心臓音のアーカイブ
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作品が設置されている豊島(2022年撮影) | |
| 作者 | クリスチャン・ボルタンスキー |
|---|---|
| 種類 | インスタレーション |
| 所蔵 | 豊島 |
心臓音のアーカイブ(しんぞうおんのアーカイブ、仏: Les Archives du Cœur)は、クリスチャン・ボルタンスキーが2008年に開始した心臓音収集プロジェクトを基盤とするインスタレーション作品・施設である。香川県豊島の唐櫃浜地区に所在し、世界各地で採録された人々の心臓音を恒久的に保存・公開する場として、2010年から公開されている[1][2][3]。
来館者は収蔵された心臓音を聴くことができるほか、自身の心臓音を録音してアーカイブに登録することもできる[1][2]。瀬戸内国際芸術祭の作品の一つとして公開され、その後も豊島で継続的に公開されている[3]。

「心臓音のアーカイブ」は、ボルタンスキーが人々の生の痕跡として心臓音を収集するプロジェクトとして2008年から進めてきたものである[1][2]。ベネッセアートサイト直島の英語案内では、世界中の人々の心臓音を恒久的に保存する施設であり、それらの録音は記録された人々の存在の証しであると説明されている[2]。
沿革
ボルタンスキーによる「Les Archives du Cœur」は、豊島での恒久施設の公開以前から進められていたプロジェクトであり、2010年にはロンドンのサーペンタイン・ギャラリーでも同名企画が開催された[4]。豊島の「心臓音のアーカイブ」は、ベネッセアートサイト直島および瀬戸内国際芸術祭の案内によれば、2010年から継続して公開されている[1][3]。
2018年には、ラトビア国立美術館で採録された3,700件の心臓音が新たに豊島へ収蔵・公開されたことが、ベネッセアートサイト直島のニュースで案内された[5]。また、ベネッセアートサイト直島の2022年の記事では、ボルタンスキーが2021年7月に死去した後も、心臓音の収集と登録は豊島で継続していると説明されている[6]。
施設・構成
批評
2010年の瀬戸内国際芸術祭評では、《心臓音のアーカイブ》は「人里離れた海岸のはずれ」に建つ作品として紹介され、メインルームで世界各地から採集した心臓の鼓動が響き、それに合わせて光が明滅する構成が言及された[7]。同レビューでは、その体験的な強さが指摘される一方、豊島という場所との関係については批判的な見方も示された[7]。
その後のボルタンスキー論では、《心臓音のアーカイブ》は、生と死のあわいにある個人の痕跡をめぐる作品として位置づけられている。2019年の回顧展評では、本作で追求されていた心臓音が、「彼女や彼、あなたやわたし」の個となった生の中心にある鼓動として、喪の作業や死の儀礼に関わるボルタンスキー作品群と連続するものとして論じられた[8]。また、同年の別の展評でも、心臓の鼓動音が他作品の領域にまで干渉する音響要素として言及されている[9]。
2021年にボルタンスキーが死去した際には、美術手帖が《心臓音のアーカイブ》を代表作の一つとして取り上げ、追悼に際して作品映像の特別公開が行われたことを報じた[10]。
研究
本作は、デジタル技術を介して個人の痕跡を収集・更新し続けるアーカイブ実践の一例として論じられている[11]。Gaëlle Périot-Bled は、《Les Archives du Cœur》について、デジタル録音によって名前と鼓動が結び付けられ、固定的な保存対象というよりも、参加と蓄積が継続するプロセスとして成立する点に特徴があると論じている[11]。
また、田中雅一は、ボルタンスキーの作品における「名前をつけること」や「心臓音を集めること」をアーカイヴ的活動として位置づけつつ、それを国家や制度による統治的なアーカイヴに回収されるものではなく、むしろそれを撹乱しうるものとして読んでいる[12]。
このように、《心臓音のアーカイブ》は、展覧会批評においては音と光による強い体験性、生と死をめぐる感覚、場所との関係の是非が論点となり、研究においては参加型・更新型のアーカイブ実践として読み解かれている[7][8][11][12]。