悋気の火の玉
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『悋気の火の玉』(りんきのひのたま)は古典落語の演目。別題として『悋気の人魂』(りんきのひとだま)[1]。吉原遊廓の元花魁の妾と本妻との間の嫉妬が原因でお互いに相手を呪殺し、怨念の陰火となった二人を夫がなだめようとする内容である。
エピソードの元になる話として、『桂文楽全集 上巻』の「作品解説」は、鼻山人『廓雑談(くるわぞうだん)』(文政9年・1826年)に収録された、質屋鶴屋金兵衛の息子・艶蔵が融資先(返済前に病死)の娘と恋仲になって結婚したが、吉原の花魁とも懇ろな関係になって身請けしたため、両者が互いを嫉妬し、元花魁は吉原の「九郎助稲荷」に祈って火の玉となり、娘も元花魁を呪ったことからお互いがそのために死亡して彼女たちの亡霊が現れるようになった話を挙げている[2]。その話を、桜川慈悲成が天保4年(1834年)の笑話本『延命養談数(えんめいようだんす)』収録「火の玉」で小咄に改作した[2]。『桂文楽全集 上巻』は、この小咄に「尾ひれをつけたもの」が本演目とする[2]。
武藤禎夫は、慶安ごろの『あやしくさ』にすでに女性の魂同士が火の玉として衝突する内容が見えるとしながら、直接の原話としては前出『廓雑談』を挙げ、この話が安永ごろに実際に吉原遊廓内の張見世・上総屋の主人の妻および妾の間で起きた三角関係による相互呪詛から取材したとする暉峻康隆の説を紹介している[3]。
※以下、東大落語会編『落語事典 増補』掲載の内容に準拠する[1]。
浅草花川戸の立花家という鼻緒屋の旦那は、知り合いに誘われて吉原遊廓に行ってからすっかり廓通いが身につく。しかし費用がかかるため、馴染みの女郎(遊女)を身請けして、根岸に妾として囲う。するとそれを知った本妻と妾の間でお互いが相手を呪殺しようと藁人形に五寸を打ち込むことを繰り返し、ついに両者とも世を去ってしまう。二人の死後、花川戸の自宅から出た火の玉と、根岸から出た火の玉が、大音寺の前で衝突して火花を散らすようになる。これを知った旦那は大音寺の和尚に成仏させてくれるよう求め、旦那と和尚は二人して寺の前に立って待つ。すると根岸から妾の火の玉が飛んできてとどまったため、旦那は火の玉から煙草に火を付けてもらい、火の玉を諭した。そこへ本妻の火の玉も現れ、旦那がこちらもなだめようと煙草の火を求めたところ、「あたしのじゃうまくないでしょ」と返事をした。