8050問題
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概要
命名者は、大阪府豊中市社会福祉協議会所属のコミュニティ・ソーシャルワーカーの勝部麗子である[5]。
引きこもりの若者が存在していたが、これが長期化すれば親も高齢となり、収入や介護などに関する問題が発生するようになる。これは「80代の親と50代の子」の問題であることから「8050問題」と呼ばれるようになった[6]。親子で社会的孤立の状態に陥っていることが多く、このまま高齢化が進めば「9060問題」になると言われる[7]。
「8050問題」の子世代は、バブル崩壊後やリーマン・ショック後[8]の就職難にあった就職氷河期世代であり、就職活動の失敗や、就職後の勤務先の倒産・リストラ、雇用ミスマッチやハラスメント(パワハラ・セクハラなど)を受けて退職後の転職活動に失敗した者も多い。しかし彼らが若い頃に政府は「自己責任」「親が面倒を見るべき」として棄民のように切り捨てた(「自己責任」は2004年〈平成16年〉新語・流行語大賞のトップテン入りしていたが、当時は社会としてまだ問題視されていなかった)ため、彼らが生活保護を取得するようになると一気に社会保障費が増大することが問題とされている[9]。
また、就職氷河期世代は「団塊ジュニア」「ポスト団塊ジュニア」の世代とも重なるため、約1,700万人と数が多いことも「8050問題」が深刻化する理由となっている[10]。「孤立は本人の努力不足からくる」と蔑視する自己責任論や、子や配偶者から「育て方が悪いからこうなった」と責任転嫁するような[5]社会風潮も、困窮者が相談しづらく孤立化することに追い打ちをかけている[11]。
歴史
1980年代から1990年代まで、いじめなどによる不登校が問題視されていた。その後、2003年の日本労働研究機構による「ニート」という用語の日本国内への紹介に端を発する形で、一部の引きこもりに対しては2000年代から継続的に大規模な調査が実施されるようになった。しかし日本では「15歳から34歳まで」という定義により、若年層のみの問題であるように捉えられてきた。しかし2010年代に入り、引きこもりから立ち直れなかった者や、引きこもりを抱える家族が全国的に高齢化して猶予が無くなり、外部機関への相談が増えてきたことから、それまで調査の網に掛からなかった中高年層の実態が明らかとなった。
内閣府は2018年、40歳から59歳までの引きこもりを対象とした初の実態調査を行った。従来までは引きこもりの問題は若者特有の問題であるとして調査されていたものの、中高年の実態を把握して支援に役立てるとした。そして2018年度の予算案に調査費として2,000万円を計上した[6]。
内閣府からは2019年3月時点で、中高年の引きこもり人口は61万3千人も存在し、そのうち70%以上は男性であるとの調査結果も発表されている。この他の年代の引きこもりも算入すると、日本は「引きこもり100万人時代」を迎えていると言える[12]。
2020年代には、事態が更に深刻化し「9060問題」が本格化することが確実視されており[13]、全国的に孤立死、一家離散、一家心中、親の死体遺棄、生活保護や福祉給付金の受給増加、公営住宅の不足などが想定されることから、「8050問題」に対する迅速な対応が求められている。
8050問題が顕在化した事件の例
年齢は事件当時のもの
- 2018年3月5日 - 北海道札幌市で、80代の母親と50代の娘が2人で孤立死。北海道新聞によれば、1月に来たガス検針員が異変に気付き発見され、推定死亡時期は前年12月、死因は低栄養による低体温症。母親の知人が生活保護申請を再三勧めたが、母親は「他人に頼りたくない」と拒否し続けた果ての死であった[14]。
- 2019年5月28日 - 川崎市登戸通り魔事件。高齢の親族と同居していた50代の引きこもり男性が起こした通り魔事件。
- 2019年6月1日 - 元農水事務次官長男殺害事件。70代の父親が家庭内暴力を苦に40代の息子を殺害。直前に起きた川崎市登戸通り魔事件の影響もあった。
- 2020年11月16日 - 渋谷ホームレス殺人事件。母親と2人暮らしで引きこもりの40代の息子がホームレス女性を殺害。
- 2021年6月 - 福岡県福岡市西区で、80代後半の両親を59歳の次男が殺害。次男は大学中退が原因で父親との関係が悪化し、親が経営する商店を手伝っていた時期もあったが、35年間自宅に引きこもって父親と顔を合わせないよう暮らしていた。老いた父親の介護に耐えられず絞殺し、目撃した母親も口封じに絞殺、商店で使用していた大型冷蔵庫に両親の死体を遺棄した[15][16]。
- 2021年12月19日 - 北海道苫小牧市で、70代の母親の両腕などを包丁の持ち手部分で殴り負傷させ、49歳の息子が逮捕された。警察によれば、息子は母親に携帯電話を買ってもらう約束をしていたが「買えなくなった」と言われ暴行した[17]。
- 2025年8月3日 - 千葉県船橋市で76歳の父親が同居する50代長男を殺害しようとする事件が起きた。父親は調べに対して「長男から日常的に暴力を受けていた」と話しているという。[18]
- 2026年6月1日 - 埼玉県川口市で60歳の無職の男が、自身の母親の介護支援のため自宅に訪れたケアマネジャーを刺して殺害し、その後に自分も刺して死亡したとされる殺人事件。容疑者は親族から引きこもりであったことが指摘されている。[19]
