女性による性的虐待

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(じょせいによるせいてきぎゃくたい)の被害者には男性と女性の双方がいる。ここでは主に被害者が男性の場合について特筆する。アメリカ、イギリス、スウェーデンなどにおける調査では子供への性的虐待の5~20%が女性によるものであると推定されている[1]。ノルウェーのオスロでの「暴力とトラウマに関する国立資料館」の調査によると、子供に対する近親姦は男性からが9割、女性からは1割とされた[2]

学術論文の世界では「女性による性的虐待(Female-perpetrated Sexual Abuse、略称FPSA)」という言葉が使われないわけではないが[3]、成年期の性被害を性的暴行という言葉を使って区別し、実質的に女性による性的虐待は児童期の被害のみを指し示す場合がある[4]。「女性による児童性的虐待(Female-perpetrated Child Sexual Abuse)」は略してFCSAともいう[5]

女性による児童性的虐待の問題が幾度となく取り上げられるのは、社会的な偏見が強固であるため女性による児童性的虐待の案件が真剣に扱われないという問題があるためである[6][7][8]。ただ、女性による児童性的虐待の問題に関しては、その被害者の主観的な報告として、被害によって重大な負の影響がもたらされることが指摘されてきた[9]。男性による児童性的虐待被害の影響との比較研究も行われており、Jelena Gerke et al. (2023) の研究によると、基本的には男性による被害も女性による被害も同じようなものではあるのだが、女性による性的虐待の被害者の場合は解離性同一性障害統合失調症と診断される可能性が比較的高いといった違いも見られたという[10]

Amanda L. Robertson and Danielle A. Harris (2025) は、学校における女性被雇用者による思春期の生徒に対する性的虐待についてオーストラリア史上初とされる学術論文を発表した[11]。この研究は13歳から17歳までの20人(うち男性が12人で女性が8人)の被害についてのドキュメントを分析した上で、8人の専門家にもインタビューを行うという形で行われたものであるが、生徒に性的虐待を行った女性被雇用者の多くは、年少の子供に対する性的嗜好を動機としてそのような仕事に就いたわけではないにもかかわらず、学校で仕事をしているうちに生徒と性行為をすることに魅力を感じるようになってしまった模様であって、この辺りからそれは権力の濫用に当たる問題行為だときちんと自覚して、なし崩し的に生徒を支配する関係へと突き進んでいかないよう注意すればこのような事態は防げる可能性が指摘された[11]。なお、本研究では女性被害者は全体の4割と比較的高めであるが、これは加害者の区分が女性「教師」ではなく女性「被雇用者」なので、女性のコーチなども含んでいることが影響している可能性がある[11]

また少年の場合は将来レイプ犯となる事例もあることが懸念されている。Michael Petrovich and Donald I. Templer (1984) の83人の男性のレイプ犯に対する調査報告によると、彼らの59%がかつて16歳より前に5歳以上年上の女性から性的行為を受けたことがあるという[12]。性犯罪を行う被害男性の例は少なからず存在する。Julia M. Fraser et al. (2024) は、この話をあまり強調しすぎることも問題視しつつも、一つの可能性として、女性が男児に対し性的虐待を行っても罪に問われることは少なく、それが被害男児に対し性加害行為に対する心理的障壁の脆弱性を生みだしている可能性があると指摘した[13]

問題点

アメリカ合衆国

典型以外の性被害に対しては偏見も強い。1996年7月9日付けのボストン・グローブ紙では少年に対する女性によるレイプ事件について極めて真剣に取り上げていたが、Karen Aronosoは周辺住民や事件関係者から得られた言葉を記している。13歳の少年をレイプしたとして訴えられた37歳の女性の事件だったのだが「少年も望んでいたに違いないさ」とか「夢のようなことさ」とか「間違いなくレイプだけど、男の子は若いうちから性的に活発じゃなきゃっていう社会通念があるから、みんなどこかで許容してしまっているのよ」という言葉が得られている[14]

2005年に、アメリカ合衆国で8歳の少年が14歳の少女に猥褻行為をされた際に、結果的に検察側は起訴を取り下げたものの「たとえ少女が誘ったにせよ少年が拒まなければその少年は猥褻行為を少女に行ったとみなすことができる」として少年が訴えられた事件が報道され、息子が裁判にかけられそうになり怒った母親は、少女に性被害を受けた場合でも親たちは息子が裁判にかけられる可能性に対し臆するべきではないと訴えた[15]

日本

日本では1980年頃の話として、母親と息子の近親相姦の話が電話相談の話から出回ったことがあり、『密室の母と子』という書物も出版されたが、相談内容が性文学的で単なるファンタジーではないかと批判された[16]。岩崎直子 (2004) は電話相談でのセックス通話者は確かに存在するとした上で、実際に女性から性被害を受けた人でも被害とは関係がない話題を振る可能性について触れ、そのような場合にいたずらかどうか判断するための大体の指標として、相談者が質問を挟んだ場合も性的描写が続くか言葉に詰まるようであればいたずらとみられるとしている[17]

朝日新聞』は2023年に「子どもへの性暴力」という企画の一環で「男の子の被害」という連載を行った[18]。この記事の連載に当たり、実際に母親による性加害について息子から相談を受けている電話相談員らに取材を行ったところ、なぜこういった被害が潜在化しやすいのかというと、女性による性加害の場合は快感を感じている場合が多いため男の子としては被害だと認識できないのだといった意見や[19]、あるいは母親以外の大人との交流が希薄なため息子としては母親に性行為を求められることがたとえ嫌でも誰にも相談できないからだといった意見が挙げられたという[20]

対応

アメリカ合衆国

1997年メアリー・ケイ・ルトーノーという34歳の女性が、12歳の男子小学生とセックスし、その結果2回妊娠して、後に結婚するという事件が発生した。この後、「女性によるレイプは実際に起こりうる」と多くのアメリカ人が認識するようになった。しかし、それ以前にも同様の事件は多発しており、1990年パメラ・スマートという当時22歳の女性が15歳の少年とセックスして少年に夫を殺害させるという事件が発生している。この事件を題材に後に『誘う女』というサスペンス映画が作られた。なお、パメラ・スマートは1991年3月に終身刑を宣告され服している。

また、暴力の連鎖が起こっているケースも少なくなく、14歳の少年と性的関係を持ちアメリカでは国家的な騒ぎが引き起こされた2004年のフロリダ性的暴行事件では、彼女自身も13歳の時に性的暴行を受けたと言われている。この事件では弁護士が加害者の女性は美人であるため刑務所に入れるべきではないと主張し自宅軟禁及び保護観察処分となったため、量刑が軽微過ぎるのではないかと批判された。

出典

参考文献

  • 朝日新聞取材班『ルポ 子どもへの性暴力』朝日新聞出版、2024年。ISBN 978-4-02-252025-8 

関連書籍

関連項目

外部リンク

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