一本刀土俵入り
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概要
あらすじ
水戸街道の宿場町・取手宿の茶屋旅籠、我孫子屋の二階の窓にもたれて、あばずれた様子の酌婦お蔦が酔いをさましている。やくざの弥八が暴れ、人々に絡んでいる。そこへ空腹でふらふらしながら取的の茂兵衛が通りかかり、弥八に絡まれてしまう。癇癪を起こしたお蔦は、弥八に水をぶっかけた。お蔦が親分のお気に入りであることを知っている弥八は、腹いせに茂兵衛を突き飛ばすが、かえって頭突きを食らってほうほうの体で逃げ出す。
茂兵衛は興味を持ったお蔦に問われるまま身の上を語る。生まれは上州勢多郡駒形村(駒形新田)。家も焼け、たった一人の肉親である母親も失い、天涯孤独な身の上の茂兵衛は、立派な横綱になって母親の墓前で土俵入りを行いたいという夢があったが、相撲の親方に破門となった。もう一度弟子入りしようと江戸に向かっていたが、無一文で水ばかり飲んでいるという。
母親想いの純情一途な茂兵衛の話に心をうたれたお蔦は、故郷越中八尾の母親を想って、小原節を口ずさむ。去ろうとする茂兵衛に、お蔦は有り金を入れた財布を投げて渡す。そして扱帯にくくりつけた櫛、簪を下ろし茂兵衛に与え、立派な横綱になるようにと励ます。茂兵衛はこの親切を生涯忘れないと誓い、振り返り振り返り、頭を下げて去っていく。
お蔦のおかげで食べ物を手に入れることができた茂兵衛だが、一足違いで渡り船に乗り遅れてしまう。そこへ後を追ってきた弥八と仲間が襲ってくる。お蔦の悪口を言われた茂兵衛は激怒して弥八をたたきのめし、恐れた仲間たちも逃げ出してしまった。
十年後、渡世人となった茂兵衛は我孫子屋のお蔦のことを尋ねて布施の七里ヶ渡にやってくるが、ヤクザ相手にイカサマ賭博をやった船印堀師(だしぼりし)辰三郎に間違われて、波一里儀十の子分たちに打ちかかられる。実は辰三郎は、お蔦の夫だった。
今では飴売りをして娘のお君とほそぼそとだがまともに暮らしているお蔦。そこへ儀十と子分たちが辰三郎を探して乗り込んできたので、お蔦は何年も行方知れずだった夫辰三郎がまだ生きていて、追われる身だと知る。
夜更に辰三郎が戻ってきて、親子は再会を喜び合う。辰三郎は少しでも金を持って帰ろうとしてイカサマに手を出したことを悔やむ。
そんなところへお君の歌う「小原節」にひかれるように茂兵衛が訪ねてくる。そして十年前の恩返しにと金を渡すが、お蔦は茂兵衛を覚えていない。追手がこの家を囲んでいることに気づいた茂兵衛はお蔦一家をかばって、博徒たちをたたきのめす。お蔦は茂兵衛のことを思い出すが、茂兵衛は早く逃げるように促した。
一人残った茂兵衛は関取として果たせなかった横綱の土俵入り姿をお蔦に捧げる。
ああお蔦さん、棒ッ切れを振り廻してする茂兵衛の、これが、十年前に、櫛、簪、巾着ぐるみ、意見を貰った姐さんに、せめて、見て貰う駒形の、しがねえ姿の、横綱の土俵入りでござんす。