地域振興券
子供と低所得高齢者を対象に支給された使用期限付きクーポン券
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概要
財源を日本国政府が全額補助することで、日本全国の市区町村が発行し、一定の条件を満たした国民に額面1000円の地域振興券を1人20枚ずつの1人2万円分、総額6194億円を贈与という形で交付した。交付開始日から6ヶ月間有効で原則として、発行元の市区町村内のみで使用でき、釣り銭を出すことが禁止され、額面以上の買い物をすることを推奨した。
当初公明党が要求した案は、全国民と永住外国人に1人3万円分の総額予算約4兆円の商品券を交付するという案だった。自民党との協議後、最終的に15歳以下の子供と、老齢福祉年金の受給者ら計3509万人を対象に1人当たり一律2万円の総額予算約7000億円の振興券を支給することになった[4]。
1999年(平成11年)1月29日の島根県浜田市での交付を皮切りに、2月1日に北海道新冠郡新冠町、福島県耶麻郡北塩原村、千葉県野田市、和歌山県有田郡清水町、愛媛県八幡浜市の5市町村で交付され、その後、全市区町村で交付された。
配布対象
使用率・経済効果・批評
使用率
- 最終的な使用率は、後述する「名探偵コナン」デザインのクーポン券の保存目的で未使用とした自発的なケースなどを除けば、全国平均で99.6%と圧倒的多数に達し、6,189億6,100万円が換金された。[1]。
減税税との比較
子育てを支援し、老齢福祉年金等の受給者や所得の低い高齢者の経済的負担を軽減することにより、個人消費の喚起と地域経済の活性化、地域の振興を図ることを目的に発行された。バブル崩壊後、景気浮揚を目的として数回の減税は行われていたものの、減税による負担軽減分は貯蓄に回ってしまい、減税本来の目的である消費の拡大という目的を果たせてこなかった。そのため、クーポン支給とは「貯蓄に回せない形」で消費を刺激しようとしたものである。交付対象者を若い親の層や所得の低い高齢者層などに限定した理由として、これらの層は比較的可処分所得が低いことから、地域振興券を交付することによる消費喚起の効果が大きいと考えられたことが挙げられている[5]。
経済効果
1999年、経済企画庁は振興券を受け取った約3107万人[6]の中の9000世帯に対してアンケート調査を行い、振興券によって増えた消費は振興券使用額の32%だったとしている。つまり、残りの68%が貯蓄に回されたり、振興券がなくても行われた消費に使われたということである。経企庁の調査ではこの結果をベースに単純計算し、振興券は名目GDPを約2000億円押し上げたと結論付けている[7]。この額は、GDP全体の0.04%程度、内訳である個人消費の0.07%程度である。このアンケート調査では半耐久財の将来需要の先喰い部分も含まれてしまうなど、振興券の消費喚起の効果を過大評価している可能性が高い。実際、その後に行われた、内閣府経済社会総合研究所による個票データを用いたより精緻な分析によると、限界消費性向は0.1程度まで低下することとなり、消費喚起効果は非常に限定的だった[8]。
地域振興券発行後、この年の下半期に景気は回復に転じ、前年度のマイナス成長からこの年はプラス成長となった。ただしこの時に伸びたのは政府支出であり、家計支出は目立った変化をしていない。このことから、政府支出を増やすことが地域振興券発行よりも景気回復に結びついた[9]。
- 2002年4月の内閣府経済社会総合研究所によると交付された世帯では地域振興券を優先的に使用する一方で、そのことによって使用せずに済んだ現金を貯蓄に回したため、消費の押し上げ効果は発行額のわずか10%程度にとどまり、波及効果もほとんどもたらさなかった[8]。このことについて評論家の屋山太郎はレオン・ワルラスの理論を逆引用して、「国民は合理的な経済行動をしないという理論に基づいている」と批判した。その理由として「普通の人なら振興券で日常の消費をし、現金を残すことになるだろう。振興券の分だけ消費が増えると考えたのは『国民が愚かで騙されやすい』と考えていることにほかならない」と主張している。
- 日本共産党は2000年、機関紙しんぶん赤旗で「交付世帯の多くが生活必需品の購入を現金の代わりに振興券でおこなったにすぎず、当初から指摘されたように交付金額の多くが貯蓄に回されたこと、景気対策として失敗だったことが明白になった」とし、地域振興券での効果は殆ど無かったと主張している[10]。
デザイン規定無しの弊害
要望した公明党に対する批判
- 与党である自由民主党からも「ばら撒き政策」だと強い批判が挙がったが、連立与党公明党の強い要望により導入された。当時の内閣官房長官の野中広務が「(以前から公明党が主張していた地域振興券は)天下の愚策かも知れないが、7000億円の国会対策費だと思って我慢して欲しい」と、後に話したといわれている。また公明党との自公連立政権は、創価学会票を得るための選挙対策であること、その見返りが公明党の要望する地域振興券だった旨が述べられている[11]。なお自由民主党内部でも、八代英太代議士(当時)など賛同の立場で活動した者もいた。
- 公明党の当初主張していた4兆円から対象者を絞ることで総額約7000億円から予算削減させたものの、マスコミからも強い批判が挙がった。日本国外のマスコミにも、「独創的なプランのように思えても、経済効果はほとんど期待できない。日本経済を襲っているデフレのあらしを考えると、この程度の額では問題解決にはならない。商品券をもらっても、だいたいは元々予定していたものを買うのに使うだろう」(フィナンシャル・タイムズ)、「印刷にフジヤマ程の大量の木材が必要だ」とからかった上で、「ばかげた計画で、世界中の笑い者になる」、「お年玉をもらう子供のように扱われている」といった声を紹介(ロサンゼルス・タイムズ)するなど、冷やかに報道された[4]。
- 想定以上に経済的効果がなかったことから、マスコミや政治記者からも地域振興券は公明党の失政との声が上がった[12]。
- 2007年(平成19年)9月21日付の日本経済新聞社説は、「1999年に実施した国民1人2万円、予算約7700億円の地域振興券は、公明党の強い主張が実った政策だ。その地域振興券は地域経済の活性化に役立っただろうか。少なくとも持続性は全くなかった」と論評している。
- 日本経済新聞の芹川洋一は「政府・自民党がのんだ公明党の商品券構想は、経済的合理性からは「天下の愚策」と酷評され、ヘリコプターからお礼をばらまいた方がよほど理にかなっているとまで言われる始末だ。自民党にすれば、支給総額7000億円、必要経費を含め8000億円の商品券は国会対策費そのものである。年内いっぱいの政権維持のコストとすれば一日当たり約160億円。安いものということだろうか」と批評している[13]