ロナルド・ブライス
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ロナルド・ブライス | |
|---|---|
| Ronald George Blythe | |
| 生誕 |
1922年11月6日 |
| 死没 |
2023年1月14日(100歳没) |
| 国籍 |
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| 職業 | 著述家・随筆家・編集者 |
| 代表作 | 『アーケンフィールド:あるイングランドの村の肖像』(1969年) |
| 配偶者 | なし |
| 受賞 | ベンソン・メダル(王立文学協会、2006年)、CBE(2017年) |
ロナルド・ジョージ・ブライス (Ronald George Blythe CBE FRSL、1922年11月6日 - 2023年1月14日)は、イギリスのネイチャーライティング作家・随筆家・編集者。
サフォーク州を拠点に活動し、イングランドの農村生活をテーマにした記録文学の第一人者として知られる。主著『Akenfield: Portrait of an English Village』(1969年)は刊行直後から古典として高く評価され、半世紀以上にわたって版を重ねている。
また『チャーチ・タイムズ』紙に1993年から2017年まで連載したコラム「ウォーミングフォードから(Word from Wormingford)」も広く愛読された。[1] 2006年に王立文学協会のベンソン・メダルを受賞し、2017年には大英帝国勲章(CBE)を授与された。2022年11月6日に100歳の誕生日を迎え、2023年1月14日に居宅のボッテンゴムズ農場(Bottengoms Farm、エセックス州ウォーミングフォード)で逝去した[2]。
生い立ち
1922年11月6日、サフォーク州アクトンに農業労働者の家庭の長男として生まれた。父アルバートは第一次世界大戦にサフォーク連隊の一員としてガリポリや中東で従軍した兵士であり、家系は何世代にもわたって東アングリアの農業に従事してきた。母マティルダ(旧姓エルキンズ)はロンドン出身で、大戦中は看護補助隊員として勤務し、息子に読書への愛を伝えた。ブライスはサフォーク州サドベリーの学校に通ったが、14歳で学校を去った。以後は独学で読書を重ね、フランス文学や詩を自ら学んだ。「読書は決して屋内ではしなかった、何かやることを言いつけられるから」と後年語っている[3]。
第二次世界大戦と司書時代
第二次世界大戦中に徴兵されたが、上官から「兵役不適」と判断されて間もなく除隊となり、東アングリアへ戻った。その後1954年まで、コルチェスター市立図書館で参考司書として勤務し、同地にコルチェスター文学協会を設立した[4]。
図書館での勤務中、画家ジョン・ナッシュの妻クリスティーン・ナッシュと出会い、ナッシュ夫妻が居住するエセックス・サフォーク州境のウォーミングフォード近郊にあるボッテンゴムズ農場を1947年に初めて訪問した。クリスティーンはブライスの文学的な野心を励まし、アルドバラ海岸の小さな家を彼のために見つけた[5]。
アルドバラとブリテン
1950年代後半の三年間、ブライスはベンジャミン・ブリテンのもとでアルドバラ音楽祭の運営を手伝い、プログラムの編集や翻訳に携わった。この時期にE・M・フォースター、パトリシア・ハイスミス、画家セドリック・モリスなど、芸術家・文学者との幅広い交流が生まれた。ブライスは後年、ガーディアン紙のインタビューで「私は基本的に聴く人であり、観察する人だ。問いを発せずに吸収するが、物事を忘れない」と語っている[6]。
作家として
1960年、サフォークの農村を舞台にした最初の小説『A Treasonable Growth』を刊行した。1963年の評論集『The Age of Illusion』が好評を博し、Penguin English Libraryの編集を依頼されるようになった。ジェーン・オースティン『エマ』、ウィリアム・ハズリット、トマス・ハーディ、ヘンリー・ジェイムズらの作品を編集している。
1966〜67年の冬、ブライスはサフォーク州デバック村を拠点に近隣のチャーズフィールド村を訪ね歩き、鍛冶屋、馬丁、墓掘り人、農場看護師など三世代にわたる住民たちの声を録音した。農業、教育、階級、信仰、死についての語りをもとに、1969年に『Akenfield: Portrait of an English Village』を刊行した。架空の村名「アーケンフィールド」はオーク(楢)を意味する古英語に由来する[7]。
1974年には映画監督ピーター・ホールが『Akenfield』を映画化し、ブライス自身が牧師役でカメオ出演した。この映画は約1500万人の視聴者を得たとされる[8]。
ボッテンゴムズ農場での後半生
ジョン・ナッシュの死後、ブライスはボッテンゴムズ農場を引き継ぎ、そこを拠点に執筆活動を続けた。農場は16世紀の東アングリア様式の長屋造りで、ウォーミングフォードの小さな谷間に建つ。1993年から2017年まで『チャーチ・タイムズ』紙に「ウォーミングフォードから」という週刊コラムを連載し、自然、文学、イギリス国教会の典礼暦、東アングリアの農村生活を詩的な文体で綴り続けた[9]。ガーディアン紙はこのコラムを「イギリス・ジャーナリズムの中でも最も優雅で思索的なコラムのひとつ」と称賛した[10]。
ブライスは生涯を通じてイギリス国教会の平信徒朗読者(Lay Reader)として複数の教区で礼拝を執り行い、セント・エドマンズベリー大聖堂の平信徒参事会員(Lay Canon)も務めた[11]。
生涯独身を貫き、車の運転を覚えず、パソコンも使わなかった。2022年11月6日に100歳の誕生日を迎え、2023年1月14日に居宅のボッテンゴムズ農場で静かに逝去した。葬儀はウォーミングフォードのセント・アンドリュー教会で1月20日に執り行われ、その教会墓地に埋葬された[12]。
ブライスはボッテンゴムズ農場をエセックス野生生物トラスト(Essex Wildlife Trust)に遺贈し、自然保護区かつ作家・芸術家のための創造的空間として活用されることを望んだ。個人アーカイブ(『アーケンフィールド』の調査ノート・索引カード・草稿を含む)は大英図書館が収蔵した[13]。
学術的業績・文学的評価
ブライスはイギリス自然文学(ネイチャー・ライティング)の先駆者のひとりとして位置づけられており、リチャード・メイビー、ロバート・マクファーレン、ロジャー・ディーキンら現代のネイチャーライターに多大な影響を与えた[14]。
『アーケンフィールド』はオーラル・ヒストリー(口述歴史)と文学的散文を融合させた先駆的な作品として評価され、1974年の映画化後も版を重ねながら読み継がれている。ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス版(2015年)には詩人アンドリュー・モーションによる詳細な序文が付されており、「農村的放置と農村理想化の複雑な関係を鋭く洞察した」とその先見性を称えている[15]。
ブライスは1970年に王立文学協会フェローに選出され、ジョン・クレア協会の発足当初から会長を務めた。2015年にはサフォーク大学から名誉学位を授与された[16]。
主な著作
著書(自著)
- A Treasonable Growth, MacGibbon & Kee, 1960(フィクション)
- Immediate Possession and Other Stories, MacGibbon & Kee, 1961(フィクション)
- The Age of Illusion: Britain in the Twenties and Thirties 1919-1940, Hamish Hamilton, 1963
- Akenfield: Portrait of an English Village, Allen Lane, 1969(ペンギン20世紀クラシック)
- The View in Winter: Reflections on Old Age, Allen Lane, 1979
- From the Headlands, Chatto & Windus, 1982
- The Stories of Ronald Blythe, Chatto & Windus, 1985
- Divine Landscapes: A Pilgrimage through Britain's Sacred Places, Penguin Putnam, 1986
- Private Words: Letters and Diaries from the Second World War, Viking, 1991
- England: The Four Seasons, Pavilion, 1993
- Word from Wormingford: A Parish Year, Viking, 1997
- First Friends, Viking, 1999
- Going to Meet George and Other Outings, Long Barn, 1999
- Talking about John Clare, Trent Books, 1999
- Out of the Valley: Another Year at Wormingford, Viking, 2000
- The Circling Year: Perspectives from a Country Parish, Canterbury Press, 2001
- Talking to the Neighbours: Conversations from a Country Parish, Canterbury Press, 2002
- A Year at Bottengoms Farm, Canterbury Press, 2006
- Field Work: Selected Essays, Black Dog, 2007
- River Diary, Canterbury Press, 2008
- Aftermath: Selected Writings 1960–2010, Black Dog, 2010
- At Helpston: Meetings with John Clare, Black Dog, 2011
- At the Yeoman's House, Enitharmon Press, 2011
- Village Hours, Canterbury Press, 2012
- The Time by the Sea: Aldeburgh 1955–1958, Faber, 2013
- Under a Broad Sky, Canterbury Press, 2013
- In the Artist's Garden: A Wormingford Journal, Canterbury Press, 2015
- Stour Seasons: A Wormingford Book of Days, Canterbury Press, 2016
- Forever Wormingford, Canterbury Press, 2017
- Next to Nature: A Lifetime in the English Countryside, John Murray, 2022
編著・編集
- Emma by Jane Austen(Penguin, 1966)— 編集
- Components of the Scene: Stories, Poems, and Essays of the Second World War(Penguin, 1966)— 編集
- Selected Writings by William Hazlitt(Penguin, 1970)— 編集
- Aldeburgh Anthology(Snape Maltings Foundation/Faber Music, 1972)— 編集
- Far From the Madding Crowd by Thomas Hardy(Penguin, 1979)— 編集
- Places: An Anthology of Britain(Oxford University Press, 1981)— 編集
- The Awkward Age by Henry James(Penguin, 1987)— 編集
- Each Returning Day: The Pleasure of Diaries(Viking, 1989)— 編集
受賞・栄誉
思想・考え方
ブライスの文学的思想の中心にあるのは、「場所への忠誠(rootedness)」という概念である。彼は東アングリアに生涯を過ごし、農村の大地・季節・住民の声から離れることを望まなかった。その主著『アーケンフィールド』においてブライスは、農村社会の変貌を感傷なく直視しながらも、土地と人間の深い結びつきを記録することで、近代化によって失われゆく生活様式の証言者となった。「どれほどが保たれ、どれほどが失われたか」という問いが、彼の全著作を貫くモチーフである[19]。
また、信仰と日常の統合がブライスの随筆を特徴づけている。英国国教会の典礼暦、聖書の言葉、地域の教会建築、自然の移ろいが彼の散文では等価に扱われ、霊的な次元と世俗的な日常が分かちがたく結びついている。チャーチ・タイムズのコラムはまさにその結晶であり、典礼の季節と農村の季節が交差する場として機能した[20]。
ブライスはさらに、「老い」と「定住」を肯定的に捉える思想家でもあった。1979年刊行の『The View in Winter』では高齢者たちの声を集め、老境の豊かさと尊厳を描いた。また自身も「高齢者はできる限り自分の家に留まるべきだ」との信条を実践し、100歳まで一切の施設入所を拒んでボッテンゴムズ農場に居住し続けた[21]。
発言
ブライスの思想の理解を助けるため、キーワードごとに分類した彼自身の説明等の発言を以下に引用する。
- 農村と土地
- 「アーケンフィールドは、表向きはイングランド人が当然のごとく住む権利を持つと感じてきた場所そのものです。まぎれもない本物の農村、手つかずで真正なものとして、人目に映るのです。」
- (原文:"Akenfield, on the face of it, is the kind of place in which an Englishman has always felt it his right and duty to live. It is patently the real country, untouched and genuine.")[22]
- 農村と感情
- 「私が理解したのは農村の感情的な側面であり、そこに生きる人々のことでした。時に硬い外見の奥深くに、エロティックで感情的なものが潜んでいます。作家にはそれが見える、そうでしょう?作家はある意味、人全体を一瞬のうちに視野に収めて眺めることができるのです。」
- (原文:"I think what I understood was the emotional aspect of the countryside and the people in it. Just underneath the sometimes hard exteriors are many things: erotic, emotional sides. Because writers can see it, can't they? They can view it in a sense and take the whole person in.")[23]
- 書くことと生きること
- 「私は善い書き手として、そして善い人間として記憶されたいと思っています。書き手とは観察者です。私たちは生来の観察者、見守る者なのです。私がこれほど長く、自分の愛するものを生業にできたことは、まったくもって素晴らしいことだと感じています。」
- (原文:"I would like to be remembered as a good writer and a good man. Writers are observers. We are natural lookers, watchers. It seems to me quite wonderful that I have so long been able to make a living from something I love so much.")[24]
- 教会と信仰
- 「イングランドの教会人は、トイレに行くのと同じように礼拝に向かいます。できる限り騒ぎを立てず、もしできるなら一切説明をしないで。」
- (原文:"As for the British churchman, he goes to church as he goes to the bathroom, with the minimum of fuss and with no explanation if he can help it.")[25]
b
- 農村の人間と賞賛
- 「工業労働者は5ポンド紙幣を喜びますが、農村の人間は必ず称賛を必要とするものです。」
- (原文:"An industrial worker would sooner have a £5 note but a countryman must have praise.")[26]