引き出し屋
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引き出し屋(ひきだしや)または引き出し業者とは、「引きこもり」や「ニート」、「不登校」等の状態にあると勝手に理由をつけた人を入れる自立支援または全寮制のフリースクールで悪質なものを指す。それらの多くは、家族や親族(既婚の場合は配偶者)からの依頼を受けてはいるものの、当人の元へ予告なく訪れ、当事者を自宅(自室)から連れ出し、寮に入所させるという手法を用いている。
なかには反社会的勢力、カルト宗教、極右の政治団体、精神病院とのつながりを持つ業者や団体もあり(所謂フロント企業)、拉致・監禁や就労(中卒、高校中退者であれば、通信制高校への進学または高卒認定試験の受験)の強要、数百万円から数千万円[要出典]もの極めて高額な授業料を請求するなどの被害が報じられている[1]。
ひきこもり当事者からの抗議
2000年1月に発覚した新潟少女監禁事件や同年5月に発生した西鉄バスジャック事件(さらに前に遡れば1989年に発覚した東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件も)は、加害者の男性がいずれも引きこもりやそれに近い状態にあったことから、引きこもり問題の社会的認知度を大きく高めた。マスコミによる報道は過熱し、中には引きこもり、ニート、中卒、高校中退者、不登校の児童や生徒を「犯罪者予備軍」として扱うメディアも現れ始めたことで、そうした子を持つ親(主に団塊の世代)の間で不安も高まった。さらにその頃は「キレる17歳」現象をはじめとする少年犯罪や学級崩壊、学力低下なども問題になっており、「子供の個性尊重」や「ゆとり教育」を推進するばかりでそれらの諸問題を解決できなかった行政や公教育に対する不信や批判も強い時代でもあった。それを受けてマスコミは、「もう学校や行政はあてにならない」と前述の事件以前から中卒・高校中退の引きこもりやニートの若者、登校拒否の児童・生徒らを預かり、寮でスパルタ教育式の指導を行い、上下関係のはっきりした規律正しい生活をさせて社会的な自立に繋げてきたと喧伝し、体罰の行使もいとわない体育会系根性論に基づく軍隊式の縦社会型スパルタ教育に特化したフリースクールを新聞・テレビなどで取り上げ始める[2]。
その中でも最も多く取り上げられたのが、愛知県名古屋市の学習塾経営だった長田百合子である。長田の手法は、引きこもり者当人の自宅(自室)へ予告なしに訪問。当人を厳しい口調で非難したり、時には保護者に我が子を罵倒させたり殴らせることもあった。そして最終的には、当人の意思表明に関係なく身体の自由を奪って自宅(自室)から引きずり出し、強引に寮に連れていってしまうという拉致に近いものであった(俗にいう「黄色い救急車」)。当時の日本社会は、発達障害などに対する理解もまだまだ乏しく、昭和時代の古い価値観をまだ引きずっていて「引きこもりは単なる甘えでしかない」「引きこもることは許されない」という風潮が現在よりも強固であり、そうした社会の価値観を忠実に受け止めそれを実行する長田の存在は、さながら「引きこもり問題を解決する救世主」の様相を呈していた[3]。その後、長田は元塾生たちから民事裁判を起こされ、すべて敗訴している。なお、長田は2017年に引きこもりを対象にした寮を閉鎖し、引きこもり関連の事業からは撤退している。
2006年、長田の実妹が運営する引きこもり者矯正施設において、当時26歳の男性を監禁し死亡させる事件(通称「アイ・メンタルスクール寮生死亡事件」)が発生。代表者には監禁致死罪で懲役3年6ケ月の実刑が下された[3]。
2019年11月26日、衆議院の消費者問題に関する特別委員会で、日本共産党の宮本徹議員が「あけぼのばし自立研修センター」の事例を用いて引き出し屋について質問した[4]。(映像)
2021年12月23日には、引き出し屋に反対するひきこもりの当事者、経験者らで結成された「暴力的『ひきこもり支援』施設問題を考える会」が厚生労働省の会見室にて記者会見を行い「ひきこもり人権宣言」を発表した。その一節には『ひきこもり当事者は、自分らしく生きるために、自己決定権を行使でき、他者から目標を強制されない』とある[5]。