中尾哲彰
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中尾 哲彰 | |
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| 生誕 |
(1952-01-30) 1952年1月30日 佐賀県杵島郡山内町(現:武雄市山内町) |
| 死没 | 2025年3月8日(2025-03-08)(73歳没) |
| 国籍 |
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| 出身校 | 慶應義塾大学文学部哲学科中退 |
| 職業 | 陶芸家 |
| 代表作 | 『銀河のオデッセイ』 |
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中尾 哲彰(なかお てつあき、1952年1月30日 - 2025年3月8日[1])は、日本の陶芸家、芸術家[2]。
「銀河釉」という様々な金属を高温で結晶化させる独自の釉薬を開発し、国際的に評価された[3]。代表作に『銀河のオデッセイ』や『遥かなる長安』、『東洋の記憶』、『東洋的「無」』などがある。愛猫家。弟子のステン・ヴァン・ダーレンは娘婿[4]。
生い立ち
佐賀県杵島郡山内町(現:武雄市山内町)出身[5]。父は、元陸軍士官で玉峰陶園(現:銀河釉 玉峰窯)を創業した昌幸[6]。中尾家の長男として生まれる。
学生時代
父は士官学校出身で教官をしていたため、同じやり方で厳しく育てられる[6]。慶應義塾大学文学部哲学科中退[1]。当時は、学生運動が冷めやらぬ時代であり、当初は社会学・哲学の学者を志していた[7][8]。しかし、いざ入学すると大学が求めていたようなものではなく、「なぜ人類は生き、宗教は生まれるのか」と根源的な問いに悩み、卒論で教授と喧嘩別れして中退[8]。失意の中実家に帰ると、無心に土と格闘する父や職人の姿をみて、陶芸の道を進むことを決心する[8][6]。そんな中慶應義塾大学商学部名誉教授の石坂巌から「中尾君が求めているものを教えることはできないかもしれないが、一緒に考えることはできる」という言葉を受け研究室に誘われたことから、その後生涯に渡る師弟関係になる[6]。陶芸家として活動を始めた後も、大学教授に混じってシンポジウムにて基調報告を行う[9]など平行し学問を続けていた[7]。ドイツの社会学者マックス・ウェーバーを主な研究対象としていた[6]。
陶芸家として
家が土物を扱う窯元だったが、作家として活動を始める上で白磁の作品を作り始め、日展に初出品にて初入選する[7]。その他にも青磁、辰砂、天目など様々な釉薬での作品を作る[7][2]。1981年より日本現代工芸美術家協会九州会に参加し、現代工芸展などでも入選するが、偏狭な美術工芸団体の煩わしさから脱退[10]。 32歳の時、網膜剥離を患い失明に近い状態で半年ほど過ごす[6]。その時の暗闇の絶望的経験から、夜空の星々のような釉薬を作り苦しんでいる人にとって光となる明るいメッセージを届けたいと思うようになり、釉薬の研究を始める[11]。世界中から文献を集め、実験を繰り返しテストピースが5千を超えた頃それらしきものが現れ始め、6年の研究の末に完成した釉薬に自ら「銀河釉」と名付ける[7]。
銀河釉時代
国内ではなかなか評価されず苦しんでいたが、中国に頻繁に陶芸研究に行っていた際に作品を高く評価してくれていた北京中央美術学院の張教授のアドバイスを受け、海外に出展するようになると中国、イタリア、スペイン、オランダなど様々な賞を受賞するようになる[12][13]。1994年アメリカのデンバー美術館に北大路魯山人と酒井抱一と共に並列展示されるようになり、2003年にはルーブル美術館開館二百周年を記念した展示会「美の革命展 in ルーブル」にて陶芸部門でのグランプリ、プリ・デ・リオン賞とトリコロール平和芸術賞を同時受賞[14]。2008年にはロンドンにて初個展[15]。2019年の当時のローマ教皇フランシスコの来日時には長崎の「26聖人記念館」にて『銀河のオデッセイ』が展示される[11]。

また、茶道具においては、遠州流の十三世家元小堀宗実に指導を受けるようになり、2005年には愛・地球博の会場にて小堀宗実家元によりプラチナ茶室と共に銀河釉茶道具を紹介される[11][16]。
2019年ごろから肺気腫が悪化し入退院を繰り返すようになり、晩年は体力的に大作を作れなくなると茶盌を中心に作るようになり、銀河釉の新しい釉薬を生み出し続けた[7]。それらの新しい色の多くは今だに名前が付けられていない[7]。現在、弟子と息子がその再現に取り組んでいる[17][18]。
「星空から見れば国境線は見えない」「武器のない、国境のない」「愛と自由」のやさしい共同体、それが銀河釉を通して生涯追い求めたテーマだった[19][7]。
主な年譜[16][11]
- 1982年 日本現代工芸美術展入選、日本美術展覧会入選
- 1986年 九州山口陶磁展 第三位入賞
- 1986年 連展にて東京都教育委員会賞受賞、日本現代美術家連盟員に推挙さる
- 1992年 中央工芸美術学院研究室収蔵、杭州南宋官窯博物館収蔵
- 1993年 国際陶芸ビエンナーレ日本代表招待出品
- 1994年 アメリカ合衆国コロラド州デンバー美術館に展示
- 1995年 国際美術大賞イタリー展'95 国際美術奨励賞
- 1997年 セビリア市文化教育功労賞
- 1998年 ベルサイユ芸術友好協会会員に認定される
- 1999年 日蘭交流四百周年記念「日本の美術展」選抜出品 、アートユニオンオランダ賞 陶磁展 「現代の有田&マイセン」選抜出品 (マイセン市アルブレヒト城美術館)
- 2000年 ミレニアム記念芸術アカデミーグローバル賞 (海外芸術交流協会)
- 2001年 A・M・S・Cスペイン芸術賞、フランス芸術家協会名誉会長ポールアンビーユ氏の推薦により第5回モナコ日本文化フェスティバル招待出品 「モナコ公国名誉賞」
- 2002年 A・M・S・Cスペイン本部推奨作家賞、スペイン国立プラド美術館財団会員、中日桂林書画連合展 特別出品文化局長賞、エコロジー・アース・アート21展 陶芸部門大賞
- 2003年 フランス・パリ・美の革命展 in ルーブル、グランプリ 「プリ・デ・リオン」特別賞 「トリコロール芸術平和賞」
- 2003年 トルコ日本現代芸術世界展(イスタンブール・トプカプ宮殿)、オスマントルコ芸術勲章
- 2004年 カンヌ国際芸術祭 コートダジュール国際芸術賞、オゾン夏の大茶会に於いて不傳庵小堀宗実家元(遠州流茶道宗家十三世家元)により銀河釉茶道具を家元好として紹介される、ドイツ有田陶芸展出品 (マイセン・ベルリン・デュッセルドルフ)
- 2005年 万国博覧会 「愛・地球博」の会場にて小堀宗実家元により、プラチナ茶室と共に銀河釉茶道具を紹介、アジアにおける日本美術展優秀賞 (シリキット王妃美術館にてタイ王室より招待出品)
- 2007年 モスクワ国際芸術博覧会 ロシア国立芸術アカデミー審議会賞
- 2008年 クイーンヴィクトリアギャラリー (ロンドン)にて海外初個展、Bonhams (ロンドン)のオークションに初出品
- 2010年 福岡市美術館にて銀河釉作陶展開催、タイ王室ソムサワリ王女芸術賜杯、日本ハンガリー芸術交流祭仏ルーブル美術館長の推薦による出品、ハンガリー文化芸術名誉作家賞
- 2012年クリスティーズオークション「THE JAPANESE AESTHETIC」に出品
- 2019年 ローマ教皇来日に合わせて、日本二十六聖人記念館に『銀河のオデッセイ』が展示される
- 2025年 逝去
脚注
- ↑ “中尾哲彰、逝去のお知らせ”. 銀河釉 玉峰窯 (2025年3月21日). 2025年9月4日閲覧。
- 1 2 「中尾哲彰作陶展 世界が絶賛した銀河釉」『島原新聞』2006年4月14日。
- ↑ 「「明日への神話」銀河釉の造形美豊か」『佐賀新聞』2016年3月18日。
- ↑ “YOUは何しに日本へ?★妻の父が陶磁器の大巨匠&病気少年の人生変えたマリオ | TVO テレビ大阪”. YOUは何しに日本へ?★妻の父が陶磁器の大巨匠&病気少年の人生変えたマリオ | TVO テレビ大阪. 2025年9月1日閲覧。
- ↑ “有田陶芸協会”. www.tougeiky.org. 2025年9月1日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 『世論時報 1月号「世代交代の時が来た」』世論時報社、2011年1月、17-21頁。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 “中尾哲彰・回顧展|銀河釉 玉峰窯”. 銀河釉 玉峰窯. 2025年9月1日閲覧。
- 1 2 3 「生きる意味問う銀河釉」『西日本新聞』2017年2月20日。
- ↑ “21世紀の社会と文化”. シンポジウム『21世紀を見つめて』 (西日本社会経済研究会編): 10-16. (11月 1991年).
- ↑ “東京・六本木の有田陶器市「有田焼通販 GALLERIA(ガレリア)645」”. 東京・六本木の有田陶器市「有田焼通販 GALLERIA(ガレリア)645」. 2025年9月1日閲覧。
- 1 2 3 4 “銀河釉とは? | 銀河釉 玉峰窯 | 新しい有田焼”. 銀河釉 玉峰窯. 2025年9月1日閲覧。
- ↑ 「中尾哲彰「愛と自由」のメッセージを焼き物に託す」『とっとっと』2006年11月1日。
- ↑ 「「愛と自由」オブジェに込め」『佐賀新聞』2004年1月28日。
- ↑ 「花器のオブジェ「東洋の記憶」」『佐賀新聞』2003年8月。
- ↑ 「銀河釉の作品アピール 中尾さんロンドンで個展」『佐賀新聞』2008年7月5日。
- 1 2 “Japan Pottery Net / 作家プロフィール_中尾哲彰”. www.japanpotterynet.com. 2025年9月1日閲覧。
- ↑ “銀河を焼いて 時々ネルソン - ドキュメント20min.”. NHK. NHK. 2025年9月1日閲覧。
- ↑ “器の“銀河”に挑む 〜日蘭2人の青年陶芸家〜 - SAGA SOUL”. NHK. NHK. 2025年9月1日閲覧。
- ↑ 石坂巌「めぐりあい 力強い青春群像の中心に 中尾哲彰君」『毎日新聞』1982年3月12日。