児童移民
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移住と移動における子どもの権利
意見を聴かれる権利
意見を聴かれる権利は、国連の子どもの権利条約によって定義されている子どもの権利の原則である。この条約の第12条によれば、子どもは自らに影響を及ぼすあらゆる事柄について意見を表明する権利を有し、その意見は子どもの年齢及び成熟度に応じて、正当に考慮されなければならない。この権利は司法及び行政手続きへの関与と同様に、社会や政治的な事柄への子どもの参加にも等しく適用される。一般原則として、子どもの意見を聴かれる権利は、子どもの「主体性」という概念を反映しており、子どもを特別な保護を必要とする脆弱な者としてのみ見るのではなく、情報に基づいた意思決定者、権利保有者や現役の社会の一員としても見ている[2][3]。
多くの子どもたちは、情報を開示することが自らの利益にならないかもしれないこと、また自らの事情を話すことが母国への送還に繋がるかもしれないことを恐れて、目的地国の当局と情報を共有することをためらっている。子どもについては、第三者から自らの話の特定の部分だけを明かすように指示されている可能性、脅迫や報復への恐れが関与している可能性や、警察や地方当局は自分たちを守ってくれると信頼していない可能性がある。子どもの尊厳を守り、尊重する受け入れ体制は、子どもが出会う職員や専門家に対する信頼感を育むことに繋がる。通訳者は子どもの話がどのように理解され認識されるかに影響を与えることから、亡命手続きや犯罪捜査における情報収集の過程に影響を与える可能性がある。不正確な翻訳は子どもの発言を損ない、誤った情報に基づいた判断に繋がる可能性がある。これは翻訳された内容そのものだけでなく、子どもが用いる文体や意味の選び方、そして通訳者がそのメッセージをどのように伝えるかにも関係している[4]。
差別を受けない権利:地位、アクセス権および管轄権
子どもの権利条約は、あらゆる差別からの幅広い保護と、すべての人間に保証される本質的かつ平等で譲ることのできない権利を子どもに与えている。この条約は、締約国がその管轄内にあるすべての子どもに対して、いかなる種類の差別もなく条約に定められた権利を尊重し、確約しなければならないことを規定している。その際、子ども自身またはその親、法的保護者の人種、肌の色、性別、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国籍、民族的もしくは社会的出自、財産、障害、生まれやその他の地位によって差別してはならない[5]。
この条約によって保障される権利は、国籍を持たない子どもにも適用され、子ども自身やその親の移住・移動の状況にかかわらず保障される。これには、一時的に滞在している子ども、難民、移民労働者の子ども、そして非正規滞在の子どもも含まれる。差別を受けない権利は、子どもの状況や最善の利益が評価されている間、その子どもが直ちに支援や援助を受ける権利を意味している。差別を受けないということは、子どもに自動的に滞在許可が与えられることを意味するものではないが、子どもを送還するか、あるいは受け入れ国がその子どもに対する管轄権を引き受けるかについて、子どもの最善の利益の原則に基づいて決定がなされることを意味している[6][7]。
子どもの事案や状況を評価する際、国家当局には、どの国がその子どもに対して管轄権を有するのかを明確にし、必要かつ適切な場合には、目的地となる国において管轄権を移譲または確立する責任がある。国民ではない子どもの子どもに対する管轄権が不明確なままであると、その子どもは不確実な状態に置かれる危険があり、身分が完全に正規化されるか、または管轄権を有する国に帰還するまで、一時的なサービスや保護措置しか受けられない可能性がある。管轄権に影響を及ぼす一般的な要因には、次のようなものがある。
- 子どもが関与している裁判が係争中である場合
- 別の国の社会福祉機関が、その子どもや家族を監視していた可能性がある場合
- 子どもの状況が別の国で法執行機関による捜査の対象となっている場合(児童人身売買が疑われるケースを含む)
- 子どもが他国で難民申請を提出している場合
- 子どもが海外で「行方不明児」として登録されている場合[8]
領事援助を受ける権利
居住国以外の国にいる子どもには、自国を代表する大使館や領事館から援助を受ける権利がある。 領事館職員は、国外にいる子どもを支援・援助し、支援にかかわる連絡先や照会先を確定し、援助を調整する上で重要な役割を果たし得る。領事館職員は、子どもに関する事案において、技術的助言を得るために中央当局や国内の連絡窓口に連絡することもある。国際連合の1963年「領事関係に関するウィーン条約」に基づき、領事の職務には、派遣国の国民を援助・支援することが含まれる。これには、特に保護者の選任が必要な場合において、受入国の法律や規制の範囲内で、派遣国の国民である子どもの利益を保護するための措置が含まれることがある[9]。子どもの保護者の選任が検討されている場合、目的地の国の当局は、遅滞なく管轄の領事館に通知しなければならない。保護者の選任に関する受入国の法律及び規制が適用され、該当する領事館への情報共有によって影響を受けることはない[10]。
欧州連合内の移動と移住
すべての人々(親、子どものいる家族、そして同伴者のいない子どもを含めて)はヨーロッパ地域内で移動の自由を享受している。ヨーロッパの移動自由圏内において、EU加盟国及びEFTA諸国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)の市民は、他のEU加盟国内において、登録なしで最長3ヶ月間の入国及び滞在が認められ、収入があることを証明できる場合には滞在許可が与えられる。ヨーロッパの移動自由圏内における、同伴者のいない子ども(単独移住児)の権利は明確に定義されておらず、関連する制度的責任も不明確なままである。同伴者のいない18歳未満の子どもに対して、各国政府が移動の自由に関する規則をどのように解釈し、規制しているかは国によって異なる[11]。
ヴァルネラビリティ
移動している子どもはよく「ヴァルネラブル」(vulnerable) であると言われるが、この言葉の意味は児童保護の文脈で明確に定義されているわけではない。ヴァルネラビリティはしばしば弱点として理解され、弱さや保護の必要性と同一視される。子どもの権利に基づくアプローチからすると、ヴァルネラビリティとは国連の児童の権利に関する条約下で保有されるべき権利を十分に行使するにあたって子どもに機会が限られていることを指す[12][13]。
移民する子どものリスク
困難な生活状況や暴力、紛争から逃れるため移民する子どもにとって、移民はリスクを下げる機会でもある。一方で移民している間や目的地でより深刻なリスクにさらされることもある。社会的セーフティーネットが弱いため、人身取引を含む搾取や虐待にさらされやすくなる子どものグループもある。子どもがさらされているリスクはしばしば相互に絡み合って高まると考えられている。既に貧困や虐待、学校からのドロップアウトなどのヴァルネラブルな状況で暮らしている子どもは、搾取的な関係や危険な移民など、他のリスクが加算されるとよりヴァルネラブルになると考えられている[12][13]。
安全性が低い移民により子どもはさらなるリスクにさらされる。暴力行為を受ける可能性に加え、必要書類を持たずに旅をしたり、生計を立てるために不法行為や犯罪行為に手を染めたり、他人に説得あるいは強要されてそうした行為を行ったりすると、子どもが法的問題に巻き込まれるリスクもある。習慣的・巡回的に移動する状況に置かれると、子どもの福祉、安全、発達が相当な影響を受ける可能性がある[12][13]。
搾取
移動している子どもはさまざまな形の搾取のリスクにさらされる。これには売春やポルノグラフィ、ウェブカムで盗撮を行いながら移動する性犯罪者、子ども虐待画像、インターネットの不法コンテンツなどにかかわる性的搾取も含まれる。オペア、工場、工事現場、アスファルト舗装、レストラン、清掃業、農業、ベリー摘み、物乞いなどの児童労働や家事労働で搾取が発生することもある。国境を越えた子どもの強制結婚や児童婚のケースもある。子どもの搾取は家族によって行われることもあるが、大小の犯罪ネットワークにより行われることもある。子どもはドラッグ生産やドラッグ取引、すり、侵入窃盗などの不法行為・犯罪で搾取されることもある[14][15]。子どもの人身取引はますます物乞い、福祉不正受給、信用詐欺、保険詐欺などの目的で行われるようになっている[16]。
人身取引
子どもの人身取引は2000年に出た「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の移住者の密輸に反対する議定書」により、搾取を目的とする子どもの求人、移送、移動、隠匿、受領を指すものとして規定されている。この定義は国境を越える場合や犯罪組織が絡んでいる場合のみ適用されるが、子どもの人身取引はその後通常こうした条件の外でも認識されるようになっている[17]。国際労働機関は子どもの人身取引の最重要側面として移動と搾取を含むよう定義を拡大している[17]。
国際人身取引の被害者が国境を越える際、移動のための法的書類がある場合もない場合もあり、密輸者の助けがある場合もない場合もある。国境を越えた後に人身取引に勧誘されることもよくある。多くの場合、人身取引は国内で発生し、国境を越えない。2000年の国連の議定書は、人身取引被害者の身元確定において取引方法や子どもの同意はいかなる人身取引行為においても重要ではないと考えている。人身取引を構成する搾取には、「少なくとも、他人に売春させる搾取あるいはその他の性的搾取、強制労働や強制サービス、奴隷制あるいは奴隷制に類似する行為、従属あるいは臓器摘出」が含まれる
ヨーロッパにおける子どもの人身取引の定義
2005年の人身売買に対する行動に関する欧州評議会条約は国際的な定義をそのまま逐語的に採用しているが、人身売買が国内で起こったり、大規模な組織犯罪グループがかかわっていなかったりする場合も被害者が保護されることを強調している[18]。
2011年にEUが出した人身取引に関する指令は人身売買の概念における作品の意味を広げた。人身売買の定義の一部として犯罪的な活動における搾取目的を明確に含むこととしている。第2条第3項では「『犯罪的活動における搾取』はとりわけスリ、万引き、ドラッグ取引その他の罰を受けるが金銭的利益を及ぼす可能性がある類似の行いとして理解されるべきである」と明確に述べている。この指令は「取引対象になった従属している者を物乞いのために用いることを含む物乞い目的の搾取は、強制労働や強制サービスを構成する全ての要素が発生している時にのみ人身取引の範囲に含まれる」としている[19]。
移住者密輸
「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の移住者の密輸に反対する議定書」は人間の密輸(移住者密輸)を「直接的あるいは非直接的に、その者が国民でも永住者でもない国に不法に入国させて金銭的あるいはその他の物質的利益を得るため斡旋を行うこと」と規定している。移住者密輸を行う者は移動のための書類なしに金銭その他の利益のため他の者が国境を越えられるようにする。 ひとたび密輸者が越境を手助けしたり、合意している目的地に確実に移民を到着指せたりする場合、密輸者と密輸された移民の間の連絡は通常、途絶える。国境を越える人間の密輸が目的国で搾取を行うためになされる場合は人身取引行為と見なされる[20][21]。
子どもの売買
子どもの売買とは子どもがある人か集団によって報酬その他の対価のため他の者の手に移動させられる行動あるいは取引を指す。子どもの人身取引は人間の売り買いを含むことがあり、子どもの販売は搾取につながることもあるが、必ずしも常にそうであるというわけではない。たとえば、子どもは時として不法な養子縁組などで販売されることもある。子どもは性的搾取や労働目的で売られることもある。こうした場合は人身取引と売買はひとつの法的事案のなかでふたつの犯罪行為が重なり合うことになる[22]。
持続可能な発展
移民と持続可能な発展の間の関連は広く認められている。移民は「持続可能な開発目標のための2030アジェンダ」に直接かかわっている。現状の人口のトレンドからして、富裕な国の人口は不均衡に高齢化する一方で収入が低い国は若い世代が過剰となるため、労働市場、社会保障、教育、栄養などにひずみが生じる[23]。
移民により、双方の人口不均衡を緩和できる可能性がある。労働力を増やし、必要なところで若い世代の数を補強できる可能性がある。これにより移民の目的地となる高収入な国の社会福祉システムに貢献し、貧困率と失業率が高い移民を送り出す国の社会福祉システムのひずみを減らすことになり得る。 移民及び移動に関する政策により、理想的には知識、能力、人材の相互交換がすすみ、一方的な移動や頭脳流出が防がれることが望ましい。この観点から、移民は貧困を減らし、より公平で持続可能な世界的発展に貢献する可能性がある[24][25]。
人権にもとづき、開発を指向する観点からすると、移民を送り出す国も受け入れる国も移民を管理する責任を共有する。良好な開発を最大化し、移民によりリスクを最小化するためには、移民した人々の長所を引き出し、双方の国の間で社会的、経済的、政治的関係において協力しながら移民の管理に尽力することが必要である[25]。