海上保安学校

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海上保安学校(かいじょうほあんがっこう、英語: Japan Coast Guard School)は、京都府舞鶴市に本校がある海上保安庁文教研修施設。同庁の職員の養成を目的とする。略称は海保校、または保校。設置根拠は国土交通省組織令第二百五十四条。

位置づけ

海上保安大学校が海上保安庁の幹部職員を養成する教育機関であるのに対して、本校は一般職員を養成する教育機関である[1]

本校の目的は、国土交通省組織令で次のように規定されている。

(海上保安学校)
第二百五十六条 海上保安学校は、海上保安庁の職員に対し、海上保安業務を遂行するに必要な知識及び技能(幹部としての職務を遂行するに必要な知識及び技能を除く。)を修得させるための教育訓練並びに海上保安業務を遂行するに必要な専門的知識又は特殊技能を修得させるための教育訓練を行うことをつかさどる。

学生の身分

本科への入学資格は高校卒業から12年以内もしくは卒業見込の男女。全寮制であり、コースにより1年から2年の寮生活となる。

学生は入校と同時に一般職の国家公務員として海上保安庁の職員に採用されるため、学費などは必要なく給与が支給される(2020年4月現在、行政職俸給表(一)1級5号俸で俸給月額150,600円)。このように学生に給与が支給される国土交通省所管の学校は、海上保安大学校気象大学校航空保安大学校などがある。防衛省所管の特別職の学校では防衛大学校防衛医科大学校陸上自衛隊高等工科学校などがある。

学生は卒業して海上保安官として任用されるまでは階級を持たないが、海上保安庁の職員服制では学生を職員として含めており、海上保安官と同様に肩章、胸章、袖章があり、海上保安大学校生は金モール、金ボタン、海上保安学校生は銀モール、銀ボタンなどの規定がある。卒業時に、一年制は三等海上保安士、二年制は二等海上保安士の階級を命ぜられる。

沿革

年表

  • 昭和23年(1948年)5月 - 海上保安教習所(東京)、燈台官吏養成所(横浜)、水路技術官養成所(茅ヶ崎)で養成を開始。
  • 昭和24年(1949年)6月 - 海上保安官の3個所での養成施設名称を「海上保安学校」に改める(昭和24年海上保安庁令第1号)。
  • 昭和26年(1951年)4月 - 京都府舞鶴市に3個所の「海上保安学校」を統合(昭和24年海上保安庁令第2号)。
  • 昭和26年(1951年)5月20日 - 「海上保安学校」の開校。
  • 昭和27年(1952年)7月31日 - 保安庁設置による海上公安局法の公布により、「海上公安学校」を置くとされる(昭和27年法律第267号)。
  • 昭和29年(1954年)7月1日 - 防衛庁設置法附則の第2項により海上公安局法の廃止(昭和29年法律第164号)。
  • 昭和54年(1979年)10月 - 初の女子学生が入学[2]
  • 昭和56年(1981年)4月 - 門司分校を設置。
  • 昭和63年(1988年)4月 - 宮城分校を設置。
  • 平成14年(2002年)4月 - 航空課程を設置。
  • 平成30年(2018年)4月12日 - 管制課程を設置[3]
  • 令和2年(2020年)4月1日 - 宮城分校北九州航空研修センターを開所[4]

組織

  • 海上保安学校長(指定職2号)
    • 副校長
      • 事務部
        • 総務課、人事厚生課、会計課、図書課
      • 教育訓練部
        • 教務課、学生課、訓練課
      • 教官室
        • 航海教官、機関教官、主計教官、航空教官、情報通信教官、管制教官
        • 海洋科学教官、一般教養教官、警備救難教官、小型船舶操縦教官
      • 練習船
      • 門司分校
        • 総務課、教務課
      • 宮城分校
        • 北九州航空研修センター

所在地

  • 京都府舞鶴市字長浜2001番地

本科

舞鶴の本科には一般課程航空課程管制課程海洋科学課程の四つの課程がある[5]

一般課程(旧・船舶運航システム課程)

海上保安官として巡視船に乗組むための教育を行う課程。期間は1年で、航海、機関、主計、整備のコースがある。2025年4月より通信コースを新設し、整備コースは航空整備コースに改称され、課程名称も一般課程に改められた。

航海コース

巡視船等の運航を担当する海上保安官を育てるコースである。船舶運航に必要な知識を中心に、警備救難業務や武道などを修得する。また、以下の資格が取得可能。

五級海技士(航海)筆記免除

四級海技士(航海)筆記

第一級海上特殊無線技士

第二級陸上特殊無線技士

一級小型船舶操縦士

  • カリキュラム - 航海、運用、海事法、海象・気象、通信運用(全課程共通科目)、基礎教養(法学概要、国際法 、海上保安業務概要等)、基礎英語、業務英語 (Ⅰ)、情報処理 (Ⅰ)、小型船舶操縦、体育・基本動作、乗船実習、統合実習(船舶運航システム課程、航空課程、情報システム課程共通科目)、刑法刑事訴訟法 、海上警察、海上環境、航行安全、救難防災、主計、訓練、業務英語 (Ⅱ)、業務英語(Ⅲ)
機関コース

巡視船等の機関運転・整備を担当する海上保安官を育てるコースである。船舶の機関、電気機器等に関する知識を中心に、警備救難業務や武道などを学べる。また、以下の資格が取得可能。

内燃機関五級海技士(機関)筆記免除

内燃機関四級海技士(機関)筆記

第一級海上特殊無線技士

第二級陸上特殊無線技士

一級小型船舶操縦士

  • カリキュラム - 機関、電気機器、海事法、通信運用(全課程共通科目)、基礎教養(法学概要、国際法、海上保安業務概要等)、基礎英語、業務英語(Ⅰ)、情報処理 (Ⅰ)、小型船舶操縦、体育・基本動作、乗船実習、統合実習(船舶運航システム課程、航空課程、情報システム課程共通科目)、刑法、刑事訴訟法、海上警察、海上環境、航行安全、救難防災、主計、訓練、業務英語(Ⅱ)、業務英語(Ⅲ)

通信コース

巡視船・航空機等において通信機器の運用・管理を担当する海上保安官(通信士)安定的に確保するために設置されたコースである。情報システム課程からより通信士としての専門教育により重点を置き、教育機関を1年に短縮した[6]。卒業しても、第二級陸上無線技術士の「無線工学の基礎」の試験科目が免除されない為、資格を保有しない者は卒業後に4カ月の業務研修を受講する[7]

主計コース

巡視船等において経理や調理を担当する海上保安官を育てるコースである。調理技術、総務、経理補給、船舶衛生等を中心に、警備救難業務や武道などを修得する。また、以下の資格が取得可能。

船舶料理士※

衛生管理者(船員法による)※

第一級海上特殊無線技士

第二級陸上特殊無線技士

一級小型船舶操縦士

※卒業後年齢条件を満たす必要あり。

  • カリキュラム - 主計(総務・経理補給・船舶衛生)調理、通信運用(全課程共通科目)、基礎教養(法学概要、国際法、海上保安業務概要等)、基礎英語、英語 (Ⅰ)、情報処理 (Ⅰ)、小型船舶操縦、体育・基本動作、乗船実習、統合実習(船舶運航システム課程、航空課程、情報システム課程共通科目)、刑法、刑事訴訟法、海上警察、海上環境、航行安全、救難防災、主計、訓練、英語 (Ⅱ)

航空整備コース(旧・整備コース)[8][9]

航空基地やヘリコプター搭載型巡視船での航空機の整備を担当する海上保安官を育てるコースである。航空課程と同じく、あくまで基礎教養を修得し、後述する整備基礎課程へと研修は続く[10]。従来は現場から選考を経て選抜していたが、海上保安庁の航空整備士を継続的に養成するため2024年に設置された[11]

航空課程

海上保安庁の航空機の運航を担当する海上保安官になるための基礎教養を習得する課程。期間は1年。飛行士となるために必要な数学、物理、英語等を中心に、警備救難業務や武道などを学ぶ。ここでの基礎教養を修了した後は、航空基地飛行員となり、ヘリコプターの要員は、海上保安学校宮城分校(1.5年)の実用機による研修に進む。固定翼練習機を保有していなかったため、2019年までは海上自衛隊小月教育航空群に研修を委託していた(2.5年)[12][13][4]

  • カリキュラム - 数学、物理、海象・気象、船舶概要、航空通信運用海上航空業務(全課程共通科目)、基礎教養(法学概要、国際法、海上保安業務概要等)、英語 (I)、情報処理 (I)、小型船舶操縦、体育・基本動作、乗船実習、統合実習(船舶運航システム課程、航空課程、情報システム課程共通科目)、刑法、刑事訴訟法、海上警察、海上環境、航行安全、救難防災、主計、訓練、英語 (II)

管制課程(旧・灯台課程)

運用管制官として船舶の運用管制業務を担う海上保安官を育成する課程。期間は2年で、無線従事者資格取得以外のほとんどの授業が、語学(TOEIC600点程度の英語)習得に費やされる[5]。卒業後も、更に1~2カ月の職場研修(管制課程卒業者研修)を受講し、研修評価と認定審査の上、資格が認定される[14][15]

  • カリキュラム - (1年)通信業務英語、実践英語、海上交通業務、情報通信、通航管理、管制業務機器、海事一般、(2年)英会話、実践英語、管制英語、港長業務、事案対応、シミュレータ実習

海洋科学課程(旧・水路課程)

航海の安全を確保するために必要なさまざまな海洋データを収集・解析し、提供する海上保安官を育てる課程。期間は1年。海洋の科学的資料の収集、解析に必要な知識、技能を学ぶ。卒業と同時に、国際水路測量技術者B級の資格の個人認定が付与される[16][17]

  • カリキュラム - (全課程共通科目)基礎教養(法学概要、国際法、海上保安業務概要等)、英語 (I)、情報処理 (I)、小型船舶操縦、体育・基本動作、乗船実習、統合実習、数学、基礎科学、海上安全業務、情報処理 (II)、海象、気象、天文、水路業務管理、測量、図誌・印刷、通信運用

廃止された課程

情報システム課程

通信機器の運用・管理と船舶の安全航行に必要な情報を提供する航行援助システムの管理運営を行う海上保安官を育てる課程。通信機器及び航行援助システムの運用・保守に必要な知識、技能を学ぶとともに、警備救難業務や武道などを学ぶ。2年の期間を卒業すると、第二級陸上無線技術士の「無線工学の基礎」の試験科目が免除された[18]。一般課程通信コースの新設に伴い、2024年度の入校生を最後に廃止された。

  • カリキュラム - 数学、物理、電気通信、情報通信、情報処理 (II)、通信実験、航行援助システム、海上交通、電気機器(全課程共通科目)、基礎教養(法学概要、国際法、海上保安業務概要等)、英語 (I)、情報処理 (I)、小型船舶操縦、体育・基本動作、乗船実習、統合実習(船舶運航システム課程、航空課程、情報システム課程共通科目)、刑法、刑事訴訟法、海上警察、海上環境、航行安全、救難防災、主計、訓練、英語 (II)

研修科

門司もしくは宮城等に所在する各分校にて、学生教育以外の研修を実施する。

船艇職員等初任者課程

門司分校にて、6カ月の海上保安官として必要な知識、技能及び体⼒を練成するための研修を受講し、即戦力として現場へ配置される。船艇職員として航海機関主計無線従事者として通信・技術管制航空機職員として飛行[19][20]整備航空通信の八つの区分があり、無線従事者と航空機職員は高卒程度の学歴が必要である。採用後は学生ではなく、直ちに海上保安官(門司海上保安部予備員)として、採用前までの経歴に応じ一等ないし三等海上保安士までの階級に任命される。

試験区分・受験資格等(2025年現在、募集停止の区分を含む)
試験区分 受験資格 転勤範囲
船艇職員 航海 配属管区
機関
主計[21][22][23][24][25][26][27]
無線従事者 通信・技術

のいずれか

管制[28]
  • 第一級総合無線通信士
  • 第三級海上無線通信士以上

のいずれか

隣接管区
航空機職員 飛行[29] 全国転勤
整備
航空通信
  • 航空無線通信士又は第二級総合無線通信士以上

運用管制官課程

本科管制課程卒業生以外の現場から選抜された海上保安官[30]で、約1カ月の職場研修(事前研修)を経て、運用管制官を任命された者(初任者)を対象とする。修了後も、約3カ月の職場研修(運用者研修)での研修評価と認定審査の上、資格が認定される[15]

統括運用管制官課程

統括運用管制官候補者(海上交通センター等課長より、ワンランク格下の一等海上保安正[31])が対象で、日勤と夜勤での管制業務の責任者となる為の研修。修了後も、約3カ月の職場研修(監督者研修)での研修評価と認定審査の上、資格が認定される[15]

研修指導者課程

職場研修を確実に実施するための指導者(主任運用管制官級[14])を養成する[15]

回転翼基礎課程

本科航空課程卒業生等に1年8カ月間の課程で事業用操縦士(回転翼航空機)の免許を取得する[32]

整備基礎課程

現場から選抜された海上保安官や本科航空整備コース卒業生等に、約4カ月の航空整備に関する基礎教育を受けさせる。基礎課程修了後、各航空基地またはヘリコプター搭載巡視船に配属され、最短でも2年4ヶ月は現場で活躍する機体の整備作業に従事し、航空整備士受験のための経験、経歴を充足させる[33]

整備上級課程

8か月間、二等航空整備士取得のために必要な教育を受け、受講中に二等航空整備士実地試験を受験する[33]。通常は前述の整備基礎課程から現場経験を積んだ海上保安官を入校させるが、海上保安大学校本科及び初任科出身者は防衛省等の外部に航空整備の基礎教育を委託しているため、直接に本課程を受講する[34][35]

航空通信課程

航空基地通信科等に配置から2年未満の初任者を対象。航空機に装備されている通信機器及び電子航法機器等の取扱い及び整備を行うために必要な知識・技能を取得させる[36][37]

飛行機基礎課程

本科航空課程卒業生等の内、防衛省委託の選考から漏れた者が、宮城分校北九州航空研修センターで受講する。練習機として導入されたセスナ 172Sディーゼルエンジン搭載モデル「ターボ・スカイホークJT-A」を5機使用し[38][39]、2年間の課程で事業用操縦士(飛行機)の免許を取得する[32][13]

分校

校務の一部を分掌させるため、下記分校が設置されている。また、上記の研修科も以下の分校の課程である。

門司分校[40]
1981年、廃校となった門司海員学校の施設を引き継ぐ形で設立
公募採用された海技士等の有資格者を海上保安官に養成、その他研修を行うための施設。
所在地
福岡県北九州市門司区白野江3-3-1
宮城分校[41]
1988年10月に設立
航空機職員3科(飛行科・整備科・通信科)にそれぞれ必要な国家資格と技術を習得するとともに、海上保安学校航空課程卒業者等(回転翼)の訓練及び資格取得の課程など、航空業務に関する広範な課程が設けられている。
仙台空港内にある第二管区海上保安本部仙台航空基地に隣接しており、練習機の整備など支援を受けている。
所在地
宮城県岩沼市下野郷字北長沼4
宮城分校北九州航空研修センター[4]
2020年4月に開所
固定翼航空機の操縦員を養成するため、宮城分校の下部組織として北九州空港内に設置された。
第七管区海上保安本部北九州航空基地に隣接しており、練習機の整備など支援を受けている。

脚注

関連項目

外部リンク

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