲撃事件
  • 第2次トランプ政権下におけるアメリカ市民の死亡、拘束、および国外追放英語版
  • 第2次トランプ政権におけるアメリカ合衆国移民局職員による銃撃事件一覧英語版
  • Silverio Villegas Gonzálezの殺害英語版
  • アメリカ合衆国における法執行機関職員による殺害の一覧英語版
    • アメリカ合衆国における法執行機関職員による殺害の一覧 (2026年1月)英語版
    • ミネソタ州における法執行機関職員による殺害の一覧英語版
  • ジョージ・フロイドの死 – 2020年にアメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリスで起きた警察官による殺人事件

脚注

外部リンク

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