ヴードゥー・ラウンジ

ローリング・ストーンズのアルバム From Wikipedia, the free encyclopedia

ヴードゥー・ラウンジ』(Voodoo Lounge)は、1994年にリリースされたローリング・ストーンズオリジナル・アルバムイギリスで1位[1]アメリカで2位[2]を記録。

概要 『ヴードゥー・ラウンジ』, ローリング・ストーンズ の スタジオ・アルバム ...
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概要

ヴァージン・レコードとの新たな契約下での第一作。前オリジナル・スタジオ録音作『スティール・ホイールズ』以来5年ぶりの作品であり、ビル・ワイマン脱退後初の作品となった。ワイマンの脱退後、グループは正式なベーシストを置かず、サポートメンバーとしてアメリカのセッションベーシスト、ダリル・ジョーンズを起用した。以降ジョーンズは、ストーンズの全アルバムと全ツアーに、2026年現在まで参加し続けている。また本作は、ウォズ (ノット・ウォズ)などの活動で知られるドン・ウォズが、共同プロデューサーとして参加した初の作品でもある。キース・リチャーズによれば、ウォズはミック・ジャガーが連れてきたとしているが[3]、ウォズによれば、彼は当初、ワイマンの後任のベーシストとしてオーディションに参加したという[4]。本作での仕事が認められたウォズもまた、最新作の『ハックニー・ダイアモンズ』(2023年)までのストーンズの全アルバムに参加し続けている。

タイトルの『ヴードゥー・ラウンジ』は、リチャーズが本作のリハーサルのために滞在していたバルバドスで拾った子猫に由来する。リチャーズは、豪雨の中、道端の排水管にいたこの猫を「ヴードゥー教の魔力と運命に抗い生き残った」として「ヴードゥー」と名付け、その猫と一緒に暮らしたテラスハウスを「ヴードゥー・ラウンジ」と呼んでいたことが、本作のタイトルに繋がった[5][注釈 1]。一方でロン・ウッドは、このタイトルは彼が母親のために建てた邸宅が由来だとしている[4]

本作はCDは1枚組、LPは2枚組形態で発売された。またCD版最終曲の「ミーン・ディスポジション」はLP版には収録されていない(2010年のリイシューLPには収録された)。CDとLPで収録内容が異なるのは、ストーンズのオリジナルアルバムとしては本作のみである。日本語版CDではストーンズファンである山川健一の書き下ろし小説も歌詞カードとともに掲載された。また、ストーンズ初の試みとして、本作をモチーフにした、Windows 95用インタラクティヴCD-ROMも発売された。

経緯

キース・リチャーズの『メイン・オフェンダー〜主犯〜』、ミック・ジャガーの『ワンダーリング・スピリット』発表後、二人は1993年4月より本作のための曲作りを、前作と同じようにバルバドスで開始する。4月末からはチャーリー・ワッツも合流、5月中旬まで作業を続けた。6月、脱退したビル・ワイマンに変わるベーシストのオーディションをニューヨークで行う。ロン・ウッドによれば、このオーディションに、元ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスノエル・レディングも来たという[7]。同年7月からはアイルランドセント・キルダにあるウッドの自宅に移動し、9月から同地で本格的なレコーディングが開始された。このレコーディングには複数のベーシストが参加したが、最終的にダリル・ジョーンズが最適任であるとメンバー間で意見が一致し、ワッツの指名でジョーンズに決定した[7]。ウッド宅での制作中、ジェリー・リー・ルイスがアイルランドを訪れていることを知り、彼らはルイスをレコーディングに招待したが、ルイスはこれを「ストーンズが自分のアルバムにバックバンドとして参加する」と勘違いし、プレイバック中に彼らの録音した内容に文句をつけるなどしたため、リチャーズが激怒する出来事もあった。収録曲「スパークス・ウィル・フライ」は、この出来事を元にして書かれた[8]。11月からはダブリンのウィンドミル・レーン・レコーディング・スタジオに移動し、制作を続ける。ここではジャガーとリチャーズが些細なことから喧嘩になる一幕もあったがすぐに収まり[9]、作業は無事12月に終了した。1994年1月より、ロサンゼルスで追加のレコーディングとミックスダウンを行い、4月中までにすべての作業が完了した。

ジャガーは本作の制作に際し、「80年代の派手なサウンドから脱却し、より人間味のあるレコードを作ろうとした。今はそういうのが流行だしね」と語っており[4]、リチャーズは「今回は全員の才能を全開させようと思って、ミックに『おい、今回はバリバリハープを吹けよ』って言ったんだ。『何で?』って聞いてきたら『お前の才能はハープだからだ』って言うつもりだったが、奴はすぐ『OK!』って言ったよ」と語っている[10]。結果として、本作は1960年代後半から1970年代前半の全盛期のストーンズの想起させる、生々しさのあるサウンドと評される作品となったが[11]、一方で「ムーン・イズ・アップ」では、ドラム代わりにごみ箱用のポリバケツを叩き、階段の踊り場で建物の音響効果を用いながら録音するという、これまでにない手法も取り入れている(アルバムのブックレットには「mystery drum」と表記されている)[12]。「ユー・ガット・ミー・ロッキング」や「スルー・アンド・スルー」でも、ドラムスを同様の方法で録音している[13]

ジャガーはウォズのプロデュースについては「多くの曲がドンに却下されたんだ。グルーヴ感のある曲やアフリカの要素とかを、彼は徹底的に排除しようとした。あれはミスだと思う…『メイン・ストリートのならず者』(1972年)みたいなものを再現しようとしたんだ。エンジニアも一緒になってね。彼らの考えはレトロすぎた。やりすぎたんだ」[14]「ドンは間違いなくグルーヴ否定派だね」[4]と、不満を表明している。これに対しウォズは「グルーヴを否定なんかしていない、ただ中身のないグルーヴに反対してるだけだ。素晴らしいグルーヴはいくつもある。だが「いいけど、その上に何を載せるんだ?どこへ向かわせるんだ?」って感じだった。これが人々がストーンズに求めるものじゃないと感じたんだ」と反論している[4]。一方のリチャーズは、「制作中は昔っぽいサウンドにしようなんて考えなかった。俺達がベストの状態って、時代を問わずこういうサウンドになるんじゃないかな。サウンドと言うよりフィーリングかな。『ストーンズ・サウンド』の再現じゃなく、『ストーンズ・フィーリング』に溢れたアルバムができたと思う」と満足感を滲ませている[11]

評価

『ヴードゥー・ラウンジ』は1994年7月にリリースされた。イギリスでは1980年の『エモーショナル・レスキュー』以来14年ぶりとなる1位に輝き、ゴールドディスクにも認定された。アメリカでは2位に付け、ダブルプラチナを獲得した。その他、オーストラリアカナダオランダドイツニュージーランドスイスでも1位となった。本作からは「ラヴ・イズ・ストロング」「ユー・ガット・ミー・ロッキング」「アウト・オブ・ティアーズ」「アイ・ゴー・ワイルド」の4枚のシングルがカットされたが、イギリスでは「ラヴ・イズ・ストロング」が14位に達し、他の3枚いずれもトップ40位内にランクインしたが[1]、アメリカでは4枚いずれも40位に届かず、「アウト・オブ・ティアーズ」が60位に付けたのが最高だった[2]。『ヴードゥー・ラウンジ』は、200万枚以上を売り上げたにもかかわらず、アメリカで大ヒットを出さなかった最初のアルバムとなった。

ロバート・クリストガウは、本作について一言「世界最高のルーツ・ロック・バンド」と評した[15]オールミュージックスティーヴン・トマス・アールワインは、「前作以上に計算尽くされたにもかかわらず、前作以上に原点回帰となった」が、「収録曲15曲のうち5曲を削ればアルバムの力量を高められたはずだ」とした[16]Q誌のデヴィッド・キャヴァナは「健闘しているが、息切れしてしまう…冒頭3曲のロックナンバーは、ジャガーのひどい歌詞はさておき、熱気と温かみがあり、続く4曲でさらに良くなるが、終盤は下品で卑劣な、ホーンが蔓延るスワンプ・ロックの寄せ集めで一貫性を欠く」と辛口のレビューを書いた[4]。一方ローリング・ストーン誌のポール・コリオは「これはストーンズの存在意義、すなわち超越的で根源的なロックンロールを謳歌している。素晴らしいのは、新ベーシストのダリル・ジョーンズが加わっても、これはバンドとしてのストーンズが演奏している点だ。これほどまでに本物らしく、これほどまでに生き生きとロックしたバンドはかつて存在しない」と絶賛した[4]

ジャガーは、リリースの翌年の1995年のインタビューで「『スティール・ホイールズ』よりいいかどうかはわからない。そんなに差はないと思う。もし500万枚ぐらい売れてたら、今頃“前作より断然いい”って言ってると思うよ」と、やや否定的に評したが[14]、2000年には、割と気に入っているアルバムとして5枚のうちの1枚に本作を挙げている[4]。一方でリチャーズは、ワイマンの脱退というピンチを乗り越えて作り上げたアルバムということもあり「再び形にできたこと自体奇跡だ。バンドが乗り越えるべき山を越えたんだ」「作ってて楽しいアルバムだった…いいレコードだよ」と好意的に語っている[4]

『ヴードゥー・ラウンジ』は、後述のツアー中だった1995年初頭、この年より新設されたグラミー賞 ロック・アルバム部門を受賞した。

ワールド・ツアー

本作リリース後、1994年7月19日にトロントのRPMクラブでクラブ・ギグを行い、1994年8月1日から「ヴードゥー・ラウンジ・ツアー」が、ワシントンD.C.ロバート・F・ケネディ・メモリアル・スタジアム公演を皮切りに北米で60公演、南米とオーストラリアで35公演、ヨーロッパで39公演行われた。日本でも、東京ドームで1995年3月6日〜17日までの7公演、福岡ドームで22・23日の2公演を行い[17]、計143公演となった。このツアーでストーンズは3億2000万ドルを稼ぎ、当時の1グループとしてのツアー最高益を叩き出した[18]。このツアーでは、当時ブームであったアンプラグドの影響を受け、アコースティック楽器主体のセットも組まれた。また日本ツアー中、ストーンズは東京のスタジオで18曲のレコーディングを行った(トーキョー・セッション)。ここから5曲が、ツアー終了後の1995年11月にリリースされたライヴアルバム『ストリップド』に収録された[19]

リイシュー

2009年、リマスターCDがユニバーサルからリリースされた。2018年、「ヴードゥー・ラウンジ・ツアー」の中から、マイアミジョー・ロビー・スタジアム公演の音源と映像を収録した『ヴードゥー・ラウンジ・アンカット』がリリース。2024年、発売30周年を記念した黄色と赤のカラーLP2枚組盤と、これにアルバム未収録のシングル盤カップリング曲をまとめた10インチ盤を付属したスペシャル・エディションが限定発売された[20]

曲目

全曲ジャガーリチャーズ作詞作曲。

  1. ラヴ・イズ・ストロング - Love is Strong 3:49
  2. ユー・ガット・ミー・ロッキング - You Got Me Rocking 3:36
  3. スパークス・ウィル・フライ[注釈 2] - Sparks Will Fly 3:15
  4. ワースト - The Worst 2:24
  5. ニュー・フェイセズ - New Faces 2:51
  6. ムーン・イズ・アップ - Moon is Up 3:40
  7. アウト・オブ・ティアーズ - Out of Tears 5:27
  8. アイ・ゴー・ワイルド - I Go Wild 4:24
  9. ブランド・ニュー・カー - Brand New Car 4:14
  10. スイートハーツ・トゥゲザー - Sweethearts Together 4:45
  11. サック・オン・ザ・ジャギュラー - Suck on the Jugular 4:26
  12. ブラインデッド・バイ・レインボウズ - Blinded by Rainbows 4:33
  13. ベイビー・ブレイク・イット・ダウン - Baby Break It Down 4:07
  14. スルー・アンド・スルー - Thru and Thru 6:00
  15. ミーン・ディスポジション - Mean Disposition 4:07

パーソネル

※アルバム記載のクレジットに準拠

ローリング・ストーンズ

参加ミュージシャン

チャート

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ゴールドディスク

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Certifications and sales for ヴードゥー・ラウンジ
国/地域 認定認定/売上数
アルゼンチン (CAPIF)[49] 2× プラチナ 120,000 ^
オーストラリア (ARIA)[50] ゴールド 35,000 ^
オーストリア (IFPI Austria)[51] ゴールド 25,000 *
ベルギー (BEA)[52] ゴールド 25,000 *
カナダ (Music Canada)[53] 3× プラチナ 300,000 ^
フランス (SNEP)[54] 2× ゴールド 200,000 *
ドイツ (BVMI)[55] プラチナ 500,000 ^
アイルランド (IRMA)[56] シルバー 5,000 [57]
Italy 250,000 [58]
日本 (RIAJ)[59] ゴールド 172,410 [45]
メキシコ (AMPROFON)[60] プラチナ 250,000 ^
オランダ (NVPI)[61] プラチナ 100,000 ^
ニュージーランド (RMNZ)[62] ゴールド 7,500 ^
ノルウェー (IFPI Norway)[63] ゴールド 25,000 *
スペイン (PROMUSICAE)[64] ゴールド 50,000 ^
スウェーデン (GLF)[65] ゴールド 50,000 ^
スイス (IFPI Switzerland)[66] ゴールド 25,000 ^
イギリス (BPI)[67] ゴールド 100,000 ^
アメリカ合衆国 (RIAA)[68] 2× プラチナ 2,000,000 ^
概要
ヨーロッパ (IFPI)[69] プラチナ 1,000,000 *
Worldwide 6,000,000[70]

* 認定のみに基づく売上数
^ 認定のみに基づく出荷枚数

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脚注

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