帰ってきたヒトラー
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| 帰ってきたヒトラー Er ist wieder da | ||
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| 著者 | ティムール・ヴェルメシュ | |
| 訳者 | 森内薫 | |
| 発行日 | 2012 | |
| ジャンル | 風刺小説 | |
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| 言語 | ドイツ語 | |
| 形態 | 文学作品 | |
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『帰ってきたヒトラー』(かえってきたヒトラー、原題:Er ist wieder da 「彼が帰ってきた」)は、ティムール・ヴェルメシュが2012年に発表した風刺小説である。2010年代のドイツに蘇ったアドルフ・ヒトラーが巻き起こす騒動を描く。ドイツではベストセラーになり[1]、映画化されている[2]。
ヒトラーに対する数々の肯定的な描写から物議を醸したが[3]、ヴェルメシュ自身は、ヒトラーを単純に悪魔化するだけではその危険性を十分に指摘できないとし、リアルなヒトラー像を表現するためにあえてその優れた面も描き出したと述べている[4]。
1945年に自殺したアドルフ・ヒトラーは、自殺直前の記憶を失った状態でベルリンの空き地で目を覚ます。ヒトラーは戦争指導に戻るため総統地下壕に向かおうとするが、ベルリンの人々が自分を総統と認識していないことに疑問を抱く。ヒトラーは情報を得るために立ち寄ったキオスクで、自分がいる時代が2011年のベルリンであることに気付き衝撃を受け、空腹と疲労が重なりその場に倒れ込んでしまう。
倒れ込んだヒトラーは、キオスクの主人に介抱され目を覚ます。キオスクの主人はヒトラーを見て「ヒトラーそっくりの役者かコメディアン」だと思い込み、「店の常連の業界人に紹介するから、しばらく店で働いてくれないか」と頼み込んだ。地位も住処も失ったヒトラーは、生活の糧を得るため仕方なくキオスクで働き始めるが、数日後、キオスクの主人に紹介されたテレビ番組制作会社のゼンゼンブリンクとザヴァツキのスカウトを受け、コメディアンとしてトーク番組に出演することになる。また、専属秘書のヴェラ・クレマイヤーからパソコンの使い方を習い、「インテルネッツ[注 1]」や「ヴィキペディア」を通して情報を得て2011年の世界に適応していく。
ヒトラーはトーク番組でトルコ人を罵倒する演説を打つと、その映像がYouTubeにアップロードされ、一躍人気コメディアンとなる。ヒトラーはその後、タブロイド紙との騒動や極右政党への突撃取材など社会の反響を巻き起こし、ドイツで最も有名なコメディアンとなる。ヒトラーは自分の人気を「ナチズムを支持する国民の声」と解釈し、再び政界に進出することを考え事務所探しを始める。しかし、ヒトラーは「ドイツを冒瀆した」としてネオナチから襲撃を受け重傷を負う。襲撃事件が報道されると、社会はヒトラーを「ネオナチの暴力に立ち向かうヒーロー」として持てはやし、政界からは与野党問わず入党依頼が舞い込んで来た。ヒトラーは療養先の病院で社会の動きを見つつ、司会を任された新番組の構想と選挙運動の準備を進めていた。
登場人物
- アドルフ・ヒトラー
- ナチス・ドイツの総統。1945年の自殺後に2011年のドイツにタイムスリップしてくる。
- 持ち前の知能の高さから、自分がタイムスリップした事実とドイツの戦後の歴史を理解し、再び政界復帰を目指す。
- カルメン・ベリーニ
- テレビ番組制作会社・フラッシュライト社の女性副社長。ヒトラーの才能を見込み、専属コメディアンとして採用する。
- 会社の実質的な経営を任されており、ヒトラーからも手腕を認められている。
- ヨアヒム・ゼンゼンブリンク
- フラッシュライト社の社員。ヒトラーをコメディアンとしてスカウトする。
- 種々の能力には優れているが、問題が起きると責任回避に腐心する性格で、ヒトラーからは「小心者の中間管理職」と見抜かれている。
- フランク・ザヴァツキ
- フラッシュライト社の社員。ヒトラーのトーク(演説)に感激し、ヒトラーの番組作りに積極的に協力する。
- 下巻終盤でクレマイヤーと結婚する。
- ヴェラ・クレマイヤー
- フラッシュライト社の女性社員。ヒトラーの秘書として事務処理を担当する。ヒトラーからは「ユンゲの代わり」として重宝されている。
- ゴシップ騒動やユダヤ人の祖母からの叱責に葛藤する。
- アリ・ジョークマン
- フラッシュライト社所属の人気コメディアン。エスニックジョークを得意とし、トーク番組〈クラス・アルター〉の司会を務めている。
- 番組にゲストとして出演したヒトラーに人気を奪われたため、ヒトラーのことを煙たがっている。
- ウルフ・ブロンナー
- フラッシュライト社の助監督。ヒトラーの番組の撮影クルーのリーダー。
- ウーテ・カスラー
- ヒトラーのトーク(演説)を「悪趣味なプログラム」として批判するビルト紙の女性記者。ヒトラーへの単独インタビューを申し込む。
- ベアテ・ゴルツ
- 大手出版社の女性編集者。社会的な注目を集めるヒトラーに本の執筆を持ちかける。
- イルムガルト
- ヒトラーが入院した病院の看護婦。ヒトラーからは「自分が20歳若ければ」と好意を寄せられている。
- ホルガー・アプフェル
- 実在の政治家。「ナチスの後継者」を自称するドイツ国家民主党の党首。ヒトラーからは「民族主義を理解していないならず者」と突撃取材で批判されてしまう。
- レナーテ・キュナスト
- 実在の政治家。緑の党の元党首。ヒトラーの冠番組〈総統は語る〉のゲストとして登場。政策におけるナチスとの親和性を指摘され、困惑する。
- ジグマール・ガブリエル
- 実在の政治家。ドイツ社会民主党の党首。人気を集めるヒトラーに自党への入党を持ちかける。
- クレマイヤーの祖母
- ユダヤ人であり、認知症であるが、ヒトラーとナチスを「みんな、最初は笑ってた」と言って非難する。
出版
評価
ユダヤ系アメリカ人向け新聞・フォワード紙にて、ガブリエル・ローゼンフェルドは本書を「スラップスティック」でありながら、最終的には道徳的なメッセージにたどり着く作品と評した。ただし、ローゼンフェルトはヴェルメシュがドイツ人によるナチズムの許容を説明するためにヒトラーを人間的に書いたのであろうと認めつつ、その描写が作品自体のリスクを高めているとして、「(読者は)ヒトラーを笑っているだけではない、彼と共に笑っているのだ」(laugh not merely at Hitler, but also with him.)と書いている[3]。
南ドイツ新聞紙にて、コルネリア・フィードラーは本書の成功について、作品のクオリティや文学的魅力よりも、ヒトラーを主人公に選んだこと、そして彼を漫画のような滑稽さや邪悪さをもって描かなかったことが大きな理由であろうと断定し、歴史的事実をあいまいにするリスクがある一方で、ヴェルメシュがヒトラーを笑いの対象にしたかったのだろうともしている[8][9]。