大麻精神病
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大麻精神病(たいませいしんびょう、cannabis psychosis)とは、現在は大麻中毒、大麻離脱症候群、大麻誘発性精神疾患群とされる疾患である。大麻誘発性精神疾患群は、大麻誘発性精神障害、大麻誘発性せん妄、大麻誘発性不安障害、大麻誘発性気分障害、大麻誘発性睡眠障害があり、独立して臨床的関与を必要とするほど重症である場合に、大麻中毒または大麻離脱の代わりに診断される[1][2]。
大麻使用は一時的な精神病症状(急性精神症エピソード)を呈すこと、統合失調症や他の精神病疾患の発症、悪化のリスクを高めること、自殺、自殺未遂、自殺念慮のリスクを高めることは現在、世界保健機関(WHO)、国際麻薬統制委員会(INCB)などの国連機関および各国の保健機関、主要研究機関も認めているが[1][2][3][4][5][6][7]、以前は大麻精神病は、他の問題と明確に鑑別されない臨床観察から言われている仮説の障害で明確に定義されていないとされていた[8][9]。
大麻にはテトラヒドロカンナビノール (THC) やカンナビジオール (CBD)を始め、カンナビノイドと総称される大麻特有の化学物質が100種類以上含まれており[10]、細胞同士の伝達方法を変更することができる。人間の脳においてはこれが、自分の置かれた環境への認識、考え、行動および感情に影響を及ぼす[11][1]。
THCはCBDの有無に関わらず急性の精神病を起こすことはメタアナリシスで示されている[12]。一方でCBDがこの急性の精神病症状に対抗すると考えられていたが、2020年時点で対抗する効果についての4研究は結果が一貫していない[12]。また、CBD単独でも副作用はある[13][14][15]。
なお2025年現在、アルコール依存症やニコチン依存症には存在する、承認された薬物療法は大麻依存症に対しては存在しない[16][17]。
大麻使用により一時的な精神病症状を呈すことについては強い証拠がある一方で、大麻の使用が精神病(統合失調症)のリスクを増加させているかについては議論があった[18][19]。しかしながら近年の研究ではベースラインの精神病が無いサンプルに限るなど、因果の逆転を防ぐ研究デザインにおいても大麻が統合失調症のリスクを上昇させることが示されており[20]、国連機関および各国の保健機関、主要研究機関においても「大麻の使用は統合失調症や他の精神病疾患を発症するリスク、悪化させるリスクを高める」と結論付けられている[1][2][3][4][5][6][7]。さらに、大麻誘発性精神疾患を発症した人の約3分の1が、後に統合失調症を発症する可能性がある[21][5]。
近年の大麻草、大麻製品自体が依存性、幻覚作用成分(THC)が強化されており、食用大麻製品や電子タバコ用の濃縮物などさまざまな形態や消費方法もあるため、大麻の過剰摂取、中毒、重症化も簡単に起こりうる非常に強力な薬物となっている。2000年から2018年の間に、大麻関連の精神病での世界的な入院は4倍以上増加、大麻依存症および禁断症状(離脱症状)に関連する入院も8倍以上増加、大麻依存症も大麻使用者の約3人に1人が抱えるものとなっており、1990年代までの大麻への認識や経験だけでは危険なものとなっている[13][22][23][24][25][26][27][28][7]。
日本では以前より大麻の有害性について報道がされているが、これまで大麻について肯定的だった海外メディアも、近年は大麻の有害性について報道するところが出てきている[29][30][31][32][33][34][35][36][37][38][39][40][41]。
世界保健機関
日本の研究者による過去1992年の文献調査では、経過も多様であり、大麻との因果関係を確定することは困難で、診断基準や分類も一定せず、大麻精神病という臨床単位 (clinical entity) は確立していないとされていた[9]。背景として精神病という伝統的な分類は、不正確な診断をもたらしたため、ICD-10 や DSM-IV のような診断基準によって厳密な区別がなされてきた[42]。
2025年現在、これら国際的な臨床診断ガイドラインの最新版であるICD-11 や DSM-V-TRには、精神的依存だけでなく身体的依存を含む『大麻依存症』や大麻特有の禁断症状『大麻離脱症候群』を始め、『大麻中毒』『大麻誘発性精神疾患群』も明記されている[1][2]。
また、大麻が合法であるカナダや、合法である州を持つアメリカであっても、政府や保健機関が大麻のさまざまな有害性と自殺や精神疾患の発症、悪化などメンタルヘルスを含む健康への悪影響を明言している[43][26][5]。
大麻離脱(大麻離脱症候群):大麻の常用を中止または減少させた際に生じる特徴的な離脱症状(禁断症状)。苛立ち、怒りなどの攻撃的な行動、不眠、睡眠困難、興奮、落ち着きのなさ、神経質、不安、抑うつや気分の沈み、食欲低下や体重減少が含まれ、大麻の急性薬理作用(多幸感、陶酔感、嗜眠、鎮静、甘い食物や脂肪の多い食物への食欲亢進)とは反対のものである。アルコールやオピオイドの禁断症状とは異なり、睡眠困難、興奮、神経質などの行動・感情症状が身体症状よりも多くみられるが、頭痛、震え、発汗、発熱、悪寒、腹痛などの身体症状もある。症状の多くは通常、大麻の使用中止後1~2週間以内に消失するが、睡眠障害は長期化しうる。また、以前に大麻依存症を経験したことがある一部の人は、最後に大麻を使用してから何か月も経った後でも、大麻使用をやめた際の症状に似た症状を経験することがある。特に、薬物関連器具を見る、頻繁に薬物を使用していた場所を訪れるなど、その人が過去の大麻使用に関連していた刺激や状況に遭遇した場合に顕著である。これらの症状は関連する刺激や状況に接触している場合にのみ発生し、大麻離脱中に観察される症状よりも一時的であるため、大麻離脱の診断は下されない。大麻の離脱症状は離脱を繰り返すたびに(「キンドリング現象」と呼ばれる)、年齢を重ねるにつれ、他の疾患がある場合に、より重症化する。大麻離脱は顕著な苦痛をもたらすので、症状を和らげるための使用が続き、中断が困難になり大麻の再使用に至る、あるいは他の薬物使用を開始する。また、大麻使用は無害であるという誤った考えが広まっているため、離脱を経験している大麻常用者は、離脱症状が大麻が切れたことによるものであることに気づかず、自己治療として大麻の使用を継続する場合がある[1][2][7]。
大麻中毒:臨床的に重要な一過性の状態であり、大麻の摂取中または摂取直後に発生する、意識、認知、知覚、感情、行動、協調性の障害。大麻を使用する人はある時点で大麻中毒の基準を満たす症状を経験しているとされている。典型的にはハイの気分で始まり、続いて不適切な笑いと誇大性を伴った多幸感、鎮静、嗜眠、短期記憶の障害、複雑な思考を行うことの困難、判断力の低下、知覚の歪み、注意力の低下、運動能力の低下、浮遊感や時間がゆっくり経過するという感覚、などの諸症状が起こる。重度の不安、不快気分、対人的閉じこもり、その他、吐き気、嘔吐、胸の痛み、心拍数増加、呼吸抑制、パニック発作、パラノイア(偏執病)などの急性精神病エピソードが生じることもある(バッドトリップ)。その他の身体症状には結膜充血(赤目や血走った目)、口腔乾燥(のどの乾き)、食欲亢進(甘い食物、脂肪の多い食物)、頻脈、がある。大麻中毒は、大麻草の喫煙の場合は数分以内に生じるが、経口的に摂取された場合数時間かかることがあり、効果も喫煙より持続する。THC、CBDなど大麻の成分のほとんどは脂溶性であり、体脂肪にも蓄積され、時間をかけて徐々に脂肪組織から放出あるいは腸肝循環へ放出されるため、効果は12~24時間の間は持続し、再発現することもある。大麻中毒は精神病症状を引き起こすことがあるが、その持続期間は多様である可能性がある。また、高用量の大麻の定期的使用は、長期的な精神疾患のリスク増加の可能性がある[1][2][27][44][45]。
大麻誘発性精神疾患群:大麻誘発性精神障害、大麻誘発性せん妄、大麻誘発性不安障害、大麻誘発性気分障害、大麻誘発性睡眠障害があり、独立して臨床的関与を必要とするほど重症である場合に、大麻中毒または大麻離脱の代わりに診断される。例えば大麻誘発性精神障害は、大麻中毒や大麻離脱に伴う典型的な知覚、認知、行動の類似症状を大幅に超えた、妄想、幻覚、思考の混乱、著しい行動の乱れなどの精神病症状を特徴としており、個人、家族、社会、教育、職業、その他重要な機能領域において、著しい苦痛や著しい障害を引き起こしていることも診断要件となっている。大量または長期間の大麻使用は、大麻誘発性精神障害を発症する可能性が高くなる。また、せん妄も薬物の中毒や離脱によって引き起こされることがあり、大麻誘発性せん妄は、注意力と意識の急性の混乱状態を特徴としている[1][2]。
ICD-11(『疾病及び関連保険問題の国際統計分類』第11版)の大麻に適用される診断カテゴリーには、大麻依存症、大麻中毒、大麻離脱症状、大麻誘発性せん妄、大麻誘発性精神障害、大麻誘発性気分障害、大麻誘発性不安障害がある[1]。
上記その他、特に大麻精神病に関わることとしては以下を認めている[1]。
- 未経験の使用者、特に思春期の若者は使用量が少ない場合でも酩酊の兆候を示すことがあり、これは身体的および学習による耐性が低いことを反映している。
- 高齢者は耐性が低下しており、若者よりも薬物の影響に対する耐性が低い場合が多い。
- 妊娠中に向精神薬物を使用していた物質依存(薬物依存)の女性から生まれた新生児において、離脱症状はよく認識されている。
- 多くの精神障害や閾値に達しない症状は、断続的または継続的な大麻使用パターンとともに現れることがある。同様に、継続的または断続的な大麻使用は、精神障害やその他の医療状態のリスクを高める。
- 大麻の離脱症状が精神障害と同時に起こる場合、他の障害の特徴(例:気分の変動)が悪化することがある。
- 一部の人々は、精神障害(例:統合失調症およびその他の一次精神病性障害、気分障害、不安・恐怖関連障害、人格障害)の症状を抑えるために薬物を使用しており、薬物使用を中止または減少させた際に初めて完全な症状が現れることがある。その上で、大麻の使用は症状を悪化させたり既存の精神障害の発作を引き起こすことがある。
- 大麻の使用は精神障害の病因とは限らないが、精神障害の新たな症状の発症と関連している可能性がある。
- 高用量の大麻を定期的に使用することは、長期的な精神病のリスク増加に関連している可能性がある。
- 精神作用物質は、同じ薬理学的クラスであれ異なるクラスであれ、相互作用によって中毒の特徴を悪化させたり変化させたりすることがある。(例:アルコールと大麻)
アメリカ精神医学会
2022年のDSM-Ⅴ-TR(『精神疾患の診断と統計マニュアル』第5版改訂版)の大麻関連症候群には、大麻中毒、大麻離脱症候群、大麻誘発性精神疾患群があり、大麻誘発性精神疾患群には大麻誘発性精神症、大麻誘発性不安症、大麻誘発性睡眠障害、大麻中毒せん妄がある。これらは大麻使用症(大麻依存症)のある人に頻繁に起こるが、大量使用という状況下で生じる精神医学的症候群のことであるので大麻使用症とは区別される。大麻中毒、大麻離脱、大麻誘発性精神疾患は、大麻使用症のある人に頻繁に起こる[2]。
上記その他、特に大麻精神病に関わることとしては以下を認めている[2]。
- 大麻の使用は無害であるという認識が一般的になりつつあるため、大麻使用の症状(例:離脱症状)が大麻に関連していることを個人が認識しない場合がある。
- 1日に何度も大麻を使用する人の中には、ほとんどの日、ほとんどの時間、大麻に酩酊しているか、大麻の影響で低下しているにもかかわらず、大麻の影響下やその影響からの回復に過剰な時間を費やしていると認識しない人がいる。
- 大麻常用する人は、気分、不眠、怒り、疼痛、または他の生理的・心理的な問題に対処するために大麻を使用するとしばしば述べる。また、大麻使用症と診断される人は、しばしば他の精神疾患を合併する。慎重に検討すると、他の頻回使用の理由(例:上述のような対処の動機、多幸感を味わうため、楽しい社交活動として)のみならず、大麻使用そのものがこうした症状を悪化させている。
- 大麻の慢性的な摂取は、持続性抑うつ症に似た意欲の欠如をもたらすことがある。
- 大麻使用の早期発症(例:15歳未満)は、青年期における大麻使用症や他の物質使用症(薬物依存症)および精神疾患発症の強い予測因子である。
- 自殺念慮または自殺行動との関連:イラク、アフガニスタン戦争時代の退役軍人を対象とした研究では、複数の社会人口統計学的要因、精神疾患や他の物質使用症(薬物依存症)の併存、戦闘を含む過去のトラウマを調整しても、大麻使用症は自殺性および非自殺性両方の自傷の危険上昇と関連していた。2005年に行われた米国退役軍人保健局の全患者を対象とした研究では、現在何らかの物質使用症があると、男女ともに自殺の危険性が上昇するが、特に女性ではその傾向が顕著であることが示された。特に、大麻使用症のある男性の自殺率は10万人あたり年間79人であり、大麻使用症のある女性の自殺率は10万人あたり年間47人であった。1990年から2015年までの国際的文献の見直しとメタ解析により、急性の大麻使用ではなく、慢性の大麻使用が自殺念慮や自殺行動と関連するという証拠が見出された。
- 大麻使用症と関連して、心理社会的、認知的、および健康的機能の多くの領域が低下する可能性がある。大麻中毒による短期的な機能障害と大麻使用症による長期的な機能的結果を区別することは困難だが、大麻使用者では、大麻が体から抜けている状態であっても認知機能(特に高次実行機能)が累積容量依存的に低下し、学校や職場での困難を助長する可能性がある。
- 大麻使用は目標指向的な社会活動の減少や自己効力感の低下にも関連があることが示されており、その結果として学業不審や職場での問題を生じさせ、意欲喪失症候群と呼ばれることもある。同様に、大麻使用症をもつ人の中には、大麻に関連した社会的関係の問題が広く認められる。大麻の使用は、生活満足度の低下、精神保健の問題による治療や入院の増加と関連する。
- 大麻使用者は、特に複数の物質使用症を有する場合、大麻に関連する社会的、行動的、心理的問題を大麻と結びつけようとしないため、問題のない大麻使用と大麻使用症の鑑別は困難なことがある。また、他者(学校、家族、雇用主、刑事司法制度)から治療目的で紹介された人は、大麻の大量使用や関連問題における大麻の役割を否認するのが一般的である。
- 大麻使用症と診断される人には、精神疾患の合併も一般的である。それらにはうつ病、双極症1型2型、不安症、心的外傷後ストレス症、およびパーソナリティ症が含まれる。ミネソタ双生児研究においては、大麻使用症の青年のうちおよそ半数が内在化障害(例:不安、抑うつ、心的外傷後ストレス症)を。64%が外在化障害(例:素行症、注意欠如多動症)を有していた。
- 大麻の使用は、統合失調症や他の精神症(精神病)の危険因子として、大きな懸念が示されてきた。臨界期における大麻の使用は、精神症の危険を3倍にすることが、一貫して示されてきた。大麻の日常使用頻度の違いや使用する大麻製品の力価の違いが、欧州11拠点における精神症の罹患率の顕著なばらつきを生んでいる可能性がある。
- 大麻離脱の重症度は、併存する精神疾患の症状の存在とその重症度と関連している可能性がある。
- 成人の大麻頻回使用者の間では、大麻離脱はうつ病、不安症、反社会性パーソナリティ症の併存と関連がある。
- 全体として、大麻の使用は急性精神症エピソードの発症に寄与し、いくつかの症状を悪化させ、主要な精神症性疾患の治療に悪影響を及ぼす可能性がある。
アメリカ疾病予防管理センター
日本と同じように、大麻は合法化されたのだから安全だと人々が考えているアメリカでは、「よくある質問」にて、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が「大麻が一部の州で医療または非医療の成人使用のために合法であるという事実は、それが安全であることを意味していない」と大麻の危険性を名言しており、アメリカ国立薬物乱用研究所(NIDA)などと共に、大麻のさまざまな有害性と自殺や精神疾患の発症、悪化などメンタルヘルスを含む健康への悪影響を掲示し注意喚起を行なっている[46]。
特に大麻精神病に関わることとしては以下がある[46][26][45][4]。
- 大麻の使用は、記憶、学習、注意、意思決定、協調、感情、反応時間を担当する脳の部分に直接影響を与える。
- 大麻中のTHCの量が多いほど(言い換えれば、濃度や強度が高いほど)、大麻が脳に与える影響は強くなる。過去数十年で、大麻中のTHCの量は増加している。高濃度のTHCを含む製品は、より強い酩酊効果を持ち、過剰摂取のリスクを高める可能性がある。
- 高THC濃度の大麻を使用する思春期や若年成人は、継続的な使用や将来のメンタルヘルスの症状や障害の発展と関連しているという中程度の証拠がある。
- 妊娠中の女性による大麻使用は、子供の注意力、記憶、問題解決能力、行動に、後の人生で問題を引き起こす可能性があることが示唆されている。
- 大麻の化学物質が母乳を通じて乳児に移行することは分かっている。THCもCBDも体脂肪に蓄積され、時間をかけて徐々に放出されるため、女性が大麻使用をやめた後でも子が曝露する可能性がある。
- 大麻の使用は混乱を引き起こし、時には不快な思考や不安、偏執的な感情(パラノイア)をもたらすことがある。
- 大麻を使用する人々は、精神病疾患(現実が分からなくなる、幻覚、偏執)や、統合失調症(実際には存在しないものを聞いたり見たりする精神疾患の一種)を含む長期的な精神障害を発症する可能性が高くなる。大麻と統合失調症の関連性は、早い年齢で大麻を使用し、頻繁に使用する人々においてより強い。
- 大麻の使用は、うつ病、社交不安障害、自殺の考え(自殺念慮)、自殺未遂、自殺とも関連している。
アメリカ国立薬物乱用研究所
特に大麻精神病に関わることとしては以下がある[5]。
- 頻繁または大量の大麻使用は、学習や記憶、注意、処理速度、知覚運動機能、言語などの認知機能の問題と関連している。
- いくつかの証拠は、大麻使用が統合失調症を含む精神障害の遺伝的リスク因子を持つ人々において、精神病疾患の早期発症と関連していることを示している。また、すでにこれらの状態を持つ人々において、症状が悪化する可能性がある。大量の大麻使用と統合失調症の関連は、女性と比較して若い男性において特に強いことが分かっている。大麻の中毒は、一部の人々に一時的な精神病エピソードを引き起こすこともあり、特に高用量でなる。このような精神病エピソードを経験することは、後の人生で精神病障害を発症することと関連している可能性がある。
- いくつかの研究では、思春期に大麻を使用する人々においてうつ病のリスクが増加することも示されている。また、研究はアメリカの10代や退役軍人の間で大麻使用と自殺念慮や自殺行動との関連を示している。
カナダ政府
カナダにおいて医療用大麻は「医療目的で使用する大麻」のことであり娯楽用大麻と同じ物である。処方薬では無いため治療効果を謳うことは禁止であり、保険の適用や消費税の控除を受けることもできない。科学的・医学的根拠に基づいた慣行や従来の医療の範囲外であり、薬物を使用する自由の権利によって認められている「信念に基づいた特別な医療アクセスプログラム」である[47][48]。
カナダ政府は、公式サイト上に「一般的な『信念』とは反対に、人々は大麻に依存する可能性があります」と、大麻が安全だとの人々の誤った認識を否定し大麻のさまざまな健康への悪影響を掲示、「カナダの大麻:事実を知ろう」でも、「健康を守る最良の方法は、大麻や大麻製品を使用しないことです」と繰り返し注意喚起している[43]。
大麻使用による悪影響はどの年齢にも起こりうるが、特に注意喚起の対象となっているのは、脳が発達中の25歳までの成人、未成年のみならず、加齢により大麻に対して、より高いリスクがある55歳以上の成人も特に対象である[13]。
55歳以上に対しては、現在の大麻製品は非常に強力なため数十年前の経験に頼って使用しないこと、加齢にともなう薬物の代謝能力の低下や既存の疾患、常用する処方薬や健康食品との相互作用により、より高い追加の健康リスクがあることが主として注意喚起されている。不安やパラノイア(偏執病)、幻覚、眠気、混乱、誤認識、誤解、まとまらない考え、記憶力や注意力の障害、運動失調など、大麻が脳に与える作用によって引き起こされる健康や生活への悪影響だけでなく、肝臓病、腎臓病、心臓または血管疾患、緑内障(CBD影響)、血糖と糖尿病(1型糖尿病)などの基礎疾患、慢性疾患(持病)の悪化、転倒や怪我、事故のリスクも指摘されている[13]。
全年齢へ向けた、特に大麻精神病に関わることとしては以下がある。
大麻使用による短期的な健康影響[44]
- 体や脳への悪影響:マイナス思考、絶望感、不快感
- 脳への短期的な悪影響:錯乱、眠気(倦怠感)
- 障害される能力:記憶力、集中力、注意力、反応速度の低下
- 不安、恐怖またはパニック
- 引き起こす可能性のある精神病症状:パラノイア(偏執病)、妄想、幻覚
大麻使用による長期的な健康影響[44]
- 脳への長期的な悪影響:大麻依存症リスクの増加
- 長期的に障害される能力:記憶力、知能(IQ)、思考、判断能力の低下
これらの長期的な影響は時間と共に徐々に現れ、大麻の使用をやめた後でも、数日から数ヶ月、あるいはそれ以上続くことがある。大麻の使用をやめても完全に元に戻らないことがある[44]。
妊娠中および授乳中の健康影響[44]
大麻の成分は、妊娠中に母親の血液を通じて胎児に運ばれる。出産後には母乳を通じて子に移行する。これにより、子供の健康に問題を引き起こす可能性がある[44]。
妊娠中の大麻使用は、子の出生体重の低下を引き起こす可能性がある。また、子供や思春期の若者における長期的な発達への影響とも関連しており、例えば以下がある[44]。
- 記憶力、注意力、論理的思考能力、問題解決能力の低下
- 多動性行動
- 将来的な薬物使用リスクの増加
脳機能へのリスク[6]
毎日のような大麻使用は、短期および長期の記憶、思考パターン、集中力、そして話し方に害を及ぼし、以下のようになる可能性がある[6]。
- さっき考えたことや言ったことを思い出すのに困る
- 異常な考えや非標準的な思考をする
- 気が散ったり、集中するのが難しくなる
- 文を作るのに困ったり、言葉が出るのが遅れることがある
これらが、セルフイメージ、職場や学校でのパフォーマンス、家族や友人との関係に影響を与える場合、フラストレーションや苦痛を引き起こす可能性がある[6]。
不安と抑うつの発展[6]
日常的またはほぼ毎日の大麻使用は、時間の経過とともに不安や抑うつに関連する障害を発症するリスクを高める可能性がある。長期的な大麻使用は、喜びや楽しさをもたらす脳のドーパミンシステムにも悪影響を及ぼし、以下を感じる可能性がある[6]。
- 疲労感
- 落ち込み
- 無気力
不安と抑うつの悪化[6]
一部の人々は、ストレスや不安、抑うつ感を和らげるために大麻を使用する。しかし、大麻使用は時間の経過と共にメンタルヘルスを改善することはないことが分かっている。ほぼ毎日、大麻を使用することは実際にはメンタルヘルスの悪化に寄与し、この頻度で大麻を使用すると、以下のような影響を受ける可能性がある[6]。
- 大麻に依存するようになる
- 感情をコントロールすることが難しくなる
- 不安やうつをより頻繁に経験する
精神病と統合失調症[6]
精神病は、一時的な精神状態であり、重度のパラノイア(偏執病)や実際には存在しないものを聞いたり見たりすることを伴うことがある。統合失調症とは、治療が一生続く必要がある、より長期的な精神病の一形態であり、以下のような症状が含まれる[6]。
- パラノイア、偏執症、被害妄想、誇大妄想、疑心暗鬼
- 幻覚
- 混乱した思考、発言および行動
深刻なケースとして、毎日またはほぼ毎日の大麻使用は、精神病や統合失調症を経験する可能性を高める。これらのケースは特に、男性の10代や若年成人、精神的健康障害の個人歴または家族歴がある人々の間でより一般的である[6]。
大麻誘発性精神疾患と統合失調症
大麻は直接脳に作用する。高THC濃度の大麻は、人間の脳に与える影響もより強く、大麻依存症に進行するリスクだけでなく、大麻中毒により一時的な精神病エピソードを引き起こすリスクも高くなり、そういった精神病エピソードを経験することで、後の人生で精神病障害を発症する可能性が高くなる[5][26][27][1][2][6]。
近年の乾燥大麻の平均THC含有量は、1980年代中頃や1990年代初頭の約3%から2022年には約16%に増加。2020年には食用大麻製品や大麻抽出物製品も登場。オンラインディスペンサリー(大麻販売サイト)で入手可能な大麻製品の研究では、平均THC濃度は22%、範囲は0%から45%と高THC濃度の大麻製品の供給を確認。その他では、吸引用の大麻抽出物でTHC濃度が最大90%に達する製品もあり、人々は1990年代に比べ、はるかに強力な大麻を使用している[24][13][26]。
現在、大麻市場で入手可能な大麻製品は、歴史的に大麻研究で使用されていた大麻や、一部の消費者が過去に使用していたことを覚えている大麻とは異なる[47]。
大麻の過剰摂取、中毒、重症化は簡単に起こりうるものになっている。2000年から2018年の間に、大麻関連の精神病での世界的な入院は4倍以上増加、大麻依存症および離脱症状に関連する入院も8倍以上増加、大麻依存症も大麻使用者の約3人に1人が抱えるものとなっている[22][23][27][13]。
2023年のアメリカ薬物乱用警告ネットワーク(DAWN)による報告でもアルコールを除き、大麻は最も多く救急部門で報告された薬物だった。大麻、オピオイド(処方薬、フェンタニル、ヘロインなど)、メタンフェタミン(覚醒剤)、コカイン、ベンゾジアゼピン(睡眠薬・抗不安薬)の順で多く、大麻による救急外来受診は年々増加を続けている[49]。
2024年の欧州連合薬物機関:EUDA(旧 欧州薬物および薬物中毒監視センター:EMCDDA)による、欧州薬物緊急事態ネットワークプロジェクトに参加している、成人を対象とした救急医療のデータでも、大麻はコカインと共に最も多く一般的に報告された薬物だった。大麻は全ての受診者のうち24%で報告され、多剤併用、単一薬物使用においても最多。その他、精神科病棟への入院においても、最も多いアンフェタミンに次いで大麻は多かった[25]。
娯楽用大麻を合法化している、世界でも数少ない国の内の一つであるカナダでも、大麻による救急外来受診、入院は増加しており、薬物関連入院の主な原因となっている。以下はカナダの人口が最も多い4州、オンタリオ州、ケベック州、アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州の入院データを用いて大麻合法化による入院患者数の変化を調査した表である。カナダでは大麻合法化前に、議論の盛り上がりと共に大麻使用者が大幅に増加、2018年、合法化直後は混乱により大麻が全国的に不足し使用者が減少したが、2020年より再び、店舗の増加や食用大麻製品、電子タバコ用濃縮物製品発売などの大麻商業化によりさらなる大幅な増加を再開した。大麻使用による入院は大麻使用者が増加するにつれ、同様に増加している[50][47]。
| 2015.1-2021.3
全体調査 |
2015.1-2018.9
合法化前 |
2018.10-2020.2
合法化 |
2020.3-2021.3
商業化 | |
|---|---|---|---|---|
| 大麻関連入院
(カナダ4州) |
105,203 | 59,117 | 24,884 | 21,212 |
| 男性 | 69,192 | 38,964 | 16,412 | 13,834 |
| 女性 | 36,011 | 20,161 | 8,472 | 7,383 |
| 15-24歳 | 34,678 | 20,502 | 7,934 | 6,242 |
| 25歳以上 | 70,525 | 38,605 | 16,905 | 14,970 |
| 入院理由 | ||||
| 急性中毒 | 3,438 | 1,936 | 832 | 670 |
| 大麻乱用 | 51,631 | 28,752 | 12,302 | 10,577 |
| 大麻依存 | 22,266 | 12,994 | 5,169 | 4,103 |
| 誘発精神病 | 10,845 | 5,828 | 2,520 | 2,497 |
| 中毒 | 3,387 | 1,917 | 828 | 642 |
| 離脱症状 | 1,444 | 763 | 363 | 318 |
| その他 | 18,756 | 10,513 | 4,399 | 3,844 |
大麻誘発による精神病疾患、大麻誘発性精神疾患群の入院患者数増加は、電子タバコ用リキッドなどの高濃度大麻製品が発売された大麻商業化の時期と特に関連しており、先行研究では患者の3分の1が、後に統合失調症を発症するとされているため、カナダの専門家委員会は政府に対し、精神病疾患や統合失調症などの深刻な大麻関連リスクを、大麻製品に掲載する健康警告メッセージに再導入するよう提言している[47][50][5][51]。
「薬物による誘発性精神疾患から、後の統合失調症への移行」は大麻が最も高く、アメリカ国立薬物乱用研究所が引用している研究では大麻(34%)、幻覚剤(26%)、覚醒剤(22%)、アルコール(9%)であり、大麻のリスクはアルコールよりもはるかに高い[51][5]。
なお、高齢者の統合失調症発症リスクは低いとする研究に対しても、アルコールの「薬物の中で最も低い統合失調症移行率」が関連しており、平均年齢が高い研究ではアルコール誘発性精神疾患者の割合が高いためであると指摘されている[51]。
薬物誘発性精神疾患(物質誘発性精神病)は、メンタルヘルスケアや医療サービスを求める一般的な理由の一つであり、オーストラリアの若年層でも、精神疾患による初回入院のうち5分の1以上が薬物誘発性精神疾患によるものとされている[51]。
大麻誘発性精神疾患のある人々は、他の短期的または非定期的な精神疾患を持つ人々と、ほぼ同じ割合で統合失調症に移行する。しかしそれにも関わらず、臨床現場においてはこれらが無害または自然に収まる状態であると見なされることから、初期精神疾患サービスや積極的なメンタルヘルスケアから除外されることがよくある。そしてこの認識は、薬物誘発性精神疾患が主要な研究や精神疾患の結果に関するレビューから頻繁に除外されることによって強化される可能性がある[51]。
薬物使用によって引き起こされる精神疾患のケアに関する決定を行う際には、全ての薬物誘発性精神疾患を同等と見なすのではなく、特に大麻によって引き起こされる大麻誘発性精神疾患の治療は、他の短期精神病性障害と同様に、積極的な早期精神疾患介入が検討されるべきであると指摘されている[51]。
大麻の有害反応の内訳の参考としては、2018年~2024年までのカナダ保健省の、698件の自発的な報告のみによる有害反応データがある。報告は深刻なケースが443件とほとんどであり「入院」が最も一般的な理由だった。そして、「医療用大麻」によるケースが471件とほとんどであった。有害報告は男性よりも女性においてより多く報告され、年齢が報告されたケースでは18歳から44歳のケースが多いが、2024年は45歳から64歳の症例報告が最も多かった。電子タバコ用リキッド、オイル、カプセル、スプレーなどの大麻抽出物製品による報告が最も多く、次いで乾燥大麻だが、食用大麻製品によるケースの割合が年々増加している[28]。
報告された有害事象の大半は「精神障害」に関連しており多い順に、幻覚、不安、不眠症、陶酔感、混乱状態、パニック発作、パラノイア(偏執病)、興奮、精神病性障害、自殺願望、見当の混乱、うつ病、悪夢などがあった。次に「神経系障害」で多い順に、頭痛、めまい、意識喪失、発作、眠気、震え、記憶障害、感覚異常、失神、脳血管障害、感覚低下、運動低下症などがあった。3番目は「一般的な障害および投与部位の状態」で多い順に、倦怠感、異常な感じ、胸の痛み、薬が効かない、痛み、疲労、悪化した状態、薬物相互作用、胸の不快感などがあった。4番目は「胃腸障害」で多い順に、吐き気、嘔吐、下痢、腹部の痛み、腹部の不快感、口渇、腹痛、カンナビノイド過敏症候群などがあった。5番目は「呼吸器、胸部および縦隔疾患」で多い順に、呼吸困難、喉の炎症、中喉頭の痛み、咳などがあった[28]。
2018年から2019年、2020年、2021年に最も一般的に報告された有害反応は「幻覚」だったが、2022年と2023年では「頭痛」、2024年は「呼吸困難」が最も一般的に報告された有害反応だった[28]。
成分
大麻には、内因性カンナビノイド受容体に作用し、脳内の神経伝達物質の放出を調節、細胞同士の伝達方法を変更することができる多様な化学化合物の一群であるカンナビノイドが含まれている。人間の脳においてはこれが、自分の置かれた環境への認識、考え、行動および感情に影響を及ぼす[1][11]。
カンナビノイドにはテトラヒドロカンナビノール (THC) とカンナビジオール (CBD)が含まれており[10]、THCは主な向精神活性カンナビノイドとして大麻の酩酊、陶酔、依存などを引き起こす。CBDは酩酊作用はないがその作用機序は不明であり、THCと同じように体脂肪に蓄積されたCBDの健康影響も不明である。CBDは依然として人間の脳や体になんらかの影響を及ぼし、肝障害や眠気、注意力の低下、下痢や食欲の変化、苛立ち、気分の変化、男性生殖機能への影響など既知の副作用や、まだ判明していない未知の副作用とリスクがある[15][13][14][1]。
大麻には100種類以上のカンナビノイドを含む、約540種類の化学物質が確認されており、大麻の煙にはタバコの煙と同じ発がん性物質などの有害物質も多く含まれている。「大麻の喫煙」は日本も加盟している麻薬の乱用に対し世界的規模で協同する「1961年の麻薬に関する単一条約」の医療および科学目的に違反しており医療用大麻として本来は認められていない[3][14]。
大麻煙にはさらにTHCも含まれており、受動喫煙を通じて乳児や子供を含む周囲の人々も曝露する。妊娠中の母親の血液を通じての胎児の曝露、母乳を通じての乳児の曝露もあり、カンナビノイドは体脂肪に蓄積され時間をかけて徐々に放出されるため、母親が大麻の使用をやめた後でも子が曝露する可能性がある[52][45][44]。
妊娠中の大麻使用により引き起こされる子の脳への長期的な発達への悪影響として、記憶力、注意力、論理的思考能力、問題解決能力の低下、多動性行動、将来的な薬物使用リスクの増加、などが関連している[45][44]。
CBD製品単独の使用についても、動物実験において高用量のCBDが胎児の発育に悪影響を与えていることから、アメリカ疾病予防管理センターは妊娠中のCBDの使用を推奨していない[15]。
CBDはTHCによる急性の精神病症状に対抗し、また精神病を発症するリスクを低下させる可能性が考えられている[53]。このためCBD自体は、精神病症状の治療薬としての臨床研究が行われている[53]。2020年の文献調査では、9研究から、健康な人を対象にTHCが多いほど強い急性の精神病を引き起こすことが判明し、CBDでは4研究でありTHCが誘発した精神病を抑制するかは結果が一貫していない[12]。2021年の大麻使用の依存行動に関するミニレビューにおいても、CBDの効果は一貫していない研究が多く、動物実験でしか効果が見られないもの、健康な人間には逆に副作用を起こすものなど、人間への影響は不安定であり、大麻草の品種やCBD、THCの含有量によっても異なる影響をもたらす可能性があると指摘されている[54]。
アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、CBDのさまざまな副作用の一つとして、THCを定期的に使用している人々において、CBDは精神病的な効果や認知障害を引き起こす可能性があるとしている[14]。
カナダ政府は、大麻を使用することを選択する場合、THCの量が少なく、CBDの量が同等またはそれ以上の大麻製品を合法的な市場から購入することを勧めているが、CBDも人間の体だけでなく脳にもなんらかの影響を与えること、CBDにも副作用はあり全く安全ではないことを繰り返し注意喚起している[13][27][43]。
なお、人々はより強い効果を求めるため市場の大麻製品のTHC濃度は年々増加しており、ディスペンサリー(大麻販売店)では40%以上の高THC濃度大麻製品が売られていることもよくある[13][26][5][24]。
高THC濃度の大麻製品は、人間の脳に与える影響もより強く、大麻依存症に進行するリスクだけでなく、大麻中毒により一時的な精神病エピソードを引き起こすリスクも高くなり、そういった精神病エピソードを経験することで、後の人生で精神病障害を発症する可能性が高くなる[27][5][26][1][2][6][11]。
過去の文献から、大麻精神病とは一般に、大量の大麻が入った飲食物を食べることから生じており、不安、パニック、妄想、離人感を起こすとされていることから、2005年に実験を計画し、1-2週に1回大麻を使用している2人に合成THC(ドロナビノール)を飲ませる実験を行い、3-4時間持続する一時的な精神病反応が起こり、離人感、妄想、現実感喪失の急性症状を起こした[55]。
2019年のメタアナリシスでは[56]、統合失調症にTHCが与える影響を調査した1研究が見つかり、陰性症状が悪化していた[57]。
大麻は品種によって、THC と CBD の含有が異なり、THC が2-25%含まれ CBD が少ない薬用型、 CBD が THC よりも多く THC が0.25%未満である繊維型に分類される[58]。
各国での言及
日本
2004年、大麻への寛容な政策をもとめる民間団体「カンナビスト」(大麻非犯罪化人権運動)は、情報公開法に基づく複数の開示請求を厚生労働省に対して行ったが、厚生労働省は行政文書不開示決定通知書を通達。不開示とした理由に「開示請求に係る行政文書を保有していないため」との返答をした[59]。これは後の請求によって、アメリカから輸入した薬物標本の説明書を翻訳し抜粋されたものであることが分かった[60]。
厚生労働省所管の公益法人財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターのウェブサイトである「ダメ。ゼッタイ。」では、以下のように説明している。
『大麻を乱用すると気管支や喉を痛めるほか、免疫力の低下や白血球の減少などの深刻な症状も報告されています。また「大麻精神病」と呼ばれる独特の妄想や異常行動、思考力低下などを引き起こし普通の社会生活を送れなくなるだけではなく犯罪の原因となる場合もあります。また、乱用を止めてもフラッシュバックという後遺症が長期にわたって残るため軽い気持ちで始めたつもりが一生の問題となってしまうのです。社会問題の元凶ともなる大麻について、正確な知識を身に付けてゆきましょう。』
ICD-11には大麻離脱とは診断されないが「以前に大麻依存症を経験したことがある一部の人は、最後に大麻を使用してから何か月も経った後でも、大麻使用をやめた際の症状に似た症状を一時的に経験することがある。特に、薬物関連器具を見る、頻繁に薬物を使用していた場所を訪れるなど、その人が過去の大麻使用に関連していた刺激や状況に遭遇した場合に顕著である」と、いわゆるフラッシュバックが明記されている。
また、2025年現在においても、薬物犯罪は暴力団、ギャング、マフィア等、犯罪組織の資金源であり、世界中で紛争や汚職、合法ビジネスへの悪影響など、社会の安全を脅かす社会問題の元凶となっている。そのため、あへん戦争での教訓がある中国を始めとするアジア諸国や、麻薬の大規模生産地、中継地である中東諸国、東南アジア諸国など多くの国では、死刑を含む極刑など日本よりも重い刑罰が科される犯罪となっている[61][62][3][63][64]。
2016年、神奈川県相模原市緑区で発生した戦後最大の大量殺人事件「相模原障害者施設殺傷事件」では、加害者が大麻を使用してから犯行に及んでおり、公判において大麻精神病による責任能力の有無が争われた。弁護側証人の精神科医は、犯行当時の被告は「大麻精神病の状態だった」と証言。犯行の約1年前から大麻の使用頻度が増え、SNSで過激な主張を発信するなど異常な行動が際立つようになったと指摘。幻聴や被害妄想といった症状が認められ、大麻による高揚感が「障害者を殺す」という発想などに影響を与えたとした。また、公判中も障害者に対する差別的な発言を続けていることから、大麻精神病の状態が持続している可能性もあるとした[65]。
また、被告は犯行の約半年前に緊急措置入院をしており、その入院中の尿検査においても大麻の陽性反応を確認。精神保健指定医2人から「大麻精神病」「反社会性パーソナリティ障害」「妄想性障害」「薬物性精神病性障害」の診断を受けていた[66]。
被告はまた、大麻について強いこだわりを見せ、被告人質問においても「大麻は本当に素晴らしい草です。本当に感謝しています。嗜好品として使用、栽培を認めるべきだと思う」など、大麻を禁止されている日本は例外的だ、みんな使うべきだと大麻合法化を主張した。また、逮捕され3年が経ち大麻を使用していない状態であっても「自転車のようなもので、1度乗ったら感覚を覚えています」と大麻をまた使いたいとの思いを持っていた[67][68]。
弁護側は最後まで「実際の殺傷行為に至るまでは病的な飛躍がある。大麻乱用による精神障害の影響で異常な思考に陥り、突き動かされるままに行動した」として心神喪失による無罪を求めていたが認められず、この裁判では完全責任能力が認められた[69]。
2021年、知人らと一緒に大麻を吸いながら酒を飲んでいた22歳の男性が、雑居ビルの4階から転落死する事件が起こった。亡くなった男性は、様子がおかしくソファに寝かされていたが、突然起き上がって走り出し、自ら窓を開けて飛び降りた。他人と争ったような形跡はなく、自殺する動機も見当たらなかったことから、大麻の幻覚作用の影響で転落した可能性があるとみられている[70]。
2024年、サークルの飲み会に参加していた男子大学生が、その後ビル屋上から転落死する事件が起きた。亡くなった男子大学生の尿から大麻成分が検出され、自宅からは少量の乾燥大麻が見つかった[71]。
2025年、男子大学生が「大麻クッキー」によって転落し大怪我をする事件が起きた。違法ではない大麻成分の一種が含まれていたとみられているが、男子大学生は大麻クッキーを摂取した3時間後、寮2階の部屋から転落、その後また再び、2階に戻ってきて飛び降りようとし、周囲に止められた。男子大学生は頭の骨を折るなどの大怪我をしている状態だった[72]。
大麻中毒や大麻の過剰摂取は、高THC濃度の大麻草、大麻グミや大麻クッキーなどの食用大麻製品やオイル、電子タバコ用リキッドなどの高濃度大麻製品によって簡単に起こりうる危険なものとなっている[27][13][28][25]。
また、世界的にも大麻中毒による救急外来は、嘔気と周期的な嘔吐を示すカンナビノイド悪阻症候群(CHS)と共に増加しており、ヨーロッパではコカインと共に救急部門において最も一般的にみられる薬物となっている。大麻グミや大麻クッキーなど大麻入り菓子による子供の意図しない大麻中毒も多く発生している。子供の場合症状は大人よりも深刻で、昏睡や人工呼吸器の装着など生命を脅かすほど重篤な状態が多数報告されており、死に至るケースもある[25][73][22][2][28][14][7][5]。
タイでは、2018年に医療用大麻が合法化され、2022年に大麻の栽培や一般使用が合法化されたが、相次ぐ転落死、水難事故、交通事故、子供の誤飲事故、大麻関連治療費の増加に加え、心不全による死亡事例まで発生している[74][75][76][77][78][79][80][81][82]。
アメリカ
1972年のマリファナ及びドラッグ濫用に関する全国委員会(シャーファー委員会)で「大麻による急性の精神障害で入院しなければならないような例は、アルコールのように顕著なものではない。大麻関連の精神病で特別に長期化するようなものはほとんど見られない。もし、大麻の重度使用が特別な精神障害を引き起こすとしても、極めて稀であるか、あるいは他の原因で起こった急性または慢性の精神病と区別することも極度に難しい」との報告書の内容を認めた[83]。
2013年、アメリカ精神医学会は見解声名を行い、少なくとも大麻使用と精神医学的障害との強い関連があるとしている[84]。
2014年、コロラド州で19歳の男性が、適法である食用大麻製品、大麻クッキーを摂取した後に4階のバルコニーから飛び降り外傷により死亡した。コロラド州公衆衛生環境局(CDPHE)により検死報告書および警察報告書が精査され、大麻中毒が主要な要因であるとされた。亡くなった男性は当初、大麻クッキーを1切れだけ摂取、約30~60分後、効果を感じなかったため追加で5切れを摂取、その後約2時間の間、言動が乱れ、敵対的な行動を示した。そして、最初の摂取から約3.5時間後、残りのクッキーを摂取してから約2.5時間後、4階のバルコニーから飛び降り外傷により死亡した。解剖、死後分析でも多剤使用の証拠は見つからず、男性からはdelta-9テトラヒドロカンナビノール7.2ng/ml、非活性の大麻代謝物であるdelta-9カーボキシ-THC49ng/mlが検出された。また、男性はアルコール乱用、違法薬物の使用、精神疾患の既往歴もなかった[85]。
イギリス
1968年にイギリス政府の諮問していた委員会が「大麻の喫煙が直接、深刻な身体的危険に関連しているという証拠はない。」というウットン・レポートを発表した[86]。
2002年には薬物乱用諮問委員会 (ACMD) の「大麻の長期使用についての中心課題の一つは、それが心の病、特に精神病のリード役になるかどうかということで(中略)明確な因果関係は実証されなかった。」と報告した[87]。
2004年、政府は大麻の危険性と精神障害の関連性は明白でないという薬物乱用諮問協議会の調査結果と、警察がコカインなどのハードドラッグに対処するためにと大麻の危険性指定をランクBから1段階下げたCに指定した。しかし、「スカンク」と呼ばれるより強い新種の大麻の蔓延と、それによる精神障害を懸念して、2008年5月に内相のジャッキー・スミスは大麻の薬物指定格を再びBに格上げし、所持に対する刑罰も2年から5年に引き上げた[88]。
2012年のイギリス薬物政策委員会(UKDPC)は、大麻の使用によって一時的な精神病症状を呈することにおいては強い証拠がある一方で、20世紀前半の大麻使用率の顕著な増加に比して精神障害は同様に増加しているということもなく、大麻の使用と精神障害との関係については議論の対象であるとし、大麻の使用が精神病のリスクを増加させていないとする研究と、弱い関連がある研究を提示している[18]。
イギリスの緩慢な大麻入院患者の伸びは、国連薬物犯罪事務所(UNODC)による過去2006年の世界薬物報告書において『例外』とされている。同報告書当時もヨーロッパ各国、特にドイツ、オランダでは入院患者数に占める大麻患者の割合が増加していた[89]。
また、DSM-Ⅴ-TRにおいても「大麻の日常使用頻度の違いや使用する大麻製品の力価の違いが、欧州11拠点における精神症(精神病)の罹患率の顕著なばらつきを生んでいる可能性がある」とある[2]。
世界的には、国際麻薬統制員会の2022年の年次報告書において、大麻依存症の治療の需要は著しく増加しており、2000年から2018年の間に、大麻依存症および禁断症状(離脱症状)に関連する入院は8倍以上増加、大麻関連の精神病での入院は4倍以上増加。特にアフリカでは、大麻が薬物治療の需要の大部分を占めており、他の地域よりもはるかに高い割合となっている、と報告されている[22]。
2024年、イギリスを含む欧州連合薬物機関による、欧州薬物緊急事態ネットワークプロジェクトに参加している、成人を対象とした救急医療のデータでは、大麻はコカインと共に最も多く一般的に報告された薬物だった[25]。
薬物使用者の間では多剤併用は一般的であり、全体の65%で報告され、最も頻繁に報告された組み合わせは「大麻とコカインとアルコール」(66%)、次いで「大麻とコカイン」(64%)、「アンフェタミンとヘロイン」(50%)だった。単一薬物使用は残り全体の35%で報告され、最も頻繁に報告された薬物は「大麻」(22%)、次いで「コカイン」(15%)、GHB/GBL(10%)だった[25]。
そして、精神科病棟への入院割合にて、最も多い「アンフェタミン」(15%)に次いで「大麻」(8%)は2番目に多かった[25]。
大麻は全ての受診者のうち24%で報告され、受診者の中央値年齢は28歳、74%が男性だった。大麻とアルコールの併用摂取は、アルコール使用に関する情報があるケースの40%で報告された。大麻関連受診者の救急外来滞在の中央値は6時間、3%が集中治療室へ入院した[25]。
2025年の欧州連合薬物機関の研究プロジェクトにおいては、イギリスおよび欧州連合薬物機関に加盟している29カ国全ては、一般的な薬物使用プログラムを通じて大麻依存症の治療にかなりの資源を投入していると報告されており、イギリス、ベルギー、ルーマニアにおいて大麻治療専門のクリニックも登場したと報告されている[16]。
これらのセンターは、大麻依存症と統合失調症、その他の併存する精神病疾患に特化しており、精神病疾患と大麻依存症を併発している患者の治療に限定されている。臨床評価、解毒、入院治療、日帰りケア、長期リハビリテーションを提供する。介入は患者の個別のニーズに合わせて行われ、学際的な治療チームが医療的、社会的、心理的ニーズの全範囲に対応することで、大麻の断薬、大麻使用の減少、精神病疾患の良好な予後、生活への参加と満足度といった治療効果を促進するとしている[16]。
世界保健機関による過去の言及
- 1992年のICD-10(『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版)では、「神経症と精神病」の項にて、精神病 (psychosis) の用語が用いられず、妄想や幻覚のような症状を示す精神病性 (Psychotic) の用語で言及されていることに触れている[90]。向精神薬誘発性精神病の項にて、そのような精神病状態は短期的なものであり、誤ってより深刻な統合失調症のような状態が診断されれば、悲惨な影響を与えると注意している[90]。また、高用量の大麻を摂取するなどの知覚の歪みや幻覚の体験は、急性中毒の診断を考慮せよとしている[90]。ICD-10には、精神障害の定義があるため、症状が機能不全を起こしていないものは精神障害ではないとされていた[90]。
- 1997年の報告書では、大麻精神病 (cannabis psychoses) の存在は、臨床観察から言われている仮説の障害であり、大麻の使用を中止すると数日以内に治るもので、明確に定義されておらず、大麻使用者に発生した他の精神病性の問題と統合失調症とが明確に鑑別されていないとしていた[8]。
- 2015年、WHOの依頼により作成された大麻に関する報告書は、大麻の使用によって一過性の統合失調症のような症状を呈することがあり、1903年にワーノックがこのような誘導を発見したと記している[91]。
- 2018年、公開された薬物規制条約における大麻の格下げの際の審査用の報告書の中で、急性の大麻中毒は短期的な精神病の状態を生じさせることがあるが、統合失調症の発症につながるかという議論については、議論されたままであり、世界的に大麻使用者の増加にかかわらず統合失調症は増大しておらず、異常を起こす者はもともと遺伝的に弱いのではという異論があるとしていた[92]。
アメリカ精神医学会による過去の言及
- 1987年の古いDSM-III-R(第3版改訂)では、大麻依存と乱用が治療を求めるのはまれだと記載されていた[93]。
- 1994年のDSM-IV(第4版)では、物質誘発性精神病性障害の項に由来となった物質名に続いて記す記載手順が示される[94][95]。大量の大麻の使用後に通常は被害妄想が起きることがあるが、これは明らかにまれであり1日以内に寛解し、2-3日のこともあるとされ、大麻には離脱の診断名が設けられておらず、理由は高用量の使用で生じると言われてはいるが臨床的に著名ではないことである[95]。精神病性症状が4週以上も続く場合には他の理由を考慮せよとしている[95]。大麻の中毒による、現実検討が損なわれていない、光、音、幻視は中毒であり、精神病性障害ではない[95]。DSM-IVには、重症度の診断基準があるため、著しい苦痛や機能の障害を起こしていない場合は除外される[95]。
- 2013年のDSM-5(第5版)では、本人が大麻によって妄想や幻覚が生じていると認識している場合(現実検討できている)、精神病性障害ではなく大麻中毒だと診断される[96]。
研究
「大麻には、コカインやヘロインには見られない、合法化を主張し大麻に関する法改正を推進する国際的なグループが存在する」と国連薬物犯罪事務所(UNODC)は報告している[89][22]。
2020年、国連麻薬委員会(CND)が大麻をあへん、コカイン、ヘロインと同じ「乱用のおそれがあり、悪影響を及ぼす麻薬」へと「特に危険で医療用途もない麻薬」から変更した。この変更があたかも大麻に関する国際的な規制を国連が解除したかのような印象を与え、大麻の嗜好的使用を容認するような報道が出るに至った[97]。
日本においても、大麻に有害性は無い、健康に良いなどといった誤った情報が氾濫。大麻推進派がCBD製品を大麻へのゲートウェイドラッグにする戦略をとっていることもあり、医師免許を持つ者が大麻やその薬理成分であるカンナビノイド(CBDなど)について、まるで副作用もなくさまざまな疾患を治す夢の薬のように主張。大麻依存症患者の治療拒否や、依存症医療業界であっても医学的エビデンスに疑義を挟み、冷静かつ理性的な議論を進めることが難しい現状がある[98][99][100][101]。
国際麻薬統制委員会(INCB)は、2022年の年次報告書において、大麻合法化によって違法犯罪組織から置き換わった合法大麻企業は急成長、大規模化。売上増加を通じて利益を上げることを目指し、大麻市場を拡大しようと合法化地域を拠点に世界中で活動している、と指摘している[22]。
大麻が商業化し、合法大麻企業による若者にアピールする形での大麻製品のマーケティングと販売、そして「医療用」の定義が幅広く、事実上医療以外の目的で使用されている「医療用大麻」は、人々から科学的エビデンスを排除させ、市場に出回る高濃度の大麻製品や関連する健康問題にもかかわらず、人々の大麻に対する危険性の認識を低下させることに貢献、大麻の消費を加速させた[22]。
アメリカの公的学術機関である全米アカデミーズ(The National Academies of SCIENCES, ENGINEERING, and MEDICINE)、健康と医学部門(旧医学研究所:IOM)は2017年、大麻使用の健康に関する情報は、大麻使用の危険性への認識が低下した公衆の感情、対立し妨げられた科学研究、大麻合法化是非の立法闘争によって議論が煽られ欠如しているとして、約20年ぶりに大麻とその成分(カンナビノイド)の健康影響を大々的に見直し、現在の科学的エビデンスの研究結論をアメリカ政府に提出した[7]。
この報告書においても、2025年現在の国連機関および各国の保健機関と同様、「大麻の使用は、統合失調症や他の精神病を発症するリスクを高める」「大麻の使用は、自殺願望(自殺念慮)および自殺未遂のリスクを高める」「大麻の使用は、自殺完遂による死亡リスクを高める」と結論付けられている[7]。
しかし、国立精神・神経医療センターの薬物依存研究部の医師松本俊彦は、これらの多くの研究は長年の議論にもかかわらずいくつかの説に分かれたままであり一定の結論に至っていないと事実に反する主張をしている[19]。
松本は「大麻への特別な思い」を指摘されており、そのバイアスのかかった数々の研究に対しては各方面から批判、訂正忠告がされている。例えば自身の研究において日本の大麻依存症者の割合が約8%となったことに対し、同基準であればアルコール依存症者約4%、ギャンブル依存症者は約2%であるにも関わらず「おおむね健康」と主張したり、大麻のゲートウェイドラッグ性に対しても、45%と約半数が他の違法薬物に移行しているにも関わらず「ゲートウェイ仮説を否定する調査結果だ」と主張するなど、他にも医学的エビデンスに疑義を挟ませる恣意的な主張を各所で繰り返しており、厚生労働省による検討会では他出席者から面と向かって「研究者サイドから見れば、何を言っているのだとはっきり言いたくなります。矛盾だらけです。怒りさえおぼえます。」とまで厳しく非難されている。そして検討会の最終日においても他出席者より「どの立ち位置からでも、事実にもとる(反する、歪ませる)ことを言い募って対立している場合ではない」と苦言を呈されている[102][103][101][100][104][105][106]。
日本麻協議会事務局代表・難治性疼痛患者支援協会代表理事からもまた「大麻やその薬理成分であるカンナビノイド(CBDなど)について、まるで副作用もなくさまざまな疾患を治す夢の薬のように主張する人が医師免許を持つ人の中にもいる」「大麻は患者が自己治療に使っているのだから大目に見ないといけない、非犯罪化すべきだと、慢性痛の患者を支える立場からすると大変心配な主張をしている」「医薬品には必ず副作用があり、全く安全な薬などはあり得ないことを伝えるのがお医者様の役目、また、医薬品を自由・勝手に使えば患者をさらに窮地に追いやるのは当然で、勝手な使用はしないように指導することがお医者様の務めなのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。」と同検討会にて訴えられている[99]。
なお、国際疼痛学会(IASP)は2021年に声明を出し「現時点では痛みのための大麻や大麻成分(カンナビノイド)の一般的な使用を支持することはできない。潜在的な利益と害をよりよく理解し、患者と公衆の安全を確保するために規制基準と保護措置を通じて、より厳密で堅実な研究を求める」と呼びかけている[107]。
松本は文献調査から、以下を仮説としている[19]。
- 大麻原因仮説: 大麻が統合失調症の発症の危険因子となるという説。
- 自己治療仮説: 既にある精神症状を緩和するために、そうした患者で大麻の使用率が高いという説。
- 共通脆弱性仮説: 精神病性障害と大麻の使用が同時に起こりやすい人々がいるという説。
統合失調症者が大麻を使用すると重症度が増加したり、再発しやすいという研究結果がある一方で、大麻の使用率が大幅に増えたイギリスでは、統合失調症の数は横ばいか減少であり、大麻が統合失調症を増加させるかについては疑問が残る(統合失調症を発症する人だけが大麻によって悪影響が出やすいのであれば、統合失調症の患者数は大麻使用が増えても増加しない)と主張している[19]。
しかし、全米アカデミーズによる上記報告書においても、同様に大麻使用と大麻使用障害、精神病との関係は多方向で複雑である可能性はあるとの認識はされているが、委員会は複数の質の高いシステマティックレビューで統合されたデータにより「大麻の使用は、統合失調症や他の精神病を発症するリスクを高める可能性があり、使用量が多いほどリスクも大きくなる」と結論付けている。引用された系統的レビューから導かれた証拠の強さの要因には、大規模なサンプルサイズ、結果の相対的均質性、用量・曝露とリスクの関係の存在、交絡因子に対する研究の制御、および出版バイアスに対する評価が含まれている。また、委員会がレビューした質の高い一次文献によっても、大麻使用と精神病の結果との関連や、影響の用量依存性を含む系統的レビューの結論を確認しており、「大麻の使用は、統合失調症や他の精神病を発症するリスクを高める」との結論に対する全体的な証拠の強さをより強化している[7]。
また、統合失調症とは、治療が一生続く必要がある、より長期的な精神病疾患の最終的な『一形態』である[44][7]。
イギリスの緩慢な大麻入院患者の伸びは、国連薬物犯罪事務所による過去2006年の世界薬物報告書において『例外』とされている。同報告書当時もヨーロッパ各国、特にドイツ、オランダでは入院患者数に占める大麻患者の割合が増加していた[89]。
DSM-Ⅴ-TRでは「大麻の日常使用頻度の違いや使用する大麻製品の力価の違いが、欧州11拠点における精神症(精神病)の罹患率の顕著なばらつきを生んでいる可能性がある」とある[2]。
2024年、イギリスを含む欧州連合薬物機関による救急医療のデータの報告では、大麻はコカインと共に最も多く一般的に報告された薬物であり、大麻は精神科病棟への入院において最も多いアンフェタミンに次いで多かった[25]。
また2025年、イギリスには大麻依存症と精神病疾患を併発している患者の治療に限定された大麻治療専門のクリニックが登場している[16]。
国際麻薬統制員会は2022年の年次報告書において、世界的には大麻依存症の治療の需要は著しく増加しており、2000年から2018年の間に、大麻依存症および禁断症状(離脱症状)に関連する入院は8倍以上増加、大麻関連の精神病での入院は4倍以上増加。特にアフリカでは、大麻が薬物治療の需要の大部分を占めており、他の地域よりもはるかに高い割合となっている、と報告している[22]。
そして、国連機関および各国の保健機関、主要研究機関は、「大麻使用が統合失調症や他の精神病疾患の発症、既存の精神病疾患の悪化のリスクを高めること、大麻使用が自殺、自殺未遂、自殺念慮のリスクを高めること」を認めている[1][2][3][4][5][6][7]。
世界保健機関は、過去1997年の報告書において「大麻使用者の人口的比率がアルコールまたはタバコ使用者の比率と比較してはるかに少ない場合、大麻による公衆衛生に対する危険性の程度は表面的な状況に基づいて判断されるため、アルコールまたはタバコの害よりも低く評価される傾向がある。大麻使用者が少ない社会において、大麻が公衆衛生に及ぼす深刻性は、調査が不足してしまうために実際にはアルコールやタバコの危険性ほどには理解されていない。そのような社会の住人について、精神活性物質使用の影響を調査・比較しても、そのデータの有効性は限られている。」と指摘している[108]。
1920年代、1930年代、大麻は「マリファナ」と呼ばれ始め、アメリカ南西部の州でメキシコからの移民が着実に増加するにつれて「大麻への恐れ」が高まり、移民への恐れとともに過剰な薬物禁止キャンペーンが行われた[89][7]。
国連薬物犯罪事務所は、過去2006年の世界薬物報告書の大麻精神病に関する文脈において、『アメリカでいち早く行われた「薬物禁止キャンペーン」の中の「リーファー・マッドネス 麻薬中毒者の狂気」(1936年)の論調が、大麻が精神障害を引き起こすリスクについての公式な声明への信頼性を失わせる結果を招いた。これは不幸なことである。なぜなら、大麻使用が精神に深刻な障害を引き起こす可能性があることが次第に明らかになりつつあるからである』と述べていた[89]。
なお、21世紀となった今日では、合法大麻企業のオーナーの圧倒的大多数は白人が占めており、白人が有色人種に大麻を奨励し、その消費した大麻の利益を得るという搾取構造そしてフェンタニル危機と、現代のあへん戦争が行われている[109][110][62]。
大麻の伝統的使用など元々無かったカナダ先住民族のイヌイット代表者は、わずか8歳の子供達が大麻を使用し、思春期に入ってもそれを続ける貧困の連鎖、世代を超えたトラウマを訴え、押し寄せる大麻使用の標準化、増加する違法店舗にコミュニティではなすすべもない悲惨な現状を報告している。こうした貧困を抱える先住民族は特に、大麻使用による精神的健康への悪影響リスクも高いとされている[48]。
以下、団体による報告の形ではなく、複数の研究をまとめたメタアナリシス、その後、個別の研究を取り扱う。
システマティックレビューとメタアナリシス
2007年のシステマティックレビューは、35研究から、一過性の大麻中毒とは別に、精神病性障害のリスクを高めることが判明したが、縦断研究なので大麻が引き起こしたのかという疑問については、こうした研究では解明できないとした[111]。2008年11月に精神医学イギリスジャーナルで掲載されたシステマティックレビューでは、13件の縦断研究を検証し、交絡因子の調整が不十分であるとして「精神病性障害の原因が大麻とするには信頼性が乏しい」と結論付けた[112]。
2016年のシステマティックレビューでは、7つのコホート研究と症例対照研究を総合し、大麻常用者は精神病の発症リスクが2.9倍と見積もられている[113]。
2016年に行われたメタアナリシスでは、コホート研究と症例対照研究から10研究計66,816人を対象とし、因果関係を確立することはできないが、大麻使用群では非使用群に比べて精神病のリスクが3.59倍と有意に増加すると報告した。またこのリスク増加は用量依存性だった[114]。同時に、大麻使用群は非使用群に比べて統合失調症および精神病性障害の発症リスクが5.07倍と有意に増加することが示された。
2020年のシステマティックレビューでは、ランダム化比較試験やコホート研究などを対象とした36研究から、精神病ハイリスク群の精神病への移行は大麻を使用した場合1.1倍であり、統計的に有意な差ではなかった[115]。
また2019年に行われた3,040人を対象としたメタアナリシスでは、大麻使用により生じた精神病を有する患者の34%が統合失調症を発症しており、ほかの薬物より多かったと示された[116]。
ビッグデータを用いた研究
デンマークの全国民718万6834人を対象としたビッグデータを用いたコホート研究では[117]、統合失調症の発症における大麻の寄与割合が1995年の2%から2010年にかけて6-8%に増加したことが示された。これは時系列データを用いた研究であり、完全な因果関係の証明とは言えないが、少なくとも一定の因果を示すエビデンスであると記載されている。
アメリカのNESARC(4万3093人)とNESARC-III(3万6309人)を用いた研究では[118]、非医療大麻を頻繁あるいは日常的に使用する群において精神病性障害の罹患率上昇が見られた。
カナダで行われた研究では、9 84万4 497人の救急外来受診者のうち、大麻を使用した人は受診時における精神病症状の有無に関わらず統合失調症の発症リスクが上昇することが示された(精神病症状が既にある場合:241.6倍;ない場合:14.3倍)。この傾向は特に若年男性において顕著だった[20]。本研究結果はJAMA Psychiatryに掲載された。
文献研究
2004年の文献のレビューでは、精神病症状に対する自己治療の仮説が唱えられてきたが、いくつかの前向き研究ではまた(他の薬物や既存の精神病の兆候などの)交絡因子を調整したうえで、大麻摂取量と精神病発症リスクは正の関連が見られた。ただし大麻が統合失調症、気分障害、不安障害など幅広い障害のリスクファクターとなり得ることを鑑みると診断特異性は低いとしている[119]。
個別の追跡研究
2002年の『ニュー・サイエンティスト』の記事は、統合失調症患者の13%が大麻精神病と推定している論文を紹介した[120]。イギリスのある精神科集中治療室では115人中、大麻乱用によるものが7割を占めており、特に統合失調症を重症にしていたことを報告した[121]。
その他の論
イギリスでの大麻精神病による入院は、大麻の法的規制がクラスCに格下げされた2004年から2009年の間には、その前後と比較して減少していたため、薬物の使用以外の要因が関与していたとの仮説を説明した[122]
高用量の大麻を長期にわたって手に入れやすい国では、顕著な精神病症状を示す患者が見られると述べる精神科医がいる[123]。