凪の中、濃密なもやに包まれて停止中のスクーナーに、1艘の手漕ぎボートが近づいていく。
ボートを漕いでいる男はスクーナーの船員に声をかけ、ランタンの灯りを遠ざけてくれるように頼むと、自分は難破した船の乗客だったと話し、婚約者のために食糧を分けてくれないかと乞う。船員はいくばくかの食糧を入れた木箱を海に浮かべ、ボートの方へ押しやった。
その夜、暗く星の輝きすらない遅くに再び現れたボートの男は、婚約者は食糧に感謝していたがもうすぐ死ぬと言い、自らの体験を話し始める。
帆船アルバトロス号が遭難し、男と婚約者は乗組員に見捨てられ、難破船に取り残された。船を脱出した2人は小島に漂着するが、そこは菌類に厚く覆われ、食糧になりそうなものは草も鳥も魚も無く、唯一食べられそうなものはキノコだけであった。しかし、2人はキノコを食べた者がやがてキノコに成り果てていくことを知る。
夜明けが迫り、薄明かりの中を男は島に戻っていく。それを見送る船員には、ほとんど人間とはいえない奇妙な形のものがボートを漕ぐ姿が、かすかに見えていた。